ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 「君にとって、魔法とはなんだ?」
- 日時: 2010/12/24 12:40
- 名前: 樹 (ID: mUcdxMp7)
一作目の奴が消えてしまったと思っていたのですが、無事見つかりました。
そちらの方もよろしくお願いします。
ジャンル的には似たりよったりな感じなので、大丈夫だとは思います。
魔法に関しては結構間接的に書くと思うのでご了承をお願いします。
あと、少々レスが長いのでレスが増えなくても更新するときがあります。いえ、殆どそんな感じです。
そしてカメ更新なのは変わらずです。本当にスミマセン。
では次から本編です。
【∞】 肯定?否定?
どっちにしても、人は本気で言おうとすればするほど、その物事に穴を開けてしまう。
もちろん、君も。
>>1
【一】 【世界】それは一つではない。
しかし、僕達が存在している世界は一つなのである。
>>2
【二】 ミステリー小説って僕好きじゃないんだ。
なんで? だって必ず答えがあるじゃないか。
>>3-5
一気に読む人
>>1-5
参照100突破! ありがとうございます!
Page:1
- Re: 「君にとって、魔法とはなんだ?」 ( No.1 )
- 日時: 2010/12/27 17:48
- 名前: 樹 (ID: mUcdxMp7)
【∞】肯定?否定?
どっちにしても、人は本気で言おうとすればするほど、その物事に穴を開けてしまう。
もちろん、君も。
「君にとって、魔法とは何だい?」
また、デサストレは僕に質問を投げかけた。とても質問しているとは思えない嘲笑的な表情を顔につけながら、ぼくの答えを知っていながら、ぼくがそれを言うのを待っている。
意地悪な質問に、意地悪な質問の仕方だ。
クソッ、殺したいほど憎たらしい。
舌打ちをする代わりに、僕は心の中で毒づいた。
今でも僕は、全くと言っていいほどにコイツのする行動、いや言動が理解できない。
「魔法ですか? そうですねぇ……一般的には西洋で行われていた不思議な行為を行うために使われたと思われる、非科学的、非現実的、未知の原動力を著しているモノ。つまり、現実には存在していない人間の欲望と卑猥な希望に満ちた『想像』あるいは『妄想』を理解したうえで、絶対にありえることが無いという失望と絶対に生み出されることが無い安心感から作られる『幻想』の力……僕はそう思いますよ」
デサストレの目は僕を捉えていなかった。でも、僕にはデサストレがどこを見ているなんて分からない。
なぜ?そんなの聞くよりも簡単だよ。
フフフッ
デサストレが満足そうに笑いを漏らした。
「僕はね、君ならそういうことを言うとあらかじめ思っていたよ。存在するはずがない『魔法』を全面的に論理的に否定で固めて答える。でもね、否定すればするほど君の答えには穴ができる……これは前にも君に言ったことがあるねぇ」
「そうですか?」
そうだよぉと、デサストレは笑うように言った。
その冷たい笑い声は僕の体を通り抜け、静かな部屋の中をこだまする。ゾッと背中がうずいた。デサストレはその小さな体の中に、似合わないほどの重いオーラを背負っている。
圧力なのか。空気圧なのか、重力圧なのかそれとも気力、なのか。どれにせよ、とても重いモノがあの小人に備え付けられていた。
まぁもし、気力なのだいうのなら、僕はこの小人に人権的・かつ政治的に負けたことになっているらしい。一瞬胸に引っかかりを感じたが、直ぐにその考えの『こと』を捨てた。若干一五才の若造のくせして。
フッと息を吐く。
「あとさ、君は本当に『それ』を否定しているのなぁ?ぼくには全然そう聞こえないよ。君は嘘の吐き方をわすれちゃったのかぁ?ってくらいに無鉄砲でスカスカのカスカスな論を言っちゃって……あっ! それとも…………動揺しちゃってたぁ?」
アハハハハッ
心底可笑しかったのか、デサストレはお腹を抱えて笑いだした。さっきよりもあたたか空気が部屋の中に流れたにもかかわらず、それは僕にとって氷点下の氷点下。いやそれ以上にまで下がりまくっている。
「…………ッッ」
ギリギリと歯軋りの音が鈍く響く。無性に腹立たしかった。
僕が動揺しているだと?
