コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 恋人ごっこ
- 日時: 2016/04/23 13:44
- 名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)
どうも、川魚です!
つたない文ですが読んで頂けると幸いです。
コメンテーター
こん様
目次
#into >>1
#first contact >>2>>5
#second effect >>6-7
- Re: 恋人ごっこ ( No.7 )
- 日時: 2016/06/02 16:28
- 名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)
水無瀬と偽物の恋人になって、一週間が経とうとしていた。
はじめのうちはうるさく、騒ぎのようになっていた。
噂で水無瀬が告白百回目のメモリアルで付き合っているというのがあつたので、本当に百人に告白されたのか、気になったので水無瀬に聞いてみると、
「本当ですよ。男子だけなら乙坂くんで百人目ですよ」と答えてくれた。
ん? ちょっと待て。男子だけなら?
少し・・・・・・いや、大変気になったが水無瀬が何も言わなかったので、俺も何も訊かなかった。
「恋人ごっこしましょう」
唐突に水無瀬は言った。
昼休み。俺は水無瀬に呼び出され、調理室にいた。
なぜ、調理室なのかというと水無瀬が調理部だからだ。部長に頼んで開けてもらったそうだ。
部長に頼んで、というところが覗き見とかされてないかと、気になるが、調理室は広いので多分普通にしてる分には話し声が漏れることはなさそうなので、少し気を付ける程度に落ち着いた。
そんなことより。
「恋人ごっこ?」
「そうです。恋人ごっこです」
水無瀬ははっきりとそう言った。
「私たち付き合ってからもう一週間経つじゃないですか、それなのに一緒に下校するどころか、今こうやってお昼を一緒に食べた事もないですし、五分以上一緒にいたこともないですよね?」
そう水無瀬に言われ、この一週間を振り返ってみる。
・・・・・・あ、ほんとだ。というか、水無瀬と付き合ってから一回しか喋ってない。
だけどーー
「俺らは偽物の彼氏彼女なんだから、問題ないだろ。それとも何か問題あるのか?」
そう俺らはあくまで告白避けで付き合ったダミーの恋人だ。
つまり、恋人ではないのでお互い干渉はしないし、今までどおり完全にとは言わないが他人として過ごすだけなのだ。
「それは・・・・・・確かにそうですけど・・・・・・」
「だろ?」
「けど・・・・・・」
そこで水無瀬が黙り込む。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
お互い沈黙が続く。
誰もいない調理室はとても静かだ。
水無瀬は口を開かない。
言いにくい事なのだろうか。少し考えてみる。
さっきの恋人ごっこという言葉・・・・・・あ、簡単なことじゃないか。
「もしかして、クラスの人に本当に恋人なのか疑われた?」
水無瀬がコクコクと頷く。
確かに普通恋人と言ったら、さっき水無瀬が言ったようなことをするのが普通だろう。
だが、それを全くしない俺たちは異常だ。
隠れて付き合っているならまだしも、はっきりと交際宣言はしていないが交際しているという事実は校内に知れ渡っている。
「ん〜、じゃあやるか。恋人ごっこ」
仕方ないと、俺は割り切り承諾した。
「はい! では早速ですね、今日クッキー焼いてきたんですけど、本来あげる予定だった子が欠席しちゃて一つ余ったのでどうぞ」
水無瀬はそういうと鞄の中を漁りはじめる。
そして、何枚かいい色に焼けたクッキーが入った小さな袋を出した。
今からやるのか? と思いつつ袋を受けとる。
袋を開け、一口サイズのクッキーをポイっと口の中に放り込む。
水無瀬が膝に手を置き、真剣な眼差しでその様子を見る。
バターの香りとサクッとした食感が口内に広がる。
美味しかった。
そんじょそこらのコンビニやスーパーで売っているようなクッキーより断然うまい。お店を出せるレベルだ。
「すごく美味しいよ。これお店に出したら売れるんじゃないか?」
「ほんとですか!? まぁでも和菓子屋の娘なんですから、それぐらい当然ですよ」
謙遜しているわりにはとても嬉しそうな顔で水無瀬が笑った。
和菓子屋の娘なだけあって、人に自分の作ったお菓子を食べてもらい、美味しいと言ってもらえるのが人一倍嬉しいのだろう。
ふと、時計を見るとあと少ししたら、予鈴が鳴るところだった。
よいしょ、と立ち上がる予鈴が鳴った。
「教室戻るか」
そう言って、自分の椅子を片付けるついでに水無瀬の使った椅子も片付けようと水無瀬に手を出す。
「あ、ありがとうございます」
水無瀬が俺の手を握る。
反射的に水無瀬を引っ張って立たせた。
「椅子片付けるから貸してって意味だったんだけど、まぁいっか」
水無瀬が座っていた椅子を取り、自分の椅子を重ねる。
「え? あ、すみません!」
水無瀬が自分の勘違いに気付き頭をペコペコ下げる。
「いいよ、気にしないで。これも恋人ごっこだと思っておけばいいから」
そう言いながら、重ねた椅子を椅子の山に戻し、扉の方に向かうが、水無瀬が着いてこない。
「何、ボーッとしてるんだよ。先行くぞ」
「あ、すみません。今行きます」
水無瀬が追い付いたところで扉を開けると、廊下に誰かがいた。
いるだろうなとは思っていたので気に止めたりはしない。
