コメディ・ライト小説(新)
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- エンジェリカの王女 短編集
- 日時: 2017/10/31 18:46
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1a/index.cgi?mode=view&no=10848
初めまして、あるいはこんにちは。四季と申します。よろしくお願いします。
こちらでは、「エンジェリカの王女」の番外編・短編を書かせていただきます。
基本的に分かりやすく書く予定ですが、本編を読んでいないと理解しにくいシーンがある可能性があることはご了承下さい。
本編URLを掲載していますので、気が向けばぜひ。
それではお楽しみ下さい。
《目次》
エリアス過去編 『常に貴女の傍に』 >>01
ジェシカ&ノア過去編 『あたしとノアと』 >>04
『RPGゲームのキャラメイク大会をやってみた』 >>07
『ヴィッタの休日〜ティータイム〜』 >>08
『Aisia 〜散りゆく花〜』 >>11
『親睦を深める方法』 >>12
『一般市民の王女観察記〜花屋編〜』 >>13
『エリアスと二人の出会い』 >>14
『風邪を引いた冬』 〜前編〜 >>15 〜後編〜 >>21
『エンジェリカの二人 —ジェシカ&ノア編—』 >>16-18
《素敵なコメントありがとうございました!》
流沢藍蓮さん
ましゅさん
てるてる522さん
亜音最涅さん
- Re: エンジェリカの王女 短編集 ( No.17 )
- 日時: 2017/10/26 23:33
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2
2話
あたしは戦いが好き。
それが原因であたしは親に捨てられた。天使なのに戦いが好きなのはおかしいらしい。自分の子どもに「不気味」と言うなんて、酷い大人もいるものだ。
一番最初に襲いかかってきたのは、ノアを「紫」と呼ぶ男性天使。手首から肘までくらいの刃渡りのナイフを振り回しながら接近してきた。素早く懐に潜り込み、男性天使の胸部を肘で殴る。その威力で一瞬怯んだ男性天使の胸元を、剣で下から斬り上げる。う゛っ、と詰まるような声を出して倒れた。
「なかなかやりますね……ですが!」
「ふっ、手加減しねぇぜ」
女性天使と「ふっ、手加減しねぇぜ」しか言わないおじさん天使が同時に攻撃を仕掛けてくる。あたしは剣を持ったままその場で回転し、二人同時に斬った。
「よし!片付け完了っ」
あたしは三人を仕留めたことを確認すると、ノアのところへ戻る。
ノアは地面に座り込み小刻みに震えていた。顔は真っ青になり、羽は縮み、暗い紫の瞳には泣き出しそうなくらい涙が溜まっている。随分怖かったようだ。
「ノア、大丈夫?」
「う、う、うー……っ、うわああぁぁぁぁぁぁん!」
声をかけると、ノアは突然泣き出した。こんなに号泣するところを見るのは初めてかもしれない。ノアはいつも呑気にニコニコ笑っているから。
強く抱きつかれ、さすがに動揺する。案外力が強いし。こんなに全力で抱きつかれると少し痛い。
「そんなに泣かないでよ。心配しなくてもあたしがいるじゃん!」
「でも、でもー……でもだよー……。でもジェシカは、でもでもー……」
「ちょ、ほとんどでもしか言ってないじゃん!」
ノアは相変わらず意味が分からないことばかり言う。
だが、余程怖かったのだろうということは理解できるので、あたしはこれ以上何も言わないことにした。過去に自分に怖い思いをさせた相手が現れたのだ。恐れて震えるのは当然かもしれない。
あたしはノアをギュッと抱き締め返し、彼の頭をゆっくりと撫でる。手に触れる薄紫の髪は柔らかくて心地よい。
「怖かったね、大丈夫だよ。よしよし」
