コメディ・ライト小説(新)
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- ある少女は、成長する事を拒むのです 。【終了】
- 日時: 2017/04/09 20:31
- 名前: SAKUYA (ID: z.RkMVmt)
どうも、皆さん初めまして!!SAKUYAという者です!!初の投稿となりますが、よろしくお願いします!!
今回は、学園モノを書こうと思っています。色々と不自然な点などあると思いますが、温かな目で見守ってくださると光栄です!
〜追記〜
2017:2:11 目次&キャラ紹介作りました。目次>>15 キャラ紹介>>16
2017.4.9 一旦物語終了 詳しくは>>24
〜第0話 はじまり〜
「学校なんて行きたくない。」
そう言ったら親は泣きそうな顔で私を説得させようとした。とても必死に。
「何よ、今まで私に興味示さなかったくせに。」
私はそう言って自分の部屋に引きこもった。それから二年半の間、私はずっと引きこもっていた。
「せめて高校だけは行ってちょうだい。」
引きこもってから一年半くらい経った頃、親が急にそう言った。どうせ高校に行ってもつまらないだけだと言ったが、入るだけでも良いと言われたので仕方なく近所の高校に入る事にした。不登校で暇だったので勉強する時間はたっぷりあったから、勉強には困らなかった。
「高校もどうせすぐに不登校になるよ。」
そう思いながら私は桜の木の下を通りすでに開けられていた校門を通った。
これからどんな高校生活が待ち受けているかは私は分からなかった。また現実から逃げてしまうかもしれない。いや、絶対そうなるに違いない。
でも、もし。奇跡が起きるのだとしたら。こんな私にでも運命の女神様は微笑んでくれるのだとしたら。
『友達』をつくりたい。楽しい時間を、過ごしたい。
- Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.20 )
- 日時: 2017/03/02 20:12
- 名前: ラッテ(SAKUYA) (ID: 5YaOdPeQ)
〜第14話 地獄の始まり〜
「これで良し、と。」
私は今日日直である。
今は朝。今日の日付と曜日を書いていたところだ。
日直の仕事は、点呼をする、授業後に黒板を消すなどの仕事があり、めんどくさいと思っている人がほとんどだ。
私もその1人である。
元々不登校だった私にとっては日直なんてほとんど初めての経験に等しい。
そう。日直は戦いなのである!
などというくだらない妄想はここまでにしておこう。私がおかしくなってしまう。
今日は4月27日、水曜日。学校が始まってから約3週間が経った。
この3週間は、本当に色々あったと思う。
やよいちゃんと友達になって、竜胆さん達と何やかんやあったけどneonで遊んで…。
本当に私は成長したなぁ、と我ながら思う。
そんな成長した私に、とびっきりの試練が待ち受けていた…。
****
「ざーぐりーん。勉強おじえでぐだざい〜。」
そう。中間テスト!
さっき言った通り私は不登校だったから、テストなど経験があるはずもない。
普通ならば焦ると思う。
しかし、私は焦ってはいない。
不登校のせいで余るほどあった時間を、勉強に費やしてきたから、勉強には自信があるのだ。
じゃあ何が試練かって?
