コメディ・ライト小説(新)

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下書きだらけ
日時: 2018/08/10 19:48
名前: モズ




【意味を為さない目次】

「」>>1-2
「」>>18-19「」>>20「」>>21-22「」>>34-35>>37「」>>43>>45>>49-50「」>>62-64
「」>>69-70「」>>75-76「」>>84-86>>89-90「」>>96-99(不可)

「」>>160-162 途中
「」>>163
「」>>165
「」>>166
「」>>167
「」>>168


 初心を忘れずにごろり寝転んで初心者ぶって書く場所、
珠に溢したくなる、仕方ないやろ、なんてな。

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Re: 下書きだらけ ( No.166 )
日時: 2018/07/29 07:58
名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ

 『向日葵みたい』


 一度きりの夏は戻ってこない。あの君が居たあの夏は記憶の中にしか存在しない。
言葉、その言葉だけが僕を生き続けさせる活力で、パワーで、光で。
何があってもその言葉があるから僕は生きてられる。それにすがりながら生きている。


 ある夏、君が燃えた。それからも僕の、君への思いは募るばかり。
向日葵が満開に咲いて太陽を見る人のように生き生きとしていた季節。
 折角、花火大会にも二人きりで行けたのに。ベビーカステラを二人でシェアしたり、
かき氷を食べてキーンとする僕を笑う君がいたり、金魚だって採ったじゃないか。
スーパーボールを何に使うんだ、って思っててもお祭り気分には逆らえない。
楽しみながら使い道のない、育てようの無いものを採っていく。
 花火を見たことだって忘れちゃいない。人混みから避けるように君が連れていってくれたあの場所。
君のお祖父様の家、敷地内にある大きな木の上、枝の上。
不安定な座席に二人して座ったこと、他愛ない話をして花火を待った時間、
距離の近さに匂う君の髪の匂い、たまに触れる手の温度。
気持ち悪い話に思えるだろうが、何一つ欠けることなく思い出せる。
 花火が上がって見ているものは毎年其ほど変わらない筈なのに、
君と居るだけで、傍に居ると感じられるだけでこんなにも違うのか。
 花火を観てばいばい、をして。これが最後のばいばいになるなんて、誰が思う。
暗がりの中でも君の笑顔は明るく、輝いているように見えた。
何を思ったのかは知らないが、君はある言葉を呟いた。
君が僕に残した、最初で最後の言葉。僕の大切な言葉。
こんな日が永遠に続けば良いのに、と、どれ程思ったことか。


 その翌日、起きて暫くすると母親がどたばたと階段を駆け上る音がして
ばっ、と、部屋のドアが開けられて息絶え絶えながらに言葉を溢す姿があった。
君と、その家族丸ごとで火事に遭っていて今も尚、助け出されていないと。
その言葉の重大さを理解すると母親の声に振り向くことなく、
母親のようにまたもどたばたと階段を下りることになった。
 辺りは消防隊、近所の人、若年層の野次馬などがはびこっていた。
まだ火の勢いは止まらないらしく、救助もろくに出来てないという。
周りに大まかな話を聞いてみると、火事が起こったのは30分も前のこと。
原因は不明だが一人の少年の証言によるととある大学生グループが煙草をポイ捨て、
その場所が君の家、庭だった。それから燃え移っていって今に至ること。
誰も出てこないのに、時間は無情に経っていく。
正義感を出したかった訳じゃない、君だけでも助け出したい。
それも無理なら君が大好きな弟を、せめて。そんな情に駆られた。
 それからは早かった。人々に見つからないよう、僕と、一部の人しか知らない裏口から侵入した。
一階は既に火で埋め尽くされそうな状態だった。
とはいえ、そんな風に冷静で居られるほどの状況では無かった。
服に火の粉が飛び、暑さだけでどうにかなってしまいそうで。
たまに肌を煽られるように火が掠り、何とも言えぬ苦しみが通る。
一階には、リビングには倒れ混む君の両親の姿があった。
父親の方は肉まで焼かれはじめて、もうさすがに死んでいた。
母親の方は倒れて動けずにいた。だから無視をした。
一酸化中毒、そんな言葉なんて知らなかったからどちらにせよ無視するのが良かったのかもしれない。
 二階、幼い子供の声が聞こえた。炎天下の下、晒されたコンクリートのように熱い階段を駆け上る。
声のする部屋を開けてーー。


