コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

いちごミルクに砂糖は要らない。
日時: 2018/04/21 16:00
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: NGqJzUpF)









 君がいなくなって、もう七年も経ったよ。

 でも、まだ、君を忘れられないんだ。




 □■□




 ◆ 一ノいちのせそら
 ◇ 当麻とうまえな
 ◇ 佐藤さとう奈々なな
 ◆ 香坂こうさか日向ひなた
 ◇ 白石しらいし小夜香さやか


 初めてこの作品を書いたのは私が中学一年生の時でした。つまらない授業を受けつつ、隠れてノートに小説を書いていたあの頃のことを思い返してみれば、今ではとても懐かしく感じます。それこそこの物語のように七年近くの時間が経ち、また書き直しをしようと思ったのは、この作品をちゃんと完結させてあげたいと思ったからです。七年の間にプロットはどこかに消え、覚えていたのは彼らの下の名前だけとなってしまいました。あの頃に書いていたような作品をもう一度書く、ということはできませんが、七年後の自分が彼らのハッピーエンドを描けたらなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 

 いちごミルクに砂糖は要らない。だって、甘すぎるから。君の、その嘘も。








Page:1 2 3 4 5



Re: いちごミルクに砂糖は要らない。 ( No.20 )
日時: 2020/04/10 18:34
名前: 美奈 (ID: cO3So8BN)

立花様

こんにちは。
美奈です。相当ご無沙汰しておりますが...覚えていてくださったら嬉しいです...!
最初は初めましてのお名前だと思っていたのですが、I live with ヴぁんぱいあ。の文字を見て、あっ!とすぐにフラッシュバックしました。

以前、私の小説にも来ていただいて、コメントを下さいましたね。懐かしさで胸がいっぱいになっています。笑
立花様もブランクが空いての執筆のようですが、この作品、状況の描写が特に素敵だなと思います。ミステリアスなのに描写が丁寧で、すごく引き込まれました。更新楽しみにしてますね!

追記:前にコメントを下さった「藍色のrequiem」、今プロットを大幅に直していて、近々新スレッドで再開しようと思っています。お時間ありましたら是非見に来てください。

Re: いちごミルクに砂糖は要らない。 ( No.21 )
日時: 2020/04/16 15:58
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: rtUefBQN)




 >>020 美奈様

 うわあああああああお久しぶりです覚えております懐かしや!
 変なテンションで申し訳ないです。覚えていてくださってとても嬉しいです。

 お恥ずかしながら仕事を始めてからほぼ創作活動をしてなかったため、ブランクが非常に長くリハビリ状態です。ストーリーは中学生くらいの時に軽く構想してたものなので歪な点も多々ありますが、ちゃんと書き切れるように頑張りたいと思っております。ミステリアスな雰囲気が少しでも出てるみたいでとても嬉しいです。

 藍色のrequiem懐かしいですねとても好きでした。新しく始められるときはまた読みに行かせていただきますね。楽しみにしております。コメントありがとうございました。

13 ( No.22 )
日時: 2020/07/08 00:58
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: rtUefBQN)

 えながいなくなった時、口の中で砂の味がした。気持ち悪くて仕方がなかった。ひたすらに嗚咽が止まらなくなって、後悔で頭の中がぐちゃぐちゃになった。引き留められなかった自分があまりに情けなくて、好きだった気持ちがとても軽く思えた。馬鹿みたいだ。


「で、結局何のようなわけ。もう帰りたいんだけど」

 時計をじいと見つめながら柚原志麻は足を軽くばたつかせた。
 オレが奢ったクリームが大量にのったフラペチーノも飲み干していて、荷物をまとめて帰る準備をするくらい。オレはどうやって引き留めていいのかわからずに、無意識に彼女の腕をとっていた。

「えな、ちょっと待ってよ」
「……その名前で呼ばないで」

 不機嫌な声だった。
 たった二、三年会わなかっただけで人間はこうも変わるのか、と驚くぐらいに、彼女にえなの面影は何一つなかった。彼女にさっき言われた通り、オレが好きだったえなはもういない。彼女はえなではない。
 彼女の演じた「当麻えな」という役に、オレは恋をしたのだ。

「でも、オレにとったら、えなはえなだよ」
「そう。でも、もう戻れないよ。だって、私はえなじゃないから」
「じゃあ、志麻って呼んでいいの?」
「……」

 彼女の本名をそのとき初めて呼んだ。
 そんなこともちゃっかり調べてきたのか、と不服そうな表情をして「別に」と彼女はそっぽを向く。別に、の意味がどっちか分からなかったけれど、オレは彼女の腕をぎゅっと引っ張ってこちらを振り向かせた。
 嫌そうな顔。当時は見せなかった、こんな表情なんか。

 儚い、今にも消えそうな女の子だったから。えなは。


「……私はいい子なんかじゃない」
「……?」

 彼女がトレーに乗せていたごみを捨てながらぽつりとつぶやいた。
 最初は意味が分からなくて、聞き返そうと思ったけれど、きっともうえなには戻れないんだよと言う意味だと分かってオレは口をつむった。

「日向が私に何を求めてるのか、わかんないよ。だって、私はもう日向が好きって思った当麻えなじゃない。空にも嫌われて、小夜香にも嘘をついて病院から出た。当麻えなは死んだんだよ。日向は、」


 当麻えなじゃない私なんか、もう誰が必要とするの?



