コメディ・ライト小説(新)

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フリーバトラーズ
日時: 2018/01/04 16:00
名前: MESHI

はじめましてー!

MESHI…読み方はそのまま「メシ」です、はい。

でも、そこまでご飯が好きということでも、塩にぎりさえあれば生きていけらァ!!というわけでもありません。1日3食きちんとバランスよく食べます(何の話だ)。

最近、縄跳びをはじめました。後ろとびをしていると、目に縄がバチィ!と直撃し、もう二度と縄跳びはしないと心に誓いました。開始5分のことです。

黙っていると完全に忘れ去られる圧倒的存在感のなさのMESHIがお送りします。

所々文がおかしくなったりすることがあるかもしれませんが、そこのところは生暖かい目で見守ってやってください。(MESHIは存在感が薄い故、メンタルは強いです。いくら存在を忘れられてもへこたれません。ステンレス製の心。)


この小説はオリジナルです。
そしてコメディ・異能力モノです。
たまーに作者の生活記録があります。

1話1話がちょっと長いですが、比較的サラッと読めるかなあ…と思います。

よろしくお願いします!








≪コメントありがとうございました!≫
四季さん


【追伸】

作家プロフィール作りました。書いてある小説の上の方にある「参照」から飛べます。









第1章:『ようこそ、フリーバトラーズへ!』>>1
第2章:>>30

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Re: フリーバトラーズ ( No.44 )
日時: 2018/01/17 17:38
名前: MESHI

「お?新入りちゃんじゃねえか」

カノエの身支度を病室の外で待っていると、廊下の角から蘇比ソヒがひょこっと顔を出した。

「うぎゃああああああ!!!」

お化けに会ったような反応をする緋。

「…そんなに驚かなくてもいいだろ。」

「あ、緋りんだー!」

続いてトキが走ってきた。

「…うん…緋りん…うん…」

未だあだ名に納得のいかない様子の緋。

「おい鴇!コーラ持ってる時は走るなっつっただろ!?」

パンパンに張ったボトルを取り上げる蘇比。

「庚は?」

「中にいますよ。着替え中ですけど。」

緋が病室の方を指さす。

「あ~そういやあ移動の日だったな…おい鴇、これ以上暴れるとパフェもう作らねえからな!」

暴れまわる鴇の頭を押さえつけている様は、従兄というより「おかあちゃん」と言った方がしっくりくる。

鴇はそれを聞いて急に大人しくなった。

「ソッヒーのケチー。」

「何か言ったか」

「ん?言ってないよー?」

無邪気な笑顔を向ける鴇。

そんな不毛なやり取りをしていると、病室の扉が開いた。庚の手に握られた中国服はもはや服と言えるのかすら微妙なほどボロボロである。

出てきた庚を見て吹き出す3人。

「庚…なんだその服…ぶはっ」

思い切り不機嫌な顔の庚。

「Rさんに服買ってきてもらったんです…」

哀れみの目をしながら庚の肩に手を置く蘇比。

庚は『他の人に頼めばよかった』オーラを出しながら自分の着ているTシャツを見下ろした。

黒い服の中心にでかでかと、真っ白な歯を見せて笑う筋肉ムキムキの男性がプリントされてある。筋トレグッズのテレビショッピングに出てきそうである。

「これが一番安かったって…。」

ズボンは何処で見つけてきたのだという感じのシマウマの模様。不要なポケットがこれでもかとくっついている。

「あいつのセンスどうなってんだよ…。」

「一刻も早く服を着替えたいので行きましょう。」

「ああ」

愉快な服を着て最高に不愉快な顔をした青年は、その日の病院内の空気をザワつかせた。










  ◇  ◇  ◇








石畳を颯爽とピンヒールの靴で歩いて行くアオイ。ウェーブのかかった青い髪が揺れる。

体にぴったりと沿ったスーツと、その険しい表情から近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、その隣では薄い褐色の髪をした少年がへらへらと笑いながら歩いている。

