コメディ・ライト小説(新)

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DREAM police
日時: 2018/08/24 10:37
名前: 雪丸 まろ (ID: Ytr7tgpe)

私の母は、いつも私のことを考えてくれていた。
それが要らないことだと思った時期もあったが、今では、愛情として受け止めることができる。
そんな母の葬式で遺書を読んだとき、驚愕した。
私は、勉強が苦手。小学校の頃は不自由も少なかったが、中学、高校と進むにつれ、周りとの差がとてつもなく大きいものだと嫌というほど見せつけられた。
結局高校を卒業し、就職しようと思ったが、自分を受け入れてくれるところが全くない。
流石に心が折れ、うじうじしたまま、その遺書を読んだのだ。
「雨森 神奈様。10月15日、御倉野市内にある、交番に行きなさい。あなたを受け入れてくれるよう、交渉しておきました。これからの人生、悔いがないように生きなさい。」
母は…母は…どこまで私に幸せを与えてくれるのだろう。
小さい頃から、警察官になりたかった私にとっては、その場で泣き崩れるほど、
母の愛を感じ、感謝した。
この時は、その仕事が苦しく、絶望する仕事であり、この先の社会の未来に関わっているなんて、誰も想像がつかなかっただろう。

Re: DREAM police ( No.3 )
日時: 2018/08/24 10:48
名前: 雪丸 まろ (ID: Ytr7tgpe)

家に帰って、物事の整理を始める。
えぇっと。夢に入り込む??そして、記憶を引き出して、夢と一緒にみせる。
そうやって、人の心を動かす…。んん??
やはり意味がわからない。
これって私、とんでもないことに足突っ込んでるんじゃ…??
とりあえず今日またあの意味不明な職場に行かなくてはならないのは事実だ。
気が重くなる。最近の仕事はみんなこんな感じなのかな?
んなわけあるかぃ!!



「五分遅刻だぞ。」

「す、すみません…。」

夜10時。私はまたあの場所へと向かった。

「お前も、夢の中に来い。」

「…は?」

突然の提案に驚きを隠せない。

「ぶっつけ本番だがやってもらう。これを飲め。」

船附さんが水が入ったコップと、赤い小さな薬を出す。

「別に毒とか、変な薬じゃない。飲めないくらいならでてけ。」

私は速攻で薬を飲み込んだ。

ブチン!

体の中で何かが途切れたような音がして、体がふわっと軽くなる。

「これは?」

「お前が夢に限りなく近づいている証拠だ。その体なら他人の夢に入り込むことができる。」

「…。」

「じゃあ、早速そこのベッドで寝てくれ。俺も隣のベッドで寝るから。」

「えぇ…」

「んだよその不満げな顔。」

「はい。寝ます。」

ベッドに横たわると、すぐにどっと体が眠りについていくのが分かった…。

Re: DREAM police ( No.4 )
日時: 2018/08/24 11:34
名前: 雪丸 まろ (ID: Ytr7tgpe)

目を開けると、もやもやとした空間にいた。

ああそうか。ここは私の夢の中だ。

でも今私は目を開けた。どういうこと?

夢の中なのに意識ははっきりとしているし、自由に動き回れる。しかもこんな空間初めてだ。

奥にドアのようなものも見える。

「ん?」

近いてみようと、足を動かす。ふわふわしてなかなか動けないが、ようやくたどり着けた。

ドアを正面に立ち止まった瞬間、目の前に透明なボードが現れた。

「なにこれ。」

ボードには、船附 優 と書かれている。

「船附さんが、なんでボードに書かれてるの?」

首を傾げながら、船附 優の部分に触れてみた。

すると突然、目の前の扉がゆっくりと開き始め、後ろからごうごうと風が吹き始めた。

「?!なにこれ!」

追い風があまりにも強すぎて、私は扉の中に吸い込まれてしまったのだった…。





「遅いっ!」

「え。」

気づくと、私は仰向けの状態で倒れていた。

まだ夢の中みたいだ。

「船附さん?!」

船附さんが、真上から私を覗き込んでいた。私はばっと起き上がる。

「どうだ?他人の夢の中に、お前も入れただろ??」

「ほぇ?!」

確かにさっき目覚めた場所とは環境が違うけど…。ここが船附さんの夢の中?!