…やよいちゃんに勉強を教えることだ。
「さぐりん、ここはどういうふうに解くんですか?」
「え?この式はXを移項して…。」
「え?いこうって何ですか?」
「え?」
「え?」
もうわかったと思うけど、やよいちゃんは恐ろしいほど勉強ができない。
私も初めてやよいちゃんの勉強に付き合った時は、驚いた。まさか分数のかけ算わり算ができない人が高校生にいたなんて…。
まあ、そんなわけで私はやよいちゃんと図書室で勉強会をしている。正式に言うと私がやよいちゃんに勉強を教えているだけなのだが。
はっきり言おう。今まで私はいろんな問題を乗り越えてきた。
でも、今回はさすがにきつい。中学校の時の最高点数が200を行かなかった子をいきなり400以上取らせるなんて、無理がある。
「…CO2って何ですか?COが2つでCOCOですか?COCO何ですか?」
「…二酸化炭素だよ、やよいちゃん。」
「…本能寺の変?あ、あれですよね。聖徳太子がペリーを裏切ったっていう…。」
「…どうしたらそんな本能寺の変になるの?」
「…一石二鳥?いちいしいにとり?ひとつせきふたどり?」
「…小学生でも普通に読めば分かるよ…。」
「…自分の好きな事を主語と述語のある英文で書きなさい?ミー ラブ ドーナツってどうやって書くんですか?さぐりん。」
「…なにミーラブドーナツって!?ミ○タードーナツのパクリ!?」
私はついに我慢ができなくなってしまった。
今までこらえてきたが、こらえてきた分言葉がポンポン出てきてしまった。
「大体磁石なんて小学校で習うよ!?なんでN極とN極がぶつかりあったらM極になるのよ!?なんでS極とS極がぶつかりあったら消滅するのよ!?肖像画を見て答える問題だって、これ野口英世だよ!?1000円札に乗ってるよ!?なんで『私のお母さん』って答えてるの!?やよいちゃんのお母さんこんな顔なの!?せめてお父さんだよ!!せめてお父さんだよ!!」
「あ、確かに〜。お父さんそんな顔してます。さぐりん、あったま良い〜!」
…もうやだ。
なんでこんなことになったんだっけ?
思い返してみよう…。
****
「お、久しぶり。水原。」
「本当に久しぶりだね。須原。」
竜胆さん達とneonで遊んだ日から2日後の月曜日。須原は久々に学校に来た。
みんなからどうして休んでいたのか、などというひどい質問攻めにあい、ようやくみんなの熱が冷めた頃にはもう須原は元気が無くなっていた。
そんな須原に溜まりに溜まっていた学級委員の仕事が目の前に突きつけられたら、気を失ってもおかしくない。
須原はブツブツ文句を言いながらも仕方なく仕事を消化し始めた。
私も手伝ってあげようとして須原に近づいた時、教室のドアを思いっきり開ける音がした。
ビクッとして後ろを振り返ると、汗だくのやよいちゃんの姿があった。
「レイぐーん。勉強おじえでぐだざい〜!」
汗だと思ったら涙だったらしい。
涙と汗を間違えるなんて、やよいちゃんどれだけ泣いてるんだろう。
須原は手に持っていたシャーペンの動きを止め、やよいちゃんの元へ寄っていった。
「まーたおばさんに怒られたのか?」
須原が質問するとやよいちゃんは少し落ち着いて答えた。
「はい…。あんた今度のテストで400点超えられなかったらもう外出禁止にするからね!?って。私が400点取れる可能性なんて宝くじが当たった瞬間家が爆発して駆けつけた消防車がトランス○ォームして飛行機になって飛んでいく可能性くらい低いのに…。」
どんだけ低いの!?やよいちゃんってそんなに頭悪かったの!?
いやあ、でもそんなに可能性が低いわけないだろう。
誰だって頑張れば400点は取れるはず。
「マジか…!おばさんもなかなかひどい事をしたな。しかし、そこまで落ち込むことはないだろ?」
お、須原がやよいちゃんを慰めてる。
あんな須原でも、他人を慰めるくらいはできるんだな…。
「外の空気が吸えなくなるくらいだろ?問題は。」
そこ!?問題!?
なに?もうやよいちゃんが400点を取れない前程で話は進んでるの!?
しかも須原、その言い方はちょっと…。せっかく勉強を教えてもらうために来たのに、そんな言い方をされたらやよいちゃんがちょっとかわいそう…。
「…学校の空気は吸えていられんですよね?」
やよいちゃんも諦めちゃったよ!!
え?そこまでやよいちゃんって頭悪かったの!?