頭を撫でてあげていると、ノアはいつの間にか眠ってしまっていた。あたしの腕の中で。気持ちよさそうな顔で、スヤスヤと穏やかに寝ている。
いつもならノアが寝たら叩き起こすのだが、こんなことがあった後だ。今日くらいはゆっくり寝させてあげよう。
あたしはノアを木の根元まで運び、その体にふるぼけた毛布をかける。結構雑に動かしたが起きない。丁寧に動かすのが苦手なあたしにとって、そこはノアの良いところだ。
ぐっすり眠っているノアの横に腰を下ろし、空を見上げる。しかし風に揺れる黒い木々が見えるだけで夜空は見えない。
それにしても——こんな風に誰かに襲われるのは珍しいな。
食べ物を盗んだ店の店主に追いかけられることはよくある。野犬に襲われたこともある。だが、天使屋の関係者に急襲されたのは今日が初めてだ。
なんだか、嫌な予感がする。
けど、どんな敵が現れてもノアはあたしが護る。
それは彼と行動を共にすることになった日から決めていたこと。決して揺るがない、絶対的な誓いである。
◆
夜はすぐに明けた。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。気づけば朝になっていた。意識が戻り目を開けると、あたしの顔を覗き込むノアの姿が視界に入る。ノアはいつも通りの穏やかな表情だ。昨夜あれほど泣いていたとは思えない。
「ジェシカ、おはようー」
「……ノア」
今日はよく晴れた日だ。木々の隙間から太陽光が差し込んできている。起きたばかりのあたしは思わず目を細めた。
だって眩しいんだもん。
「今日は起きるの遅いねー。ジェシカはお寝坊さんだねー」
「は!?昨日遅くまで起きてたから仕方ないじゃんっ!」
「ごめんー。怒らないでよー」
寝起きから騒々しいなぁ。
昨夜はつい色々考えてしまい、気づけば遅い時間になってしまっていた。それに加え、天使屋の関係者がまた襲ってくるかもと警戒していたせいで、あまり深く眠れなかった。
おかげで寝不足。何とも言えない複雑な気分である。
しかしノアはというと、何事もなかったかのように呑気に笑っている。「ノアはあたしが護る」なんて決意をした過去のあたしがバカみたい。
「にしても、今日は凄い晴れてるなぁ。目があまり開かない」
「こんな日くらいは泥棒せずに過ごしたいなー」
「……アンタ、案外痛いとこ突いてくるよね……」
ノアの口調は穏やかだ。だからこそ、彼の言葉が胸を締めつける。
あたしだって望んで盗みをしているわけじゃない。可能なら真っ当な暮らしをしたいと思っている。でも無理なのだ。まともな教育を受けていない子どもであるあたしたちが就ける仕事など、エンジェリカにはほとんど存在しない。
働いてお金を稼ぐには読み書きをマスターしなくてはならない。しかし、あたしは簡単な読み書きしかできないし、ノアは読みも書きもほとんど習っていない。
「さて、今日はどうするー?」
ノアがじっとこちらを見つめてくる。その澄んだ瞳は、降り注ぐ太陽の光を照り返し、キラキラと輝いている。
……そんな期待したような目で見ないでよ。
曇りのない純粋な紫の瞳。それを目にすると、あたしだけが汚れているみたいな気がして、少し苦しくなる。
「ジェシカ、どうしたのー」
「えっ?」
「何だか元気なさそうだよー。大丈夫ー?」
「あ、うん。……大丈夫」
するとノアは急に立ち上がる。彼にしては珍しく素早い動作だ。
「よーし、じゃあ今日は川へ行こうー」
いきなりすぎて話についていけない。二人で川へ行くことはよくあるが、ノアが自ら提案するのは珍しい。少なくともあたしの記憶の中にはない。
「いつもはジェシカだからー、今日は僕が魚たくさん捕まえるよー」
「アンタいつも水怖がってるじゃん。捕れるの?」
「うんー。今日は頑張るよー」