「どうしたの?いつにもまして不機嫌そうに。」

少年__翡翠ヒスイが言った。

しかし碧はその問いかけには答えず、より一層眉間の皺を深く寄せた。

楓花フウカはまだ見つからんのか。」

「そうみたいだねー。」

翡翠はまたか、という呆れの混じった表情をして投げやりに返す。

「もういいんじゃない?楓花だって催眠が解けてるのなら、もうぼく達の記憶は残ってないでしょ。」

「…そういう問題ではない。」

碧の目に、一瞬細い光が揺らいだ。しばらくコツ、コツ、という足音だけが響く。

翡翠は、もう話は終わりかと思い、街の様子に視線を移した。

数多くのビルが立ち並び、その隙間にある申し訳程度の大きさの公園で小さな子供が数人遊んでいた。一つ向こう側の交差点を大型トラックが横切り、青い空に1羽の烏が羽ばたいた。

ここは地上ではなく、飛行船の中だ。

と言っても、ただの飛行船ではなく、組織の中枢部の誰かが能力で全長何kmにも及ぶ機体を浮かせているらしい。

その大きさ故、今や世界中の人々に目撃されている。これがどこかの国の上を移動するとなれば、それなりに大きなニュースになっていた。

この飛行船は何の為の物なのか、知る者はこの飛行船に乗っている者だけだ。なぜなら、この飛行船を降りて地上へ帰った者は一人残らず組織に消されるからである。

「楓花を探せ。…そして必ず連れ戻せ。」

碧が、唐突に唸るように言った。歩調が速くなり、翡翠も歩くペースを上げた。

「まず探さなきゃいけないでしょ?…どうやって探すの?」

チラリと碧を見上げる翡翠。

「この前の侵入者が怪しい。Bossも、あれから連絡が取れない。」

「…うーん…でもそれ直接楓花には関係なくない…?」

碧がヒールの足を強く踏み鳴らした。翡翠がびくりと肩を震わせる。

「間違いない!侵入者が出たと同時に私は楓花を見たんだ!」

鬼の形相の碧が、立ち止まって翡翠を睨む。翡翠は一瞬固まったあと、ふーっと息を吐いた。

「…そっか。」

ブツブツと独り言を始める碧。

「そうやって愛が重いから逃げられたんじゃないの?」

「うるさい。」

やれやれといった感じに肩をすくめる翡翠。

「じゃ、とりあえず侵入者を追えばいいんだね。」

翡翠がしゃがみ込んで自分の影に触れる。

すると影はひとりでに動きだし、地面から這い出してきた。

全身真っ黒な巨体。大きすぎて下半身は地面に埋もれているが、立ち上がれば一戸建て住宅ほどは裕にあるだろう。目の部分だけがランプが埋め込まれたかのように光っている。



翡翠の能力は『影人形』。

影を立体にして、操ることができる。

実体化させた影は、自分のものなら意思疎通が図れ、視覚と聴覚が共有できる。

その他、植物・他の動物・物などの影も操ることができるが、作った『影』は日光や火に弱く、最長でも20分しか存在できない。



「これの持ち主を探して。」

翡翠がポケットから銃弾を取り出した。

「何だそれは」

「瑠璃ちゃ…くんっていう、すごーくすごいスナイパーからのプレゼント。侵入者の1人だと思う。」

「…早く楓花を見つけろ。」








Re: フリーバトラーズ ( No.45 )
日時: 2018/02/06 17:35
名前: MESHI







病院の屋上。凜乃は薄桃色のカーディガンを羽織り、風雨に晒されてささくれ立った木のベンチに座っていた。

開く度にキィ、と音がなる扉が例外なく音をたてて開き、Rが顔を覗かせた。凜乃は、Rが持っている2本のホットココアのカップを見てパッと顔を輝かせた。

「おっ、気が利くねえー!」

「何偉そうに言ってるんだ、150円。」

両手が塞がっているので足で扉を閉める。思ったより勢いがついて大きな音をたてた。

「ケチー。可愛い女の子にはココアくらい奢るのが礼儀ってもんでしょ。」

凜乃が口をとがらせながら財布を開く。

空は数日ぶりに晴れていたが、吹いてくる風は相変わらず冷たかった。

「…寒いねえ。」

湯気の立つカップを両手で包んでほうっと息を吐く凜乃。ちらちらと目線をRのマフラーへ流す。

「…使いっぱしりの次は追いはぎか」

Rは仕方なさそうにつけていたマフラーを外して凜乃の頭に載せた。

「やっさしーい!こりゃ世の可愛い女の子達イチコロだわー!」

「うるさいぞ。」

横に目を向けるR。

寒さで鼻の先を赤くして笑っている凜乃とばっちり目があった。___子供の頃から時が止まっているかのように、笑う顔は変わっていない。

