コメディ・ライト小説(新)

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狼猫狐の三重奏
日時: 2018/01/04 11:50
名前: 熾代京

それは狼だった。

3人の中では一番幼く見える少年でありながら、3人の中で一番がっしりとしていた。


それは猫だった。

すらっとしたしなやかな体躯に紳士さながらの衣装をまとわせ、凛として立っていた。


それは狐だった。

その整った顔にある、一際目立つ瞳はつりあがり、道行く者を警戒していた。


それらは、旅人であった。

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Re: 狼と猫、そんで狐 ( No.1 )
日時: 2018/01/06 11:07
名前: 熾代京

 昼食の時間が過ぎた頃。

 旅人として旅をしている、ルー、カッツ、ヴォルペの3人は、とある村へとたどり着いた。
 衣服は少しボロっとしているが、村人は痩せている訳でもないし、食べることは困っていなさそうな村であった。

「ルー、ヴォルペ」

 楽しそうに辺りを見回す2人を、カッツが呼ぶ。カッツはすらりとしていて、大人びた青年だった。20代前半に見える。

 振り向いたルーとヴォルペ。
 ルーの方は、この3人の中では1番幼いようであった。10代半ばだろうか。少し色の褪せた服を着ている。長袖を肘まで捲っており、そこから伸びる腕は筋肉質だった。
 ヴォルペは、不思議な身なりをしていた。容姿はとても美しく、村娘たちの視線を浴びている。金がかった茶髪を高く結んでいた。「浴衣」と呼ばれる東の村の衣服を着ていた。腰の帯には、重そうな装飾が並んでいた。


「なに、カッツ」

 ルーが聞く。その声は急げといっていて、早く村をまわりたいことが聞き取れた。カッツは表情を変えず口を開く。


「空が曇っている、雨が降るかもしれないから宿から先に行こう」

 淡々と用件だけを並べ立てたあと、身を翻し村人に宿の場所を聞きに行った。

 旅人は珍しくない。村であろうと、宿くらいはある。なくても、寝床を分けてくれる優しい村人もいるだろう。

 カッツが話しかけた、少し老いた女性は自分の家が宿だ、と快く案内してくれた。


「お世話になります、よろしくお願いします」

 宿の店主に深々と頭を下げるカッツ。ルーもそれに倣い、にこにこと笑いながら頭を下げた。
 ヴォルペは、宿へと案内してくれた女性の手を取り、片側だけ長い髪をさらりと耳にかけ、

「貴女のような美しい方の宿に泊まれるなんて、僕はなんて幸福なのでしょうね…。朝起きたら貴女がいる。それを考えるだけで僕の心はもう」

 口説いていた。

「あらあら、こんなおばさんを美しいだなんて…」
「おや、僕の目には美女しか見えませんが…?」
「まあ!」

 本気なのかどうかはわからない。ただただ褒め続けていた。


「すみませんが、部屋に案内してもらってもいいですか?荷物を置きたいので」

「あっ、ごめんなさいねえ」

「いいよ、ヴォルペにナンパされたら断れないもんね!」
「おっ、ルー、嬉しいこと言ってくれるじゃん!」
「ヴォルペ、ルーは褒めたつもりはないと思うぞ」

Re: 狼猫狐の三重奏 ( No.2 )
日時: 2018/01/15 17:36
名前: 熾代京

 太陽が昇る、朝。
 一番最初に起床したのはカッツだった。未だ眠そうにふぁ、と欠伸をしている。村の人よりかは幾分と遅い起床だが、ルーとヴォルペよりかはとても早かった。
 いつもどおり隣に寝ているルーを起こさないようにベッドから下り、いつもの衣服に手を通してから宿を出た。