 僕の見立ては間違っていなかったのか、両親は完全に死んでいた。
君、そして君の弟は何とか助かったという。弟の方は火がトラウマなくらい。
問題なのは君、完全に心を閉ざした、というより無くしてしまったのかもしれない。
弟にだけ優しく接して他は敵と見なした。他人として関り始めた。
二人が残された環境は最悪だ、一番に愛してくれる人が燃えたんだから。
それに対する周りの人たちの反応は最初は優しかったものの、
一切心を見せずに警戒心丸出しで居続ける彼女に痺れを切らしたのか、
優しくするような人も一人、また一人と消えていった。
君は悪くない、周りの人達も事情は分かっていても辛いのだろう、分かる。
 あの夏はもう燃えて焼き果てて、僕の大好きだった君はあの日を境に灰になった。
最後に残した『向日葵みたい』というその言葉は忘れない。
僕の大好きだった君が残してくれた、最初で最後の言葉だから。
今も傍に居て世話をさせてもらっているが、僕のことは思い出せないみたいだ。
あの夏から何年絶っても君は相も変わらず綺麗で、可愛くて。
そんな君が不意に見せる笑顔を見てしまう度、君に何度でも恋をする。
思いは未だ募るばかり、僕をまだ他人と見なす君の何気ない言葉に悲しむこともある。
だけど、その言葉だけが僕をそうさせる活力になっている。









《制作途中か終わり掛けに書いた》

 ヒマワリ、を最初に書いてここまで来たんだなと思います。
あれが一番多くのコメントを頂けて嬉しかったです。
 向日葵、とあるドラマで観たのですが崇拝、近くに居る、という意味があるようで。
細かい意味までは覚えてませんが後者であれば素敵な花だと思います。
 タイトルだけ決めてそれ以外一切決めずに書いてみましたが、どうでしょう。
やはり恋の話とかを書かねばならんのでしょうかね。
 コメライさんやと恋、それが人気な、ポピュラーな印象なんですよね。
皆様もどうか素敵な夏をお過ごし下され、暑中見舞いと受け取りください。


 それにしても好きな作者さんが片手に収まる程度になってしまったし、
そもそも読むことが億劫になってるしなぁ。
書き途中に書きましたが、気分じゃないと書けない。



Re: 下書きだらけ ( No.167 )
日時: 2018/07/25 08:57
名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ

 『ピンクソーダ』


 大丈夫、そう自分に言い聞かせて手元の鏡を見る。
私はどんな風に見えているだろうか、可愛いかな、綺麗に見えるかな。
いつもと違うイメージで髪型もお祭りらしく、それでいて爽やかにしたくて上げてみて。
メイクもしっかりと考えてほんのりめでやってみたけど、どうかな。
私が見ても分からないし、再度大丈夫と自分に言い聞かせる。
着てみてよ、と頼まれて一緒に選んだ浴衣を見つめる。
白い生地に水色のグラデーションが流れるように描かれて、その鮮やかな花が流れて。
帯は大人っぽく紺なんてどう? と言われて紺にして。
浴衣なんて普段は着ないから友達に帯を締めてもらいに来てもらうし。
うぅ、色々考えていたら不安になってくる。
少しでも気に入って貰えるように、可愛いって思ってもらえるように。
そう、笑顔が大事。鏡に向かって精一杯の笑顔、どこか無理矢理な感じがした。


 「キツく締めるから、容赦しないわよ?」


 「うぅぁ、苦しい……屋台のも何にも食べられないんじゃ」


 「綺麗のため、妥協は要らないの。それと帯で胃が膨らまないから仕方ないでしょ。
沢山食べたかったら今度私とお祭りに行けば良いでしょ」


 「あ、お願いします!」


 友人に帯を締めてもらって、メイクや髪型のチェックをしてもらう。
友人こと李真、本当に優しくてお姉さんみたいに頼れる人。
ツンデレっぽい所もあって美人さんだから男に困ることはない、人。
本人は別にそういうのを気にしてないけど、それも李真らしくて好き。
今日のために李真に沢山相談したこともあるから……有り難いな。


