コメディ・ライト小説(新)

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最強次元師!! 【完結】 ※旧版・2スレ目
日時: 2018/07/19 08:42
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=17253

 
 運命に抗う、義兄妹の戦記
--------------------------------------------
 
 
 完結致しました。
 読んでくださった皆様へ、本当にありがとうございました!


--------------------------------------------
 
 ※本スレは、ただいま執筆中の【完全版】とはちがい【旧版】となります。
  【完全版】ののネタバレを多く含みますので、ご注意ください。
 
 ※本スレは“2スレ目”となります。
  第001次元~第300次元までは旧スレに掲載しています。
  上記のURLから飛べます。


 ■ご挨拶

 どうもこんにちは、瑚雲こぐもと申します。
 旧コメライ版から移動して参りました。
 長年書き続けております当作ではございますが、どうかお付き合い下さいませ。

 Twitterのアカウントはこちら⇒@shiroito04
 御用のある方はお気軽にどうぞ。イラストや宣伝などを掲載しています。


 ※最近更新頻度ががっくり落ち気味なので、不定期更新になります。


 ■目次

 あらすじ >>001
 第301次元 >>002 
 第302次元 >>003 
 第303次元 >>004 
 第304次元 >>007 
 第305次元 >>008 
 第306次元 >>009 
 第307次元 >>010 
 第308次元 >>011 
 第309次元 >>012 
 第310次元 >>013 

 第311次元 >>014
 第312次元 >>015
 第313次元 >>016
 第314次元 >>017
 第315次元 >>018
 第316次元 >>019
 第317次元 >>020
 第318次元 >>021
 第319次元 >>022
 第320次元 >>023

 第321次元 >>024
 第322次元 >>027
 第323次元 >>028
 第324次元 >>029
 第325次元 >>030
 第326次元 >>031
 第327次元 >>032
 第328次元 >>033
 第329次元 >>034
 第330次元 >>035

 第331次元 >>036
 第332次元 >>037
 第333次元 >>038
 第334次元 >>039
 第335次元 >>040
 第336次元 >>041
 第337次元 >>042
 第338次元 >>043
 第339次元 >>044
 第340次元 >>045

 第341次元 >>046
 第342次元 >>047
 第343次元 >>048
 第344次元(最終) >>049

 epilogue >>050
 あとがき >>051


 ■お知らせ

 2015 03/18 新スレ始動開始
 2017 11/13 完結

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



Re: 最強次元師!!【最終章】※2スレ目 ( No.47 )
日時: 2017/11/09 15:58
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw

 第342次元 メッセージ

 空模様に不穏の色が挿した。鉛色の空がエルフヴィアの大地を圧迫している。それが、互いを見合うレトヴェールにもロクアンズにも手に取るようにわかった。

 「……」
 「……」

 先に口を開いたのは、ロクだった。

 「――――あたしね、すごく、楽しかった。レトと出会ってから、キールアっていう友だちができて師匠に巡り会えて、蛇梅隊に入隊して。そして上司ができた。仲間がどんどん増えていった。大切な人が増えていった。みんなの悩みを、辛さを、悲しさも寂しさも、分かり合いたい。分け合いたい。――笑顔にしたい。その人が、一番幸せになる方法を一緒に探したい。そう、思えることができたんだ」
 「……それなら、一緒に探せばいい。みんなが一番幸せになる方法だろ? だったら――――その幸せの中に、お前がいなくちゃだれも笑顔になれないんだって、わかるだろ!」

 人より少し他人の心を温かくすることができる。
 その力のせいか否か。冷たく凍った心をじんわりと溶かしてしまう彼女の声音を、いったいどれだけの人間が聴いては、涙しただろう。
 人であろうが神であろうが、ロクアンズという一人の少女に救われた心の持ち主たちが、彼女のいない世界を喜ぶはずがない。レトもその心の持ち主で、例外ではなかった。

 「……ありがとう、レト。それが聞けただけでもう十分だよ」
 「矛盾してるぞロク! お前がいなくなって、いったいどれくらいの人が悲しむと思ってるんだよ!!」
 「それでもう、あたしには十分なんだよ。神族として人間を守る。あたしはそのために今日、ここにきたんだ」
 「――お前はそれでいいのか!? 神族だから、人間の宿敵だからはいさようならで、本当にいいと思ってるのかよ!!」

 いつの間にかその手には砂粒が握られていた。震える拳の内側で絞めつけられているそれらは、指の隙間から少しずつ、零れ落ちる。

 「そうだよ」

 ――ぶらりと。腕の重さだけで拳が提がる。その拍子に、握られていた砂がさらさらと地面に還る。しかしそれは、この地の一部でしかない。果てしなく広がる大地にはまるで響きもしない。

 「――レト! ロク!!」

 暫しの沈黙を打ち破ったのは、キールアの一声だった。彼女は、半ば身体を引き摺りながら一心に駆け寄ってくる。二人の姿を認めると、さらに速度を増した。

 「キールア……っ、お前どうして」
 「――ロク!! ねえどうして!? なんでロクが……っいなくならなきゃいけないの!?」

 キールアはやってくるなり、凭れるようにロクの両腕に掴みかかった。

 「……き、キールア……なんで知って」
 「レト、通信機つけっぱなしにしてるよ! みんなのにも流れちゃうんだから、全部……っ、全部、聞こえてたよ」
 「……そうか」
 「ねえロク、私はいやだよ。ロクと離れたくない! ほかに方法があるはずだよ! 絶対! 一緒に探すから……いくらでも手を貸すって、私」