動揺なんてしていないさ。いまさら、『あのこと』を思い出せるような心の要領は僕には無いし、思い出したいとも思ってないんだからね。目を伏せるようにして、細い目でデサストレを捉える。デサストレの目はこちらを捉えては居なかった。それでも、敏感に僕の視線を感じ取って、笑いをとめた。変わりにシニカルな笑顔をニッと顔に広げ、僕の姿をその青黒い、闇色の目が捉えさせた。
「動揺なんてしてない……てカオダネ。でもねぇ、君にとってその態度が最・悪・にっ動揺しているんだよぁ。わかってないのぉ? いつもいつでも無関心・無感覚の君が、こんなにも冷たい感情を体からあふれ出させてぼくを見ている。これで動揺してないなんていうのは嘘か冗談にしか思えないんだよぉ」
僕は何も答えなかった。
僕は何も動かなかった。
僕は何も考えなかった。
さっきと何も変わらない。のに——…
「ほぉーら、動揺しているじゃぁん。ぼくには何でもわかっちゃうんだからねぇ。ふくくくふふふ。でも、君にはぼくがわからないんだねぇ」
ニヤリと、どこか寂しそうに僕を見つめる。
僕は動かなかった。
「まぁ、あの論について答えるなら、答えは『間違い』点数で言うならゼロにマイナスをつけてゼロで割った数だねぇ。ほんとに赤点だよぉ。この間すっごく教え込まれたのに、また直ぐなおっちゃうなんて、君の悪いところだよぉ。あのことを忘れるなんてね」
デサストレがずらずらと理解不能な言葉を並べる。でも、そんなことでさえ、ズキズキと痛んでくる頭に打ち消された。
「ちゃんと、思い出してあげてね」
真っ暗に侵食れる視界に、それよりも深い漆黒の髪の毛が写る。
この魔女っ子が……僕は、絶対に認めないか…ら…
最後は一瞬だった。ふっと、光が飲み込まれ、黒い髪の毛が消えた。
ああ、頭が痛い。
- Re: 「君にとって、魔法とはなんだ?」 ( No.2 )
- 日時: 2010/12/27 18:03
- 名前: 樹 (ID: mUcdxMp7)
【一】
【世界】それは一つではない。
しかし、僕達が存在している世界は一つなのである。
例えば、この【世界】が魔法で作られていると言う人が居たとする。
例えば、この【世界】が科学で作られていると言う人が居たとする。
前者にとっては、魔法が現実で、科学は希望であり非現実的なもの。後者としてみるならば、科学が現実で、魔法が希望であり非科学的なものだ。
それが、前者には前者の後者には後者の【世界】
例えば、それらさえも信念として持たない人が居たとしよう。
でも、その人の【世界】は生まれている。
なぜ? そうしないと生きていけないからだよ。でも、その話はまた今度にしようか。
だから、海がこの【世界】を作っている人が居てもおかしくはないし、神様がこの【世界】を作っていると言う人が居てもおかしくはない。
もちろん、人間が作っていると言っている人だっておかしくはない。
なら、魔法がこの【世界】にないと否定することは、あながち間違っている。
だってそれは科学がこの【世界】にないというのと同じ意味なんだから。
その人にとっての【世界】。それはその【世界】がどのような存在なのか、その【世界】にとっての自分は何なのかそれを明確に確実に信念として想っているそのヒト自信の形だ。
でも、そういう意味でとるならば、この世の中に魔法があるのは可笑しいし、この世の中に科学があるのはおかしい。
逆に、魔法が無いのもおかしいし、科学が無いのもおかしい。
つまり、何が言いたいのかというと僕達の【世界】と言うのは一つではないかもしれないってこと。
いやもちろん、存在している世界は一つだ。
でも、それは “最初で最後、唯一の” 共通点。同じ地域で、同じ環境で暮らしているとしていても、その人の【世界】は、その人の自身の観念の違いできまる。
月とすっぽんのように、オセロの裏と表のように。違う。
しかし、想いにはシグナルのような周波が存在している。細菌ウイルスのように、周りの周波と同調させる効果をもって。
例えばもし、誰かが自分の【世界】を科学にしたとしよう。その誰かの隣に居た人がまだ信念を決めてはいないのなら、きっと直ぐにでも科学というシグナルに、自分のシグナルを同調させられる。
おっと、かなりアバウトになってしまった。でも、実質その通りなんだ。
そのとおりなのだから、僕も、もちろん【君達も】この科学という【世界】を信じきっている。当たり前のように、いや、当たり前なのだ。科学という一つの【世界】その存在を疑うなんてことは僕達にはできない。それが【世界】
しかし、その僕がこうして魔法のことを語っている時点で、この論は天秤で並行に並ぶわけが無い。見ても、片方に偏りどこか不恰好な文字の塊にしか思えないよな。
でもねぇ? そんな僕にも一つ、疑問というものがある。
もし、この一つの世界に【科学という世界】と、【それ以外の世界】が存在するならば、僕達はどうなのだろう。その存在を認めることができるのだろうか?