 「ふぅ、良いんじゃない? 千紗も可愛いんだから笑顔を意識しなさいよ!」


 「李真は美人だから羨ましいけど……」


 「笑顔を意識しなさいよ! 分かった?」


 「は、はい……」


 こういうお節介な所もあるけどこういう友人が居るのはとても幸せだし、
私には好きな人もいて……それが叶うとは限らないけどそれまでの高鳴る気持ちは楽しいかも。
いつもじゃ意識しない笑顔とか制服のよれとか、肌のこととか。
より女子らしく、可愛くいようとしている自分がいるんだとふと思ってしまう。
本来ならもっと普段から気にするべきことだろうけど、そこは気にしない、気にしない。
ほら、頑張りなさいよ。とまるで保護者のように私を途中まで送ってくれた李真。
ヒールではない、普通のサンダル。夏の花に彩られている、サンダル。
皆もお祭りに行くみたいで歩いている途中にはラフな格好の人や、家族連れ。
浴衣を着た彼氏と彼女がいたり。羨ましいな、と思ってしまう。
 彼は良い意味で馬鹿というか、鈍感なのだ。私の好き、に中々気付いてくれない。
お祭りに誘った時もただ笑顔でうん、行こう! と返されて。
浴衣を見に行こうと誘っても動揺せず、友達としてだろうか、直ぐ様に肯定して。
私なりに頑張ったつもりでも鈍感には敵わないみたい。
好きだから、好きだし、好きでしかなくて、傍にいれるだけで嬉しいけど。
その笑顔が、優しさが、その鈍感なところも。いつか誰かに取られてしまう。
むしろ彼も鈍感故に今は彼女が居ないと聞くが、そんな彼を好む女子も居る。
 こんなことを考えてしまうと顔が暑くて真っ赤になってしまう。平静でいないと。
今だけの高鳴り、この泡はいつまで生まれていくのかな。
目の前に彼が見えた瞬間、私の胸は更に鼓動を早く、大きくしていく。
胸だけがソーダになったような気分だ。
恋をするってこういうことなのか、私にはまだ分からない。












Re: 下書きだらけ ( No.168 )
日時: 2018/09/15 12:41
名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ




 『』


 暗がりの道、街灯だけが固定された光であり確実な光であった。途切れることの無い、光だ。
時折、ライト瞬く車が蠢いては過ぎていくがそんなのは確実な光とはならん。
確実な光、月下、星、そして街灯の元。無表情なコンクリ壁に体重を傾ける少女が居た。
フードを被っているため表情やらは伺えないが、確実な光は真実を届けてくれた。
突き抜けるように鋭い光が俺の眼を突く、目を凝らして見るとその原因は鋭利な刃物だった。
彼女からは死角、であろう角に潜みながら彼女を観察していた。
どうして見ているのか、と聞かれても理由なんて無いのだから答えように困る。
興味があったから、それをせめてもの理由に上げておこうではないか。


 「どーしてだっか、そんな刃物なんて持ってんだかな」


 思わず俺は呟きを漏らす。奴は確実に刃物、凶器になりうる物を所持していた。






































保存、修正

Re: 下書きだらけ ( No.169 )
日時: 2018/09/14 23:39
名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ

 『』



 暗闇に打ち上がる色鮮やかな花火が目の前の景色を、僕らを彩っていく。花火色に。
下を覗けば祭り提灯がほんのりと灯され、各々が浴衣やらカジュアルな服を纏って砂利を踏み締めて歩いていく。
中には花火を見上げて立ち止まったり、屋台で遊んだり買ったりする者も当然居るわけで。
まぁ、そんな彼らはそこから少し離れた所から登ることのできるこの石階段には見向きもしないのだろう。
 後悔はしているのか、ともう一人の僕が問い掛けてくる。居る筈も無い存在だと言うのに何様だ。
それに対して端からは独り言、僕から見たら僕への返答をする。

