コメディ・ライト小説(新)

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噛ませ犬が愛しすぎてツラい
日時: 2019/02/07 22:41
名前: mono

醜いですが、どうぞ読んでみてください

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Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.72 )
日時: 2019/06/16 09:17
名前: mono

なんで死ねなかったんだろう。目を覚ますととりあえず、また嫌なことばかりが浮かんできた。せっかく勇気を出したのに。礼は手のひらに何か温かいものを感じた、人間の手のひら。ずっと寝ていて首が痛いので、少し目線を下にやると、

「稜?」

手のひらに、温かくてちょっとゴツゴツしてガサガサした稜の手が重なっていた。ベッドに顔を伏せて寝ていている。

「いなくなりたかったのに…」

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.73 )
日時: 2019/06/16 10:02
名前: mono

日南はお風呂に入っていた。ちょうど千夏からの着信があり、くだらないことを話しながら湯船に浸かっていた。

「そんでさー、かよがめちゃくちゃ怒鳴って」
「ウケんだけど」

千夏からは礼の話題が出てこなかった。日南もあえて言いふらす必要もないと思い、ただ普通におしゃべりをしていた。

「日南、鍋ってどこに片付けるの?」

瑛人が風呂のドアをスライドさせて、顔を覗かせてきた。

「ちょっ、入ってくんな!」
「どこって聞いてるんだけど」
「し、シンクの下の引き出しだから!」
「ありがと」

瑛人は顔色も変えず、またスタスタと出ていってしまった。

「瑛人くん?」
「あいつ…風呂入ってきやがった」
「鍋は笑う」

千夏は腹を抱えて笑っていそうだが、日南は浴槽に沈んで行った。

「でもさぁ、別にそういうことしてもいいんじゃない?」
「っぷっ、はぁ?」

咄嗟に浴槽から浮き上がってきた日南に、千夏はたんたんと続けた。

「だって今日その調子だとお泊まりコースやん。ええやん」
「…良くない」
「乙女かよ」
「うるせえよ」

自分の体型に自信がない。瑛人とキスはしたことがある。でも、瑛人が清潔なイメージがあるし、2人でいても誘われたことはない。

「やっちゃえ!!テレビ電話してくれてもいいよ?」
「しねーわ」
「かわいい下着とかないの?」
「こないだ罰ゲームで買わされたやつぐらいしかまともなの持ってない」

日南は服に響かないようなベージュや白しか持っていない。普段、ブラトップだし。この間、何故かよく分からないままじゃんけんと賭けをして、日南が負けたので黒いスケスケの下着を買わされたことがある。ママにも見られたくないので、未開封で部屋の奥底にある。

「それ着るのは強い」
「きねーし」
「頑張りたまえ」

日南は千夏と話しながら浴槽から上がり、服を着たり、スキンケアをしてリビングに戻った。「さっきの会話丸聞こえだよ」と日南に言うと、いつもより不機嫌になり口を聞いてくれなくなりそうなので瑛人は黙って片付けを終えた。

「家に電話しなくていいのかよ」
「さっきLINEしておいた」

今日は隆也の家に泊まります。

と、隆也への根回しを完璧にしたあとメッセージを送信した。

「日南、今日帰りたくない」

お風呂上りで牛乳を飲む日南を後ろから抱きしめると、日南はちょっとしてから精一杯頷いた。

「こっち向いて」
「むり」

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.74 )
日時: 2019/06/21 22:15
名前: mono

着替えないや、あ、体育着ある。瑛人は自分のリュックサックから、体育着を取り出した。今日、着なかったので持ち帰ってきたのだ。お風呂場から聞こえてくるシャワーの音を耳にして、日南は恥ずかしさとこれから起こるであろうことのせいで落ち着かず、とりあえず冷たい水を飲んでいる。

瑛人くんとお泊まりだね(はぁと)

と千夏からかなり煽られているが、日南にはキレる余裕もない。

まじ毛剃ってよかった

それな
てかあの罰ゲーム下着着ろよ

お前バカだろ

罰ゲーム下着とか言われたらなおさら付けたくないわ。髪を乾かし、すっぴんを装ってパウダーとリップ、ビューラーでまつ毛を上げた。日南の顔なら薄化粧でも問題なさそう。しかし、キャラクターの描いてある長袖に中学校のジャージはダサすぎる。日南は慌てて、自室のクローゼットからモッコモコパジャマを取り出した。

