コメディ・ライト小説(新)

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First love is you.
日時: 2018/05/03 17:50
名前: Turtle


《Prologue》

「黒縁眼鏡に整えてもいない髪。あまり笑うこともなく、クラスの中心的人物ではなくて、自分の席で黙ってゲームをしているようなタイプの人。でも挙動不審でコミュニケーション障害があるとかそういうのじゃなくて、どちらかというと一匹狼。集団の中にいても差し障りなく女子とも話が出来るけれど、なんというか、the普通人間。まあ、そんなところが好きなのだけど」



美人でとても一途な十七歳の女子

鳴海 芳香



あまり感情表現をしない平凡男子

同級生 佐田 秀太



ピュアな眉目秀麗モテ男

後輩 楠見 良馬




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Re: First love is you. ( No.4 )
日時: 2018/05/17 15:45
名前: Turtle



その後も先輩の様子はおかしく、話をしている時も無理に笑ったりしていて、確実になにかがあったことを示していた。


そして、ある日の放課後。先輩の鞄を取り上げ、


「先輩、何があったか言ってくれないと返しません。先輩のこと心配するこっちの気にもなってください」


話したくないのに無理強いするのもどうかと思うが、それ以上に先輩のことが気になる。もしかしたら、友達からヤクを預かっていているとか、タチの悪い不良どもに脅されているとか、あるかもしれない。そんな場合の為に訊く。


先輩はまた作り笑いをした。


「ただ失恋しただけだよ」


先輩のあのぼんやりとした感じでの失恋は予想の範疇だったが、やはり本人の口から聞くと重みが増す。相手は誰なのか、いつから好きだったのか、いつ失恋したのか、など疑問がいくつも頭に浮かんで止まらない。


せめて、


「相手は、誰ですか」


この質問が先輩の心を抉るのは十分にわかっている。でも、先輩がそんな風になるほど好きだった相手は、誰なのか。


先輩はふいに廊下の先に目をやった。制服姿の眼鏡を掛けた男子生徒が歩いてくるのだ。彼は凛とした様子で先輩の教室の扉を開け、中へと入って行った。


先輩と俺を一瞬だけ一瞥したのが、何故か引っかかる。


俺はなにか忘れ物でもしたのか、と思っただけで特に気にもとめていなかったのだが、先輩は今イチの反応をみせた。


深く俯き、鞄は俺が持っているというのに先にスタスタと歩いて行ってしまうのだ。追いついて顔を覗き込むと、怒っているというよりは泣きそうな顔をしている。理由を聞こうと思い、廊下の角で先輩を引き止めると、彼は教室から出てきてこちらへと向かってきた。無表情のまま歩いてくる彼は一見冷たそうな感じがする。


「ん。落し物」


彼は先輩の前に行き、乳白色の丸いキーホルダーを手渡しする。先輩は受け取り、「あ、ありがとう」と小声で言った。その様子がまるで狼に狩られそうになっている小動物のようで、おもしろい。