 「嗚呼、今のところはしてない。人の笑顔をぶち壊すのは楽しいよ」

 今の僕はどんな表情をして居るのだろう。自然と笑えている、そんな気がする。
下にある素敵なものを見つめながらそれからしゃがんで近付く。
そうだ、と思い出したようにそれを持ち上げて運んでいかなければ。
 石階段を登る。一段一段がそこまで高くないお陰で楽に登ることが出来るのは有り難いことだ。
まだ軽くなったとはいえ、決して重くない訳ではない荷物を抱えて歩くのは大変だ。
足首に巻き付くように触れる草が擽り痒いがそれを我慢して歩き進める。
今日で全てを終わらせる予定が狂ってしまうんだから気にしている暇なんて無いんだ。
自然に何を言おうと無駄なことくらい分かっていても心はそれさえ漏らしてしまう。
 それから暫く、時間にして20分程。目的地に到着したことに気付き、安堵の息を漏らす。
荷物を下ろして自分も腰を下ろす。まだまだ若いのに爺のような声を出してしまった。
日頃の運動不足が祟ったのだろうか、きっとそうだろう。
それから荷物を何度も確認しながら此処からでも見える花火を鑑賞した。
いつも屋台の方で見る花火とは全然違う景色に僅かに驚くばかりだ。
人の群れに、温度に邪魔されることなく自分だけの空間で花火を観ている。
視界に何も障害物の無い、目の前には夜空、打ち上がる花火だけが映されている。
 花火を観ていたら荷物のことを思い出してしまった。嫌なもんだ。
毎年お馴染みだった花火をすっぽかすなんて、ぼくが一体何をしたって言うんだ。
問い詰めても何も教えてくれなかった君が悪いんだから。君が悪いんだ。
 もう、良いや。荷物を解体して仕舞わないと。
水色の生地に金魚が愉快に跳ねている浴衣、それから赤い帯。
元々はそんなものが所々に赤黒い点が跳ねたり、染み込んでいるじゃないか。
それから一箇所にはやたら大きな血の痕が残っている。細長い穴も幾つかと。
 横暴だって言われそうだ。たった一言で勝手に想像して君を殺したんだからね。
毎年お馴染みだった花火をすっぽかした君を根拠なく疑って殺したんだから。
もしかしたら僕が気付かない内に彼氏を持っていたのか、とか僕を嫌いになったのか、とか。
君から僕は害虫のように見えていたのかは知らないが、
訳さえ教えてくれずに僕と行くことを拒否して、一人で花火に行くなんてずるいよ。
きっと、僕は君に恋してたのだろうか。だから、こんな風に感じてしまったのだろうか。
嗚呼、生きてない君を見ている内に僕がとても愚かだったと思ってしまうではないか。
鋭利な刃物で浴衣を、皮膚を、血管を打ち破られた感覚は想像しがたい。
それなのに笑顔で居る君は何なんだ、遠くに本命が見えたからか。
そもそも僕の事なんて眼中に無かったのだろう、それくらい当たり前だ。
 どうして殺すことは容易いのに笑顔の君を土に投げ入れる、ことが出来ないなんて。
子供用スコップを持ってきていたが、それは無駄足になってしまった。
何故君を土に埋めることが出来なかったのか、体が動かなかったのかは分からない。
結局、死んだ君でも僕は君の虜だったから、まだ最もらしい理由を挙げるならそれくらいだ。
 これからどうしようか、と迷い続けていたのだが大した答えには辿り着かなかった。
僕が君を殺したことは事実で過去に戻ってその事実を変更するなんて某青狸でも居なきゃ、無理だ。
殺してしまったんだ、殺してしまったんだ、君を。
花火に照らされ、僕らはどのような表情をしているのだろうか。
僕は笑い、君も……苦しい筈なのに笑ってるじゃないか。
君が、あんなことさえ言わなきゃ。僕は君を殺さなかったというのに。君は不幸だ。






Re: 下書きだらけ ( No.170 )
日時: 2018/09/20 17:58
名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ


 『発展途上中その壱』


 私は気付かない内に色んなことを知っていった。少なくとも中学の頃よりも成長はしていると思う。
そんな私を認めてくれる人が少なくても私にとっては沢山居るんだから。


 四月の始めだというのに桜はさっさと散ってしまい、
歯抜けだらけの桜の木を見上げながら私は駆け抜けていく、道路を。
高校生活初日、自転車で学校へ向かう。まだ走り慣れない道を不安げに行く私。
道の途中で真新しい、キラキラと輝くランドセルを背負う小学生、
セーラー服に心ときめかせる中学生の女の子らが背景として映る。
彼らが抱くのは期待、そして希望なのだろう。
中学生の子とはそこまで年齢差は無いというのにそんなことを考えてしまう自分にため息が出る。
私には学校というのは一つのダンジョンのようなもので大変で苦しいものにしか思えない、と。
地味で可愛くも美人でもなく、性格が明るいわけでもないから誰かと行動するというのが多くなくて。
むしろ人と関わるのが苦手で直ぐに緊張して、とパーツを並べていくと私は本当に悪い子だ、と思ってしまう。
数少ない友達もつい最近までは傍に居たのに、高校ではお別れ。つまり私は一人だ、もう慣れたことだが。
花びらの無い桜のように何かが抜けたような私は校内の駐輪場に到着し、自転車を停める。
一人で知らない教室へ向かわねばならない、孤独感が私の心に犇めき、闇で染めて、表情をすんと暗くさせる。
新学期に似合わない顔、そして気持ちを抱えたまま目当ての教室へ向かった。