 見ると、ロクは首を垂れていた。伏し目がちだったのを、微笑を浮かべながら顔も上げる。

 「キールア」
 「……なに?」
 「キールアは、優しいね」

 落とすまいと籠めていた力が、目尻から、緩み落ちた。

 「優しすぎて、考えすぎて。キールアは想いを秘めすぎるから、それがどんな想いでも、重く心にためこんじゃう。それが長所でもあって、短所でもある」
 「……」
 「優しすぎるから、キールアは初めから、見ず知らずのあたしのことを疎ましく思ったり、遠ざけたりしなかったよね。それにすごく救われたのを……知ってた?」
 「……。う、うん。ちがうよ。一人ぼっちで、自分からなにかをすることができなかったから、ロクが、私を引っ張ってくれた。友だちになってくれた。……初めて、友だちになってくれた」
 「それはあたしも一緒だよ。初めてできた友だちが、キールアでよかった。――――本当にそう思う」


 喉をいくら締めようと、口を強く抑えても、そこは踊り止まない。隙間から僅かに嗚咽が漏れる。焼き切れるのではと錯覚するほど鋭い熱が、咽喉を刺激する。キールアは言葉を失った。


 「――――コールド副班、フィラ副班。入隊当時からずっと面倒を見てくれてた。子どもだからってバカにしないで、いつも真剣に向き合ってくれたのをすごくよく覚えてる。ずっと見守ってくれてたことも」


 通信機越しに、名前を呼ばれた二人の副班長は心が詰まる感覚を覚えた。出会った当初は11歳だった。袖の余る隊服に身を包み、いつも笑顔を絶やさなかった少女の姿が脳裏に浮かんでくる。
 実の子どもでも血縁者でも、人間でもないのに。二人にとってロクとは、いつの間にか娘同然にかわいい存在となっていたのだった。


 「ルイルとガネストは、自分たちの国を置いてメルギースに来てくれたんだよね。王女と執事だなんてとても思えないくらい……視線の高さを同じにしてくれてた。あたしたちの味方であり続けてくれた。いまの二人が、一番二人らしくて好き」


 閉じこもってしまった王女の心を救ってくれ。仕事の上での関係だった三人は話し合い、ぶつけ合い、そうして互いの本心を垣間見た。もう、主従の鎖は必要ない。取り払ったのはロクだった。


 「つっけんどんなラミアには困ったよ。レトとはちがって本心を出すのを怖がる人だったから。似た者同士だけど、ティリと同じ部隊で大丈夫かなってひやひやしてた。……でももう、そんな心配はいらないみたいだね」


 天涯孤独なラミアの心に唯一灯を差した。似た者同士はロクも違いない。ロクがルイルの心を開くことで、ルイルのことを「姉」と慕うティリもひどい引っ込み思案から脱した。気の合わないラミアとはもう言葉を交わすことがないくらい、必要のないくらい、言葉以上の絆で繋がることができた。


 「……ミル。あなたは親友のために、あたしを騙してでも裏切ってでも、目的を果たそうと必死だったよね。大きなものを得た。親友のためにと裏切ったのに、あたしのために泣いてくれたとき……ああ、なんて優しくて強い子なんだろうって思った」


 貼りつけた虚偽の仮面。当たり障りなく笑っているだけでよかった。しかし、そうもいられなくなったのは、ロクがそれを引き剥がしたその日から。溜めすぎた優しさが、涙とともに溢れ出た、その日からだった。


 「セルナもそう。リルダもそう。あなたたちはほかの人よりほんの少し心が弱いから、だから自信を持てなくて踏み出せずにいた。でも仲間に危険が及んだとき、あなたたちは真っ先に助けてくれるんだよ。とんでもなく優しくて、他人思いな次元師だって知れたんだ……。だからあたし、惹かれたんだよ」


 次元師の研究施設で被験体として生きてきたセルナ。セルガドウラという、神様だったらしい怪物に身を呑まれ幼いながらに怖い思いを経験したリルダ。人を、人ならざるものを、怖がってもおかしくない二人と打ち解けたとき、ロクがどれほど嬉しい思いをしたのかを。二人は初めて耳にした。


 「エン、サボコロ」
 「「!」」
 「あなたたちは他人に牙を剥きやすい。その闘争心でお互いを喰い合ってたこと、ちゃんと後悔してる? ……きっと後悔してたよね。そしてちゃんと次に生かしていく。あなたたちは力もあって、自分の信念はしっかり持ってる。その情熱と冷静さは、どちらにもある。――どうか失くさないで」


