コメディ・ライト小説(新)

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あやかし町【 第一期 第弍章 】
日時: 2021/09/01 03:23
名前: 鳴海埜(なるみや) (ID: gF4d7gY7)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=12684

時は平成。ビルが建ち並び、機械化が進む今、これはあやかしという、日本に古くから存在する"人成らざる者達"と"あやかしが見える"珍しい一人の人間との御話__。
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2019年 冬 コメディ・ライト小説部門で銅賞を頂きました。投票して下さった方々誠にありがとうございます。
2020年 冬 コメディ・ライト小説部門で金賞を頂きました。投票して下さった方々誠にありがとうございます。
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【 目 次 】
[ 詳細 >>01-03 ][ プロローグ >>04 ]
* 第 一 期 *
[ 第壱章 >>05-20 ]
 第01話 >>05 第02話 >>06
 第03話 >>07 第04話 >>08
 第05話 >>09 第06話 >>11
 第07話 >>12 第08話 >>14
 第09話 >>19 第10話 >>20
[ 第弍章 >>21-30 ]
 第11話 >>21 第12話 >>22
 第13話 >>23 第14話 >>24
 第15話 >>25 第16話 >>26
 第17話 >>27 第18話 >>28
 第19話 >>** 第20話 >>**
[ 番外編イベント ]
バレンタイン編 >>18
クリスマス編 >>
年越し編 >>

Re: あやかし町【 第一期 第弍章 開幕!! 】 ( No.24 )
日時: 2021/01/02 14:04
名前: 鳴海埜 (ID: s/G6V5Ad)

第弐章 #14[襲撃しゅうげき


__冷たい暗闇の中を落ちていく感覚がしばらく続いていた__。



「…んん………ッ…ここ……は…?」

目が覚めると、そこは知らない場所だった。いや、正確に言うと"見覚えのない"場所だろう。目の前に広がる世界は、あやかしの住む国である和国の中央町の町並みに似ていた。しかし、私が知っている中央町とは雰囲気が全く違った。
建物は瓦が剥がれ瓦礫が散らばっており、中には半壊しているもの、傾いているものもいくつか見える。そして、最も私が知っている中央町と違う点は、黒い霧のような、人や動物の姿にも見える"なにか"が大量に宙を舞っている事だ。暗い空に溶け混んでいる様で姿が見えずらい。その"なにか"は、到底聞き取れない様な叫び声を上げて、町中を飛び回り建物を破壊し、逃げ遅れたあやかし達に襲い掛かっている。
襲われたあやかし達は、次々とその場で気を失い倒れていく。
私は、その様子をただ呆然と眺めている事しか出来なかった。今私が見ているこの状況は本当にあった事なのか、それともただの夢なのか。これがただの夢だとしても、何故私がこの様な夢を見ているのかと思っていたその時、周囲に異変が起きた。
あやかし達の悲鳴や叫び声で騒がしかったはずの町中は、唐突に雷鳴の様な大きな音が響き渡ったと同時に、喧騒はピタリと止み、辺りは静まり返った。
そっと顔を上げ視線を道の中心へ動かす。

すると、視線の先には土煙が立ち上がる道に1つの人影が見えた。


『あーあ。楽しく和国を観光してる最中だったのによぉ…たかが異形の分際で…よくも俺の邪魔してくれたなぁ?あ"ぁ"?』


__静まり返った辺りには、怒りに満ちた声がよく響き渡った__。


第弐章 第14話 終

Re: あやかし町【 第一期 第弍章 開幕!! 】 ( No.25 )
日時: 2021/01/06 00:24
名前: 鳴海埜 (ID: PNMWYXxS)

第弍章 #15[黒霧くろむ


『__あーあ。楽しく和国を観光してる最中だったのによぉ…たかが異形の分際で…よくも俺の邪魔してくれたなぁ?あ"ぁ"?__』


怒りに満ちた若い男の声が響き渡る。

「おいおい、黒霧くろむ。お前ら一体何様のつもりだ?この俺が!和国を!楽しく!観光してたんだぞ?!邪魔したからには…覚悟は出来てるよなぁ?」

雷鳴のような大きな音と共に現れた男が黒い何かに対して怒りの言葉を投げ掛けていた。ふと、何かの気配を感じ周りを見渡すと、逃げ遅れていたあやかし達はいつの間にか消えており、代わりに1つの人影が見えた。
『…人…影....?いや...でも…気配はあやかし…それに…知っている様な気がする…あの人影は…一体……?』
私がそんなことを考えていると、また雷鳴が落ちたような大きな音がした。

私は、その音にハッとし、男が先程まで居た方向を見ると、そこに姿はなく土煙が立ち昇っているだけだった。周囲を見渡すと、男の姿を見つけた。男は屋根へ屋根へ飛び移りながら、黒霧と呼んでいた黒い何かを、華麗に次々と斬り裂き浄化していたのだった。
その様子を眺めていた時、私のすぐ側で、着地する様な足音と男の声が聞こえた。
「…よっと……。さぁて、お前で最後だ。そうだ、俺は優しいから一つ忠告してやるよ。……お前らがここにいる資格はねぇよ…。じゃあな。」