その男子生徒は渡し終わるとすぐに背を向け歩き出し、それと同時に先輩が俺に見えないように背を向けて、顔を袖でぬぐっている。


「先輩、泣いてるん……」


「泣いてない!」


先輩が言葉を遮るように言うが、声は涙声。


そうか、彼にフラれたのか。


目の前で細かく震える小さな背中に、俺は何ができるのだろう。


俺が彼氏だったら、先輩が辛くならないように優しくそっと抱き締めてあげることができるのに。


「先輩、失恋なんてよくあることです。帰り、アイスでも食べますか」


「いいよ、遠慮する」


先輩がようやく泣き終わり、泣き腫らした顔で俺を見る。


「だいぶブサイクですよ。目、冷やした方がいいんじゃないですか」


「……そうだね」


そういって二人で水道へ向かい、先輩は水でわしゃわしゃと顔を洗う。


「……あの人ですよね、好きだったの」


聞こえなかったのか返事はない。


「あの人のどこがいいんですか」


「……」


「冷たそうでしたけど、ああいうのが好きなんですか」


「……本当は優しい普通の人だよ。もう終わったことだから、やめて」


先輩はハンカチで顔を拭き、俺の手から自分の鞄を取り上げる。


本当に彼のことが好きなんだと、再度感じた。

Re: First love is you. ( No.5 )
日時: 2018/05/20 00:43
名前: Turtle



身体と心がともに成長し、異性のことを意識するようになった中学の最終学年。


恋愛というのもまともにしたことがないのに、俺は告白されて一つ年上の彼女と付き合い始めた。


「佐田くん、佐田くん、明日デート行かない?」


そう言って至近距離で照れくさそうに首を傾げてくる彼女は、とても可愛らしく、俺は頷くしかない。



付き合って二ヶ月。少ないお小遣いの中からやりくりして、彼女と何回もデートをした。遊園地に、カフェテリア、映画館。元々、家でゲームをやっていたい性格なのだが、彼女はアウトドアだったので何度も外に連れ出され、それもそれで充実していて楽しかった。


四回目のデートはまたしても遊園地。一日中遊び歩き、彼女とともに乗り込んだ観覧車が頂上に着いた瞬間。


向いに座った彼女が、俺に覆いかぶさるようにして唇を合わせてきたのだ。


初めてのキスの驚きと衝撃で放心状態になり、呆然と彼女を見る。彼女は多分初めてではないのだろう。悪戯な笑みを浮かべながら至近距離で舌なめずりをし、俺に言った。


「もっと、する?」


気持ち悪い。


第一の感情はそれだった。


二ヶ月間、付き合っていながら彼女の素性を見抜けなかった自分にも腹が立つし、誰とでもキスをするような女に唇を合わせられたことがショックだった。


高校一年生ではこれが普通なのかもしれない。俺が子供なだけなのかもしれない。彼女がいる自分に惚れていたのだと思う。何もかもに盲目的になっていて、彼女の長所だけを見て、欠点には目も向けなかった。


彼女の長所は社交的なところで、欠点は性に開放的なところだ。誰とでも「して」、快楽だけを追い求めて生きている。


そういう彼女には闇がある。あとから知ったが、彼女の家は家庭崩壊しているらしい。毎日、夜遊びし、男の家を回る彼女に同情も少しはしたし、俺の家も奥底に深い闇があるから非行に走りたくなる気持ちは十分わかる。でも、


彼女はとても滑稽だ。


まるで人間の人生を手に入れた雌猿のよう。


観覧車は地上へとつき、扉が開く前に俺は彼女へと言い放った。


「もう今日限りで関係は終了。今後、俺には近づかないでください」


あえて彼女の顔は見なかった。


いつものように笑っているのか。それとも悲しい顔か。


そんなの俺には関係がない。彼女と俺は今日限りで赤の他人だ。


俺は観覧車を降り、唇の皮が剥けるくらいに何度も口を袖で拭いた。泣きそうになりながら拭いたというのに、まだ唇には彼女の唇の感触が生々しく残っており、それは気持ちが悪いほど柔らかく、そしてあたたかかった。


十五歳、中学三年の八月の夏の日。俺は人生最大の失恋を経験した。

Re: First love is you. ( No.6 )
日時: 2018/05/20 12:54
名前: Turtle



それからというのも、佐田くんに話し掛ける勇気と精神力は私にはなく、振られたきりずっと話していなかった。放課後、比較的教室に残っているタイプだった佐田くんは最近ずっと誰よりも早く帰宅するようになり、どこか私を避けているような気もする。女々しいけれど、私はまだ佐田くんに未練があり、まだ好意がある。


佐田くんへの興味、好奇心は止むことはない。


とはいっても振られたその日には夜に静かに泣いたし、佐田くんに会うたびに泣きそうになる。


そんな時には、楠見くんがふざけながら慰めてくれるので、心がとても楽になるし、年下なのに楠見くんへも少しだけ好意を抱き始めた。いつの間にか、精神的な支えになってくれる、いわば家族や恋人のような大切な存在になっていた。


