コメディ・ライト小説(新)
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- 満月ウサギとクール男子~短編~ 【完結】
- 日時: 2018/12/25 11:32
- 名前: 雪原みっきい (ID: 9Urj1l4Z)
ゆきみきです。
私のお父さんが前山形に住んでいたのでこのお話を思いつきました。
まあ実在の場所なんで知ってる人も多いと思いますが。
じゃあ、どうぞ。
目次
prologue>>1
第一章>>2
第二章>>3
第三章>>4
第四章>>5
第五章>>6
第六章>>7
第七章>>8
第八章>>9
第九章>>10
第十章>>11
あとがき>>12
- Re: 満月ウサギとクール男子~短編~ ( No.9 )
- 日時: 2018/03/28 16:23
- 名前: 雪原みっきい (ID: 9Urj1l4Z)
更新します!
第七章 仲間
その時、
「それは言いすぎなんじゃないですか?石川先生。」
と、声がした。利月は声のした方を向くと、目を丸くして驚いた。その声の主が、麗矢だったからだ。すると先生は、顔を顰めてこう言った。
「麗矢君、これは利月さんの問題です。あなたが口出しする筋合いはありません。さっさと一校時目の予習を始めなさい!」
麗矢はこの威圧にも全く動じなかった。
「それが、口出しする筋合いがあるんですよ。」
と言い、教壇へつかつかと歩み寄った。
「はあ?転校生のことを前々から知っていたと?あなたが知らないところから来たこの利月さんを?」
「いえ、前々から知っていたわけじゃありません。つい、昨日知り合いました。」
この麗矢の言動に、先生は口角を上げた。そして、
「じゃあ、利月さんのこともよく知らないくせに、口出ししたんですね?全く・・・あなたもいい迷惑ですよ、麗矢君。」
と、嫌味たっぷりに言い放した。
「先生は想像力が豊かですねぇ。まだ俺が、何故利月の事に口出しするのか言ってないのに。」
麗矢も先生に負けないぐらい、嫌味たっぷりに返答した。先生は少し、悔しそうな表情を浮かべた。
「ふん。褒めてくれてありがとうございます、麗矢君。まあ、聞く必要もありませんが、あなたの話を聞いて差し上げますよ。この後の授業もありますので、手短に。」
先生の言葉に、麗矢は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。実は、利月は俺と一緒に暮らしてるんです。利月は俺にその耳と尾の秘密を明かしてくれたんです。だから、彼女の真実を知ってるのは俺だけなんです、よ。」
この状況を無視して予習をしていたクラスメイト達も、麗矢の意外な一言に、一斉に麗矢の方を向いた。もう勝ちが決まってるこの状況で、負けず嫌いの先生は、焦りながら麗矢にこう問いかけた。
「あなたの発言だけでは信じられませんね。だって、あなたは対象の人物に優しすぎるんですもの。そのこと、ご家族の方たちは知ってるんですか?嘘をついてもすぐばれますよ?さあ、正直に言いなさい!」
麗矢は呆れたようにため息をつき、一呼吸おいてからこう言った。
「ええ、知ってますよ。疑うのならばうちの親に聞いてみるといいでしょう。ただ、それは先生の心が汚れている印ですがね。」
麗矢がそう言うと、先生はグッと歯噛みし、こぶしを握りしめた。もちろん、誰にもばれないように。でも、私は気づいた。麗矢も気づいたと思う。だって、あいつ館の良さは抜群だから。昨日それを知った。
- Re: 満月ウサギとクール男子~短編~ ( No.10 )
- 日時: 2018/03/28 16:59
- 名前: 雪原みっきい (ID: 9Urj1l4Z)
第八章 いじめ 前編
悔しながらも観念した石川先生。そして、利月にこう言った。
「利月さん、関は麗矢君の隣。さっさとおすわりなさい!」
ぶっきらぼうなこの言葉には、恥をかかされた怨念と、悔しみが混ざっていた。利月が麗矢の隣の席に座ると、麗矢と利月の前の席の子たちが聞こえよがしにコソコソと悪口を言っていた。
「え~、本当にあの子と同居してたら超ショックなんですけど~」
「まっさかぁ。麗矢君の優しさでしょー。ごまかすために嘘ついたんだよ。だってあんな地味女、誰が一緒に住みたいっつーの!(笑)」
利月は麗矢に恥をかかせてしまった謝罪と、自分が情けなかった悔しさが同時にこみ上げてきた。利月は悲しくて、うつむくほかなかった。こんな様子を見て、前の子たちはクスクスと笑っていた。
「おいおい、こんなんで落ち込んでたら、もっとひどくなるぞ。お前はあんな奴らに敵わないほど可愛いんだから、自信持って堂々としてりゃあいーの。」
