コメディ・ライト小説(新)

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Lunatic Mellow Mellow
日時: 2019/08/09 00:09
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 あの美しい月は、人の心を狂わすのです。







 * * *

 半年以上小説を書いてなかったのでリハビリを兼ねて。
 タイトルは略して「LMM」です。特に意味はないです。


 mellow001「」
 mellow002「」
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 登場人物

 □篠宮藍
 ■香坂飛鷹
 ■茅野咲良
 □三原あんず

Page:1



Re: Lunatic Mellow Mellow ( No.1 )
日時: 2019/08/13 10:34
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 ぷろろーぐ「 愛を殺したい 」


 雨がずっと降っていた。夏の蒸し暑さと、蝉の悲鳴と、故人を想う泣き声が、悲しい雰囲気を作っていた。今でも「おはよう」って私の背中をばしばし叩きつけて、真っ白な歯を見せて笑うんだろうって、そんな夢みたいなことを考えている。昨日までの当たり前が、今日も当たり前にはならないんだと、私はこのとき気づいてしまった。

「――アイドルグループlunaticのメンバーだった茅野咲良さんの葬儀が昨日執り行われました……」

 テレビは面白がるようにその話題ばかりだった。嫌でチャンネルを変えようが、メディアはこういうのが本当に好きなのだろう。人の死くらい、放っておいてくれたらいいのに。
 SNSでも茅野咲良の悲報にファンは泣いていた。だけど、彼女たちはすぐに咲良のことなんか忘れる。永遠のファンなんていないのだから。芸能人だから、格好いいから、簡単に好きになって簡単に心は移っていく。咲良のことを十年後、二十年後、きっともう覚えていない。

「さくら」

 おはよう、と真っ白な歯を見せた笑顔でもう君が笑うことはない。私の隣で歩くときに身長のことを気にしてムキになる君ももういない。私の手料理を食べておいしいって言ってくれる君にももう会えない。
 好きな人が死んだ。暑くて暑くて死にたくなる夏の日。私の好きだった茅野咲良は、自殺した。




  

Re: Lunatic Mellow Mellow ( No.2 )
日時: 2019/08/13 17:24
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2

こんにちは。
いきなりの書き込み、失礼致します。

引きつけられる出だし、素敵だと思いました。
また、『テレビは面白がるようにその話題ばかりだった。』という部分がリアルで、印象的でした。

これからの展開の気になる作品ですね。

執筆、楽しんで下さい。
密かながら、応援しております。

Re: Lunatic Mellow Mellow ( No.3 )
日時: 2019/08/16 01:40
名前: 立花 ◆FaxflHSkao


 >>002


 四季さん

 初めまして、コメントありがとうございます。
 小説を書くのは久しぶりになるので、こうやってコメントをいただけること、とても嬉しく思います。ありがとうございます。
 芸能人の熱愛とか離婚とかを面白がるようにコメンテイターが話してるのを見て、私は正直不快だなって思うときがあって、最近あった大きな事件も被害者の家族に取材に行ったり、悲しむ隙間も与えてくれなくて、そういうモヤモヤからこういう文章になりました。出だしのインパクトだけで生きてる物書きなので、ちゃんとこれからもこの調子を続けられるよう頑張りたいです。
 ありがとうございます。これからも頑張ります。

Re: Lunatic Mellow Mellow ( No.4 )
日時: 2019/08/21 01:25
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 mellow001「 夏は君の匂いがする 」


 
 思い出すのは君が死んだ夏。部屋の温度が三十八度で、そういえば暑いような気がするって思って、背中からじんわり汗が滲み出て、涙も一緒に水分丸ごと全部吐きだした。気持ち悪くなった時には意識はもうなかった。救急車のサイレンが街中にこだまして、私は君と一緒に死ねたらって、この時そんな馬鹿なことを考えた。