「はっ!」

瑛人が上がってリビングに来たようだ、慌ててかわいいパジャマに着替えて日南もリビングに駆け寄った。

「歯ブラシとドライヤーありがとう」
「お、おう」

お風呂上がりの瑛人はいつもかきあげてある前髪が、ぺたんとなって中々レア。自分の彼氏ながら綺麗な顔をしているな、と思ってしまう。

「かわいいね」
「は?」
「そんな足出してると風邪引くよ」
「うっさい」

日南はソファーの隅にいる。自分の彼女ながら中々愛らしいと思う。

「お義母さんに許可もらえた?」
「瑛人の言った通りにLINEしたら大丈夫だった」

日南がこっちに来て、瑛人にトーク画面を見せた。

ママー、何時に帰ってくんの?

朝までいるかも(パンダの申し訳ない気持ちを表すスタンプ)

日南は了解したという趣旨のパンダのスタンプを送った。

まだ瑛人くんいるの?(はぁと)

夜危ないからって言ってたけど
もうすぐ帰る

もう遅いでしょ
泊まってったら?(パンダのハートのスタンプ)

そーするわ

「俺、天才」
「うざ」

日南は瑛人の頬を軽く叩くと、瑛人はふざけて日南の頭を叩いた。

「顔小さいね」

瑛人は叩いた手で頭を撫でて、頬にすべらせた。そのまま日南にキスすると、日南を抱きしめた。

「瑛人」
「なに?」
「…大好き」

俺も。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.75 )
日時: 2019/06/21 22:12
名前: mono

平賀証券、明治維新にその基盤となる平賀農営会社が前身となり、戦後から株式の事業や保険に着手し始めたグループである。

「お母さん、これってウチのこと?」

小学校6年生のとき、母に歴史の教科書を見せた。「…商会が結成された。現在の平賀や三石、百合友など…」と書いてある。

「そうよ」

その時から、何となく家のことはわかっていた。母親はいつだって優しかった。兄貴もよく笑っていた。

「瑛人、お兄ちゃんが熱出しちゃったから、ちょっと病院行ってくるね。凜人、歩ける?」
「苦しい、ママ…」

そのときの母親は、ちょっと困っていたが、病院に行く前にひとり遊びをしていた僕を「えらいね」と言って抱きしめた。小学生に上がったばかりの兄をおんぶして、慌ただしく家を出ていこうとした。

「あなた、瑛人に夜ご飯食べさせてください。お願いします」
「…」

難しい顔で聖書か六法全書ぐらい厚い本を読んでいる父に話をしたが、父は無視をしている。

「お父さん、お母さんが話してるよ」
「…何故ベビーシッターにやらせないんだ?病院だってわざわざお前が車を出す必要がないだろ、手間のかかることばかりやりあがって」
「…すみません。でも、凜人見てやらないと」

父はどんな理由か知らないが、ため息を吐いてまた書物に目を通した。母親はなにか言いたそうだった。お父さんはお母さんが嫌いなの?お兄ちゃんも、僕のことも嫌いなの?わからない、わからないけど、俺はひとり遊びが得意だった。

「瑛人、どこ行くんだ」
「お部屋で遊ぶ」
「勉強しなさい」
「わかった」

瑛人はリビングの本棚から自分の小学校1年生用の計算ドリルと漢字練習ドリルを取り出し、筆記用具を持ってダイニングの椅子に座った。お受験を一年後に控えているからだ。お受験は嫌だけど、サッカーをやらせてくれるらしい。だったら頑張ろう。私立の小学校に入った時、一緒にサッカーのクラブチームにも入った。母親は僕がそのためにお受験をしたと察したのか、平日の練習、週末の遠征にも付き合ってくれた。

「瑛人ー!!終わったら遊ぼうぜ」
「…ごめんね。終わったら宿題やらなくちゃ」
「つれないやつー」

僕の印象はたぶん「ノリが悪いつまらないやつ」。最初は仲間はずれにされている気分だったが、学年が上がっていくにつれて慣れた。そして中学生になったとき、俺は気がついた。

「お前ん家、だいぶヤバくね?」
「俺もそう思う」

口からポロッと出てきた。練習終わりに塾が3時間、父親は試合や大会に見に来ない、兄が不登校、母親と父親は最悪の関係。

「父親になんか言いよったら?」
「母親殴られとったから、俺殺されるかも」

阻止できなかった自分が1番クズだし、父親を今すぐ殴り返せばよかったんだよ。というか、家に居づらいのはほんとはそれくらいのテンションで過ごしている方が楽だから。いい子じゃなくて、俺は普通の子。