なんとなく目を逸らすR。

「…そうそう、これ見ろよ。」

咳払いをしてから話題をすり替えた。

Rがズボンについている一際大きなポケットから、2枚の板を取り出す。

「何それ?」

2枚それぞれ、少し丸みを帯びており、一端がギザギザになって木の部分が露わになっている。

「ほら。」

Rが凜乃の目の前に面が来るように腕を伸ばす。

割れ目のところをきっちりと合わせると、今までRのつけていた、見覚えのある面の形になった。

「あ…もしかしてあの時割れちゃってた?」

申し訳なさそうに眉をハの字にする凜乃。しかしそれは一瞬だけだった。

「でもそのサングラスはないと思うよ。」

Rがかけている色の濃いサングラスを指さしてふき出した。

「…反省の色をもうちょっと見せてもいいんだぞ。」

鼻をならすR。わざとらしいアイドルスマイルを見せる凜乃。

「あのな、俺がこんなだっせぇ面つけてるのには眼を見られたくないのもそうだけど、」

「あ、ダサいっていう自覚はあったんだ。」

という凜乃の呟きは聞き流す。

「この目は『見えすぎる』。だから面なりサングラスなりで覆わないと、昼は明るすぎるんだよ。」

Rが自分の眼を指さした。

「例えるなら、今俺がこれを外したら受けるダメージは普通の人間が太陽を直接見たときと同じくらい。」

「わーお、眩しーい。」

凜乃にジトッとした視線を送るR。

「異能って便利かと思いきや、むしろ不便なことの方が多そうね。」

「俺の場合、不便しかないな。」

凜乃はもう興味をなくしたのか、ふーん、と軽く流す。そして何か思い出したのか、ポンと手を打った。

「あ、そういえばさあ、昨日ね、」

「おい」

頭上から低い男の声がした。屋上には凜乃とRしかいなかったはずだ。

いつの間に屋上へ来ていたのだろうか。Rが少し驚いていると、男はまた不機嫌そうに口を開く。

「そんなところで何をやっている。そいつは誰だ。」

Rと凜乃の間にぬっと太い腕が伸びてきて、凜乃の肩にのせられた。

背後には、ドラム缶のようにずんぐりした体系の男が立っていた。

紺色のスーツの腹の部分は今にもボタンが弾けそうなほど張っており、ズボンの丈も合わないらしく、少し折られている。

趣味の悪いネクタイが、太い首をしめつけていて窮屈そうだ。口元には、短く切りそろえられた髭が生えている。

東洋風の彫りの浅い顔立ちの男であった。

「…?」

誰だこいつは___不思議そうな顔で凜乃を見るR。

ピカピカの革靴が凜乃へ歩み寄った。

そして男は凜乃の腕を乱暴に掴み、凜乃を無理矢理立たせる。

「おい貴様、人の女に何ちょっかい出してやがる。」

座っているRを睨み、凜乃の肩を抱き寄せる男。凜乃は俯いて黙り込んだ。

___いきなり何を言い出すのか、この男は。

「はあ?お前こそ…」

「りっくん。」

凜乃が静かに首を横に振った。今まで見たこともないような、悲しげな顔をしていた。

それをみて、Rは冷静になってゆっくりと立ち上がった。男の傍へ歩み寄る。

「失礼ですがどちら様で?」

男より10cmほど身長が高かったので、自然と見下ろす形になった。

「人の名前を聞く前に自分が名乗ったらどうだ。そんな変なサングラスかけてふざけているのか?」

Rの顔が引き攣る。サングラスを乱暴に外してポケットに入れた。

「すいませんねぇ、不快に思われたようで。」

サングラスを外したせいで見えていた景色が一気に明るくなり、目を細める。自然と睨む形になってしまった。

その眼は鏡のように輝き、男の姿をはっきりと映している。

男は腰が引けたようで、先ほどまでの威勢とは裏腹に急に目を泳がせ始める。

「…その眼…。」

「自分はRって呼ばれています。あなたのお名前は?」

そこまで言って、表情を柔らかくするのを忘れていたRはにっこりと笑った___つもりになった。

実際には、目はそのままなので完全に臨戦態勢にしか見えなくなった。

男は後ずさりをしながら早口で言い放つ。

「俺はシュウ、周 浩字ハオユー凜乃こいつの婚約者だ」










作者コメ:遂にインフルになってしまいました…。手洗いうがいもしていたのに…。睡眠不足のせいでしょうか。
というわけで、現在自宅待機中です(笑)頭が痛いです。

皆さん、体調には十分注意してくださいね!私みたいにならないように!!