むしろ、練習にはちょうどいいくらいだ。
水無瀬を教室まで送る間、他愛のない話をして、恋人ごっこをしてみた。
してみた感想としては、水無瀬、お前演技下手すぎ。
- Re: 恋人ごっこ ( No.8 )
- 日時: 2016/06/02 16:47
- 名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)
#third unrequited
それはほんの一週間前の出来事だった。
言ってしまった・・・・・・。
迷惑かけちゃたよね。絶対かけたよね。
あ〜なんで私「恋人です」なんて言っちゃったんだろ。
ほんと、どうしよう・・・・・・。
「さっきのことで聞きたいことがあるんだけど、とりあえず自己紹介でもしようか」
私が自己嫌悪に陥る寸前のところで乙坂くんが困った顔で言った。
「二年十組。水無瀬さやかです」
自責に押し潰されつつも私は暗い声で辛うじて自分のクラスと名前を口に出した。
「二年一組。乙坂翔太」
乙坂くんも私にならってクラスと名前だけ述べた。
はい、知ってます。二年一組、出席番号七、乙坂翔太。運動神経がよくて、定期テストで学年総合二位。その上ルックスもいい。
この学校で彼のことを知らない女子はモグリだ。
「水無瀬さんは告白にうんざりしているとか思ったことある?」
乙坂くんがそう訊くが、どういう意味なのか、私には質問の真意がわからなかった。
ただ、乙坂くんが告白にうんざりしていることはわかった。
「・・・・・・急ですね」
正直、好きでもない人にされる告白にはうんざりしているところは少しあった。
しかし、はいとは言えず、私はその代わりに質問の真意を窺おうとした。
「俺はさ。告白にはもううんざりなんだ。ラブレターにしろ、告白にしろこれから振るのか考えると嫌な気分になるし、相手のこと傷付けたとか考えちゃうし、めんどくさい。二日連続とかほんとめんどくさい」
相手のこと振るの前提なんだ……
それに面倒くさいって……
「私は今日で九人連続です」
湧いた感情を沈めるように出した声はこころなしかさっきより明るかった。
「それな大変だったな。話を戻すけど、俺は告白させるのが面倒になった。だから、さっき助けたところで何のメリットのないはずのお前を助けた。メリットができたから」
え? メリット? それって・・・・・・。
「そのメリットは偽物の彼女だ」
私が訊く前に乙坂くんは答えた。
「偽物の・・・・・・彼女」
その言葉を私は反芻する。
「そう。そしたら、乙坂くんは私の偽物の彼氏になるってことですね」
「そうだな。もし水無瀬さんが告白にうんざりしているなら悪い話ではないはずだ」
「そう・・・・・・ですね。既に付き合ってる人がいたら告白しようとする人も減りますね・・・・・・」
偽物の彼氏。偽物の彼氏。
その言葉を心の中でなんども呟き、考える。
偽物の彼氏になったとして、それは本物ではない。
そんな紛いものに私の青春をかけていいのか。
でも、こんな機会は二度とない。
「わかりました。私と偽物の恋人になってください」
私が決心してそう言うと乙坂くんは「あぁ、よろしく頼む」と言った。
乙坂翔太ーー私の好きな人。
この日。私は好きな人と偽物の恋人になった。
偽物でもいい。
私は彼が好きなんだ。
だから、彼としたいことを全部やろう。
そしていつか気が済めば、こんな気持ちなくなるはずだ。
自分を騙す準備はできた。
彼は偽物の恋人と言うだろう。
でも、私にとっては本物の恋なのだ。
故に私が乙坂翔太のことを好きでいる限り、偽物なんて関係ない。
だからこれは本物だ。
そう私は私に嘘をついた
- Re: 恋人ごっこ ( No.9 )
- 日時: 2016/05/04 20:51
- 名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)
自分の才能のなさに腹をたて、他の作品を読んでは自分を蔑み、自分もいつかこんな作品を書きたいとかなんとか自分を鼓舞する日々、何度も書いては消して、書いては消して……
消してぇぇぇぇ! リライトしてぇぇぇぇえ!
失礼しました
もう少しで4th attracted が執筆完了いたしますので少々お待ちを
- Re: 恋人ごっこ ( No.10 )
- 日時: 2016/06/05 14:43
- 名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)
#4th attracted
「あ〜もうっ!」
ポフっと亀のぬいぐるみが壁に当たり、ベッドの上に落ちる。
私は苛ついていた。
何にと言われると、勿論乙坂くんにだ。
確かに乙坂くんが本物の恋人ではないことはわかっているつもりだ。
だから、私は偽物の恋人として振る舞わなくてはならないのもわかっている。
だからこそ、より偽物の恋人を演じれるように『恋人ごっこ』を提案したのに、彼はこの提案に賛成はしたもののやる気が全く見られない。
私が乙坂くんのことを思って勇気を出して、一週間も言おうとしては心の準備ができてなくて、声をかけられなかったり、適当な挨拶でその場逃れをしていたのにも関わらず、その苦労の結果は乙坂くんと一緒に帰れる(帰りに店に寄るとか公園とかに寄り道することもせず、真っ直ぐと最短ルートで帰って行く)。あんまりである。
これでは、付き合ってるとは言えないではないか。
だから、私は乙坂くんをデートに誘いたいと思う。下心はない!