 人の少ない宿の庭で、太陽の下で腕を思いっきり伸ばし、軽く体操をする。

 これがカッツの日課だった。
 それから朝ご飯を食べ、旅の資金を稼ぐ為に仕事を探しに行く。無ければ宿で休む、といったようなスケジュールだ。

 腰を捻って、睡眠で固まってしまった身体の筋肉を解していく。上半身を反って、足を揃えて前に倒すと手のひらがなんの苦もなく湿った地面にぺたりとついた。

 カッツの自慢は、身体が柔らかいことだった。

 視界の端に人影が映る。

「へえ、柔らかいじゃないか」

 それは、宿の主人だった。
 目尻にくしゃっと皺をつけて笑うご主人は、おおらかで優しそうだという印象を持つ。


「おはよう、旅人さん。良く眠れたかい?」

「ええ、お陰様で。連れもぐっすりと眠っています」

「そりゃあよかった!朝飯はいるか?」

「是非」

 カッツは口元に笑みを浮かべ返事をした。宿の主人は気を良くしたようで、言葉を紡ぐ。

「今からあそこにある畑へ行くんだ。俺んちの野菜は美味いって有名なんだぞ!」

「そうなのですか。それは、朝食を頂くのが楽しみです」


 しゃがんで足を横に伸ばす。手を伸ばしてバランスを取りながら、膝の裏が地面につきそうなほど近寄らせ足を伸ばしていた。
 両足やれば、体操は終わりだ。
 軽やかに立ち上がり、カッツがあちこちを伸ばしているのをしげしげと眺めていた宿の主人に向き直った。


「よければ、その畑仕事を手伝わせてください。これでも、力仕事には自信があるんですよ」

「ええ?いいよ、その綺麗な衣(ころも)が汚れちまう」

「お気になさらず。泊まらせて貰ってご飯も貰うのですから、これくらいの手伝いはさせてください」


 カッツは紳士だ。女性だけでなく、男性にも優しい。こういう風に、何かやって貰ってからその恩返しとして何かを手伝うこともあるし、困っている人を見かければ無償で助けることもある。
 ただし、ルーやヴォルペからは「胡散臭い」と言われることもあるが。
 それは、カッツが似合わない笑顔を浮かべているからだろう。

 だが主人は、嬉しそうに「じゃあ頼むよ」と畑まで歩を進めた。


「そういえば、ご主人」

「なんだ?」

「この辺りで、旅人を雇ってくれるところってありますかね?」

「?どうしてだ?」

「旅の途中のご飯だったりを買うのに、お金が必要で。お金じゃなくて、日持ちする食料でも良いのですが…」

「んー、心当たりはねえなあ……。俺のところで雇ってもいいんだが…旅人なんて滅多に来ねえしな。すまんな」

「いえいえ!心遣い、感謝します。あとで探してみます」

「おう、そうしろ」




 畑についたときだった。

「なんっじゃこりゃあ!?」

 宿のご主人が叫ぶ。
 ご主人の視線の先には、ぐちゃぐちゃに荒れた畑。すくすくと育っていたであろうトマトはへし折られ、地面に埋まっていた芋も掘り返されていた。

 カッツは眉をひそめ、辺りを見回す。
 人影は一切ない。そもそもこの畑があるのは村の外れで、普通はこんなところに人なんて来るはずはなかった。畑の周辺にあるのは、立派な木々。そしてそこに、とある痕跡を見つけた。


「……猪ですね」

 カッツが呟く。宿のご主人は、「えっ?」と聞き返した。

「猪。見てください、あっちの木のそば、足跡があるでしょう?足跡からすると、かなり大きな猪のようですね」

「ま、待ってくれ旅人さん!いのしし、ってなんだ?!」

「……え?」

 わからない、と体で表すように手足をばたつかせ汗を垂らすご主人。それを見たカッツは、少し俯き、はあ…と溜息をついた。

Re: 狼猫狐の三重奏 ( No.3 )
日時: 2018/01/15 17:52
名前: 熾代京


✽閑話✽

「と、いうことで、ヴォルペ。ルー。仕事だ」

「ちょっと待てよカッツ、何がということでだ!?」

 叩き起こされたヴォルペは、カッツに食ってかかる。
 それもそうだ、カッツは部屋に戻ってきて早々、ルーを揺すって起こし、ヴォルペを蹴ってベッドから落として起こしたのだ。そして、冒頭の台詞になる。
 これでは、ヴォルペが怒るのも仕方ない。