男が地を這うような声で言った後、ザンッと斬り裂く様な音がした。

「すまん、鬼神きじん。俺が来るのが遅れたせいで被害がデカくなった。すまん。」

男がそう言うと、少し離れた所に居た人影が、こちらへ歩み寄りながら苦笑混じりにこう言った。

「いやいや、これで充分さ。それ以上謝らないでくれ。」

青年のような声だが、あまり感情の読み取れないような声にも感じた。それに"鬼神"という名前が聞こえたが、まさか…と考えていたその時、丁度顔が露になった。そして私は目を丸くした。

__その顔は…私の知っているあの鬼神様にそっくりだったのだ__。


第弍章 第15話 終

Re: あやかし町【 第一期 第弍章 開幕!! 】 ( No.26 )
日時: 2021/03/30 22:39
名前: 鳴海埜 (ID: gF4d7gY7)

第弍章 #16[夢造むぞう


__なぜ…鬼神様が…ここに…?__

果たして本当に、あそこに立っているあやかしは鬼神様なのだろうか。もし本人だとしたら、私が知っている鬼神様よりも、声がやや若いような気がするのは気のせいなのだろうか。そもそも、鬼神様にそっくりな彼の隣に居る男性は一体何者なんだろう。知らないはずなのに、何故か見覚えがあるような気もする。私は、若い男性が一体誰なのか、何故見覚えがあるのか分からず頭を悩ませていた。するとその時、よく知る名前が聞こえてきた。

「ところで、嶋哉とうや。先程『和国を観光していた』と言ったのは、私の聞き間違いか?」

『…と……うや…?…今…嶋哉…って…聞こえたような……』"九十九つくも嶋哉とうや"は、私のお爺様であり、親代わり"だった"人。気が付いた時には父も母も居なくなっており、独りぼっちになってしまった私を快く家に迎え入れ育ててくれた、私に残った唯一の大切な家族の名前だ。それを何故、このあやかしは知っているのだろう。私が悶々と思考している間にも二人は仲良さそうに話をしていた。すると突然、耳元で見知らぬ声がした。

「此処は数年前の和国だよ。所謂いわゆる過去の世界ってヤツさ。」

私はその声に恐怖を感じ、勢いよく振り返り後退った。そこには、不気味な微笑を浮かべる人の姿があった。いや、人の姿こそしているけれど、気配はあやかしのような、しかし、先程黒霧と呼ばれていたもの達と少し似ている気がした。

「僕が誰だか分からないって顔だねェ。会ったことないし当然の反応さ。僕の名前は夢造むぞう。君のお爺様、えェーと、嶋哉だっけェ?アイツの知り合いって感じダヨ~仲良くしようねェ、孫娘チャン♡」

そう言って、私の額に口付けをしてきた。私はそれに鳥肌が立ち『ひぃっ…』と小さく悲鳴をあげた。気持ち悪かったというのもあるが、それとは別に、"謎の恐怖"を感じたからだ。態度はヘラヘラしていて何を考えているのか分からない。表情は不気味な微笑を浮かべているだけだった。

「そんなに恐がらないでよォ~大丈夫大丈夫ゥ~取って食ったりはしないよォ。………今は…ネ♡」

口ではそう言っているが、表情が、不気味な微笑を浮かべているのは変わらないのが余計に、恐怖心を増幅させていた。そもそも、何故私が過去の世界に居るのか、それも現実世界の過去ではなく"和国の過去"な理由ワケも分からず困惑していた。私は和国の過去とは一切関係ないはず…。関係があるとすればお爺様しかいない、しかし、お爺様はもう亡くなってしまった。では、他にどんな関係が…。そう思っていた時、今までのヘラヘラとした態度から一変し真剣な態度になり、表情は無くなりより一層恐怖を感じた。

「何故君がここに居るのかって思ってるでしょ。理由は簡単。君が鬼神と出会ったから。君のじいさんは鬼神と関係性が深い。そしてアイツは鬼神と何か契約を交わしている。そして、その契約は君に関係がある、しかし君はそれを忘れているんだ。」

『鬼神様とお爺様が…契約……契約に私が…私は一体何を忘れている…?』
鬼神様とお爺様が契約を交わしていたなんて知らなかった。…いや、本当に知らなかっただろうか。本当に私は、何かを忘れているのではないか。それもとても大切な何かを…私は…何を忘れているのだろう。

「僕が君をこの世界に呼んだのは、その契約の内容を思い出してもらう為さ。君がそれを思い出さない限り、君はこの世界からは出られないよ。」

そう言うと、『逃がさない』とでも言うように私の腕を掴み、ぐいっと引っ張ると再び不気味な笑みを浮かべた。

「この世界から出たいならァ~頑張って思い出してねェ。……まァ…出られる保証はしないけどね…♡」

第弍章 第16話 終

Re: あやかし町【 第一期 第弍章 開幕!! 】 ( No.27 )
日時: 2021/02/24 08:43
名前: 鳴海埜 (ID: V7PQ7NeQ)