ノアは魚を捕まえると張り切っているが、彼にそんなことができるとは到底考えられない。ノアは水が苦手だし、泳ぐ魚を捕まえられるほど素早くもない。そもそも、あたしでも難航するようなことをノアがやってのけるとは思えない。
だが、食料は手に入らなくても暇潰しくらいにはなるだろう。
そう思い、私はノアと歩き出す。行き先は近くの川だ。
- Re: エンジェリカの王女 短編集 ( No.18 )
- 日時: 2017/10/27 20:17
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2
3話
川へはすぐに到着した。
日差しが強いからだろうか、流れる水がキラキラ輝いていて、いつもより澄んでいるように見える。とても綺麗な光景に、あたしは暫し釘付けになった。
隣にいたノアは川の方へと駆け出す。しかし、川の手前で砂利につまずき顔面から転けた。しばらく起き上がってこないので、呆れながらもすぐに駆け寄る。
「ちょ、大丈夫?」
声に反応してゆっくり顔を上げるノア。彼は予想外にも笑っていた。
「うん、平気平気だよー」
目を凝らしてノアの顔を見ると、うっすらと膜のようなものがあることに気づく。髪と同じ薄紫の膜だ。
「その膜みたいなの何?」
「あー。転けちゃったねー」
「いや、話聞いてよ!」
するとノアはキョトンとした顔になり首を傾げる。あたしが聞いていることの意味が理解できないようだ。
聞くより試した方が早そうなので、ノアの顔に触れてみることにした。しかし、伸ばした手は薄紫の膜に遮られノアの肌に触れられない。
試してみた後、あたしは即座に気がついた。
「これ、もしかしてアンタの聖気なんじゃない!?」
天使が生まれつきまとう聖気には様々な色や種類がある。そして、聖気でどういうことができるかはそれぞれ違う。
あたしの場合は剣を作り出すことができる。しかしノアは、聖気が持つ力が何なのか知らないと言っていた。だから「防御膜を作るのがノアの力だったのでは?」と思ったわけだ。
しかし本人はというと相変わらずで、「そうなのかなー?」と言いながら笑顔で首を傾げている。話が飲み込めていないらしい。呑気というか何というか……言葉では言い表しようのないのがノアという天使だ。彼がいつもこんな調子だから、あたしは溜め息が尽きない。
溜め息をつくと幸せが逃げていくと言う。なるべく溜め息なしで済めば良いのだが、ノアと暮らしているとそれは難しい。
「とにかく魚を捕まえてー、ジェシカをお腹いっぱいにしてあげるよー」
ノアはゆっくり立ち上がると、川に向かって走り出す。走らず歩けばいいのに。安定感のない場所で走るから転倒するんじゃ——と思った瞬間また転けた。予想通りすぎる展開に呆れずにはいられない。なぜこうも不器用なのか。
「ノアはもういいよ!魚はあたしが捕るから!」
「えー。どうしてー?」
「頼りないアンタなんかには任せられない!」
少し苛立ち、勢いよく川へ入っていく。そんなあたしの後ろから追いかけてくるノア。
「待ってよー。たまには僕がー頑張るからー」
「いいって!もう、邪魔っ!」
ついカッとなったあたしは、ノアを突き飛ばしてしまった。
彼の細く軽い体は吹き飛び、勢いよく後ろへ倒れ込む。バシャンと大きな飛沫がかかり、それで正気を取り戻したあたしは、慌ててノアに寄る。
転倒した拍子に頭付近を軽く打ったからだろうか、彼は気を失ってしまっていた。傷は見当たらないし出血もないため重傷ではないと思うが、少し心配だ。あたしが突き飛ばしたせいでこうなったというのもあるし。
あたしは取り敢えず川の外へ運ぶことに決めた。長時間水に濡れていては体が冷えてしまう。
「……ごめんね、ノア。あたしが乱暴なことしたから」
すぐにリュックを開け、タオルを取り出す。そして川辺に座り込み、ノアの水浸しになった体をタオルで拭きながら、独り言のように呟く。
「ノアはあたしのために、魚を捕ろうとしてくれたんだよね……」