 拡声機器を見つめていた。そこから流れる音声を聞き間違うはずがなかった。人生そのものをひっくり返した少女の声に、吸い寄せられるように皆が機器を囲う。


 「……ロク……」
 「……」


 ルイルは、目に涙を浮かべていた。ガネストがそんなルイルの震えた背中に手を添える。
 ラミアはスピーカーから目を背けた。表情が相変わらず伺えない。そうしても意味がないことくらい、賢明な彼はとうに理解している。あまり働かない頬の筋肉に寂しげな色を差していたのは、ティリだった。両の手で顔を覆うセルナが、力なくその場で腰を砕いた。リルダが顔を伏せると、その頭の上をヴェインがぐしゃぐしゃに掻き回す。ミルは考えれば考えるほど、かけるべき言葉を見失いつつあった。謝りたいのか感謝を述べたいのか、なにを言っても言わなくても、後悔する気がしてしまったのだろうか。

 蛇梅隊、戦闘部班班長のセブンをはじめ。直属の部下としてずっと面倒を見ていたコールド、フィラ。普段は飄々としているメッセルや無口一貫なテルガ、関わりの浅かったヴェイン。そして彼女に間接的な恩を抱くミラル。副班長階位の者たちは、この事態を理解をしているのか、これが大人の対応であるべきなのか、戸惑いを隠したまま――言葉を噤んだ。


 「たくさんの人が関わってくれた。ずっと支えてくれた。一人ひとりが、いまのあたしに意味をくれた。……――――あたしはみんなが大好きだから! 大好きなみんなのことを守るの!!」


 【心情】を司る少女は、母から“妖精”の名を与えられた。それはまるでおとぎ話のように――信じる者も信じない者も、ひとたびその姿を目に入れればきっと心が躍るだろう。彼女のすべてを、信じるようになるだろう。
 人の心を感じ取り、支え、温かくする。
 ロクアンズに与えられたその力が、――たとえ紛い物だとしても。


 彼女の心に触れ、暗闇から救われた人間の数はいくらにもなるだろうか。
 彼女の声を聴き、笑顔を取り戻した人間の心がいくらまた折れようとも。


 ――――きっと彼女は、差し伸べた手を、引き戻しはしない。





 しかし。それでも彼女のことをよく知っている彼の意思とは相反していることに変わりない。
 沈黙が訪れる。運命の時は、刻一刻と迫ってきている。
 秒針に脈が宿るのなら、いまの彼はまさしくそれだった。体内で息衝く時計を逸る鼓動が狂わせる。



 「レト」



 ――――そう呼ばれるのは、これで何度目のことになるのだろう。
 
 

Re: 最強次元師!!【最終章】※2スレ目 ( No.48 )
日時: 2017/11/12 11:08
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw
参照: ※今話を最終話にする予定でしたが、文字数の都合により次回が最終回となります。

 
 第343次元 家族


 「なんだよ」


 感情に任せて吐きだした返事が、やけに冷たくて後悔を呑んだ。口にはしないが、かといって顔も背けたままだった。レトヴェールの瞳が、不満の色に満ちる。
 キールアは幼馴染の二人を見合いながら、しかし口を挟めずにいた。

 「レト」
 「だから、なんだよ」
 「……レト」
 「……」
 「ありがとう」

 逸らしたまま目を剥いた。声にひかれて、首の神経がひとりでに反応する。ロクアンズは困ったように笑みを浮かべていた。

 「……ごめん。やっぱ言葉が思いつかないや。考えてたのにな」

 眉が八の字にへこんだ。頬を掻きながら、照れくさそうにまた笑う。

 「――この一年ね。レトと離れてから、ずっとレトのことを考えてたんだ。思った以上に寂しくて、辛くて、――……あたしね、今日を楽しみにしてたんだよ」
 「……なんで」
 「だってレトに会えるから」
 「……」
 「一年ぶりに会えるから。ずっと楽しみにしてた。久しぶりにレトと剣を交えて、また両次元を開くことも、作戦二人で練ったりもして……一緒に戦うことが、叶った。あたしね、すごい不謹慎だけど……――楽しくて楽しくて」
 「――――同じだよ」

 金の瞳は、しかと彼女を視界に捉えていた。

 「そんなの、俺も同じだ……っ! お前の姿が見えたときに心臓が高鳴った! だめだってわかってるけどわくわくした! お前が神族代表で、それで一年ぶりにお前の声を聴いて――――懐かしくて、……っなんかが込み上げてくるのを、強く感じた」
 「……レト」

 レトは胸のあたりを、どんと拳で突いた。それからとんとんまた叩く。前屈みになるレトの背中に、キールアは手を伸ばしかけるが、引っ込めた。
 唾か胃液かわからないものを、無理やり喉の奥に流しこむ。ロクがいなくなったことで、もっとも後悔をしたのは彼だろう。もっとも焦がれたのも彼だろう。ロクの胸に、同じものが込み上げる。

 「いくな」
 「!」
 「――離れるなんて言うな! 勝手に決めんな! なんでなんも相談しないんだよ!! 何のために俺がいると思ってんだ!!」
 「……」
 「俺たちは――――兄妹きょうだいだろ!!!!」