 自殺未遂を三回したら親友が驚くくらい怒って私をカフェに呼び出した。当時私は二十一歳で、一週間前に駅の階段から落ちて意識不明で救急車に運ばれたこともあり、体中包帯だらけ、松葉杖を使わないと歩けない状況だった。幸い頭を強く打ってなかったからか、意識の回復も早くそんなに大した怪我にはならなくて、私はとてもショックだった。

「死にたい気持ちはわかるけど、人間はそんな簡単に死ねないの」

 親友の三原あんずは私を見つけるなり、頬を平手打ち。そのあとぎゅうと私の体に抱き着いた。女の子のやわらかい皮膚が布越しに感じられる。あんずについて席に向かうと、すでに一人の男性がソファの奥に腰掛けていた。

「……あんず、あの人だれ」
「香坂さんっていうの。今日からあんたの彼氏」

 へえ、相槌を打ちながらあんずの言葉の意味が全くわからなくて、私は少し目が泳いでしまう。香坂さん、と呼ばれた青年は私より少し年上っぽくて、落ち着いたイケメンだった。私をじいとみて「こんにちは」と短く彼は挨拶する。私もつられて「こんにちは」と口だけ動かした。

「彼氏っていうか、見張りね。あんたがすぐ死のうとするから、それを止めれられる存在が必要かなって思って。ほんとはあたしがって思ってたんだけど、仕事でちょっとしばらく海外だから無理そうで。で、知り合いの伝手で香坂さんにお願いすることにしたの」
「え、私の意見は通らない感じ?」
「茅野が死んでからあんたはおかしい。おかしいの、わかって。私はあんたを失いたくないの、茅野が死んでおかしくなるあんたみたいになりたくない」

 ケーキがおいしいお店なのに、午後三時にがっつりハンバーグステーキを食べてる私にあんずは必死に訴えた。香坂さんは何も言わずにただ私の顔を凝視して、珈琲を口に含む。
 ふいに彼を見て思うことは、咲良とは真逆の人間だということ。咲良はこうやって私とあんずと三人で会うときはうるさいくらいに会話に茶々を入れてくるし、珈琲なんて死んでも飲まない。いつもきまってメロンソーダ。

「香坂さんはいいんですか。知らない女の彼氏になるの」
「別に俺は大丈夫ですよ」

 彼は自然な笑顔でそう言った。
 さらっと伝票を持って行ってレジで会計を済ませていた彼は本当にスマートな大人の男性って感じがしたし、きっと咲良に出会ってなかったら私はこういう人に恋をしていたのだろう。

「篠宮さん、このあと時間ありますか?」

 あんずに隠れて耳打ちしたその声は、低くて少しかすれていて、背中が凍り付きそうなほどぞわぞわした。

「大丈夫、ですけど」

 見上げた香坂さんの表情はさっきみたいに笑っていて、声の雰囲気とは全然違った。腕に大量にできた鳥肌を軽く撫でながら私は彼の後ろをついていく。
 夕焼けが綺麗で、のびた影を踏みつけるように歩いた。見回す風景が見たことのある建物ばかりで、私の心臓は今にもぎゅうと絞り千切られそうだった。

「どうして」

 花を買ったあとに、線香もいりますよねと、香坂さんは私に尋ねてきた。私は上手く言葉が紡げずに、そうですねと返す。彼がどこに行きたいのかすぐにわかった。石の階段をのぼって、お墓の前に手桶に水をくむ。一組の親子連れとすれ違っただけで、あとは誰もいない墓地だった。
 久しぶり、咲良。と心の中で語りかけた時、

「久しぶり、咲良」

 同じ声が、私の耳を侵食した。


 香坂さんは何も言わずに花を交換して、柄杓で水をかけた。線香を取り出して私に持ってて、と手渡すとポケットからライターを取り出して火をつけた。煙はすぐに上にのぼっていく。