——ごめんなさい。嘘です。乙坂くんとデートしたいだけなんです。
だって、好きな人とデートしたいじゃないですか! キスとかしたいじゃないですか!
私の言ってることなにか変ですか? 変じゃないですよね?
じゃあ、乙坂くんをデートに誘ったっていいじゃないですか!
…………。
なんて誘おう……。
私はベッドの上に座り込み、亀のぬいぐるみを拾い上げて、胸の前で抱いた。
亀のぬいぐるみの甲羅部分がギュっと瓢箪の形に歪む。
どうやって、誘うか。そもそも誘えるのか考える。
私は乙坂くんのことが好き。でも彼は違う。
彼としては、私はただの偽物の恋人であり、恋愛の対象ではない。
ましては、本当に付き合ってるわけではないので、プライベートで付き合う必要なし。
そして、これまでの行動から最低限の付き合いがあればそれでよし。
このままでは、誘っても必ず断られるだろう。
どうすればいいのだろうか。
考え疲れて、私はベッドに横になる。
しばらくして、私の意識が薄れていき、視界がぼやけてきた。
やがて、視界は真っ暗になり、私は深い眠りに落ちた。
- Re: 恋人ごっこ ( No.11 )
- 日時: 2016/06/08 01:56
- 名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)
キーンコーンカーンコーン。
午前の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
クラスのみんなが「飯だ、飯!」「購買行こう」などとお昼の準備を始める。
中には、授業でエネルギーを使い果たしてしまったのか、まだ寝てる人、板書を写しきれず、まだノートを書いてる人もいた。
私は勿論、私の(偽物の)彼氏である乙坂くんのところに行くつもりだ。
「さやちゃん」
机の上を片付けて席を立とうとしたところで声をかけられた。
私のことをさやちゃんと呼ぶのは一人しかいない。
「何? みやちゃん」
そう言ってから振り返るとやはり、小学校からずっと同じクラスで幼なじみの佐々都が立っていた。
「これから、乙坂くんのところ?」
「うん、そうだよ」
私がそう返すと、都はバツが悪そうな顔をした。
「そっか……そのことなんだけど、今日乙坂くん風邪で休みだよ。連絡来てないの?」
初耳だった。何か連絡が来てないかとスマホを取り出すが、生憎なんの連絡もない。予想はできていたので今はあまり気にしないことにした。
それよりも。
「私にも連絡来てないのに、都ちゃん翔太くんが風邪だってこと、なんで知っているの?」
乙坂くんと私は一組と十組でクラスがすごく離れている。なのに私と同じクラスである都が知っていると言うのはどういうことなのだろうか。
「何? 私が乙坂くんの事、狙ってるとか言いたいわけ?」
都の言葉に私は「あ、いや……そういうことじゃなくて」などときまりの悪い返答しかできなかった。
「ぷっ……アハハハハッ」
都が笑いだした。
突然の事に私は戸惑う。
「冗談だってば。さっき廊下で一組の子が言ってたのを聞いただけ。さやちゃんおもしろすぎ」
そう言う、都の姿に私は安心した。
でも、人の恋心を弄ぶなんて酷くないですか?
「もう、みやちゃんのバカ」
仕返しに私はわざとらしく拗ねてみる。
都はこれにすごく弱いのだ。
「あ! ごめんて、謝るからさ、許して」
「ん〜じゃあ明日、帰りに白金メロンパン奢ってくれたら許す」
白金メロンパンとは別名プラチナパンとも呼ばれるメロンパンの事である。
名前からわかるようにめっちゃうまい。
そして、高い。でも、美味しい。
「さやちゃんの為なら何個でも買ってあげるよ」
都が胸を張ってそう言うので、
「ほんと? じゃあ十個くらいもらおうかな〜」
なら、お言葉に甘えてと返すと、
「それは勘弁」
都が拝むように両手をすりすりした。
「「ぷっ……アハハハハッ」」
その様子に堪えきれずに私が笑うと都も連れて笑った。
「さっきは疑ってゴメンね」
落ち着いた頃に私は謝った。
「ううん、私こそゴメンね」
都も謝った。
私と都のこういった、いざこざはいつも、お互いが謝るかたちで終わる。
そして、今日もそうだった。
「じゃあ、お昼一緒に食べよ」
いつもはここで、ずっとお互いに謝り続けるのだが、都がそう切り出したのでペコペコ大会にはならなかった。
その日の昼休みは都とお昼を食べた。
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