そして、もし、僕達がその違う【世界】の人と出会ってしまったなら、そのとき僕等はどうなっているのだろうか、その存在をその【世界】を僕達は信じられるのだろうか。
僕達の【世界】
「……なんて。バカバカしい」
ゆっくりと目を開けてみた。あれだけ思考したにも関わらず、僕の脳みそは未だ正常に起動できないで居る。いや、さっきのやつでもう一日分のエネルギーを使ってしまったのかもしれない。たまにはこういうものを考えて見るのもいと思ったのだけど、やっぱり僕には哲学、非科学的なことを考えるのには向いていないらしい。
最終的なゴールが、自分が何を言っているのかわからなくなっていることじゃぁ、その論はは論とはいえない。やっぱり最初から答えがわかっているものから論はスタートさせなければいけないのに。
バカだな。
目の前の、板も何も張られていないコンクリートでできた天井を僕はただボーっと眺めた。それから、目線を下にずらしたが、何も無い。タンス以外何も置いていないこの部屋で見えるのはただコンクリート。酷く滑稽だと思わないかい? まぁ僕にとってはとても暮らしやすい物件でもあるけどね。
「ふぅ」
バサッ
無造作に、僕はフトンから起き上がった。瞬間的に初春の一番冷たい空気が僕の体を掠め、ブルリと体がこわばる。
「さむっ!」
まず、その一言しか出なかった。
もうすぐ——というかもう春の癖に何でまだ寒いんだ。こんなに寒いんじゃあ今日は外に出たくなくなるよなぁってことで
パタ……もぞもぞ。よし、まだ寝ていよう。
一瞬こわばった体をまだぬくぬくするフトンにもぐす。もういっそ今日はもうこのままねていようかな……
ジャジャジャジャァーン! ジャァジャァジャァジャァーン!
そうもいかなかった。
「ハァ」
携帯がうるさく、僕に起きろという運命を突き出してくる。数少ない、というよりアドレスが入っている奴なんてひとりしか居ないので、ぐったりとフトンから携帯に手を伸ばした。
——— デサストレ ———
わかりきっていたけど、う〜ん出たくない。でも出ないとあいつ怒るからな。怒るというより変な説教聴かされるんだよなぁ。さっきよりまた数度気温が下がった気がする室温、一瞬考えた末、カチッと携帯を開いた。
「もしもし」
答えても、デサストレはなにも言わなかった。仕方なく僕はもう一度。「もしもし」二回目だぞ。
『二回目だね』
「そう思うなら一回に済まさせてくれ」
『あは〜。ゴメ〜ンねぇ』
全然悪いとは思っていないなこいつ。
はぁ、どうして迷惑電話紛いまことするんだ。いや、これはすでに迷惑電話だよなぁ。人様に電話をかけておきながら出たら無視って、友達に「こっち来て」と言われて来て見たけど「やっぱりいいや」っていわれたときと同じくらいひどいと思うぞ。
意味わかりますか?ちなみに僕はわかりません。
とにかくこの癖直さないとデサストレの後先に響くと思う。(いつもやられている側として)
世間なんて僕は知らないけど、他人から見ればそれなりに……いや絶対迷惑電話としてみなされる。まぁそんなこと当の本人が気にすることなんて『無(ゼロ)』に『∞』をかけた数ぐらいありえはしないけどな。
「迷惑電話ぁ〜? とか思ってたら一週間以内に今在校中の学校から君の名前と席がなくなるよ」
一瞬で声が低くなった。
「アハハ……。そんなわけねぇジャン」
一瞬で動きが止まった。
ちなみに、これは「そんなことできるわけねぇジャン」ではなく、「そんなこと思ってないから」って言う意味です。
それにしてもコワッ。メッチャクチャコワ! なに? 今心の中読んだのですか。一気に血液が下に下がり、青白く鳥肌のたった肌を僕は上下にさすった。
本気で怖いと思った。そしてデサストレは簡単にやってのけそうなのでさらに怖い。
「できないことは無いよ」
「…………」
ブルリとまた体が震える。また、なんで分かったんだ?何で僕が考えていることが分かったんだ。一回ならずして二回も、か?