 ――『義理だけどね』と、いつも決まって返してきた言葉を呑みこんだ。
 義理も本物も紛い物もない。そうだと気づいたときには、もう――――兄妹だった。


 「――……やっと思いついた」


 囁きが鼓膜に触れた。見ると彼女はもう、顔色を晴れやかにして立っていた。

 「あたしと義兄妹きょうだいになってくれてありがとう」
 「……え?」
 「ずっと、守ってくれてありがとう」

 雪の降る夜に、小さな手は引かれるがまま、扉を叩いた。
 少女が神であることを知りながら、彼が一人背負った月日は指折ると8年にもなる。


 「笑うのも泣くのも、怒るのも苦しいことも……――戦うことも。レトと一緒だった。なにがあってもどんなときでも、傍にいてくれてありがとう」


 くだらない悪戯に走っては叱られた。笑いの中心にはいつも彼女がいた。
 母を亡くすことで同じ悲しみを共有した。その日を境に、二人はただの義兄妹ではなくなった。



 「あたしと」



 視線が合う。跪くレトの視界がロクでいっぱいになる。
 彼女は片膝をつくと――――レトの頬に、手を伸ばした。




 「――――あたしと生きてくれて、ありがとう」




 額にあたたかいものが伝う。柔らかく、淡く、その瞬間にはなにが起こったのか、レトは理解することができなかった。
 それが、――家族に対する親愛の証だということも。


 ロクアンズは、踵を返した。
 レトヴェールの目には、無情にも遠ざかっていく、背中。


 「……! おい、ロク!! ――――ロクアンズ!!!!」


 身と心は同一ではない。心は前へ前へと叫ぶのに、身体はもう脳からの信号に聞く耳を持たない。
 ――しかし彼は、ないも同然の脚の神経に無理やり電流を押し流す。当然のようにバランスが崩れ、無防備な腕と頭とが落下する。

 と、そのときだった。



 「ロクアンズ」



 肉つきのいい細腕に、抱き支えられていた。温度を感じさせない落ち着いた声の主を明らかにしたのは、ロクだった。


 「……――お義父さん」


 ロクは振り返りざまに彼のことを呼ぶ。肉体労働派ではないのだろうと推測させるやや細めの身体。身長は高く、縁の細い眼鏡の奥で小麦色の瞳がロクだけを見据えていた。


 「……お、親父……」
 「いいんだな」
 「!」
 「……」
 「行け」


 ロクが一つ、瞬きを終えたときには、穏やかな表情が帰ってきていた。


 「――――……うん」


 ロクはまた、歩き出した。


 「――! おい!! おいロク!!!!」
 「やめろ、レトヴェール」
 「! てめえどういうつもりだ!? なんでロクにあんなこと言ったッ!?」
 「こうするしかないだろう」
 「――ッなに言ってんだてめえ!! 方法なんていくらでもあるだろう!! なんで――なんで人間を守ってきたロクが犠牲になるんだよ……!! あいつは、そんな」
 「問題はそこじゃない」

 レトに、服の袖を引き千切れるほど強く引っ張られても、いまのフィードラスには一欠片の関心も感じられなかった。幼い頃の記憶など宛にならないが、しかしフィードラス・エポールという男がどういう性質の持ち主であるかを改めて覚えさせられる。


 「人間では、神を救えない」


 大人しめの口調に口を閉ざした。咎められているわけでもないのに、身の摘まされる思いだった。
 

 「だから……なんだよ」
 「……。レトヴェール」
 「親父! てめえやっぱりロクのことが嫌いなんだろ!! 神族だって知って疎ましく思ってたか!? 大事な娘だって言ってたよなあ!」
 「そうだな」
 「じゃあなんで!! そんな大事な娘の命をみすみす差し出」
 「――レトヴェール!」
 「……っ!」
 「……どうやら俺は、お前のことを過大評価していたらしい。もっと賢い男だと思っていたよ。事実お前は、ロクアンズのことになるとすぐに冷静だった思考に火がつく。理性が飛ぶ。お前の最大の欠点だ」
 「いまそういう話は――!」
 「何度言わせれば理解する!」
 「!」

 そのとき、レトはなにかに喉を締めつけられた。骨張った拳と顎とが接触する。視点が上がり、すぐ目の前では、ガラス越しに小麦色の瞳が憤っていた。

 「お前がロクを引き止めれば間違いなくこの星が滅ぶ。ロクが守りたいという人間を、兄のお前が自ら破壊する気か!」
 「ち、違う!!」
 「違いはしない。お前の言っていることは結論そういう事態に至る」
 「っ、俺は……! ――じゃあ! てめえはロクが、妹が、この世からいなくなるのをこの目で見てろっていうのかよ!!」
 「――――お前の目には! ロクアンズが"死"を選んだように見えるのか!!」
 「!!」
 「ロクが選んだのは……――――死ではない」

 ふと、キールアはロクの駆けていった方角を向いた。視界を分かつ地平線。ロクの後ろ姿は完全に見失ってしまった。
 戦場だったこの地が、静寂に包まれる明け方。日を跨いでから、一番と思えてしまうほど恐怖を感じた。



 踵で砂を蹴る。ロクはふとした瞬間に空を見上げた。
 そこでは着々と夜明けを迎えつつある。のどかな空色に、彼女は忘れそうになる。信じがたい速度で、それが接近してきていることを。