「…安心しろ。学校の空気が吸えなくなる日は絶対に来ないよ。だからそんなに泣くな、やよい。」
「レイ君…!」
いや、卒業したらもう空気吸えなくなるんですけどね。
それにしても、意外だ。
まさかそこまでやよいちゃんの頭が悪かったなんて…。
まあ、人には得意不得意があるからなぁ。
でも、やよいちゃんが外出禁止になったら一緒に遊べなくなっちゃう?
嫌だ!そんなのは絶対に嫌だ!
…私は勉強に自信があるし、やよいちゃんにつきっきりで教えてあげればなんとかなるかな?
そう思い私はやよいちゃんに声をかけようとした。
「ねえ、やよいちゃ…。」
「そういえば、レイ君は勉強しなくて大丈夫なんですか?」
それ。それ知りたい。めっちゃ興味ある。
あの須原が、果たしてどれだけ勉強できるのか、実に興味がある。
須原はやれやれ、とため息をつき答えた。
「大丈夫だって。俺は中学の時テストで480下回ったことないんだぞ?」
…!?
「ああ、そうでしたね。でも私が言いたいのはそこじゃないんですよ。だってレイ君ずっと体調悪かったから勉強してないですよね?」
「大丈夫大丈夫。俺中学2年の時に入院して全然勉強できなかった時の点数が480だから。」
!?!?
「だから私はレイ君に勉強教えてもらいたかったんですけどね〜。」
「うーん。別にいいんだけど、休んでた分溜まった仕事を早く終わらせないと…。あ、そうだ。水原、お前どうだ?やよいに勉強教えるの。」
…………………。
今までの人生の中で一番驚いた日は恐らくこの日になるだろう。
私は脳の中で情報が整理し切れていなかったため、須原の話は頭に入って来なかった。
ただ、なんとなく反射的に頭を縦に振ったことだけは覚えている。
ここから、私の地獄は始まったんだった。
- Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.21 )
- 日時: 2017/03/05 20:42
- 名前: ラッテ(SAKUYA) (ID: 5YaOdPeQ)
〜第15話 クラス〜
そんなこんなで私はやよいちゃんの教育係になってしまった。
本当に本当にやよいちゃんに勉強を教えるのは大変だった。
それでも私はやよいちゃんに勉強を教える事をやめなかった。
友達として、教えてあげるべきだと思っていたからだ。
まあ、いくらそう思おうと辛いのは変わらないけど。
****
今日は テスト3日前、5月2日である。
5月になってから初めての学校。もう1ヶ月も経ったんだな、と思うとこのまま時間がどんどん進んで行ってしまいそうで寂しくなった。
学校が終わったら、いや、このクラスが解散したら、もう須原とかやよいちゃん達と話せなくなっちゃうのかな…。
いや、たとえクラスが解散しようと、関係が終わるわけじゃない。
それに、まだ時間はあるんだ。精一杯このクラスで、楽しもう!
そう思ったけど、私はこのクラスにまだあまり馴染んでいない。
私が学級委員という事で色々クラスのことで話して来る人はたくさんいる。
でも、それだけなんだ。
必要最低限の会話しか交わさない、それだけ。
私は、別にそんなに多くの人と親しい関係を築こうとは思っていない。
ただでさえあまりそういう事と関係のない生活を送って来て、友達1人だけで色々精一杯なのに、多くの人とそういう関係になったら、やよいちゃんに今まで通り接することはできなくなってしまうと思う。
だから、友達を増やそうとは思っていない。
思っていなかった。
でも、今の私にならできる。そんな気がするんだ。
私は今確実に成長している。
今なら、クラスのみんなと仲良くする、そんな事が出来そうな気がする。
だけどやっぱり今はいいや、と思ってしまう。
今は今いる友達とたくさん遊ぼう。
そんな事を考えながら私は図書室へと向かっていた。
****
今日もやよいちゃんに勉強を教える予定だ。
やよいちゃんはクラスで用事があるから少し遅れると言っていた。
私は早めに行ってやよいちゃんを待つことにした。
図書室の扉を開き、いつも使っている机の元へ向かった。
すると、図書室の奥の方から聞き覚えのある元気な声がした。
「あ、水原さん!奇遇だね〜。」
「竜胆さん!」
さて、覚えている人はいるだろうか?