なんで。
「何でって思っているね? クスッ図星みたいだ。まっ、その答えについて言うなら、ぼくが魔法使いだからだよ」
すごくからかわれているような気分だったが、僕は何か胸に引っかかりを感じた。
バカバカしい。
「魔法使い……ね。じゃあ、そんな魔法使いさん」質問と受け取ったのか、デサストレ(兼魔法使いさん)は「うん?」と声を漏らした。
「今僕が見ているテレビの女の人が何を思っているのか当ててみてよ。できるよね? 魔法使いさんなんだから」
意地悪な質問だ。
もちろん、僕はテレビなんてつけてないし、女の人も写ってなんかいない。それに、そもそも僕の部屋にテレビなんてない。そんなことデサストレは知らないのだろうけど。だから、もし、これで答えたりなんかすれば、僕はまだデサストレという人物にこれほど警戒心は持たなかったのかもしれない。
いや、僕がただ持ちたくないだけなのかもしれない。
とにかく、早く答えろ。早く 速く 早く 速く
「んー。無理だよ。だってぼくは気持ち専属で君専属の魔法使いさんだからね」
「…………」
なぜかわからないが、その瞬間気が抜けた。なぜか、それが僕には理解不可能だった。
でも、もしかしたら少しほっとしたのかもしれない。そう、もしかしたら本当にデサストレがそう答えるかもしれないから。ほっとしたのかもしれない。
——— デサストレにはありえる。デサストレならできる。どんなことでも。たとえ、それがこの【世界】に存在しない魔法だとしても。デサストレにはできる ————そんなことを思ってしまわないように。思えないように。
そう、例えばもしさっきの答えの続きに
「それに君の部屋にはテレビなんて無いんだからね」
なんて言葉が続いていたなら……。続いていたなら……。
あれ?今、脳内のデサストレとなぜか耳からのデサストレの声がハモった気がする。
「ねぇ、そうでしょう?」
「…………」
ああっ。
するりと携帯が手からすべる。
ポスッ
落ちた携帯から、まだデサストレが何かを言っているのか、機械音のようなキンキンな音が鳴っていた。でも、今僕はそれを聞くことができない。聞いても、僕は聴けないだろう。
魔法使いさん? ……なんて、バカバカしい。
「まぁ、本題に戻るから携帯に耳当てて」
なぜかそのことばは僕の頭にすんなりと鳴り響いた。
ハッと我に返り、落とした携帯に目をやった。きっとデサストレはさっき僕がフトンに落としたときの音を聴いていたんだ。だから、今の言葉を言ったに違いが無い。
でも、僕がまだ携帯を取らない確立なんて何百秒分の一の確立なのに、なぜ……いや、やめよう。そう、たまたま。
たまたま当たっただだけ。
無理やりなきもしないではなかったが、僕は頭を切り替えた。
そして、落とした携帯に手をかけ耳元に置こうとしたが一瞬、何か胸に引っかかり、耳元に寄せるのを躊躇してしまった。でも、そんなことをしてしまったら僕は、それこそ思いたくも無い魔法の存在を認めるのではないのだろうか。その時の僕に、コンナことは考えていなかったが、これ以降はすんなりと耳に携帯を押し当てられた。
「で、本題ってなに? デサストレ」
「う〜ん。この期に及んでそれをまだ言うか。それとも気づいてないのかい? 時計、時間だよ。今何時だと思っているのかなぁ?」質問をしているはずなのに、デサストレは僕が時間を見る時間も与えずに続ける。「はい、正解は10時4……5分だよ。ぼくが電話をかけたのが10時ちょうどだからもう5分も話してる。ハァ……全く5分なんて本当永遠に近い数字だよねぇ? え? そうは思わないって思っているね。正解。君の言うとおりだよ。でも、今は5分なんて思えなかったでしょう。そもそも、君はしっているのかな? 人間っていうのはね、精神的に自分が不安定だと、ほら緊張とか恐怖とか嫌な気持ちのときだよ。その場合ってねぇ、時間を遅く感じることができるんだよ。そう、例えば5分が10分とか、5分が15分とか、5分が30分とか、5分が一時間とか、5分が10時間とかね。ほら、これを聴けば5分なんて永遠に近い時間だと、君は思わないかい?」
「思わないね」
思いもよらず即答で、自分ながらびっくりしたが、デサストレはいって冷静。まるで僕の答えがわかっていたように嘲笑的に「ふぅん」と相槌を打った。
「だってそうだろ? そう思っていてもドウセ時間なんてものは過ぎるんだよ。絶対的に。これはどんな理論をかけても否定を証明するのは不可能。デサストレだって分かっているだろ?」
「ふぅん? まぁそのとおりだね。だけど、今ぼくが聞いているのはもっとちがうことなんだよ————とりあえず、この話はまた後ほどにするとしよう。このままじゃぁ一日あったって話はおわらないからね」
デサストレがそういうのだ。きっとそうなのだろう。まぁ僕にとっては今話そうが、話すまいが同じなのだ。もちろん、一生話さなくたってかまわない。デサストレと話すときはいつも面倒だから。
一瞬の間を置き、僕は口を開いた。
「で、本題ってなによ」
二回目だ。
「うぅ〜ん。まぁぼくは優しいから教えてあげないことは無いよ。まず、今日は月曜日。イッツア・マンデイ!そして、今は十時過ぎ。しかも君は19歳。義務教育は終わっていても、君はまだ学生なんだよ。だから」
「だから学校へ行けと……」