と、麗矢が励ましてくれた。利月は「可愛い」というのが冗談と分かっているが、心でドキドキしていた。でも、そんなことはばれないように、利月はそのドキドキにぎゅっと蓋をした。そして、麗矢にさっきの感謝も込め、お礼を言った。
「うん・・・ありがとう、麗矢。」
「ああ。あんなの、どうってことないぜ。ま、同居してんのがばれちまったけど。」
利月は心の中があったかくなるのを感じた。
(きっと、麗矢のおかげだ)
と思いながら。
―――――中間休み。利月はある女子たちに呼ばれた。
「利月・・・っていうんだよな。お前、麗矢と仲良くしすぎなんだよ。分かってる?麗矢がモテること。麗矢は私らのもんなんだよ。」
その女子グループの大将みたいな人に、そう言われた。
「分かってるよ。」
利月はそう言った。大将はこう続けた。
「よし、なら話は早い。麗矢はな、私らのもんなんだよ。お前みたいな地味子の相手したら可哀想なんだっつーの。だから金輪際、麗矢と会話すんじゃねーぞ?」
大将の言葉に、その仲間たちが、
「アハハハハッ!」
と、高笑いした。だが、前も言ったが、言いたいことは言う利月はこう言った。
「はあ?ばっかじゃないの。隣の席なんだから喋んなきゃいけないに決まってんでしょ?ペアで課題解くときとか。そんなことも分かんないなんて、よっぽどの馬鹿ね。」
と。この言葉にその女子グループたちは驚いた。今朝と利月の態度が全く違うからだ。
「調子のってんの?」
大将は負けじとそう言った。利月はそんなこと気にしないで、
「あなたたちこそ、調子のってるんじゃない?じゃ、私はこれで。」
と言い捨て、利月は教室へと戻っていった。大将―美菜は、悔しそうに舌打ちする。が、それもほんの一瞬。すぐに不気味な笑みを浮かべ、こう言った。
「見てろよ、利月。」
- Re: 満月ウサギとクール男子~短編~ ( No.11 )
- 日時: 2018/03/28 18:19
- 名前: 雪原みっきい (ID: 9Urj1l4Z)
第九章 いじめ 後編
その日の授業が終わって、利月は帰ろうとしていた。
「さて、と。準備も終わったし、帰ろうっと。」
もう教室に残ってた生徒は利月しかいなかった。利月は麗矢を迎えに行こうとして、麗矢の部活―弓道部に向かった。しかし、もう弓道部の部活は終わっていて、麗矢の姿はなかった。
「あっれ~?先に校門のところに行ってたのかな?」
利月はそう思って、急いで校門に向かおうとした、その時だった。突然何者かに口をハンカチでふさがれ、叫べずに意識を失っていった。
「麗・・・矢ッ・・・」
「あいつおせーな・・・。そういえば、今日美菜たちになんかされてたよな・・・。まさかッ!」
麗矢はやっと気づき、急いで校内に戻った。
利月は意識が戻った時、知らない部屋にいた。だが、周りにはボール・マット・得点版などがあったため、すぐに体育倉庫だと気が付いた。利月は大縄で椅子に身体を縛り付けられていた。
「あ、クソ女が目を覚ましたぞ。」
いきなりあの大将の声がして、利月は驚いた。
「あなたたち・・・ッ!何する気!?」
利月は怒りながら大将にそう問いかけた。大将は不気味な笑みを浮かべ、こう言った。
「あんたを地獄に叩き落とすんだよ。それより、私たちの事、名前で呼べよ。あ、そっか。私らの名前知らないのか。じゃあ教えてやるよ。私は美菜。」
と、大将が言った。それを合図にほかの仲間も名前を述べた。
「私は美羽。」
「私は玲子。」
と。
「覚えておくんだぞ、クソ女。」
美菜はニヤリと笑った。
「さあて、まずは・・・その可愛らしい耳の毛を切ってやろう。お前ら、これを使え。」
美菜が取り出したのは、なんと改良されたカミソリだった。それには、金属の刃が何本も付いていた。利月はひどくおびえた。そして、利月は、
「麗矢ーッ!!助けてーっ!!!」
と、叫んだ。
- Re: 満月ウサギとクール男子~短編~ ( No.12 )
- 日時: 2018/03/29 09:49
- 名前: 雪原みっきい (ID: 9Urj1l4Z)
第十章 涼音
麗矢は今、急いで校内中を駆け回っている。麗矢の大切な存在、利月の危機を感じたから―――――。
「どこだ・・・!どこにいる・・・」
麗矢は息を切らしては走るを繰り返していた。校内を探してもいなかった。そして、校庭を駆けていたその時、
『麗矢ーッ!!助けてーっ!!!』
と、利月の声がした。麗矢はあわてて声のした方に向かった。声の出どころは体育倉庫だった。
そのころ体育倉庫では、美菜の仲間、美羽と玲子がカミソリで利月の耳の毛を剃っていた。その剃り方が乱暴だったため、利月の耳からは血がにじんでいたり、出ていたりしていた。
「何でこんなことっ・・・きゃあっ!」