私は以前、竜胆さんに南川シロウという作家の本を勧められ、大量の本を読む事を強要された。
あの本は、なんとか全部読みきって先週の金曜日にようやく返す事ができた。
この学校はどれだけ本を借りてもいいという謎システムだから、竜胆さんからオススメされた本は、かなりの量があった。
そういうシステムだからか、この図書室ではしょっちゅう本が行方不明になるらしい。
まあ、その話は置いておいて。
現在竜胆さんから再び大量の本を押しつけられている。しかも、前回より多く。
「ちょ、こんなに読めないって、竜胆さん!」
「まーまー、水原さんならいけるよ!」
笑顔で竜胆さんはそう言った。
いや、いけないから。竜胆さんくらいしかいけないから。
私と竜胆さんは本を押しつけあった。
私が根負けして全て借りるまでに、15分もかかってしまった。
ようやく借りてもらえた竜胆さんは、幸せそうな顔をしていた。
****
「それにしても、シロウさんはいっぱい本を書いてるんだね。」
ずっと思っていた事を、今ようやく言った。
これだけの量の本を書いている作家は、少ないだろう。
竜胆さんは、目を光らせて話し始めた。
「すごいでしょ!そこがシロウさんの魅力でもあるんだよ〜。これだけの量書いているというのに、中身は全く衰えない、いや、それどころか進化して行っている!素晴らしい!非常に素晴らしい!南川シロウ、万歳!!」
あー…。
こうなると竜胆さんは長い。
いつもなら聞き流していた所だろう。
でも、今日は聞き流さなかった。
竜胆さんの口から、とんでもない事を聞いてしまったから。
「そういえば、シロウさんは須原の父親の弟子でもあるんだよ!知ってた?水原さん?」
…須原のお父さんの、弟子?
そういえば、須原の父親は作家だった。
須原の父親は死んだと聞いている。
そんな須原の父親が生前書いた作品、そして、今も私が探している本、それが
【ある少女は、成長する事を拒むのです】
やよいちゃんからこの本の存在を聞かされた時から、私はずっとこの本を探している。
ネットで調べてもみたが、あまり情報はなかった。
あったのは、作家名、『北里クロウ』という作家が書いた学園を舞台にした小説、という事くらいだ。
そういえば私はまだ須原にこの本のことを聞いていない。
そうだ。今日、聞いてみよう。
竜胆さんはやっと話し終わったらしく、息切れしていた。
竜胆さんに別れを告げ、私は教室の元へ向かった。
やよいちゃんがもし来たら、竜胆さんに少し遅れると言ってもらうよう頼んでおいた。
やよいちゃんと竜胆さんは前回neonに行った時に仲良くなっているから、私が用を済ませるまで話していてくれるだろう。
須原はもう少しで溜まっていた仕事が終わる!と言っていたからもう仕事を済ませて帰っているかもしれない。
でも帰っていなかった。
私が教室に着いたちょうどその時、仕事が終わったらしい。
「やっと宿泊研修のスケジュール作り終わった〜。あー、帰ろ。」
帰ろうとしている須原を止め、私は須原に質問した。
「あんたさ、【ある少女は成長する事を拒むのです】っていう作品知らない?」
それまで笑顔だった須原の顔が、急に暗くなった。
ため息をつき、静かに須原は口を開いた。
「あのクソ親父の事に関係する事は、金輪際俺の前で口にするな。」
- Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.22 )
- 日時: 2017/03/13 17:12
- 名前: ラッテ(SAKUYA) (ID: 5YaOdPeQ)
〜第16話 父親〜
「さぐりんがレイ君にレイ君のお父さんの事を聞きに行った!?」
クラスの用事が終わって勉強を教えてもらおうと図書室に入ったら、ツッキーが居ました。
ツッキーにさぐりんの事を聞いたら、レイ君にお父さんの事を聞きに行ったと言いました。
「そ、そうだけど。どうかしたの?」
「…レイ君はお父さんの事をとても嫌っています。だから、私もレイ君のお父さんの事はなるべく話さないようにしてたんです。あ、さぐりんにレイ君のお父さんが作家だったという事を言ってしまっていました!ああ、私のせいです…。」
レイ君がそんなに怒らなければいいのですが…。
****
「え…。」
須原は今まで見たことの無いような怒った顔でこちらを見ていた。
なんか私変なこと言ったっけ?
