コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君からの手紙『コメント募集中です(*´Д`)』 ( No.30 )
- 日時: 2017/11/11 22:35
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
第15話:お話。
それから数時間、着陸のアナウンスが入る。
「北海道到着~!」
飛行機から降りて早々、かながうーんと伸びをしながら言った。辺りを見回してみたが、自然に囲まれた良いところだ。北海道は多分ほとんどの人が初めてだろう。皆が目をぱちぱちさせてその珍しい光景を見ていた。
……という私も初めてだから、多分その皆と同じ様子なんだろう。
そして、かなりの寒さ。飛行機内では脱いでいたコートを秒速で着た。場所によるが北海道の5月平均気温なんて10℃ほどだ、なめていた私が悪い。
……もう少し温かいと思っていたけれど、真昼になるまでコートは手放せなさそうだ。
少しだけ手続きをすると、案外簡単に空港からは出られた。改めてみる北海道の風景に皆が圧倒される。
そんな中、私は衝撃的な光景を見た。
「涼宮。自由行動の時に話があるんだけど……良い?」
○*かなside*○
「ごめんね!自由行動のとき全然時間無くて、夜に呼び出しちゃうことになって……」
この修学旅行で3日間お世話になるホテル。そこにある出入り自由なベランダに彼――樹くんを呼び出した。……呼び出された、と言っても正しいと思う。
昼に急に「自由行動の時に話がある」と言って、結局自由行動の時には時間がなかったから後でも良いのか聞くと良い、と言っていたから夜にした。
今日は晴れていた。だから夜も星が綺麗で、月も出ている。
「…話って?」
「あのさ」
樹くんはその3文字だけ呟いてから深呼吸したり言葉をまとめるように手を動かしたりと何だか変な様子だ。その様子に焦った私は彼の腕にそっと触れる。
「大丈夫……?」
「……」
そうすると今度はなぜかそっぽを向くという、かなり変な様子。
……自分から「ベランダが良い」と言っておいてなんだが、寒くなってきた。
「月がきれ………――じゃなくて」
私が手にはぁ、と息を吹きかけていたとき。彼はようやく口を開いたと思ったらまた閉ざしてしまった。呟いた言葉はよく聞こえなかったけれど……一体さっきからなんなんだろう。
「ねぇ……寒さでおかしくなってたりしないよね?」
「………涼宮」
私の名字を呼ぶ声とその後に言う衝撃的な言葉に、一瞬世界が止まったような気がした。
「好きだ。ずっと前から。"もう一回"俺と付き合ってください」
……自分で言うのもなんだが、私は割と遊びな感じのチャラい人たちから何回か告白を受けたことがある。だからこの言葉を理解するのは速く、謝罪の言葉をまとめるのも速かった。
「ごめ―――」
「俺はそこら辺の奴とは違う。幼馴染みなんだからずっと見てきた。なんで……」
彼の眼鏡の奥が悲しさに揺れる。けれど私はそんなこと、お構いなしだった。
「……君が、私の心を打ち砕いた癖に」
そう、君が――。
ずっと前からなんて嘘だよ、ずっと見てきたなんて嘘だよ――そんな嘘、今更付いてどうするの……?
- Re: 君からの手紙『コメント募集中です(*´Д`)』 ( No.31 )
- 日時: 2017/11/11 22:52
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
※かなside。そして過去編入ったりします。
第16話:縁を切って。
私と樹くんは同じ中学校。小学校も同じだったから、いわゆる幼馴染みという間柄になる。
『わ、私と……付き合ってください!』
今でも鮮明に思い出される告白したときのこと……。
実は私と樹くんは中学1年の時の半年間、付き合っていた。私から告白した結果okを貰えて無事付き合えることとなったのだが。
このときは私は「恋愛が嫌だ」なんてことは思っていなかった。思春期だったから。
1年の秋のある日から、私は嫌がらせを受けるようになった。
『涼宮とかぶりっ子でしょ』
『チビだし!ウケるよな!』
その当時、私は割と精神面が強かった。なぜなのかは分からないがとにかく精神面が強くて、その程度の悪口だと別に特別嫌になったりはしなかったのだ。
正直、全国の小さいことがコンプレックスの人たちに謝れよとでも思っていた。
それが、「その日」から――。学校に居るのも行くのも見るのも、考えるのも嫌になった。
『涼宮、俺と縁切って』
付き合って半年間、その一言で私と樹くんは別れた。彼は友達に触発されて言ったらしい。このくらい出来なかったら友達じゃないよとでも言われたのだろうが、私より友達を取った――イコール、ただ単に別に私のことなんて好きでもなんでもなかったんだ。そこら辺のチャラい奴らと一緒なんだ、私のことなんて本当は嫌いなんだ。
そんな思いでいっぱいになって、私はそれから恋愛をするのが怖くなった。
樹くんのことは、彼から拒絶されてすぐに諦めがついた。思えば私も本当は好きではなかったのだろうかというくらい、簡単に諦められた。彼がそんな人だと分かったからだろうか。本性が分かったからだったのだろうか。
それからもう私は樹くんから縁を切ってと言われたことは考えないようにした。班のメンバーが同じになったり席が近くになったり、少しずつ話す回数も多くなってきて樹くんは何も考えていないように話すものだからバカバカしくなって私も何も考えないように話すようにした。
それなのに。君から振った癖に。付き合ってくださいなんて今更了承すると思ったの?