Re: フリーバトラーズ ( No.46 )
日時: 2018/03/03 14:31
名前: MESHI


婚約者。

Rは数回それを頭の中で繰り返した。

ショックを受けなかったと言えば嘘になる。何故自分がこんなにも悲しい気持ちになっているのかは、考えるまでもなかった。

凜乃の顔をちらりと見る。目を伏せ、唇を真一文字に結んでいた。

___何故教えてくれなかったのだろう。何回も会ったのに。

教えてくれていたところで、この胸の痛みは変わらなかっただろうが。

Rは周へ視線を戻した。

「結婚式は来月。お前も来たければ来てもいいぞ。」

髭面の口元が歪む。黄ばんだ前歯が見えた。

「やめてください。」

感情の籠っていない、細い声がした。

「なんだ、恥ずかしがらなくてもいいんだぞ。もっとその美しい顔を俺に見せろ。」

腕の中の凜乃の顔を覗き込む周。しかし周に向けられたのは、そんな恥じらいの籠った瞳ではなかった。

「…な、なんだその目は。」

大きな瞳には鋭い光が宿っていた。あと1秒でも触れていようものなら、瞬時に切り裂かれそうな、そんな殺気にも似た。

「私はあなたの人形じゃない。何回も言いました、触らないでください。」

周が一瞬石のように固まる。そして恐る恐る凜乃の肩から少し手を離すと、凜乃はその手を汚い物でも触るように振り払った。

第三者からでも、この婚約には『愛』がないことはすぐに見て取れた。

歯ぎしりをする周。顔は怒りで赤くなっていた。

凜乃は俯いたまま何も言わない。

「ふん…そんな態度を取れるのも今のうちだ。」

凜乃がぎゅっと唇を噛む。その様子を見て周はニヤリと笑い、再び口を開いた。

「お前と俺の婚約も、そっち側が勝手に決めたんだろう?俺は『仕方なく』のってやった。そんな態度を取っていたら婚約も取り消しにしようかねえ…。」

周は鼻で笑い、踵を返して階段への扉へ向かった。

「もしそうなれば、お前もお前の家族も、終わっちまうだろうなあ。仲良くどこぞで野垂れ死にな。」

くくく、と喉の奥で笑う声が聞こえた。

「よーく考えておくことだ…。」

扉が閉まる時に、細い目が隙間からチラリと見えた。

Rは周と目が合った瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われた。

「そこの『異常者』もな。」

大きな音をたてて、扉が閉まる。



頭の中で、声がする。子供の声だ。

『化け物』__『異常者め』__『出ていけ』___

ああ、そうだ。

いくつもの人の影が、蹲った自分に近づいてくる。

『なんだその眼は』__『気持ち悪い、その眼で見ないで』___

周りの人々から向けられるのはいつもあの視線だ。蔑みや恐れが含まれたあの視線。

『呪われてるんだよ』_____『消えろよ』_______

確か、この後小石が飛んでくるんだ。そうそう、中には大きな石やら尖った石やらが混ざってて痛かったっけ。

殴られて、蹴られて、川に落とされる。

茶色く濁った川の音が聞こえる。あの生臭い臭いが鼻を通り抜けた。

俺が何をしたっていうんだ、どうすればいいんだ。そう何度も思ったけれど、答えは一向に出てこなかった。

子供の頃は自分の眼が嫌いだった。大嫌いだった。

この眼を潰して異能をなくしてしまえば、あの視線を向けられることはないのではないのかと、本気で考えたこともあった。でもそんな勇気なんてなかった。

面をつけ始めたのはかなり昔からだった。面をつけていると『おかしな子』だと思われて、また変な視線を向けられていたけれど、つけていない時よりはずっとましだった。



___いつからだろう、自分の異能を悪いものとは思わなくなったのは。

でもそれもただの幻だったのかもしれない。たった一言で現実に引き戻されるくらい、不確かで脆い。



「気にしなくていいよ、りっくん。」