「す、須原?」
「…。」
何も言ってくれない。
お父さんの事を聞くのはいかなかったのかな。
なにかあったのかな…。
「…ゴメン。なんか変な事聞いちゃって。」
いや、変な事は言ってないと思うけど。
一応謝っておこう。
私も、家族の事を誰かに言われたら、恐らく今の須原の様な状態に陥ってしまうだろう。
家族…。父親…。
私は、怒られる事を覚悟して聞いてみた。
「須原、あんたもしかして小さい頃お父さんと何かあったの?」
こんな事を聞くのは本来よろしく無いだろう。
でも、私は聞いてしまった。
何だか、私と同じ感じがしたから。
「…。お前、俺の家庭状況どこまで聞いたんだ?」
あ、バレてる。やよいちゃんが私に須原の家庭の事教えたの。
「あんたが小学五年生の時に両親が死ん…亡くなって、妹と二人暮らししてるって事くらい。」
「あいつ…。なるべく話すなって言っておいたのに…。」
須原よ、やよいちゃんに隠し事は難しいと思う。
「…。ホントは言いたくないんだけどな、どうせその内やよいが言うだろうから言っとくよ。俺の家族の事。俺のクソ親父の事。そして…。」
須原は顔を両手でバシバシ叩き始めた。
何事かと思って須原を見ていたら、今まで険しい顔をしていた須原がいつも通りのアホ顔に戻っていた。
「いいわ。やっぱやめとく。今話し始めたら長くなるだろうし。」
「えー!?めっちゃ気になるんだけど!」
また今度、また今度と言って教室から須原は逃げようとした。
捕まえようと思ったが、家族の事を話すのがどんな気持ちなのかを考えたら無理に話させようとする気にもなれなかった。
シュン、と落ち込んでいる私に須原は悪い悪い、と言って近寄ってきた。
そして、これくらいなら、と言う事で須原は提案した。
「図書室に多分その本は置いてあるぞ。」
いや、探しましたから。
探して無かったからあなたに聞いてるんですから。
「無かったから。図書室に。」
「え!?まじか…。あ、そうだ。明日の昼休み一緒に図書室行かね?図書委員に聞いたら多分分かるぞ。ちょうど今日委員会決まった訳だし。」
そういえば今日委員会が決まったんだった。
その仕事もしてたのか。もうすぐある宿泊研修の仕事もあっただろうに。
手伝ってあげれば良かったかな?
そう思ったけど、まあ、こいつだしな、と思いその考えは一気に消えた。
それにしても、そうか。図書委員に聞けばいいのか。
じゃあ明日昼休みに図書室に行こう。
「分かったけど、なんであんたと一緒に?」
「俺も用事あんだよ。じゃ、俺帰るわ。やよいの勉強頑張れよ。」
「うん。またね。」
さて、図書室に戻りますか。
****
『俺はお前らよりも大事なモノがあるんだ。今お前らにかまっている暇はないんだ。分かってくれ。』
…久しぶりに思い出したな、あのクソ親父の事。
あいつになら話せると思ったんだけどなあ。
まだ無理か。
とりあえず早く帰るか。
あれ?俺らのクラスの図書委員って誰になったんだっけ?