なんとなく言っていることが理解できた。「普通に言えばいいのに……」なんて死んでもいえない。むしろ言ったら死ぬ。
いちいち面倒な奴。
「そっ、分かっているじゃん?」
ゾッ
耳から体全体に広がった不思議な疼き。なぜか、デサストレの声音はさっきの数倍も低く、最後の上がり調子がさらにブルリと体をふるわせた。
僕の頭にはさっきのことがよぎる。
「そういうことで、君は今一体何をしているんだい? 学生くん」
ノータッチだった。僕は口から、いや、胸の奥の奥から深くて浅いため息をつく。あっ、今のデサストレに聞こえたか? まっいっか。
「ノープログレム、だよ。デサストレ。今日は大学が創立記念日で休みなんだ。だから今日は図書館に行って本を借りてこようと思っていたんだ」
「はいっブ————! 勝手に休みにしない。今日はどこも普通に学校だよ。ぼくがなにも調べてないと思わないでね」
ダメだったか。
「へいへい。じゃあ、今から行けとでもいうのかよ」
「いや、そういうわけでは無いのだよ、君」
しらっと、あっさりと答えた。もちろん、僕の心も一瞬でしらっとあっさりとなった。
ん? なんだ。何なんだこの生き物は? さっきから「学校に行けよ」みたいなことを言っていたくせに、そしてそれが本題のように語っていたくせに違うのかよ。
「本題はまだ終わっていないのだよ。焦らすのもいいのだけど、ぼくは優しいからそのまま言ってあげるよ。絶対に科学しか信じない君に、それ以外のことには動じない君に、“少し頼みごとがあってね”」
プツッ
プー、プー。
プー、プー。
その瞬間、僕は携帯の通信を切った。
- Re: 「君にとって、魔法とはなんだ?」 ( No.3 )
- 日時: 2010/05/06 10:57
- 名前: 樹 (ID: 9Q/G27Z/)
【二】
ミステリー小説って僕好きじゃないんだ。
なんで? だって必ず答えがあるじゃないか。
とある事務所の帰りのこと。
事務所の仕事が片付かず、気がつけば夜だった。午前一時と深夜になり、私は車を止めた駐車場に入った。朝は止めるのに20分くらいかかるほど車がいっぱいに置いてある駐車場だが、今は私の車以外一台も止まっていなかった。
数十メートル先にポツリと見える私の車。
でも、私はそこへいけないf。
なぜなら(いや、そんな理由なんて分からなかったが)目の前にる女によって、私がそこへ行くことをさえぎられていたからだ。
身長の高い女性だった。遠くから見ればそれなりに美しく見えるであろう、長い黒髪に、着栄えのよいスーツ。しかし、それはアクマで遠くから見れば、の話なのだ。
女の長い黒髪はボサボサに乱れ、着成りのいいスーツはクビから胸元までが肌蹴いる。その肌蹴たスーツのブラウスから蒼白した女の肌が卑猥にその女の顔を引き立てた。狂乱しているのか、その顔はゾッとするほど醜くゆがんでいた。例えるなら、そう、般若。
女が、こちらに歩み寄ってくる。血走った目が私を捉えていた。
広い駐車場の真ん中で、ブルリと私の体が震え上がった。私は即座に、後ろにあと去ろうとしたが、足何かに当たったのか、それ以上後ろに動かない。
私は、何もしていないはずだ。
ポツリと、震える口がつぶやいた。
我を忘れているのか、その女はいきなり強く私の胸元に掴みかかり、片方の手で私の首を絞めた。柔道もプロセスも何もやっていない唯の素人。でも、我を忘れている人間にとってそのことばは意味を持たない。締められた首に更に力が加わる。ヒュッヒュッと息が喉に詰まった。必死に逃げようと、私は背中をのけぞったが、女の力は緩まない。
このままじゃ、私は死んでしまう。
では、このとき、私は何をすればいいのだろう。
とりあえず、あとかたずけだけはキチンとしよう。
とある事務所の朝のこと。
「おはようございま〜す!」
ガチャリとあけられたドアから、明るいトーンの声が響く。
私の声に気がついたのか、事務所の後輩が、私の所に歩みよってくる。何かいいたいことでもあるのか、その顔にはニマニマといやらしい笑みが乗っていた。
「おはようございます。あっ先輩聞きました?」
「なにを?」
「昨日、この近所で女の人が一人殺されていたんですよ!」
私はそれを右から左へ受け流すように聞いた。なぜか、そのことばに抵抗が無かったからだ。
「へぇ〜」
「へぇ〜。てなんでそんなに無関心なんですか?殺人ですよ?さ・つ・じ・ん!あ〜怖い。怖い。スリルが怖すぎるよぉ」
身悶えるほど、何がそんなに面白いのだろうか。
「しかも、その犯人ってさぁ……」
そこで、なぜか後輩が更に顔をにやけさせる。
そのあとの言葉は、ちょうどよく登場した部長によってさえぎられたため何を言ったのかは聞けなかった。
でも、口の動きがほのかに「せんぱい」と見えたのは気のせいなのだろう。
そもそも、あの場には何ものこってなどいないわけで、後輩の言う殺人というのは違う人に決まっていると思い込んでいたからだ。
そう、あの場には何ものこっていない。
今日は車に乗るのがすこし怖くなってしまうかもしれないけど。
今日の事務所は平和だった————
パタッ
あまり読まれていなかったからか、本は軽い音を立てて閉じた。
———秘密殺人目録———
その本の題名だ。まぁ、なんといいますか、ことごとくクドイ書き方だ。題名が堅苦しく漢字で埋め尽くされているくせに、内容がかなり生ぬるい。何より、殺人中の描写が書いて無いことでそれが分かるだろう。