凜乃の声で現実に引き戻される。隣で凜乃が優しく微笑んだ。

ただその微笑はいつもとは違い、不自然な感じがする。

こんな時でさえ、自分は凜乃に気を遣わせる。Rは自分が情けなかった。

「…気にしてない。」

こんな事、何度もあった。子供の頃は毎日のように泣いていた。

でも___

小さい頃、凜乃は溺れているRを自ら川へ飛び込んで助けてくれた。凜乃は、泳ぎは苦手だったのに。

茶色く濁った流れの早い川へ迷わず飛び込み、手を差し伸べてくれた。

一人で泣いているRを慰めてくれた。何度も、何度も。決して見捨てはしなかった。

「なあ、凜乃。」

「なあに?」

今こうしてRが居るのは、あの時凜乃が居てくれたからだ。

「何があったのか、聞かせてくれないか?」

心の中だけで続けた。___俺にできることなら、力になりたいんだ。今度は俺が、凜乃を助ける。

Re: フリーバトラーズ ( No.47 )
日時: 2018/04/02 15:46
名前: MESHI


居酒屋街の裏路地。そこは、表の電飾の光が僅かにさしこんでくるくらいで、足元も良く見えない。

空は曇っていて、月はおろか星さえ見えない。

瑠璃はそんなところを独りで歩いていた。

数人の酔っ払いに絡まれ、逃げるように路地裏へ滑り込んだ。人を探しているので、こんなところで時間を潰すわけにはいかない。

追手がいないことを振り返って確認し、角を曲がる。曲がってしばらく行くと、そこには瑠璃の背丈の倍以上あるフェンスがあり、道を塞いでいた。

そして、その向こうに見える地面に、蛍光ピンクのパーカーのフードを頭からすっぽり被った男が座っている。頭からパーカーと同じ色のウサギ耳が生えている。

「や、燐。」

唐突に名前を呼ばれた燐は一瞬警戒したが、すぐに声の主を見つけて肩の力を抜いた。

「やっほー、瑠璃ちゃ…くん。」

不快感を顔全体で表現するかのように眉を歪める瑠璃。

「まったく…そんな情報は仕入れなくていいんだよこのヘボ情報屋。」

「そのヘボ情報屋に会うためにわざわざ一人で飲み屋街に出向く健気なキッズはここかな?」

フェンスに背を預け、燐がニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる。

「燐が営業場所を変えたらいいだけだよ。」

「う~ん、ちょっと無理ー。」

燐のやる気のない返事。

雑談はこれくらいにして、と瑠璃が話題を変える。

瑠璃が声を小さくして言う。

「コンピュータウイルス『Ω』について調べてほしいんだ。」

それを聞いた瞬間、燐が気まずそうに顔を背けた。

「あ~…。うん…。」

歯切れの悪い返事に、瑠璃がイラついた声で聞く。

「何?」

「まあいいか。おいらは情報屋、商売道具じょうほうをどう使ってもいいわけだし。」

燐が独り言のように早口で呟き、フェンスの向こう側の瑠璃に視線を戻した。

「4年前、腕のいいハッカーを紹介しろっていうお客さんが来たんだ。」

「ハッカー?」

ウイルスと関係ないじゃん___瑠璃が言おうとするのを制して燐が続ける。

「おいらはその時、あるハッカーを紹介したんだ。ウイルスを使ったハッキングが得意なハッカーを。」

瑠璃がそれだ、と言わんばかりにフェンスを叩く。ガシャン、と大きな音がしたので、燐が焦って瑠璃を落ち着かせた。

「そのハッカーが『Ω』を作ったの?」

「多分。そのあとメールが来たんだよ、感染したコンピュータにある情報を全部抜き取って、コンピュータを再起不能にする新しいウイルスができたって。」

『Ω』の特徴と一致する。瑠璃がその先を急かす。

「最初はそのハッカーが直接対象をハッキングする予定だったんだけど、依頼した人がそのウイルスさえ貰えたらいいっていうんでそのウイルスを買い取ったんだよ。かなり莫大な金をかけてね。」