まあ、いいや。明日で。
****
眠い。
ひたすらに眠い。
竜胆さんからオススメされた本、多すぎる。
読みきれない。
眠い。
「…授業中寝ちゃうかも…。」
教室のドアを開けて入ろうとした時、段差に引っかかって転びそうになってしまった。
「危な…。」
手を出そうとしたが力が入らずに動かなかった。
痛みに備えて目を瞑った。
しかし、一向に痛みは現れない。
それだからか、転んですらいない。
どういうことかと思い目を開けたら、私は誰かに支えられていた。
支えている人物の顔を見たら、男だった。
急に顔に血液がたまりだした。多分今私の顔は真っ赤になっているだろう。
「大丈夫?さぐりさん。」
男は、同じクラスの、姫野サクヤだった。
なんだ!?このラブコメ展開!?
- Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.23 )
- 日時: 2017/03/15 18:34
- 名前: ラッテ(SAKUYA) (ID: 5YaOdPeQ)
〜第17話 姫野 サクヤ〜
姫野サクヤ。
イケメンで、しかも性格が良く、更に面倒見も良い。おまけに運動面ではテニス部エースとして全国大会に出場した程の実力を持っている。
この人物を一言で言い表しなさい。
そう聞かれたら、誰だって『勝ち組』と答えるだろう。
彼は仲間にも恵まれている。足りないところなんてどこを探しても無い。
私とはまるで正反対の世界で生きてきた人間なんだな、と勝手に思っていた。
****
その人物に!今!この瞬間!
転びそうになったところを助けられた。
相当目立ったらしく、ゾロゾロと野次馬が周りを囲んだ。
私は恥ずかしくて声も出せそうになかったが、そんなことを気にもせず姫野は言ってきた。
「大丈夫?さぐりさん。怪我はない?」
イケメン!!
まずは他人の心配をしてくれる。
すごいぞ。どこぞの顔だけイケメンも見習ってほしいものですな。
「いや、大丈夫。ありがと。」
起き上がろうとすると、なんと姫野は手を差し出してくれた。
世界が認めるイケメン!!
ああ、この状況を須原が見たらなんて言うかな?
なんてフラグ建てたらあいつ来ちゃうか。
「…み、水原?」
ほら、来た。
何だろう、なんて表現すれば良いかは分からないけど、とりあえず怖い。特に、目が。
「あ、おはよう。レイ。」
「…おい。水原。」
姫野の挨拶を華麗にスルーして、須原は私の元に寄ってきた。
そして、怒りと軽蔑に満ちた顔で私に吐き捨てた。
「お前は良いやつだと思ってたんだがな。こんな青春チートに手を出すなんてな。見損なったぞ!」
とりあえず須原は何か勘違いをしているらしい。
なんか無性に腹が立つ。何とか怒りを堪え、須原に状況を説明しようとしたが、それより先に須原が話し始めた。
「おい、今思い出したけどな、このクラスの図書委員ってこいつなんだよ。」
「え?そうだったの?」
そうか、姫野が図書委員かー。もっとクラスのリーダーとかやってそうな気がしたんだけどな。
あ、それは須原か。なんかこの2人全然似てないな〜。
「いいか?こいつはチート能力をたくさん持ってるくせに、それを出し惜しみしている草食系男子なんだ。」
ただの謙虚な人だと思うんですが。
「更に、こいつはモテる。モテまくる。俺とは違ってな。こいつは人類の敵なんだ!」
ただのイケメンだと思うんですが。あとあんたがモテないのは仕方ないと思うんですが。
「こんなロクでもない奴に関係したらどうなるかわかんねーぞ!?図書委員の件は、やよいのクラスの図書委員に頼もう。そうしよう。異論は認めん。」
ただの非リアの悲痛な叫びだと思うんですが。
わざわざ他のクラスの図書委員に頼むのも時間がかかるため、姫野で良いと言ったのだが、須原は怒り狂ったような顔でこっちを向いてきた。
その瞬間、非リアの空気が支配していた教室の空気が、一気に浄化されたような気がした。
後ろを向くと、姫野が肩をトン、と叩いていた。
「図書委員が何とか、って聞こえたけど、何か困っている事でもあるの?僕でよかったら、手伝ってあげるよ。」
超絶イケメン!!