 ――――まさかあと一分も経たないうちに、大量の隕石がこの星に投下されてしまうとは。まだ夢心地の人間たちは知る由もない。



 「……」

 ロクアンズが選んだもの。
 ロクと行動を共にすることで、レトはその選択の瞬間に何度も立ち会ってきた。彼女の選んだ答えによって笑顔と平和を取り戻した人間の数は数え切れない。しかし。
 その上で、親密な関係にある者たちがロクに対してひどい心配を覚えることも多々あった。

 「! ――レト!?」

 ――両脚が、無意識に角度を変えた。技一つ繰り出せない双剣を、異次元から引き摺り出して砂の上に突き刺す。それは剣の役目を全うするのではなく、杖として、支えとして、主の身体を導くように前を歩いていく。導くという意味では、それはたしかに剣なのかもしれない。


 剣の刃先で厚い砂を掻きながら、諦めの悪い彼の両脚が、砂粒を轢いていく。
 辿り着けそうもないことは、本人が最も理解している。
 それでも立ち止まることはできない。



 そうやって、共に生きてきたのだから。
 
 

 
 --------------------------------------------------------



 *次回、最終話となります。
 

Re: 最強次元師!!【最終章】※2スレ目 ( No.49 )
日時: 2017/11/13 23:53
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw
参照: ※エピローグに続きます。

 
 
 第344次元(最終)  雪の降る朝

 
 
 胴と頭部を取りつけた神の心臓が、どこかで息を潜めている。なにをするでもなく彼は日の出を待ち焦がれている。

 「来たね、フェリー」
 「……」
 「じきに、雨が降るよ。傘を用意した方がいい。といってもこの星にある物理的質量ではしのげないほどの、強い雨だ」
 「あたしが、ひとつぶも残さずに吹き飛ばしたら?」
 「笑止」

 丹田の代わりに胸部が踊った。胸から下のない胴の斬り口から気味の悪いものを吐き出していた。

 「君は、僕に抗えるほど力が残っているのか?」
 「……」
 「なにを思い立ったのかは知らないが、こんな姿になっても計算くらいはできる。いままでの君の行動すべてから推測できるのさ。元力に、余裕があるかどうかくらいはね。手足を壊される程度、何の障害でもない。その証拠にほら、もう、すぐそこだ」

 ゴッドの視線の先には、濁った白い空が広がっている。同じように仰げば、そこに粒のようななにかが点在していると理解できる。それらは少しずつ、少しずつ――輪郭を明確にしていく。拡大していく。
 進路に狂いもなく真っ逆さまに、砕け散った星の欠片たちが――――迫り来る。



 「あなたに虚勢を張っても無駄だね」
 「ようやく、諦め方を覚えたのかい」
 「いいや」



 ロクは鼻を鳴らした。



 「まだ、使ってないんだよ」
 「は」
 「こっちの力」





 ――――――ロクアンズは、右眼を開く。





 「ッ!? ――――まさか!!」

 「次元の扉、発動――――」


 ――――赤い眼。
 そこに刻まれた月、星、太陽。空にあるすべてがゴッドの視界に翳りを差す。
 次の瞬間。


 「――――――雷皇!! 風皇!!!!」


 鈍い衝撃が内側に喰いこんだときには、ゴッドは地上からいなくなっていた。


 「――――ッぐはァ!!?」


 酷い眩暈、眩暈。浮遊感、浮遊感、浮遊感――――地上が遠ざかる。破裂したはずの胃袋が機能したのか、胃酸が管の中を激しく上り下りするかのような感覚に襲われる。全神経が引き千切れそうになる。
 弾丸の如く蹴り飛ばされた部分から電流が捻じ込まれていた。神経という神経に伝うと、ゴッドの脳波と衝突した。

 「……――!!」
 「空気抵抗の破壊。重力の一時的破壊。酸素の破壊。左脳の一部破損を促し、思考・理解・構築力の低下」
 「あ……ッ、ぐ、ぅ……うっ!」
 「あなたの身体が人間と同じでよかった」