美羽と玲子は狂った笑みを浮かべ、利月の声を無視して耳を傷つけ続けた。利月の鮮血は髪の毛をつたり服と床に滴り落ちていた。利月は心の中でこう思っていた。
(麗矢・・・来て・・・)
と。その思いが届いたのか、
『利月、大丈夫か!?おいっ、返事しろ!』
とドアの外で麗矢の声がした。利月は返事をしようとした。
「うん、大丈・・・んぐっ!?」
だが、その返事は美菜にかき消された。美菜は利月の口をガムテープでとめた。そして麗矢に向かってこう言った。
「利月はさっきまでここにいたけど、もうあっちの方行っちゃったよ?」
と、嘘の言葉を。美菜の言葉で利月の希望はことごとく打ち砕かれた。麗矢もこれを信じ込み、
「そうか。ありがとう。」
と、違う方向へかけて行った。美菜たちは利月にこう言い放した。
「あ~あ。見つかっちゃった。私たちがやったと思われたくないから、ここ出るねー。」
と。利月は最後の光だと思い、美菜に、
「じゃ、じゃあ、私も―」
と言った。しかし、美菜はこの言葉も
「はあ?誰がお前みたいなクソ女をこっから出すっつーんだよ。バーカ!」
とかき消した。美菜たちは高笑いしながら体育倉庫から出て行った。それだけならまだ出られる希望はあったが、美菜は体育倉庫の扉に何重も思いカギをかけた。これでは出ることは100%無理だ。利月は最後に神様に祈ろうとした。
(神様、私は幸せではありませんでした。でも、この命を授けてくださったこと、心から感謝いたします)
利月は神様を恨みもせず、ましてや感謝した。ああ、これで死ぬんだ・・・と思いながら。
「利月、先に帰ったのか。」
麗矢は不信感を抱いていたが、家に帰らなくては両親に大目玉をくらうと思い、家へと駆けた。
「えっ、利月は帰ってない・・・?」
麗矢は両親にそう言われ、かばんが手から滑り落ちた。
「ええ、そうよ。え?もしかして、おいてきちゃったの?」
麗矢はやっと気が付いた。美菜が嘘をついていたことに。麗矢は自分の情けなさを悔やんだ。だがそんな暇はない。早くしなければ利月が死んでしまうかもしれないのだから。
―午後5時を指した針と、せわしなく動く秒針。刻一刻と迫っていた。
麗矢は急いで体育倉庫へと向かった。麗矢は、利月を死なせまいと走っていた。麗矢は全速力で走って走って走った。
「待ってろ、利月。」
利月はそのころ、ずっと祈っていた。眠くなりながら、うとうとしながら。それでも、寝ては駄目だと自分に言い聞かせ、必死に起きていた。そんな時、誰かがドアをドンドンとたたく声がした。利月は麗矢だと思って一生懸命唸った。
「あっれぇ。クソ女、まだ生きてたんだ~。さっさと死ねばいいのに。じゃ。」
美菜たちだった。また高笑いしているのがはっきり聞こえた。
(あんたたちに言われなくても、さっさと死ぬよ)
利月は心でそう言っていた。
麗矢は体育倉庫に向かう途中、美菜たちに出会った。麗矢は我を忘れ、怒り任せに美菜を突き飛ばした。
「お前ら・・・よくも、よくも利月を傷つけ、俺をだましやがったな!お前のことは死んでも恨み続ける!」
美菜は突き飛ばされてぶつかったところをさすりながら、こうつぶやいた。
「こんなこと、しなきゃよかった・・・」
またドンドンと体育倉庫のドアをたたく音がした。利月は返事をしなかった。希望も光も心から消えていた。でも、麗矢だけは消えなかった。短い間だったが、麗矢との思い出がたくさんあったからだ。よく考えてみれば、麗矢には助けてもらわれてばっかりだなと思いながら、思い出をよみがえらせて、脳内で再生していた。
「利月、大丈夫か!?今あけるからな!」
利月は奇跡が起こったと思った。麗矢が助けに来てくれたからだ。麗矢は一つずつ鍵を外していき、扉を開けた。麗矢は見るも無残な姿になった利月を目の当たりにした。それはとても残酷だった。麗矢は美菜がやっぱり許せないと思った。そして、丁寧に大縄をほどき、利月を抱きしめた。利月は麗矢の予想外の行動に驚いた。
「本当に・・・本当に無事でよかった・・・」
麗矢は涙をこぼしながら、そういった。
「そんな・・・それより、服が汚れちゃう―」
「そんなのいいんだ。お前が生きてりゃあ、それで。」
夕日がさす体育倉庫、二人の姿は絵になった―。
~END~
- Re: 満月ウサギとクール男子~短編~ ( No.13 )
- 日時: 2018/03/29 09:59
- 名前: 雪原みっきい (ID: 9Urj1l4Z)
やー、遂に完結しました!
ほとんどが没作品だったので、完結できて本当にうれしいです♪
読んでくださったみなさん、ありがとうございました!
そして、お知らせがあります。
満男番外編描きます!
ぜひ読んでみてくださいね♪