第弍章 #17[契約けいやく

__私は"何か"を忘れている…?__

夢造むぞうは怪しげに笑い小さく呟くと、景色に溶け混む様にスッと姿を消した。そして、その場にはもうお爺様と鬼神様の姿はなく、私だけが取り残されていた。

「一体2人はどこに行ったのかしら…あの怪しい夢造とかいう者も…」

ゆっくりと立ち上がり軽く辺りを見渡したが、やはり2人の姿は見えない。
いつの間にか辺りはすっかり暗くなっていたようで、遠くで和太鼓の音が鳴っているのが聴こえてきた。私がいる近辺は黒霧達によって崩れ落ちた瓦礫がいくつも落ちているだけだった。

「と、とりあえず音が鳴る方に行くしかないわね…。それにしても、契約って一体なんなのかしら…。それに…私が何かを忘れているって言っていたけど…」

ぶつぶつと独り言を呟きながらも、和太鼓の鳴る方へ、灯りの方へ歩みを進める。歩き続けている内に、目的の場所に着いていたようだ。気が付けば私は、紅い灯りの提灯が付いた店がいくつも並んだ商店街らしき場所に居た。
私はその場所に見覚えがあった。和国に来てから、御月と行った、そして鬼神様と出会った食堂があった景色と少し似ている気がした。

「でもやっぱり建物が全て古い気がする…過去に来ているのだから当然と言えば当然の事…って、あ…。」

街並みを眺めながら歩いていた時、人混みの先にお爺様と鬼神様の姿を見付けた。しかし、夜祭り中のせいかあやかしの往来が激しく、数も多い為2人の姿を見失いそうになってしまう。

「私の姿は見えていない様だし…このままついていっても大丈夫…よね。」

私は2人の事を走って追った。2人は何やら話しているようで、時折お爺様が笑う様子が見えた。ようやく2人に追い付た私は、会話の内容が聞こえてきた。

「ところで鬼神。お前婚約相手は見つけたのか?もしまだ決めてないなら…俺の孫娘をやろうか?」

___えっ…?今…孫娘…って…__

「嶋哉。知っていると思うが、私は人間ではない、鬼だ。鬼の私に人間の女を嫁に貰えと言っている危険性を分かっているのか?貴様は孫娘が大事ではないと言うのか?」


一体何故…お爺様が私を鬼神様に…?


第弍章 第17話 終

Re: あやかし町【 第一期 第弍章 開幕!! 】 ( No.28 )
日時: 2021/03/20 22:27
名前: 鳴海埜 (ID: gF4d7gY7)

第弍章 #18[代償だいしょう


「いいや、大事に決まってるさ。そんな気軽に"はい、どうぞ"なんて、危険なあやかしに渡すわけがないだろ?」

__お爺様が鬼神様と契約した内容って…絶対私の事、よね…。でも…どうしてお爺様が…こんなこと…__

もしも、本当に契約の内容が"私を鬼神様の許嫁として渡す事"だったとしたら…御月の件は"嘘"になる。嘘の可能性は充分あるはずなのに、なぜか私は御月は嘘はついていないと思った。

「ならなぜそんな提案をする。まさか、この私と"契約しよう"などと言わないだろうな。…私と契約をする場合、代償はかなり大きくなるぞ。」

代償…また新しい単語が出てきた。会話の内容から、契約するには代償が必要ということは理解できた。がしかし、その"代償"が一体どんなものなのか分からず、もし生命に関わる重いものだったらどうしよう、という不安に私は押し潰されそうだった。

「…代償か。なるほどなぁ。なぁ、鬼神よ。もし、俺がお前と契約をする、と言った場合俺はなにを代償に払えばいいか、教えてくれないか。」

___私の声は二人には聞こえないと分かっているのに、一言一句聞き逃さぬように息を殺して耳を傾けている。

「契約の内容によって代償は変わるものだ。契約の内容に命が関わるようなものであれば、それ相応の代償が伴う。例えば…記憶あるいは寿命等。」
「なるほど。じゃあ、もし俺が"お前の全てを賭けて咲奈を守れ"と言ったら代償はどうなる?」

"全てを賭けて…鬼神様が私を守る"?

「私の全てを賭けるとなると…貴様の記憶または寿命が代償だな。ただ、私のせいで貴様が早死にするのは御免だ。そうだな…貴様が"和国に出入りしていた時の記憶"はどうだろう。」

出入りしていた時の記憶…今ここに存在し、鬼神様と契約の話をしている記憶が消えるということだろう。お爺様が和国の事を、契約の事を話さなかったのは"忘れていた"のではなく"記憶が消されていた"からだとしたら…。

「あー…てことは、今お前と話してる事もお前の存在自体も忘れるってこと…だよな。それは…寂しいな…。」

寂しいと呟いた後乾いた笑いを溢しただけで、それ以外何も言わなかった。
ただひたすらに静かで少し気まずい雰囲気のまま時間が経っていくのを眺めているしかない私は、見えるわけがない二人の間に無理矢理割って入った。


第弍章 第18話 終


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