 「ねぇ、しーちゃんと同じクラスなのかな?」


 「どうなんだろ、同じだと良いね!」


 羨ましい声が指定された私の席の傍から聞こえてくる。
席順はどうやら出席番号順らしいが、まさかこのクラスのままなのだろうか。


 「隣の教室に居たポニーテールの女の子、滅茶苦茶可愛くなかった!?」


 「うん、そうだねー。でも洸、誰にでも惚れやすいのはどうにかしないとまずいよ」


 何とも賑やかな声が聞こえてくる。孤独じゃないから虚勢を張れる。なんて内心で愚痴を吐いてみたけど、
それは孤独でしかない私の敗北宣言のようなものだ、私は一人なのだから。
そんな暗い気持ちを抱えて入学式が、そして始業式も始められようとして居た。
 誰かも知らない先生が生徒を席に着かせると隣には一人の女の子、内なる美しさを秘めた女の子だった。
各集団ごと、計4ブロックに分けられ、四列ずつ並んでいく。私は丁度端っこだった。
後ろに上級生が居るのに少し緊張してたけど、隣の子の一言でそんなの吹き飛んだ。


 「貴方、誰かは知らないけど宜しくね」


 緊張というより不安が吹き飛んだのかもしれない。私なんかに話しかけてくれる人がいるんだって。


 「あ、はい、宜しく御願いします」


 私の口から出た言葉を聞いて静まる体育館とは反して彼女はクスクスと笑っている。
隣のブロックの生徒が気になってこちらを見るも、私の隣の彼女に目が向き、慌てて逸らしていた。


 「また、後で話しましょ?」


 「あ、はい」


 謎の期待感を抱えたまま、式が始まっていった。高校とは何たるもの、という校長の長々しい話、
生徒代表がただ高校生活を語っていくもの、吹奏楽部の演奏コーナー、他にも色々。
新鮮味が無いなぁ、と思いながら見ていたのだがそれは周りも同じ様らしく、背中を丸めて前屈みになる者、
友達同士なのかこそこそと喋る者、髪の毛を弄る女子が居たり、飽き飽きしている人も居るようだった。
 最後に生徒会長の言葉、という名目で出てきた人物に女子のハッと息を吸う声が聞こえてきた。
少しざわさわとした体育館だったが、暫くすると彼だけに注目を集めるように静寂に包まれてしまった。
先程まで髪の毛を弄っていた彼女も目を点にして彼だけを見ていた。
つまり、生徒会長がそれなりの顔立ちだった訳だが、私も隣の彼女も大した反応はしてなかった。
 式典がすべて終了し、教室へ向かうために廊下はごった返す。
何せ、一斉に生徒が我先にと狭き道を通ろうとするのだから、滞るのも仕方あるまい。
それからその流れに無理矢理押し込まれ、流されてる最中。誰かに肩を叩かれた。


 「一緒に教室に向かいましょ?」


 彼女が差し伸ばす白くもキメ細やかで私なんか触るのがおこがましい手を掴むと。
彼女は私を強引に引き寄せ、すいすいと道を抜けていった。
誰かが道を空けている訳でもなく、彼女が体をくねらせて道をすいすい抜けているだけだ。
とはいえ、連れられた私もすいすいと抜けられて教室にはあっさりと着いてしまった。
正直な感想、彼女は何者なのだろう。とさえ、感じた。
二人きりの、暗がりの教室。式典中の先生の話によると集合したクラスがそのまま今年のクラスになるそう。
つまり彼女とはクラスメイト、そんな彼女と二人きりである。
 窓際にて、さわさわと風が遊ぶように彼女の真っ黒で艶やかな髪が揺れていく。
彼女の席は窓際なんかではなかったが、別にそんなことはどうでも良かった。


 「そうね、お話をしましょう」


 彼女がそう口を開いたなら従うしかない、クラスメイトになる存在なら尚更。
勝手に彼女へ良くない印象を抱いていたが、それは妄想だった。


 「私はさぎさわひさぎ、貴方は?」


 「坂口蒼です、宜しくお願いします」


 彼女に聞かれた通り、名前を答えそれから礼をした。
すると、またクスクスと笑い声。まだ誰も来ていないのが不思議だった。


 「私なんかに敬語だなんて。それに律儀に礼なんてしなくて良いの。
だってクラスメイトだしそもそも同級生なんだから」








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