 ヴォルペはがしがしとその金色の綺麗な髪を雑に掻き、未だ優しくルーを揺すりつつ声を掛けるカッツをキッと睨んだ。

「お前は、なんで、ルーには甘いんだよッッ!!!」

「ルーはまだ子供だろう。お前は俺と同い年で大人だ」

 カッツが事も無げに言うと、ヴォルペは悔しそうにぐ、と喉を鳴らした。


「ルー、ルー、起きろ。仕事だぞ」

「ん~……まだ眠いよ……もうちょっと……」

「仕方ないな。じゃあ、ヴォルペに仕事内容説明してる間だけな。説明し終わったら起きろよ、仕事だからな」

「んー……」

 綺麗な顔を歪ませ、わなわなと握りこぶしを震わせたヴォルペは「やっぱッ……ルーに甘すぎだろおおお!!」と叫んだ。

「うるさい、ルーが起きるだろう。さあ、仕事の説明をするぞ」

Re: 狼猫狐の三重奏 ( No.4 )
日時: 2018/01/26 21:13
名前: 熾代京

 カッツは、ヴォルペとルーを連れ畑へと歩いた。時間は昼過ぎ。ヴォルペに仕事内容を説明したら起きろ、と言っていながら、結局自然と起きるまで待っていた。
 畑は未だ、無残に荒らされたまま。既に仕事の内容を聞いているヴォルペはうげっと嫌そうな顔をする。ルーは訝しげに眉間に皺を寄せ、すんすんと鼻を鳴らした。


「この辺に猪なんているんだ」


 ルーがさらりと荒らされている理由を当てても、カッツは「普通は居ないはずなんだがな」と表情も変えずに言った。

 ルーは匂いに敏感だ。匂いだけじゃなく、視力、視界、身体能力。全て狼のようだ。本人はにやりと笑い、「おれの先祖は狼だからね」と言っていたが、定かではない。


「もうすぐ冬が訪れるし、猪は雪が降るところには来ない。けど…南の方、暖かい方から来たのだろうな。理由は知らないが。ただ、元々いなかったことは確かだ。この畑の持ち主の宿のご主人が、猪を知らないと言っていた」


 面白くなさそうにふうんとだけ返すルーに、ヴォルペは首を傾げた。
 好奇心旺盛なルーなら、こういうとき、楽しそうに猪の追跡を開始すると思ったからだ。だが今のルーは、どちらかというと悲しそうに見える。
 いつもならこういうとき、真っ先にカッツがルーに理由を聞くはず。
 なんだかんだ、カッツ同様ルーのことを大切に思っているヴォルペは、ルーの悲しみの理由を聞かないカッツに苛立ちを感じ、気づいてないなら気づかせてやろうとカッツを睨んだ。

 すると、カッツも少し、ほんの少しだが悲しそうな顔をしているではないか。


「ど、どうしたんだ二人共」

 普段表情を変えないカッツが。
 ほんの少しとはいえ、悲しそうにしている。

「……いや、何でもないさ」

「うん、何でもない。ただ、こいつ、可哀想だなって思って」


 何でもないと言いながら、未だ悲しそうにするカッツに続くルー。ヴォルペは、猪が可哀想と言われている理由がわからず、「はあ?」と言いかけた。カッツはともかく、哀を抱えているルーに言うわけにはいかないので、その言葉は飲み込んだ。


「……どうして、そう思うんだ?」


「…………こいつ、多分自分の住処を追い出されたんだと思う。かなりでかいから、自分の住処ではリーダーだったのかもしれない。だから…追い出したのは、人間だ」

 そこで言葉を止めたルー。
 カッツも同じ考えなのか、ルーを悲しそうに見つめるだけだった。


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