 速度を増していく。宇宙へ向けて、落下する。空に浮かんでいた、ただの点だったものたちは無遠慮にも主へと牙を剥けた。意思のないそれらは容赦なく地上を目指す。


 「こ……な、ぉと……意味、な! ――はっはッ、ぁっは!」


 そのとき。
 雲を突き抜けていく――――ロクとゴッドの身体を、ついに宇宙の使者たちが横切った。

 第一陣の大軍が急降下する。二陣め、三陣めの使者たちが次々と攻め入ってくる。


 ――――次の瞬間。



 「お願い――――――お義父さん!!!!」



 彼は、名を呼ばれると明らかにする。――ああ、と小さく零したそれをキールアは聞き取れなかった。
 息子の首元を掴み上げたその手で、唱える。



 「――――――、第十二次元発動」



 この世で最も早く前人未踏を叶えたのは、彼だ。



 「絶絶ノ――――――――禁忌・異鎧閣」


 
 エルフヴィアの、――――そして隣国も王国も大国も、祖国のメルギース、ドルギース、すべてを繋ぐ。
 
 大空。

 地球の裏側に至るまで――――大気圏を"封鎖"する。目に視えない『絶壁』が、青の球体を覆う。



 「もうなにも地上には落ちない――!!」

 「ッ、ぁ――――!?」
 
 「両次元の扉、発動――――――、"風雷皇ふうらいこう"!!」



 人間として手にした力。神として授かった力。
 相反するはずのそれらが――――、手を取り合った。



 「――――――第二覚醒!!」



 彼女の描いた最高傑作。
 息衝く間もなく鍵をこじ開け、扉の奥へ。無限大のそらへ往く。



 「――――――"天神皇てんじんこう"!!!!」



 ――――轟雷と暴風を従え、ロクアンズは猛々しく宇宙そらへ哭いた。




 「これで終焉さいごだ――――【GOD】!!!!」


 「ぁ……ッああアっあ、――――――ッくそおおお【FERRY】いいいい!!!!」



 






 「――――――――ロク!!!!」



 心音が聴こえる。
 心地よくて、よく知っていて、――――大好きな彼の声がした。



 「ロク、俺は、お前と」
 

 《――ねえ。お兄ちゃん。聴いて》



 どこからともなく詩が聴こえてくる。
 心弾むような、よく知っていて、――――大好きな彼女の声がする。



 《あたしたちはまた逢えるよ》

 「また……逢える?」

 《だってそうでしょ? ねえ覚えてる?》

 「なにを」

 《――千年前にもあたしたち、運命的な出会いをした》

 「……」

 《王子と神様だった。……結ばれなかった。でも、こうして、また逢えた》

 「……運命的、か。皮肉なもんだな」

 《また運命を背負い生まれて》

 「また運命に抗えばいい」

 《……だからきっと、大丈夫!》



 不思議だ。
 彼女が「大丈夫」と詠うのだから、きっと、大丈夫。





 「――――――またね、レト。今度は」










 壁の向こう。天空を覆い尽くす惑星の欠片たちが、ずっと壁の向こうで――――激しい衝撃を繰り広げた。
 空と衝突する。壁を隔てて浮かぶ雲に隠れていたのに、視界を焼くような壮絶な光の塊が、太陽の光をも喰らい潰した。
 このとき。だれもが目を閉じた。エルフヴィアの大地が、太古の砂や塔が、その余波に呑まれていく。



 「……――」



 永久のようにも、錯覚した。瞼から熱が引かない。
 輝かしい光に包まれ、次第に、――――それは、あたたかくなっていった。


 「……え……」
 「……こ、れ……」
 「――――ゆ……雪……?」


 肌に触れると、じんわりと溶けた。仰げばそれらは視界に飛びこんでくる。

 蕭々と降り注ぐのは、雨ではなく、雪だったのだ。


 レトヴェールの背中から、ざっと砂を蹴る音がした。


 「……レト……」
 「……」
 「これ……もしかして、ろ、ロクが……――っ」


 滴に雪が交じると、それが頬をすべった。顎のあたりからぽたぽたと、雨が落ちる。キールアの金の瞳が揺らいでいた。


 「ほんと、に……っ本当に、ロク、ねえレト! ロクは、ロクには……っ――もう、会えないの……!?」


 キールアは膝から崩れ落ちた。言葉にならない叫びが、悲涙が、地面を叩く。雨は止まない。
 空から降り注ぐ雪が、あまりにも温かくて、――親友の、無邪気な笑顔を思い出してしまう。

 号哭が、空へ捧ぐ。彼女の姿はどこにもなくて、彼女の声はどこからも聴こえなくて。彼女を想う人間たちは謳う。空の彼方へ、届け届けと。初めて、神様に祈りを捧げた。愛しい神様の名を呼んだ。


 「いやだよ、レト! 私ロクに、なにっも、ぁにもわたし……っ!」
 「キールア」
 「……え?」
 「ロクに、まだ言ってないことがあるだろ」


 レトは顔を上げる。金色の瞳はしっかりとキールアを見据えていた。
 耳元に手を当てると、通信機にスイッチを入れた。



 レトは立ち上がる。脚は震えても、足は揺らがぬように。
 果てしない青空を仰ぐ。



 「ロクアンズ――――――――!!」



 ――――届け。ノイズの先へ。同志の心を焚きつけるように。
 彼女のいるところまで、聴こえるように。



 「――――――――誕生日、おめでとう!!!!」



 キールアの頬に、一筋の涙が伝った。
 響け、響け。届け。どうか。神様へ祈りが届けばいい。
 人間たちはみな、天へ哭いた。




 「っ……おめで、っと――――誕生日、おめでとうロク……っ!」




 ――――生まれてきてくれてありがとうと、伝えたくて。

 彼女がしてくれたように、そう、声に想いをかけた。










 1022年12月25日。
 十年前のこの日も、おなじような雪景色だった。

 レイチェル村に訪れた――――優しい雪の名を。
 覚えているだろうか。


 その名はロクアンズ・エポール。


 人間を愛し愛された、この世でただ一人の神様であり。
 ――――――最愛の妹の名前。








 メルギース歴1032年12月25日。本日未明。
 第二次神人世界大戦は、人類側が勝鬨を上げ、終戦を迎えた。


Re: 最強次元師!! 【最終話更新】※2スレ目 ( No.50 )
日時: 2017/11/13 00:00
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw
参照: 2017年 11月13日