そして何が秘密目録だ。思いっきり目録者がこの中に出てきているじゃないか。これは短編集なのだが、一話目からこれでは後の話でも出てくることが予想できる。何たる矛盾、まさしく詐欺といっていい。
そして、決して問題はこれだけではない。
この本が売られている場所も、大いなる問題なのだ。大いなる問題。うん、一番酷い間違いだろうと思うよ。
ジットリとべたつく視線で本を見た。ごく自然に、僕の眉間がしわを作っていることが分かった。
これがミステリー小説だと? ふざけてんじゃねぇぞ糞本屋
僕が手に取った時、確かにこの本のジャンルには《ミステリー小説》という付箋が挟まっていた。
これは大いなる間違いだ。何もミステリーなどおきてはいないし、そのまえに問題ですら起きてはいない。この本のどこら辺にミステリーがあるのか丁重に教えていただきたいな。
ハァァ
のどの奥からため息が出た気がした。
気晴らしに、本から空に目線を送ると、青い、雲などが一つも無く、ただ青い空が広がっていた。一般的にこれが、“すがすがしいほどに青い空”なのだろう。でも、僕にはとても蒼く見えた。
さて、いまさらですが僕はどこにいるのでしょう。ふぅん? 分からないって? じゃぁ、ヒントだよ。では(デサストレ風に)まず、上には青空が見える。ってことは野外であることがわかるよな。そして、本を読んでいるってことは本屋へ行った。でも、今は野外。だから、とりあえず家からは結構離れたところになっているはずなんだ。とかいっても、そんなの僕にしか分からない話だろう? ごめんね。うん、あとはちょっと資料不足だね。もう少しこの場のことを言っておけばよかったよ。
僕の目の前には大きな木があって、そのとなりには誰も乗っていないブランコ。数十メートル先になると、滑り台にジャングルジム、鉄僕に砂場、シーソー——僕が知ってる限りだと、これくらいの遊具しか分からない。あとはほら、みんなでまわして乗る奴。何だったっけなぁ。僕の半端ない記憶力の悪さのおかげで、今日もなにかが思い出せません。
でも、なんとなく分かっていただけたのなら、光栄です。ちなみに僕はベンチに座っている。それも、子供用の小さいベンチにね。
まったく……親も来るだろうに、なぜ子供用しかないのか
ムスッとハエでも飛んできそうなほど不愉快だったが、もしかしたら、そんなことも考えて、ここに呼び出したのではないのかと思うと自然に怒りがわいてくる。
そして、張本人遅刻中————みたいな。
「あのバカヤロウ。こんな場所に呼び込んでおいてなんでテメェが遅れてくるんだよ。しかも、こんな平日の昼真っから良い歳した青年が公園に来て子供用のベンチに座っているって……どう見たって不審者じゃねぇか! もういっそのこと不審者としてここで、坂本竜馬の真似しながらこの本を朗読でもしてやろうか?」
よし、そうしよう。いたって冷静に心の中でつぶやくと、僕はまたさっき閉じた本を開いた。
まぁ続きからでいいか。
えーと……なになに———
——— しかし、わしの考えは甘かった。
その夜のことだったんだぜよ。
ワシが車にもどるとなぁ、なんとそこに居たはずの女の死体がなくなっていたんだぜよ。ちょいと不思議に思ったワシは、まだ数台のこっとった車を辺りかまわず見回したんだぜよ。
そいしたら、なぜか、どこにもその女の死体は無かった……んだぜよ。急に怖くなってきたワシは、その車からはなれ、まだ光のある事務所に駆け込んだんだぜよ。
しかし、そこでワシは気がついたんだぜよ。
今日はワシが最後のひとりで、鍵までしめたんだ……ぜよ ———
———
坂本竜馬さんには申し訳ないが、実は僕あんまり坂本竜馬のことを知らなかったりして。まるで違うような言い方だった気もするが、でも最後に「ぜよ」がついていたのは気のせいじゃぁ無いと思う。
よし、じゃぁまた続きを読みますか
「なになにお兄さん、それウケ狙っているんですか?」
一瞬止まっていた口を再度開きかけたとき、前方からささやかれ、行きなり何かが口の中に投げ込まれた。いや、正確に言うと突っ込まれた。
ビクリと肩を揺らし、僕が前方に目をやると、少女が立っていた。生まれてきたのがまるで僕の第六巻を反応させるためなんじゃ無いかと思うほど奇妙な。
第一印象:真っ黒
カラスのような少女が、その黒い大きな目で僕のことを見ていた。ギョロリと出ているように見える。はたまたぽっかりと穴が開いているようにも見える。そんな小さな少女の大きな目が、僕の体を嘗め回すように、ギョロギョロと動き回っていた。まるで本物のカラスのようだ。僕は静かにそう思った。
身長にしては長すぎる黒い髪も、普通の少女のような艶も輝きも無くただ黒い。そして何よりもその少女の格好が、少女が奇行と思われる大きな問題ではないのだろうか。
今日の真っ青な空に似合わない漆黒色のワンピース(しかもロングスカート)に闇色のとんがり帽子。真昼間にはとても考えられそうに無い。はたまた手には、よく分からない言葉で書かれた題名の分厚い本があった。幸いなことに、ほうきと杖は持ち合わせていないらしい。普通の少女じゃないと言うことはその少女の手が僕の口の中に突っ込まれたところから分かっていたが、少し、いやかなり嫌な予感がする。
おっと? 今これを聞いて君は少し不思議に思わなかったかい?