そんな中、休日に二人で遊園地に出掛けることになり、最後の観覧車で楠見くんはこう言った。


「先輩をはじめて見たとき、すごく可愛い人だなと思ったんです。んー、一目惚れです」


「最初、楠見くん、私のことを嫌いなんだと思ってた。素っ気ないというか」


そう言うと、彼は照れ臭そうに笑い、


「初恋だったんです。だから、どう接していいのかわからなくて」


「……うん」


「でも、先輩があまりにも純粋だから、駆け引きなんかせずに感情に正直でいようって思いました」


「……」


「他に好きな人がいてもいいです。だから……」


彼は一度息を大きく吐き出し、まっすぐと私の目を見て言った。


「俺と付き合ってくれませんか」


「え……」


「……じゃあ、五日間だけでも。五日、俺と付き合ってみて楽しかったら、真剣に。嫌だったら、無し。どうですか」


「うん。じゃあ……」


正直、楠見くんのことは嫌いじゃなかったし、恋愛対象として見れるかといわれたら、迷う。


どちらにしても、一週間のお試し期間を設ければ彼のこともわかってくることだろうし、その時は振られたばかりの頃で、明るく支えてくれた存在を失うのは嫌だった。


お試し交際期間、五日間。(月曜日)


朝から家に迎えに来た楠見くんは、私の鞄を持ってくれる。いいよ、と言っているのに構わず持つ。学校に着くと私を教室まで見送ってくれ、笑顔で自分の教室に戻って行った。それがずっと続き、ジェントルマンな人なのだと思った。その間、一度も皮膚の接触などはなく、たまに顔が至近距離にあると彼は顔を逸らす。とてもピュアな人だ。


「今日で五日ですけど、どうしますか?」


金曜日の放課後、空き教室で集まり、彼が訊く。


「付き合おうか」


そう言うと、彼は驚いた顔で「本当に?」と訊くので、頷くと、彼が近付いて来て私は抱き竦められた。


「どうしたの?」


そう言いながら彼の背中を軽く叩くものの、彼は動かない。耳元で彼が囁く。


「心臓が破裂するかもしれません」


「冗談言わない」


「本当です」


「そろそろ離して……? 一分くらいしてるよ」


「ずっとこうしていたいです。先輩、もうどこにも行かないでください」


その意味が分からなかったが、私はうん、と頷いた。

Re: First love is you. ( No.7 )
日時: 2018/05/31 22:52
名前: Turtle



楠見くんと付き合ってから一週間が経ち、彼のおかげで佐田くんのことを忘れかけてきた頃、問題は発生した。


私の机に入っていた、白い封筒の中に収納されていた紙には、


「楠見と交際をしているのならば、一階 1-B の空き部屋に×月×日(×)の午後×時にカモン」


と脅迫めいた手紙を、筆跡を隠すことなく女子の字で書いてあった。


楠見くんは眉目秀麗で女の子にモテるし、脅されるのも理解出来る。でも付き合っていることは誰にも言ってはいないので、私と楠見くんが一緒にいるところを目撃し、付き合っていると思ったのだろうと解釈した。


一応、これは楠見くんにも相談すると、楠見くんは不機嫌顔になった。


「まったく、意味がわからない。……先輩、×日一緒に行きます。なんかされたら言ってくださいね」


最後の方の口調は柔らかかったが、楠見くんはだいぶ腹をたてている。知らない人に束縛されたくない、や、手紙じゃなく口で言えばいいのに、と文句を言っていた。


それから数日後のその日。平気な私に心配性な楠見くんがついてき、空き部屋の扉の隙間から楠見くんが盗み聞きしていることになった。それに至るまでに長い説得時間を費やしたことは言わないでおく。