その気持ちを分かっていなかったわけではない。
ノアがとても優しい天使だということは知っている。動きは遅いし情けないが、誰よりも優しい。それが彼の良いところだ。
なのにあたしは、そんなノアの心を酷い言葉で傷つけ、突き飛ばしたりなんかして体まで傷つけた。
「あたしはやっぱり……傷つけることにしか能がないのかな……。ごめん、ノア。こんなあたしと二人で嫌だよね……」
ノアは幸せを知らない。だからあたしが幸せを教えてあげないとと思っていた。だが、これでは真逆ではないか。あたしは結局、少しもノアの役に立てていない。
このままではいつか必要とされなくなる——。
ノアがあたしから離れていく日が来るのが怖い。また昔みたいに一人ぼっちで暮らさなくてはならないなんて、絶対に嫌だ。
「……ジェシカー?」
不意に聴こえたノアの声に、あたしはハッと正気に戻った。
「ジェシカ、どうして泣いてるのー?」
慌てて頬に触れてみる。
どうやらあたしは泣いてしまっていたらしい。
「悲しいのー?」
「なっ、泣いてないっ」
「ジェシカ、変なのー。泣いてるのに泣いてないって言うー」
「そういうの止めてよっ」
ノアは相変わらず呑気にニコニコ笑っている。不思議で仕方ない。彼の脳は何かが欠落しているのだと思う。けれども、そのおかげで彼はここまで生きてこれたのだろう。
普通の天使なら、天使屋での過酷な日々に耐えられるはずがない。長時間労働に加え厳しい罰など、普通ならまず心を病むだろうし、最悪自ら命を絶つ可能性も否定できない。
そんな日々を耐えたノアは、どう考えても普通ではない。
「……さっきはごめん」
改めて真剣に謝ると、ノアは目をパチパチする。謝る理由が分からない、という顔だ。
「酷いこと言って、突き飛ばして。あたしはこんな性格だから、傷つけることしかできないんだ。だから……ごめん」
あたしが言い終わった時、彼は突然あたしを抱き締めた。体を密着させ、頬擦りしてくる。ノアが何をしたいのか、あたしには理解できなかった。
川の水に濡れたひんやりした頬が心地よい。
「僕はねー、ジェシカのこと好きだよー。ジェシカは僕を大切にしてくれるもんー」
とても優しい声だった。
あたしはまた泣きそうになる。だが今度は不安による涙ではない。
「ずーっと、一緒にいたいなー」
甘えたで小動物みたいなノア。あたしはそんな彼を本当に可愛らしいと思った。
「僕を捨てないでねー」
「分かってる。アンタを捨てるわけないじゃん」
「そっか、嬉しいなー。僕、ジェシカ大好きだよー!」
「あぁもうっ!重いって!」
◇終わり◇
- Re: エンジェリカの王女 短編集 ( No.19 )
- 日時: 2017/10/28 17:30
- 名前: 亜音最涅
いきなり失礼します。
亜音最涅と申します。
四季さんには、素晴らしいコメントをもらい、大変感謝しています。ありがとうございました。
「エンジェリカの王女 短編集」についてですが、文の書き方が、すごくきれいだと思います。
また、名前もすごく個性的で、個人的にとても良いと思いました。
これからも、頑張ってください。
- Re: エンジェリカの王女 短編集 ( No.20 )
- 日時: 2017/10/29 15:48
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2
亜音最涅さん
コメントありがとうございます。
覗いていただき感謝です。
また、名前を褒めていただけるのは珍しいので嬉しいです。
改めまして、今回はありがとうございました。
亜音最涅さんも無理のない程度で執筆頑張って下さいね。応援しています。
- Re: エンジェリカの王女 短編集 ( No.21 )
- 日時: 2017/10/31 18:43
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2