ちなみに僕なら、この文だけで見れと言うのにはすこし、不思議に思うよ。不満に思うって言うのが正しいのかも知れないけれど。
不思議な感覚が僕の口内に広がっていた。
冷たい少女の指が僕の口内をぐるりと一周し、舌に絡みついておもむろにそれをいじる。低体温の僕はそのあまりにも冷たい温度にゾワリと背中をふるわせた。でも、その冷たさは一向になくならない。
死人か? コイツは。
僕がそう思うのと同時に、少女の指がのどの奥にすべった。
「うっくっ……」
瞬間的に、胃から喉にかけて不快な感覚が走った。そして鼻に香る気持ちの悪い嘔吐物のにおい。その臭いの主は未だにぼくのおなかの中に収まっていたが、胃液だけは口の中に広がった。酸味の強い嫌なあじだ。
幸いなことに、喉に伸びたのはその一瞬だけだった。しかし、まだ少女の手は僕の口内でうごめいていた。安心できるとはいえない。
気持ちが悪い。
こんなことをされて、突っ込まれている身にしてみればいい気がしない。(するという奴はきっと頭がイッてるやつと、相当なマゾヒズムな奴等だけだろう)しかし、僕が今思ったのは、突っ込んでいるほうはどうなのだろうということだ。
はじめに言っておくが、僕にはとてもできる技じゃない。人の口内に自分の手をインするなんて(場合によってはどうなるか分からないが)僕はやりたくない。ましてや胃液の混ざった口内なんてやっているだけで気分が悪くなってくるものだと思わないかい? まぁ僕はあまり分からないけど。
すこしヒク。
さめたような目で少女を見ると、少女はニヤリと頬を引きつられ、舌に絡みついた手に力を入れた。そして、目だ。目が、ギョロリとした目が少女の顔を天才的に奇妙な顔へと変える。
「お兄さん。アサヅキは、そのあまりにもノーリアクション過ぎるお兄さんの反応がショックで、ショックでお兄さんの舌を引き抜いてしまいそうです」
何を言われたのか僕は分かりたくなかったが、つかの間僕は彼女の手首を掴んだ。
細い。小さい少女にしてみればちょうどいいのかもしれないが、とても細い。
少し驚愕しながら、僕はその細い手首を掴みあげている手に少しずつ力を加えていくが、一向に、その動作からは動かなかった。なぜか(いやこの少女のおかげで)ココで動いたらいけないと、僕の(自称よく当たる)第六感が警告していたからだ。
不思議に思ったのか、少女の眉間にしわがよる。
「あれぇ? お兄さんどうしたんですか? どうしてアサヅキの手を引っ張らないのですか? コンナに力いっぱい握り締めているくせに、それで終わり……みたいな。お兄さんはいやらしいですね。そんなに焦らされるとアサヅキは身悶えて死んでしまいますよ。ねぇ? お兄さん。 早く、引っ張ってくださいな。お兄さんの口からアサヅキの手を引っ張りだしてくださいな。お兄さんの舌を掴んだままのアサヅキの手を、お兄さんの口から出してくださいな」
ブルリ。と少女の言葉に身震いながら、頭ではやっぱいりと安心した言葉がよぎった。
よかった。引っ張らなくて。
予想にしか過ぎなかったことだったが、もし手を引っ張りだしていたならきっと、絶対に、僕の舌は……
「まぁ、いいです。アサヅキはとっても優しい子ですからなにもしてくれないお兄さんの変わりに“キレイにとってあげますよ”ね? アサヅキいい子ででしょ?」
グッゥ
押しつぶされるような感覚と、根元から引きちぎられるような痛み、体全身に鳥肌が立った。そもそも、その“行動”はなにも僕だけにかできないってわけでは無かったのに、なんてバカなんだ。
少女の手を掴んでいた手がだらりと腰に垂れ下がった。
死んだわけじゃない。ただ、ストーリーが終盤を迎えようとしている。
これを果たして、自分のストーリーには物語と言えたものがあったのだろうか……答えは求めてない。それは自分が決めるものではない。
僕が抵抗を示さなくなったのに、少女が少し眉をひそめたが、少女の目は覚めていた。
“何もできないおもちゃんてつまんない、捨てちゃおっか”
そんなことでも言われている気分だった。
いまさらながら、少女には思えないような力が、指先に込められ居たことに気がついた。少女のアンナに細いからだのどこに、そんな力があるのだろうか、指先だけだからなのだろうか、フッと息を吐く代わりに静かに目を伏せた。
僕に、抵抗は……なかった。
- Re: 「君にとって、魔法とはなんだ?」 ( No.4 )
- 日時: 2010/12/24 12:50
- 名前: 樹 (ID: mUcdxMp7)
やあ皆さん。僕は先ほど舌を抜かれて窒息死した無能な男です。