「あん?まだ信じてないのか。」

「…いや。本当だったんですね。あの薬、凄すぎです。」

「あぁ。その薬作ったやつも、DREAM policeの一員だぞ。」

「ほぇ?!」

「今日は来てなかったけど。あと2、3人ほどいる。」

「うひゃあ。」

「お前、ここ来るとき、ドア通っただろ?」

「あ、はい。」

「ボードあっただろ?」

「はい。」

「あのボードには、近くで寝ている人の名前が表示される。それをタッチすると、その人の夢の中に行くことができる。」

「ほぉ…」

「まぁ、他にも色々教えることはあるけど、それはまた今度。もうそろそろだし。」

「もうそろそろ?」





ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!!!!!!




「うわぁ!!!!」

耳をつんざくような音がして、ベッドから転げ落ちた。

もとの現実世界に戻って来たみたいだ。

隣を見ると、船附さんが目覚まし時計を止めているところだった。

「ドリームインp錠を飲んで、他人の夢に入った人は、このユメカラサメール時計がないと起きられない。」

船附さんは、チラチラと目覚まし時計のような形の時計をみせる。

全く…。例の天才科学者は、なんであんな凄いはつめいをしておきながら、ネーミングセンスが異常なのだろうか。

どっちにしろ、あの短い時間の中で、私はとんでもないことに足を突っ込んだのだと実感した。


Re: DREAM police ( No.5 )
日時: 2018/08/26 22:51
名前: 雪丸 まろ (ID: Ytr7tgpe)

船附さんによると、薬は一錠で最大二十四時間効果が続くらしい。
だが、ユメカラサメール時計の音を聞くと、その時点で効果は完全になくなってしまうそうだ。
ユメカラサメール時計、恐るべし。


「船附さん。ドリームインp錠を開発した方ってどなたなんですか?」

翌日、交番に入るなり聞いてみた。

「門倉ってやつだ。」

相変わらず船附さんは真顔で答える。まだ会ってから1日ほどだが、この人は本当に表情筋が動かない。勇気ある正義の警察官!というよりも、クールな殺し屋って感じ。うんうん。

すると突如、奥でコーヒーを飲んでいた船附さんがパッと顔をあげた。

「噂をすれば。」

「…え?」

ピンポロポンピンポロポン。

チャイムが鳴る。

慌てて玄関から部屋に入り、船附さんがドアを開けるのを見つめる。

この音楽、昨日聞いたばかりだったなぁ、まるで昨日あったことが嘘みたいだ。
お母さんは、ここの仕事が変わっているのを承知で、私に勧めたのか?
それとも知らぬまま?船附さんとは一体どういう関係なのだろうか。
まだまだ疑問が頭の中を埋め尽くす。

「お、君が雨森さんだね!よろしく!!!!」

片手をあげ、ニッコリと笑い、ハイテンションで声をかけて来たのは、流れ的に門倉さんなのだろう。
髪の毛が、半分黒で半分白だ。
目は澄んだ黒色である。

「っち。お前の方かよ。」

「何ー!!ふなつきっち!その言い方はぁ!」

私が返事をする前に、二人の言い争いが始まる。
お前の方かよって事は、あの人は門倉さんではないのかな?

「あの。この方が門倉さん?」

「…俺が話してた門倉ではない。」

「?」

玄関で立ち止まったままのあの人と目が合う。その人は少し困ったような表情を浮かべ、頭をぽりぽりとかいた。

「俺は門倉 康太。それは間違いない。」

真剣な顔になって門倉さんが語る。

「俺は、二重人格なんだ。」

Re: DREAM police ( No.6 )
日時: 2018/08/26 23:41
名前: 雪丸 まろ (ID: Ytr7tgpe)

「二重…人格?」
小説などで、よく見かけるその四字熟語。いざ話の話題として出されると意味が脳に伝達されて来ない。
少し暗めの顔でうつむいていた船附さんがゆっくり口を開く。

「つまり、こいつは幼少期、何らかのショックを受けて、一人の体の中に、二つの性格を持つようになってしまった。いつ二つの性格が入れ替わるのかは分からない。あいつ自身も研究を進めているらしいがな。」

「あいつって?」

「科学者の方の、ドリームインp錠を作った張本人だ。」

「え!じゃあ今の門倉さんは、ドリームインp錠を作った門倉さんではないと?!」

「そういうことになるな。」

「だからって意地悪しないでネ」

門倉さんがぱちっとウィンクをして言う。
落ち着いてみると、なかなかの美形だ。たしかに頭は良さそう。しかし二重人格…。こりゃ目立つ存在だな…。

「それにしても雨森さん、飲み込み速いね。」

「え?!?!」

急な話題転換に驚き、目をパチクリさせる。

「あぁ、それな。俺も思った。」

「教えの飲み込みの早さってことですか??」

「お前がどういう状況にあるか、人がどういう状況にあるかを判断する力が優れてるってことだ。ドリームインp錠のことだって、体験させても全然信じてくれない奴だっているんだから。」