バカバカしくなっただけで許すなんて言っていない。あの、君に幻滅した気持ちを蘇らせるようなことをして、何がしたいの――?
ホテルの部屋に戻ってからは私の感情は黒く渦巻いていた。
- Re: 君からの手紙『コメント募集中です(*´Д`)』 ( No.32 )
- 日時: 2017/11/12 11:15
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
※琉香side。
第17話:ただの憶測だけど。
あっという間に時間が過ぎ、私たちはホテルに入った。ホテルの部屋班は私とかな、恵里、琴葉、雪、唯乃。琴葉は和の美人、みたいな子で礼儀正しく、育ちが良さそうな子だ。雪は少し変わった子。悪く言うとアホの子だ。時々論点からずれたことを言う。それとかなり大食いだと言っていた。そして唯乃はとにかくテンションが高い。旅行だからと思うかもしれないが、それでは言い表せないほどのうるささだ。
これでは口が悪いように聞こえてしまうから言っておくが別に深いとかそう言うのではなく寧ろ楽しいのだが、個性が強すぎる。目眩がする。
「トランプしよーよ!!それともウノにする!?」
「トランプ……ってなんですか?」
「え!?トランプ知らないのー!?」
和の美人の琴葉はかなり隔離されたような生活を送っているのだろう、私たちが当たり前に知っていることを知らなかったり、私たちが知らないことを当たり前のように語っていたり。
唯乃は文字通り凄い。
「大富豪?それとも神経衰弱?七並べ?」
「大富豪かな」
「大富豪ってなんだっけ……美味しかったっけ……?」
「雪ちゃんって食にしか興味ないよね!?」
実はこの琴葉と雪と唯乃、そして私たちはお互い知らない存在だった。今日初めて話すと言っても過言ではない。けれど唯乃のコミュ力というか強引さで何となく友達のようになっている。
まだ琴葉は馴染めてないような雰囲気ではあるが。
――そういえば、さっきから…かなの姿が見えない。
『私ちょっと、外の空気吸いに行くね』
『あ、私も行きたい……』
『ごめん、ちょっと用事もあってさ。よく分かんないんだけどね』
さっき交わした会話。よく分からない用事というのは何なのだろうか。かなは鈍感と言うことを考えると……呼び出しの告白?
寧ろそれしか考えられない。何となくすぐに察せた私は「じゃあいってらー」みたいな感じで見送った。
そのとき、ドアが急に開く。
「ごめんね!ちょっと用事があって、遅れました~」
何事もなかったかのようにかなが言ったけれど、その目にはどこか光が無く虚ろで。
『恋はしたくない』と言っていたあの日のような目だった。
かなは苦笑いしながらベッドに飛び込んだ。何というか、その「用事」とやらで凄く疲れているのだろうか。しばらくかなが起き上がることはなかった。
さすがに心配で私はかなを部屋の隅っこに呼ぶ。
「なんかあった?」
「何もないよ」
間髪入れずに帰ってきた返事はどこか拒絶するような響きを持たせていて、私はそれ以上聞かなかった。そして聞けなかった。
かなは何事もなかったかのように、唯乃たちの輪へと戻る。
今のかなの反応で、やっぱり呼び出しで告白されたことが分かった。
そしておそらくその呼び出した男の子は――瀬戸か曉。けれど曉は割と人の目とかを気にしそうというか自分から呼び出したりはしなさそうだから瀬戸の可能性が高い。
そしてかなの表情を見ても照れたりする素振りがないため多分即座に振ったんだろう。
もしかすると……『恋したくない』という原因は、瀬戸にあったりするのかな?
私のただの憶測は、忘れたくても忘れることが出来なかった。