 軽率な行動をした、と彼女のこの言葉を聞いてオレは反省した。
 ただ、会いたかっただけだった。もちろん、オレの我儘だ。あの日、彼女が病院を出ていく日、ちゃんと引き留めておけばこんな感情にならなかった。
 ずっと足に鉛玉を括りつけられているかのように体が重くて、自分だけが知っている真実に吐き気がした。柚原志麻が用意された人形だと知っていながら、オレも黙っていたから。共犯だった。彼女が傷つくことも、わかっていて止められなかった。酷い奴だと、どれだけ自分を責めたかわからない。

 でも、当麻えなをやめた彼女に、オレは何を求めていたのだろう。
 もう一度、あの嫌な思い出を無理やり思い出させて、好きだという勝手な気持ちを押し付けた。あの時から変わらない。オレは情けない人間だ。


「オレは、」

 彼女の後姿は、あの日オレの前から姿を消したときと、あまり変わらない。
 小さな背中。悲しそうな背中。


「志麻のことも、きっとまた好きになるよ」


 彼女はオレの告白に振り返って、こちらを凝視したあと「馬鹿じゃない」と眉をひそめて呟いた。「うん、オレ馬鹿なんだ」と笑ってオレは彼女の隣に駆け寄る。次はいつ会う、と聞くと志麻は嫌そうな顔を隠すことなく「一年後」とそっぽを向いた。「じゃあ来週ね」と彼女の頭をぐしゃぐしゃに撫でると、彼女は口癖のように「馬鹿じゃん」と今日初めての笑顔を見せてくれた。

14 ( No.23 )
日時: 2020/07/14 23:10
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: rtUefBQN)

 志麻はあの頃のえなとは似ても似つかない性格で、かなりきつい発言も目立った。オレのことをまだ信用しきってないのだろう、一歩距離がとられている。
 オレがメッセージを送ると、三回に一回ぐらいのペースで返事が返ってくる。志麻に会うのは決まって金曜の夕方、二週間に一度くらいの頻度でオレは彼女と秘密の逢瀬を重ねていた。

「日向は可愛い女の子にちやほやされて楽しそうじゃない」
「なに、急に」
「別に」

 約束の時間に遅れてきたオレに、志麻はさらっと毒を吐く。きっとここに来るまでにオレに引っ付いてきていた女子の集団のことを言っているのだと思う。これが嫉妬だと思えたらどれだけ幸せか、と思うけれどオレはそんな軽率な勘違いはしない。彼女はただオレの反応を面白がってるだけだ。

「もうすぐ冬だけど、日向くんはどれだけチョコレートもらえるのかなあ」

 からかうように笑う志麻は、とことこと足早にオレの前を歩いていく。車道の近くを歩いていたから腕を引っ張って右側に彼女を動かした。ぴくり、と彼女の眉が下がったけれど、何も言わずにまたどんどん足を進めていく。

「オレがほしいのは、志麻のチョコなんだけど」

 彼女の後姿にオレが叫ぶように言うと、志麻はぱたりと足を止めて顔だけこちらに振り向いた。彼女のさくらんぼ色の唇が僅かに動く。音にはならなかった。

 馬鹿なの?

 どうして不満そうな表情なのか意味が分からない。
 志麻がぷくっと頬をふくらませてこちらをじいと見る。愛らしいその表情にオレは思わず彼女の頭を撫でた。ふわりと撫で心地のいいクルミ色の髪。あの当時、長かった髪はもうばっさり切られていて、肩よりも短いボブカットになっていた。
 嫌なのか、それともくすぐったいのか、彼女はやめてとオレの腕を無理やり引きはがして、小さくくしゃみをした。

「なに、寒いの?」
「別に」
「志麻はそればっか。別にって、口癖なの?」
「別に」
「ほら、また言った。オレと会話する気あるの? ねえ、志麻ちゃん?」

 面倒くさくなったのか、志麻は精いっぱい背伸びをしてオレの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。綺麗にセットした髪も彼女の嫌がらせのせいで簡単に崩れてしまう。彼女がオレの髪の毛をぎゅっと握って小さく「馬鹿」と言った。何が馬鹿なのか、彼女の口癖がどうして別に、なのか。オレにはきっと何も言いたくないんだろうなと分かっていても、オレは志麻に構わずにはいられなかった。