『風邪を引いた冬 〜後編〜』
自室にエリアスと二人きり。いつもなら何も思わないはずなのに、今日はなぜか意識してしまう。彼は護衛隊長なのだから、本来ならこんな気持ちを抱くのはおかしい。
——恥ずかしい、なんて。
「どうなさいました、王女。顔が赤くなっていますよ」
「えっ?」
「少し失礼しますね」
エリアスの手が私の額にそっと触れた。とても優しく触れてくれるのだが、それがまた恥ずかしさを高める。
胸の鼓動がどんどん加速していき止まらない。一体どうしてしまったのだろう、と自分で自分が心配になる。風邪を引いている時にこれほどドキドキしては体に悪そうだ。どうにか気を逸らさなければ。
「やはり……!王女、額が熱いです。もしかして熱がおありなのでは?すぐにヴァネッサさんを呼んできます」
立ち上がり部屋から出ていこうとするエリアスを「待って!」と引き留める。彼に聞こえるくらいの声を出したつもりだったのだが、予想以上に大きな声を出してしまった。
エリアスは驚いたようにまばたきしながら、こちらへ引き返してくる。瑠璃色の瞳が不安げに揺れながら私を見つめていた。
「王女、一体どうなさったのですか?高熱があるなら無理してはなりませんよ。ご安心下さい、この部屋は私が護っておりますから何も起こりません」
「違う。違うのよ……」
顔が赤くなっていたのはエリアスと二人きりなのが恥ずかしかったから、なんて言えない。いくら病人とはいえ、そんな意味不明なことを言い出せば、戸惑わせるだけだ。迷惑はかけたくない。
しかし、今のこの心境をなんと説明すればいいものか。
もう少し傍にいてほしい。私が思っているのはそれだけのことなのだが、なぜか上手く言えない。内容自体はとても単純で簡単なことなのに、いざ言葉にするとなると悩んでしまう。
「……お辛いのですね。王女」
エリアスはベッドの横に片膝を立てて座り、静かに私の指を握る。
「私にうつしても構わないのですよ」
「エリアス、何を言っているの?そんなのダメよ」
「貴女を護れるなら風邪くらい平気です」
「平気なわけないわ。いくら貴方でも風邪には勝てないわよ」
恐らく無自覚なのだろうが、彼はいつも芝居がかった優しいことを言う。普段の暮らしではなかなか聞かないようなことを。
だからヴァネッサに「口説くな」と注意を受けるのだ。
「では私は何をすれば良いのでしょうか。何をすれば王女のお役に立てますか?どうか、教えて下さい」
そんな捨てられた子犬のような目で見つめられても……という気分である。「自分で考えてほしい」と時にはそう思うこともある。疲れている時は特に。
だが、自ら私のために何かしようとしてくれている彼を邪険に扱うのも、心苦しいものがある。私の中の善の部分が良しと言わないのだと思う。
「そうね……じゃあ、私が眠るまで傍にいてくれる?」
さすがに断られるだろうと思うことを頼んでみる。これなら無理だと返してくるはずだ。
——しかし、私の護衛隊長はそれほど普通な天使ではなかった。
「はい。常に貴女の傍に」
何の躊躇いもなくそう答え、曇りのない瞳で微笑む。
想像の遥か斜め上を行く——。それが私の護衛隊長・エリアスの恐ろしさである。
◆
翌日、私は起きるなりヴァネッサに凄まじい雷を落とされた。
結局彼は、本当に、私が眠りにつく直前まで傍にいたらしい。そっと片手を握ったままで。
寒い冬のよく晴れた日。私とエリアスに対するヴァネッサの説教は、昼過ぎまで続いた……。
◇終わり◇
《余談》
どうもヴァネッサです。
冬場エンジェリカで一番人気な野菜はオギネアというものです。
この野菜は風邪予防に効果的だと言われています。私個人の意見ですが、スープやグラタンに入れるのがオススメです。味に深みが出るうえ、風邪予防にもなって、一石二鳥と言えますね。
それでは今日はこのくらいで。失礼します。