船附さんが呆れたように言う。

「え、私、人を信用しすぎなのかな?ははは。」

自然と微笑む。母が死んでから、あまり笑わなくなっていったのに。
そういえば、と、ハッと気がつく。
昨日夢の中に行った時、ユメカラサメール時計の名前を聞いた時。知らぬ間に微笑んでいた。



ここは。



一体どういう場所なの?



葬式に行ったあの夜以降、テレビを見ても、悲しい動画を見ても、全く感情が出なかった。出せなかった。母の死以上に刺激的な事はなかったから。


だけど、何だこれ。ぶっ飛びすぎでしょ。
他人の夢の中に入り込む?二重人格?DREAM police??

知らないうちに、楽しんでたんだ。
小学校、中学、高校と、居場所のないところでただ何の刺激もなしに生きてきた。


ここには、
居場所がある。


お母さん。ありがとう。ここ、すごい楽しそうだよ。


私はその夜、家の窓から夜空に向かって微笑んだ。


Re: DREAM police ( No.7 )
日時: 2018/08/27 11:57
名前: 雪丸 まろ (ID: Ytr7tgpe)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12342

ある日、いつものように交番へ行くと、船附さんがベッドで寝ていた。
いつもは私が来る時間帯、必ずふかふかの大きい椅子に座ってコーヒーを飲んでいるのに。疲れ気味なのだろうか?

私は、船附さんを起こさないよう、出来るだけ足音を立てずに自分の机に向かった。
交番には自分の机が用意されており、着いたら出社時間、体調、体温、その他の連絡事項を紙に記さなくてはならない。
そうすることで夢の中でのトラブルを軽減させることが出来るのだ。
船着さんの夢の中に行った日以来仕事はしていないが。

椅子に座り、ペンを走らせる。
普段だったら、船附さんが新聞をめくる音が聞こえたり、仕事内容の説明を突如されたりと、音が途切れる事はないのだが、後ろから聞こえて来る音は何一つない。
船附さんに何かあったのではないか。そんな考えが頭をよぎるが、考えすぎだろう。
ペンを走らせていた手を止め、奥で寝ている船附さんをみる。
安らかな寝顔。普段のクールな表情は見られない。息はしているから少なくとも死んではいないことが分かる。疲れは誰にでも出るものだ…。

一時間。
二時間。
時間が経って行く。
明らかにいつもの交番とは違う雰囲気が漂ってきた。

「船…附さん?」
恐る恐る声をかける。
最初あった起こしたら怒られるという考えよりも、安否を確認したかった。
返事はない。
「船附さん。」
次はもう少し大きめの声で言ってみる。
船附さんは微動だにしない。普通の人だったらここで起きるか、何らかの反応を表すところだろう。トントン、と肩を叩いてみるが、やはり反応はない。

「…」

流石に焦り始めた私は、どうやって起こそうかと考え始めた。
あくまでこの人は寝ているだけ。刺激を与え続ければおきるだろう。
そうじゃなきゃ…。

はじめにフライパンとおたまを取り出し、ガンガン、と叩いて見た。
…反応なし。

ベッドから突き落とし、肩を激しく揺さぶり、「船附サァァン!」
と言って見たが、反応なし。

他に使えそうなものがあれば、とキョロキョロしていると、ベッドの後ろの棚に目覚まし時計があるのに気がついた。いや、目覚まし時計の形をした何かだ。

「あれは…。」

近づいて手に取りまじまじと観察する。
間違いない。
これはあの日船附さんも手にしていた、ユメカラサメール時計だ。
そうか。今船附さんはドリームインp錠を飲んでいるのか。
あの日船附さんはドリームインp錠を飲んだ人はユメカラサメール時計の音がないと起きられないと言っていたっけ。
私の中でジグソーパズルのピースがピタリとハマった。
ほっと緊張が解ける。
しかし、船附さんは一体何分後に起きるつもりなのだろうか。
何気なくユメカラサメール時計を裏返し、目覚まし時間の表示を読む。


『残り時間:00分00秒』


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