須原が怒りの矛先を私から姫野に変更した。
須原は姫野の元へ行き、次々と言葉を並べた。
「あー、いーですよねー、リア充様はー。そうやって非リアを見捨てていけば良いんですよー。あ、もしかして視界に入ってませんー?俺の事消しかすを丸めて捨てた奴としか見てませんー?安心してくださいー。俺もあんたのこと眩しすぎてハゲにしか見えてないからー。いやー、さすがリア充様だわー。」
姫野はさすがイケメン。須原の話になる事なく、冷静に返している。
目立っているため早くこの場から逃げ出そうとして教室から出ようとした時、ちょうど登校してきた葉山と加納に出くわした。
「何の騒ぎ?水原さん。」
あ、やっぱ同じイケメンでもなんか違うわ。
姫野は純度100%イケメン。葉山は、混合中途半端イケメン。
何なんだろうね、この違い。
「転びそうになった私を姫野が助けてくれたんだけど、その状況を須原が勘違いして、姫野に突っかかってるの。」
葉山は、うわー、くだらねー、という目をしていた。
加納は、手に持っていた鞄を地面に落とし、倒れた。
「助けた?つまり、女子に触った?しかも、助けたということはいつもよりも密着度が高い?あ、ダメだ。他人のことでも想像したらめまいが…。」
こいつ一発ぶん殴ろうかな、とも思ったけど、その必要はなかった。
「おはようっございます〜!!」
豪快な挨拶と共に教室に飛び込んできたのは竜胆さん。
着地地点には加納がいたため、加納は黙った。
ギャーギャー言っていた須原も竜胆さんの声にビックリしたのか、話すことをやめた。
やっと静かになった、と思い先に行こうとした時、後ろから姫野が私に声をかけた。
「なんか図書室で困ってることあるんでしょ?昼休み、一緒に行こうか。」
****
昼休み。
ここは図書室。
【ある少女は成長することを拒むのです。】を探してもらっている。
一応須原もついて来た。
ずーっと何かぐちぐち言っているけど。
なんてことを考えてたら、捜索が終わったらしい。
「その本は、確かにこの学校に置いてあった。でも、今は生徒が借りている。僕からも声をかけておくから、さぐりさんも見かけたら言ってみたらどう?えーと、2年生の、金神さんだね。」
「ありがと、姫野。」
「どういたしまして。これからも何か困った事があったら頼って良いからね。」
「うん、本当にありがと。」
2年、金神…。
その人が、私が今探している本を持っている。
ようやく、ようやくあの本を見つける第一歩を踏み出す事ができた。
さて、本の件は解決したし、放課後教える事をまとめておこう。
あとテストまで、2日か〜。
****
やっと終わったか。
まったく、水原の奴も、あんな奴に頼るなんて…。
ん?あいつこっちに向かって来てる?
何だろ。
俺のところまで来た姫野は、ボソッと呟いた。
「水原さぐり。面白い人だね。大分変わってたけど。」
俺が姫野の方を向くと、姫野はクルッと体を回転させて帰ろうとした。
そして、帰り際に言い放ってきた。
「七原やよいが勉強出来ないのは、お前のせいだ、レイ。」
俺はその場で固まっていた。
あいつとはあまり話した事がなかったけど、どこか懐かしい気がしてたんだ。
そうだ。あいつは…。
あいつは…。
****
そして時は過ぎ、遂にテスト当日ー。
- Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.24 )
- 日時: 2017/04/09 20:29
- 名前: ラッテ (ID: z.RkMVmt)
この作品…。名前を変えてからあまり更新できなくなりました…。
そんな訳で、ラッテという名でこの作品をリニューアルして新たに小説を開始したいと思います!
設定などは引き継いで、物語もテスト当日から始めようと思います。
そういう訳で、この『ある少女は成長する事を拒むのです。』は一旦終了して、新たに『ある少女の少し大きな物語』を、開始したいと思います!
よろしくお願いします!