私が教室に入ったときには相手はもう来ていて、私は言葉を失った。


「鳴海、来たんだ」


一週間は聞いていなかったその声。高くも低くもない大人のように落ち着いたその声。


「さ、佐田くん。なんでここに……?」


そう聞くと、彼は一瞬顔を曇らせた。


「手紙見たから来たんじゃないの? あれ、俺」


「見たけど……、字が可愛らしかったから、女の子かと」


そう言うと彼は動揺し、話題を逸らした。


「それより、一人?」


「う、うん」と咄嗟に嘘をついた。


「……こんなこと今更聞くのはおかしいけど、楠見と付き合ってる……?」


伺うように聞いてくるので、少し申し訳なくなる。私は佐田くんに告白したのに、振られたから楠見くんと付き合っていると周りから見たら思うだろうし、ショックを慰めてくれたのは実際彼だ。「うん」


「そうなんだ。……俺、あの告白された後、考えたんだ」


そう言って彼は私の様子を見ながら話し始めた。


「少し前に恋愛で嫌な思い出があって告白とか全部断ってたんだけど、鳴海は本当に根が優しいから、振ったあとに気になり始めたんだ。その後に鳴海が楠見と仲良くしているのを見て、本当に後悔した」


彼はそこで一旦話を切り、息を吐いてから真剣な表情で言った。


「鳴海が好きなんだ」


そう言った瞬間に扉が勢いよく開けられ、端整な顔を歪めて佐田くんを睨んでいる楠見くんがいた。彼はドシドシと遠慮なく佐田くんの前に歩いて行き、楠見くんよりも少し背の低い佐田くんを無表情で見下ろした。


「鳴海先輩は僕のです。もう僕達にかまわないでもらえますか」


佐田くんは動揺しながらも背中越しに目を合わせてきて、


「返事待ってるから」


と微笑む。


慌てて、


「佐田くんとは付き合……」


「ゆっくり考えて」


と返事をしようとするものの、教室から出て行こうとしている佐田くんに遮られる。そして彼は私の隣を通る際に、楠見くんに見えないように手に触れてきた。


佐田くんが出て行った空き部屋に残された二人。私の心臓は口よりも正直だった。


楠見くんに触れられたときよりも高鳴っていたのだ。

Re: First love is you. ( No.8 )
日時: 2018/06/04 22:50
名前: Turtle



「大丈夫ですか、先輩。俺は本当にあの人が嫌いです。はっきりしないところとか」


私の肩を抱き寄せながら彼は愚痴を漏らす。私はそうだね、と相槌を打ちながらも頭の中は佐田くんで埋め尽くされていた。


久しぶりに話したのに、蘇ってくる数々の記憶。それはすべて楽しいもので、止めようと思っても止められず、自分自身でも困惑した。


「……先輩?」


楠見くんは私の顔を心配そうに覗き込み、一転、思い切り嫌な顔をして私を見つめた。


「あーあ、めんどくせえ。あいつが好きならあいつと付き合えばいいじゃん。俺なんかと別れて。先輩に一目惚れして付き合ったはいいけど、優柔不断だし他の男の所フラフラして嫉妬させるし、もう別れようぜ。関わりたくねえや」


「えっ、どうしたの」


いつもと違う彼の姿に戸惑う。


「俺のこと本当に好きだった? 恋愛感情があまりにも一方的すぎて嫌だった。先輩は俺のことをが好きって言ったことない。告白したときは他に好きな人がいてもいいって言ったけど、つらい。俺はこんなに好きなのに、やっと付き合えたのに、先輩には他に好きな人がいる。付き合う前から我慢してたけど、もう無理だ。自分勝手でごめん」


彼がこんなにも思っていたとは考えもしなかった。いつも自分のことばかりで、彼のことを考えてあげられなかった。


「だから、別れてください」


そう言う彼はとても悲しそうな顔をしていた。いままで見た事のないほどにきつく口を結び、目は伏せ、拳は強く握っていた。


"鳴海が好きなんだ"


"俺と付き合ってください"


二人から言われた言葉が脳裏をよぎる。


私は一人の人間を騙し、戸惑わせ、裏切った。


私は決意し、俯いている彼の手を取った。その瞬間に上げた彼の顔は驚いていて、そして期待をしていた。


「良馬、好きだよ」


驚きが止まらない彼の頬を両手で包み、背伸びをして、キスをした。


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