 
 
 ―Epilogue―


 書類や資料の山に囲まれて、彼は今日もペンを走らせている。気分転換にと淹れたはずのコーヒーだったが、とうに冷めてしまい、ちりが浮かんでいた。
 金の髪を掻き回す。無造作にペンを抛った。
 どうも気分が乗らない。逐一報告書を提出しなければならないという、その段取りがレトヴェール・エポールは苦手なのだ。

 「レト、いる?」
 「! キールアか。どうした?」
 「副隊長が呼んでこいって……ってなにこの書類の山。もしかして、また報告書溜めこんでるの?」
 「仕方ないだろ、苦手なんだから。……班長が」
 「もー! 実のお父さんでしょ? いくら頭がいいからって、ただ研究に尽力してるだけじゃだめだよ?」
 「わかってるよ」

 レトは縒れたままの白衣を翻し、紙と本とに溢れ返る研究室を後にした。



 キールア・シーホリーと並んで廊下を歩くと、二人とも白衣を羽織っているせいか背景の白い壁と同化する。しかしキールアの白衣はいつも清潔に保たれているため、レトとは異なる部班に所属しているのだと一目でわかる。もっと言ってしまえば、その白衣の清潔さが、彼女を医療部班の一員であることを示している。

 「あ、エン! サボコロ!」
 「よーお二人さん! 昼間っからデートか!?」
 「おなじ用事だってわかってて言ってるでしょ、もう!」
 「なに、お前らも呼ばれたのか?」
 「ああ。至急との報せで仕事も中断してきた」
 「なにしてたの?」
 「フィーチャーの先にある森で、害虫の駆除をな」
 「応援要請でセルナと交代した!」
 「なるほどな」
 「にしても便利だなーあの通信機! ボタン押せばこう、ガラスのなんかあれが出てきてさ! 通信先のヤツがどこいるかわかっちまうんだもんな!」
 「うちの部班でかなり助けになっている。レトが開発したと聞いたが」
 「まあな。前に親父が開発した『同位重次元システム』があっただろ。あれの資料があったから読んでたら、思いついた」
 「……ふーん」
 「……なんだよ」
 「やっぱり、ちゃんと好きなんじゃない」

 キールアの黄金色の髪が靡く。結わう位置を変えたのはいつ頃のことだっただろう。昔は高い位置で結んでいたのに、両耳のすぐ下で紫色のリボンを施すようになった彼女を目の前にすると、時間の経過を著しく感じてしまう。



 「やあ、みんな。仕事で忙しいところ悪いね」
 「いいえ。セブン副隊長。気にしないでください」
 「それで副隊長、どういった件で?」

 『副隊長室』と書かれたプレートの下をくぐると、部屋の中にはレトのもといた研究室と相違ないほど紙類が散らばっていた。
 セブン・コールという男が一部班の班長だったころからその性は変わっていないらしい。きっと彼の幼馴染であるフィラ・クリストン補佐がもうじき片付けにやってくるのだろうと推測できる。

 「実は調査に行ってほしいところがあってね」
 「調査? 調査依頼なら援助部班のエンとサボコロに任せるのがいいかと思うけど」
 「そこは古い研究施設でね。どこの組織の所有物かもわかっていないし、ちょうど村と町との境界線にあってどちらも所有権が曖昧なんだ。そこで、援助部班の二人はもちろん、科学部班のレトヴェール君と医療部班副班長のキールア君にもそれぞれの観点で調査を進めてほしいんだ」
 「どうしていまになってそれを?」
 「どうやら最近……その施設から妙な機械音が響いているらしくてね。最近問い合わせが止まないんだ」

 セブンは眉間に皺を寄せると、そこを指で摘まんだ。睡眠不足だろうか、目元もやや黒ずんでいる。もともと自由奔放な性格をしている彼にとって、いま現在の“副隊長”という地位はまだ足元が不安定な状態なのかもしれない。
 レトはセブンの腰かけているデスクから紙束を取り上げた。

 「問い合わせ、ね」
 「君たちなら、こういう危険度の高い場所での経験値も人一倍だしね」
 「あのなあ……」
 「レトにとっては人の百倍くらい経験してそう」
 「異議なし」
 「……。べつに異論はないけど、いままで通りとはいかないだろ」


 掴んだ紙束が、くしゃりと折り曲がる。依頼内容の欄に『調査依頼』と書かれた文字以外のものを、――――ここ2年の間は、まったく見なくなった。



 「俺たちはもう、次元師じゃないんだから」



 紙束を握りしめたまま、レトは部屋の扉を開けて出て行った。彼に続いてほか3人も副隊長室をあとにする。
 それぞれが、――――異なる部班の衣装を翻して。








 ――――――第二次神人世界大戦の終戦から、2年。

 あの日を境に、悲劇の千年間がまるで嘘だったかのような平和な日々が訪れた。元魔のような怪物の目撃情報も途絶え、そしてこの世界から「次元の力」がなくなったことによって犯罪の件数も減りつつある。
 未だに王制を敷いた国では貧困化が激しくなっていたり、内争の絶えない国もあるなど、人間による社会問題は消滅しそうにない。