ところで皆さんは死んだあとに広がる世界って信じますか? 僕は信じてなんていません、もちろん、今も。
死んだあと、それは【無】。地獄なんてないし、【世界】なんて意味を持たない、とてもいい世界だと思いませんか。そのかわり、天国も無いけど。まぁ別に怖いことじゃない、その頃には感情って言うのも全てからだとともに焼却されて何もなくなっているし、そもそもそれを感じると言う“考えも”無駄だからだ。何も意味だない。何も無い。それさえも感じられない。それさえも考えられない。考えることが不可能だからだ。
でも、それなら今目の前に広がっているこれはいったい何なのだろう。
漆黒色にも見える深いダークブルー色のショートヘアーがサラリと、僕の膝を打った。その間から、より黒の増した眼球が光をキラリと反射させ、僕の狂っている感覚を更にわけが分からなくさせる。
デサストレ。
何でコイツが。
いや、僕だ。何で僕はこんなところに居るんだ。
ゆっくりと首をひねり、この場所を見渡してみるが、ココはどう見ても…………
輝くほど純白に仕立てたれ腰が半分まで沈んでしまうほどフカフカのソファアを贅沢に寝そべり、天津さえ僕の膝枕まで堪能している。堪能。いや、別に僕の膝枕がそれほど気持ちがいいのかは分からないけどさぁ。全ての髪の毛を切りそろえられ、前も後ろもかも分からない、髪の毛の間から覗く目をじっと見つめるが、なかなかおきようとしないし、しかたないか。
「で? なんで僕はこんなところにいるんですか?」
ムフフフフ
ムクッ
「ねぇ、君。君はバカだね」
細い体を起き上がらせ、耳元でそうささやかれるが、残念、僕にはコチョコチョとか全然効かないんだって突っ込みどころはそこじゃないよな。
「はぁ」
なぜ。行き成りそんなことを言わせても、ここに居ること自体全然わけが分からないのに、そんなこと理解できるはず無いんじゃないか。何が言いたいのか全く分からないことが顔に出る、自然に僕の眉間にはしわが深く刻み込まれていた。
「君を、ぼくが死なせるはず無いじゃないか。勝手に死のうとしたって、ぼくがそんなこと絶対にさせないんだかね」
イヒヒヒヒヒヒヒィ
「なーるーほ」
理解した。僕は。
「でもさ、あの状態からどうやって僕を助け出したって言うんですか。そういえばあのアサヅキって子もいませんし……」
とたんに、デサストレの顔が輝き、緩慢な動作で近くのいすを指差すが、何もないよなぁ。
「もっとよくみなよいるじゃん。【いるじゃん】【いるよね?】ほら、そこに」
はぁ?
言っていることがよく分からない。
- Re: 「君にとって、魔法とはなんだ?」 ( No.5 )
- 日時: 2010/12/24 12:39
- 名前: 樹 (ID: mUcdxMp7)
「何を言っているのか、全く理解できませんけれど?」
僕は大げさに肩をすくめて見せながら、ため息をついた。
「ふぅん」
とても冷たいのに微笑みを含めた声が、静かに部屋を包み、瞬間的にキュッと背中の辺りをこわばらせた。
別に、普通の子供相手で、こんなことになることは先ず無い。でも……
一緒にされては困る
絶対に否定しなくちゃいけないほどに、コイツを子供だというのは不公平でならないよ。大人から見ればなおさらね。
できすぎたお子ちゃんに不公平なほどの差と経験で負けるんだ、認められるわけが無い。それは僕も同感ですよ。でも、それでも科学的にそれを証明することはできないから、認めなくちゃいけない。もしできるなら意味不明な病気にでも分類されてしまうだろうね。魔法でも使わなければ、理解ができない。
目の前の、小さな小人を見据える。
握れば折れそうなほど細く、短い手足に、その中心にある小さな胴体。顔は猫みたいに小さいくせに、目だけが大きく主張している。さらさらとした艶やかな髪の毛も柔らかく、見れば普通の子供に過ぎない。
頭にどんなことが入っていようと、ね。
自然に眉がしわをつくり見据え続けると、ゆっくりとデサストレの口がひらいていった。
「うん。君がそれしかいえないことは分かっていたから……フフフ。愉快だよ。そうだよね。だって君の目の前には誰も見えないんだもんね、君には」
君には
なぜか、そこだけが強く孤立して聞こえた。
「僕にはデサストレが言いたいことが分かりませんけど?」
「でも、そんな君でも、理解してもらうからね」
コイツは、話を全く聞いていなかった。
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