「香坂さんって、何者なんですか」


 墓地は怖いとかそいうのじゃなくて、気持ちがうまくコントロールできなくなる不思議な空間だと思う。私の心臓はばくばくと誰にも聞こえないように大きく早く動いていた。

「知りたい?」






 知りたくなかった。君のことなんか。
 むかつくくらいに夏の匂いがする。


 優しくない、私の二度目の夏が、音を立てて動き出した。


Re: Lunatic Mellow Mellow ( No.5 )
日時: 2019/08/23 02:17
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 mellow002「 恋は落ちてこない 」



 香坂飛鷹は自分のことをあまり語らなかった。どうして咲良のことを知っているのか尋ねてみると「仕事関係でちょっとね」とあえてなのか誤魔化すように言葉を濁した。
 カメラマンのあんずの知り合いって聞いた時から芸能界に関わりのある人っていうのはわかっていたけれど、咲良のことを知ってっているなんて予想外だった。世の中は案外狭いものだ。
 お墓参りが終わった後、墓地の外で香坂さんは「タバコ吸っていい?」と私に聞いてきた。いいですよ、私は歩きながら答える。タバコのにおいはあまり好きじゃなかった。

「恋人って何するものなんですか」
「それを俺に聞くの?」
「わたし、咲良以外の人のこと好きになったことなくて、彼氏とかできたことないんで」
「そんなに可愛いのに?」
「外見だけってよく言われます」

 誰から、と笑い交じりに香坂さんが相槌を打つ。香坂さんの足並みは私の合わせてくれているのか少しゆっくりで、大人の余裕が感じられた。
 
「んん、じゃあ、名前で呼び合うってのは?」
「……私、あなたの下の名前知らないです」

 見えていた香坂さんの背中がぴたっと止まって、彼が綺麗に180度回転した。香坂さんの整った顔がこちらをじっと見つめて、唇がゆっくりと動く。

「飛鷹」

 呼んでみて、と香坂さんがいった。

「ひ、飛鷹さん」

 急に香坂さんの大きな手がこちらに伸びてきて私の後頭部にぽんと置かれた。くすぐるような優しい撫で方で、私の髪がぐしゃぐしゃにされて香坂さんは満面の笑みで「よくでました」と私のことを褒めてくれた。

「じゃあ藍ちゃん、家まで送ってくのもありだけど、初めてあった人に家バレするのも怖いだろうしここでお別れでもいいかな」
「あ、ありがとうございます」

 駅までの道のりはあっという間だった。
 じゃあ、と軽く手を挙げて飛鷹さんはすぐに振り向いて去っていく。さっきと同じ道を。もしかしてわざわざここまで来てくれたのだろうか。考えても無駄なことばっか頭に浮かんで、好きにもなれないのに頭の中は飛鷹さんのことでいっぱいだった。
 







 香坂飛鷹がむかし、lunaticのメンバーだったということを知ったのはその日の夜のことだった。
 彼の名前でネット検索をかけたらそれは一瞬の出来事だった。メジャーデビューする前の、ちょうど咲良が高校生の時、出来立てほやほやのころのlunaticのセンター、それが飛鷹さんだった。当時は圧倒的な人気があって、結局メジャーデビューできたのも飛鷹さんのお陰とかなんだとか、調べるだけアンチが沸いていて怖かった。
 香坂飛鷹がいなくなったlunaticを誰が応援するんだよ。そういうネットの書き込みがいたるところで見られた。これを咲良は見たのだろうか。
 飛鷹さんのいたころのライブの映像がネットに流出していて、わたしはついつい視聴画面に向かってしまった。咲良が消えそうなくらい、ほかのメンバーを食い尽くした飛鷹さんが輝いていて、純粋にすごいって思った。

 でも、この話は地雷だと思った。これを飛鷹さんに言っちゃいけない気がした。動画を見終わった後、私の頭からはやっぱり咲良のことはすっぽり抜けてしまっていて、何でか急に申し訳なくなってリストカットをした。流れる血は私の涙で薄まっていく。ああ、こうやって私も咲良のことを忘れていくんだ。私もただのファンと変わらない。馬鹿みたいだ。


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