「製作した人と頒布した人が別だったってことか…。」

瑠璃の頭の中ではどちらを先にグーで殴るか決定戦が繰り広げられた。

___とりあえず被害を広めたのは頒布した方だからそっちが先かな…とひと段落ついたところで燐に別れを告げようとすると、燐が意味ありげに手招きをした。

既に小声でも聞こえるほどの距離にいたが、耳打ちができるまで距離を縮める。

燐がさらに声を小さくして囁く。

「先月、その4年前のお客さんがまた来たんだ。依頼内容は何だったと思う?」

「リピーターかな。」

瑠璃が適当に返すと、燐が眉を潜めて言った。

「4年前のハッカーの居場所を突き止めろ、だって。最近『Ω』を世界に広めて色々悪さしてるらしいから、自分の事が公にならないように口封じに…バァン。」

指でピストルを作って射撃の真似をする燐。

「わぁ、おっかなーい。」

顔が引きつったまま全く感情の籠っていない声で瑠璃が呟く。

「そういうことに加担するのはおいらの美学に反するんだけど、脅されてさあ。」

ブツブツと文句を言って口をとがらせる。切羽詰まった感じではないので、さほど深刻には考えていないのだろう。

そもそも燐の美学など、どうせ金次第でどうにでも曲げられるようなものだろう。瑠璃はふうん、と軽く返した。

「ハッカーの名前は?」

「メモの準備はいい?」

メモなんて持ってるわけがない。瑠璃がジーンズのポケットを探ると、しわくちゃになったレシートが出てきた。これで代用する他ない。

「えーっと、ジーエーティーティー…」

燐が宙を見つめて1文字1文字絞り出すように呟く。

瑠璃がその綴りをメモする___『Gatto_randagio』…野良猫。

メモ代わりのレシートを2つに折って、パーカーのポケットに仕舞う。

「で?『Ω』について調べたいっていうのはフリーバトラーズが関係してるの?ね、瑠璃ちゃ…くん。」

「しつこい。」

燐を軽く睨んで背を向ける。

「ねえ教えてよ~。フリーバトラーズ?ねえねえ~。」

「教えなーい。情報屋にそんなこと教えたらろくなことにならないもんねー。」

『Ω』の情報を手に入れられたのは嬉しいことだが、その4年前の依頼者側からしてみればとんだ迷惑だろう。__まあそんなことは気にしてはいられない世界だが。

振り返らずに手を振る瑠璃。もと来た道を歩き始めた。

「ケチ。」

「あ~ケチですよ~。それが何か~。」

瑠璃がふざけた口調で言う。顔を見ずとも口をとがらせる様子が目に浮かぶ。

燐はその後ろ姿が角を曲がって見えなくなると、またフェンスに背を預けた。ギシっと音をたててフェンスが軽く曲がる。

フリーバトラーズ。

調べてみる価値はありそうだ。

「あの仮面のお兄さんと、茶髪のヤクザっぽいお兄さん…いや、”R”と”蘇比”だっけ。…あの2人もフリーバトラーズなんだよねぇ…。」

燐の細い目が開き、金色の瞳がいたずらっ子のように光る。

「なかなか面白そうじゃん。」

燐は口笛を吹きながらその場を離れた。


Re: フリーバトラーズ ( No.48 )
日時: 2018/04/29 13:02
名前: MESHI


病院で目が覚めたとき、真っ先にカノエを襲ったのは悔しさだった。

兄を殺せなかったことと、そして真っ先にそんな悔しさを感じた自分への悔しさ。

あの頃とまるで変わっていなかった。兄も、自分も。