 もしこれが空だったら、と、考えたら怖いことまで頭に浮かんで。オレはかぶりをふる。そんなネガティブなことを想像するなんてオレらしくない。
 でも、オレらしいってなんだろう。
 考えれば考えるほど、深く海の底のような場所に閉じ込められる感覚がして気持ちが悪くなる。
 オレは空にはなれない。


「ねえ、志麻。どうやったらオレのこと好きになってくれんのかな」
「私に聞かないでよ」
「……うん、ごめんね」

 わからない、あれからもう五年近くの月日が経ったよ。
 えなの嘘は誰も傷つけなかった。そのはずなのに、どうしていまだにえなはそんなに頑なに昔の話をしないんだろう。何かオレがまだ知らない秘密があるんだろうか。わからない、きっとわからなくていいんだ。

 志麻はきっと知られたくない。そう思ってるはずだから。

 
 志麻がオレのことを好きになってくれる可能性が限りなく低いこともわかっていた。それでもオレは、自分の気持ちを偽ることがどうしてもできなかった。

15 ( No.24 )
日時: 2020/07/15 23:22
名前: 立花 ◆FaxflHSkao (ID: rtUefBQN)

 その日、オレは秘密の欠片を見つけてしまった。偶然、うっかり、本当は見てはいけないものだったのに。欠片に手を伸ばさずにはいられなかった。
 知りたい、という衝動をどうしても抑えることができなかった。


 ■

「ねえ、志麻」

 そっけない態度は相変わらずだったけれど、志麻は最近は少し言葉を返してくれるようになった。口癖のように何度も言う「別に」というオレへの拒絶の言葉が減り、嫌そうな顔は変わらずとも相槌をうってくれるようになった。

「なあに」

 志麻にバレンタイン前日、チョコをねだると「馬鹿なんじゃない」とそっぽを向かれた。もうすぐ高校受験の大事な季節なのに、と苛立っているのか恥ずかしいのか、どっちかはわからないけれど手に持っていたカバンで思いっきり殴られる。
 だけど、バレンタイン当日、珍しく志麻から連絡がきて会うことになった。いつもはオレからしか誘わないのに珍しいことがあるものだ、と思っていたら想像通りその日は雪が降った。ホワイトバレンタインだ。

「オレ楽しみにしてたんだけど」
「なにを」
「え、オレに言わせたいの?」
「面倒くさいこと言わないで」

 くしゅん、彼女が小さくくしゃみをして鼻の頭をこする。少し赤くなっていて、彼女の吐く息が真っ白になっていた。寒い、と聞くと「うん」と彼女は下を向いたまま頷く。オレは自分のしていたマフラーをはずして彼女の首にかけた。

「……日向ってほんと、あれだよね」
「あれって、なに」
「気障だなあと思いまして。そりゃ小夜香も好きになるわ、こんなことされたらさ」

 マフラーを巻いているときに触れた彼女の皮膚は酷く冷たくて、オレが頬をなぞるように撫でると彼女はびくっと体を震わせてすり寄るようにオレの熱を求めた。

「ここで小夜香の話をもってくるあたり、お前は本当嫌な奴だよな」
「だって、つらいじゃん」

 彼女に再会して二年の月日が流れた。ようやく心を開き始めてくれたと思ったのに、どこか彼女との関係性は曖昧で、隣にいても一線を引かれているような感覚があった。彼女の言葉でその理由が分かった。小夜香のことを、彼女はまだ気にしている。

「もしさ、私が日向のことを好きになったとするよ。でも、そしたらさ、また、私は」
「小夜香のことを裏切るとか思うわけ?」
「……小夜香、容体はどうなの」
「最近はどんどん悪くなってる。会うなら早く、っていうのがオレの気持ちだけど、志麻は会いたくないんだろ、ってか会えないって思ってる」

 志麻がじとっとした視線をこちらに向ける。彼女にこんな顔をさせたかったわけじゃないのに。彼女のことを傷つけたかったわけじゃないのに。
 ずっと志麻は、当麻えなとして生きていた時代のことを後悔している。彼女は求められたまま、求められた役を上手く演じただけなのに。それなのに。

「小夜香に最後まで私は謝れない」

 彼女は今にも泣きそうな瞳で。「私は悪くないから」と言葉をつづけた。
 あれだけ仲の良かった関係も、こんなあっさりと壊れてしまうのだと思うと怖い。彼女はカバンに入れてあった紙袋を取り出してオレに渡すと、じゃあ、と帰っていった。手作りなのか、綺麗な箱の中には不格好なチョコレートが入っていた。一粒とって口の中に入れる。カリっと奥歯で噛んで、彼女の後姿を目で追った。
 口の中がチョコで甘ったるい。
 秘密の欠片を偶然見つけた。きっと、彼女も知ってる。だけど、ずっと黙ってたんだ。二年前から、オレはその秘密を君に問いただせずにいる。




 空の父親はまだ、生きている。




 四話 「秘密の欠片を飲み込んで、」


Page:1 2 3 4 5



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。