 それでも、世に蔓延る非科学的な現象は一切の痕を絶った。


 それに伴い、蛇梅隊の総本部では「戦闘部班」という組織が解散の一途を辿った。もとの設立理由が神族並びに元魔の盗伐を目的としていたため、それが根絶したとなると戦闘部班という組織の存在理由がまるで失われてしまう。継続するとなるとかえって、討伐対象が明確となっていない段階での武装集団の組織化として、政府に目をつけられることとなってしまうのだ。
 戦闘部班の元班長であり、蛇梅隊現副隊長のセブンは迅速に解散を促した。


 そして、現在は。
 メルギースの英雄レトヴェール・エポールが科学部班へ。おなじくキールア・シーホリーが医療部班へ。そしてエン・ターケルドとサボコロ・ミクシーの二名は援助部班へと、異動を希望した。
 そのほか戦闘部班に所属していた次元師たちも各々、ほかの部班や支部に異動になったり、止むを得ず蛇梅隊から脱退し、自国に帰った者もいる。

 嘗て戦場を共にし、背を預け合った仲間たち全員が一同に会する機会は、もうない。


 本部の門をくぐると、サボコロが先陣を切って駆けだす。未だに仲の悪さが改善されていないのか、エンは背負っていた弓を携え矢を引くと、サボコロの脳天に狙いを定め、放った。
 鋭い痛みにサボコロが跳ねると、隊服の袖を捲り上げながらエンにガンを飛ばす。
 門をくぐるより先に、そんな二人のやり取りを眺めていたキールアは足を止めた。

 「レト、ひとつ聞いてもいい?」
 「ん」
 「今年の誕生日会で言ったこと覚えてる?」
 「? なんだっけ」
 「『――――千年延命できる薬がほしい』って」
 「……」
 「なんで……あんなこと言ったの」

 雲ひとつない晴れ空に、鳥が二羽、じゃれ合っていた。追いかけ追い越し仲睦まじく、空の彼方へと消えていく。

 「……ロクが、言ってたんだ」
 「……え」
 「今度は」


 またね、と消えた。
 大切な人と引き換えに得た、平和な空の彼方へと。


 「――――千年後の未来で、ってな」





         *



 風が吹く。眼下には、悪意のない喧騒が広がっていた。この街の人たちは幸せに暮らしているのだろう。耳を澄ませばすぐにわかる。
 短い髪がそよ風に揺らされる。草木に混じり、悠と空を泳ぐ。



 季節は冬であるのに。
 なんて穏やかな日和だろうと、瞳を細めた。








 ――――――――若草色の髪が、遥か彼方へ運ばれていく。








                        ―第一幕 完―
 
 

Re: 最強次元師!! 【最終話更新】※2スレ目 ( No.51 )
日時: 2017/11/13 00:20
名前: 瑚雲 ◆6leuycUnLw

 
 
 ■あとがき


 皆さんこんにちは。作者の瑚雲です。
 いつもいろんなところでお世話になっております。


 早速ですが、この度「最強次元師!!」は完結を迎えることができました。


 今日からちょうど8年前の11月13日は、小説カキコのシリアス・ダーク板で初めてこの作品を投稿した日になります。
 「シリアスじゃあ……ないな!」と思い至り、すぐにコメディ・ライト板に移動したことを覚えています。


 8年間も書いてきて、まず思ったのは
 「8年間、第1話から読み続けてきた人いないよね!!?!?」
 という率直な感想でした(あほ)


 実際にはいらっしゃらないかと思っています。8年前なんてまだ小学生でしたし、右も左もわかりませんし、8年書いてきてもプロではありません。素人の文章に途中で飽きもするし、性に合わなければ読むのをやめたりもする。

 それでも、瞬間瞬間にはきっと読んで下さっていた方々がいて、それが8年間で途切れることはなかったんじゃないかって。いつもだれかひとりでも、読んで下さっていたのではと思っています。
 それはとても嬉しいことですし、もっとがんばろう! って、素直に思うことができました。
 本当にありがとうございました!



 ということも踏まえまして。
 実は、本日中に「最強次元師!!」の完全版のスレッドを、この掲示板に建てようと思っています。

 このスレと、前のスレで書いてきたものは終わりを告げますが、8年の間、執筆しながら設定や世界観を繰り返し練り直したりもしました。そして設定上の矛盾や、物語の曖昧な部分も多々残っているからです。
 それはそれでいいのかもしれませんが、中途半端なことをしたくない。もっと深いところまで考えて、書き綴ってあげたいという私のわがままです。
 長編というのもあって大変なのは、もう承知の上です!(笑)



 長々と綴ってまいりましたが、この辺で筆を置こうと思います。
 そして、エピローグをご覧になった方はもうお分かりかと思いますが、


 この度「最強次元師!!」は、第一幕の完結を迎えました。


 完全版の執筆と、
 そして第二幕に向けてがんばっていきます!(*'▽')



 一話でも一度でも、一瞬でも。
 私の文章に目を通してくださったすべての方へ、感謝の言葉を述べさせて頂きたいと思います。
 いままで本当に、ありがとうございました!



                  瑚雲


 


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