庚は浅葱の病院で、2日間眠りっぱなしだった。

頭があまり働かない。庚は寝転がったまま大きな欠伸をした。

窓から見える空は雲ひとつなく、壁の半分以上を占めるような大きな窓から暖かい日差しをもたらしてくれている。

太陽の香り、と書かれている柔軟剤を見かけたことがあるが、こんな香りなのだろうか。

体を動かそうとすると筋肉痛のような鈍い痛みが全身を走る。急を要するような用事もないので起き上がる必要はないのだが。庚は目線だけを動かして病室を眺めた。誰もいない。

不気味なほどなんの物音もしないが、庚にはそれが心地よかった。こんなに穏やかな気分になれたのはいつぶりだろうか。

つい数日前に大出血をしながら戦ったことさえ嘘のように感じるような平和な気分に浸る庚。

しかしそんな気分も長くは続かなかった。

ドア__廊下のほうからスキップの足音が聞こえてきたからだ。見舞いにスキップで来るような不謹慎でテンションの高い人は他に知らない___

「やあ!庚く…ぇぁあああ!!目が覚めたんだね!!!」

少女であった。

ドアを蹴破らんばかりの勢いで開けた少女は、腕に抱えていたフルーツの入った大きな籠を床に落として庚の方へ駆け寄った。

___フルーツはできれば床に落として欲しくなかった。

少女との再会、といえば聞こえはいいが、実際会ったのはたった3日ぶりだし、そこまで会いたくもなかったので全く感動しなかった。

「よかったよ!!庚くん!!痛いところはないかい!?」

少女は喜色満面で庚に抱き着いた。

「…貴女が抱き着いたせいで余計痛くなりました。」

苦虫を噛み潰したような顔で言う庚。

「ふ、相変わらずだね庚くん。目覚めて一番に会えたのが天使のような美少女で嬉しいんだろう!?いいんだよ、恥ずかしがらなくても!」

「殴っていいですか?」

「ダ・メ!」

いちいちウィンクを入れてくるのが余計に腹が立つ。

少女は床に落ちたフルーツを拾い上げて乱雑にバスケットに詰め直した。

「さ、お腹減っているだろう?お見舞いの品だよ。」

布団の上からフルーツの重みが伝わってきた。

「さっき床に落としましたよね?洗ってきてください。」

目を逸らして下手な口笛を吹く少女。

「そうだ、庚くん。」

「何ですか?」

「君には今回の任務の間休暇を取っておいたよ。ゆっくり休んでね。」

「…そうですか。」

フリーバトラーズに休暇なんて制度あっただろうか。庚の頭に一瞬そんな考えがよぎった。

少女なりの配慮なのだろう。そもそもそんな制度あったら皆使いまくってフリーバトラーズが機能しなくなる。

「じゃ!今は忙しいから、また今度。」

少女はもう席を立った。

「もう行くんですか?」

意外そうな庚の顔。少女のことだから、追い出すまでしつこく入りびたると思っていた。

「え!もっといてほしいのかい!?庚くん、やっと素直になったんだね!!分かった、しょうがないなあ、そんなにいてほしいならわたしが人肌脱いで…。」

「すいません、出て行ってください。」

少女が出て行った後の病室に、再び静寂が戻った。



休暇____

確かに休暇を取れるのは嬉しいことだ。平穏に過ごせる。

なのに、何だろうか、この疎外感は。





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