「関東に転勤が決まった」

祖父がまだ会社を動かしていたとき、俺らは一家で関東に引っ越す。それが言われる前に、サッカーを辞めさせられていて地元の高校に入るつもりだった。あぁ、こんなにあっさり終わるんだ。練習もサッカーボールもない。全部父親が捨てているのを見た。初めて、家のドアを蹴って泣いた。

「平賀くん…君、どこでも進学できるよ」
「高校決めてもらって構いません」

引っ越してきて、塾に通い始めた。どうでもよかった。でも母親の悲しそうな顔がいつだって家と塾の面談にあって、だから偏差値は高いところにした。でも、まだまだ悲しそうな顔で、何がいけないんだろう。高校に入ってもずっと考えていた。兄貴もしばらく見ていない。そんなことを考えていたら、

「お前、今礼にぶつかったろ」

気の強そうな、金髪女に絡まれた。そいつはいつも素直で、真っ直ぐで。俺の知らないことや世間知らずなところを思い切り馬鹿にしてくる。日南って一体何なんだ。

「お前キモイ!」

「お前話つまんない」

「あっちいけ」

こんなに自分を素直に表現できるのが、本当に羨ましくて眩しくて。でもこれからもっと日南に話さなきゃならないことがある。

「日南、隣にいてくれてありがとう」
「…あたりまえじゃん?」

たぶんこの言葉がどれだけの意味がこもっているか、伝わらないかもしれないし、無意識に言ってしまった。如何わしい雰囲気とか恥じらいの前に、日南はもう眠りに落ちそうなきがしていた。いわゆる、安眠というもので。


Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.76 )
日時: 2019/06/27 06:15
名前: mono

「あら、瑛人くんおはよう」
「おはようございます」
「日南の面倒見てくれてありがとね」
「いえ」
「昨夜二人とも小学生みたいな寝相で寝てるから、ママ笑っちゃった」

たしかに、朝起きると俺は何故かベッドの下でふとんを全部被っていた。一方の日南は1人だけベッドの上で、枕の方向に足が向いていて寝ている間に一回転でもしたのか。瑛人は遅刻するまいと6時半には起きて、日南の母親から制服のブラウスに吹きかける市販のミストを借りた。寝室で着替えて、もう一度リビングに戻る。瑛人の分の朝食が用意されていた。

「あ、すみません。お構いなく」
「いいのいいの!私もいつもこれくらいに起きて仕事行くから」

日南の母親はキッチンで忙しなく動いている。ソファーには洗濯物のカゴが置いてあり、洗濯機から出してまだ乾いていないものだろう。

「僕、洗濯物干しましょうか?」
「そんなことしなくていいのよぉ、もう気使っちゃだめ」
「そんな…」
「もうね、瑛人くんがいてくれるだけでいいのよ」
「お気づかいなく。僕、何もしてないです」

日南の母親は調理の手を止めて、何か思い悩んでいるようだ。瑛人は仕方なくダイニングテーブルに座った。

「うちね、日南が生まれてすぐに旦那が出ていったの。本人曰く子どもの泣き声とか騒ぐのが嫌だったみたいで、しかも私が妊娠中から別の女と浮気してたみたい。日南には言ってないけどね。慰謝料も教育費ももらえなくて、向こうの実家に電話しても知らないの一点張りだったし。だから日南は私1人で育ててきたつもり、だけどまさか瑛人くんみたいな子と出会うとは思ってなかったなぁ。ほら、父親がいない女の子ってさ、男の子に父性とか安心感求めるって言うじゃない」
「あぁ…僕じゃ安心感がないとか…」
「違う!違う!…いつの間に、しっかりした男の子を自分で見つけてここまで連れてきてくれるようになったんだなぁ、って。ほんとに知らない間にどんどんおっきくなっちゃって、いやよねぇ」

日南からそんな話は聞いたことなかった。別に、俺も家のことを特に今は話す必要がないと思っていた。

「日南は、お義母さんのこと大好きだと思いますよ。わかります、ちょっとだけ家に何かあるっていうのは…」

最後の言葉が消えかかっていたが、時計を見るとまだ時間に余裕があった。しかしさすがに長いしすぎたと思ったので、早めに日南の家を出ることにした。瑛人はふと、携帯を見ると43件の着信が目に入った。その瞬間、視界か周りが揺れるような気がした。気持ちが何か吸い込まれてしまいそうになる。ロック画面からそれを消して、再びポケットに携帯を入れた。


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