ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 狂想童話。
- 日時: 2010/07/10 19:34
- 名前: 由愛 (ID: L6rZBPa0)
真っ白なページに文字を紡ぎだして下さい——
それがボクの生きる糧となる。
初めまして。
初めて小説を書かせていただきます、由愛と申します。
*注意事項*
・何しろ由愛は初めてだらけなので、意味分からないことをするかもしれません。
そのときは厳しく注意してやってください。
・由愛は人見知りなので、人様の小説にコメントするのはニガテです。
しかし、コメントをいただいたときは泣いて喜びます。
・後、小説の更新頻度は亀です。すみません。
こんな奴でも許してやるぜ!という心の広い方は、どうぞ見てやってください。
あと、誤字とか脱字、基本的な技術などはどんどん注意してください!
それでは、終わることのない夢の中へ————
—目次—
第一章 Snow White×Noah —白雪姫×ノア—
ハジマリ >>1
コヤ >>2
シアワセ >>3
リンゴ >>4
Page:1
- Re: ハジマリ ( No.1 )
- 日時: 2010/05/04 12:41
- 名前: 由愛 (ID: L6rZBPa0)
第一章 Snow White×Noah —白雪姫×ノア—
ここは、どこかで見たことがあるような不思議な森の中。
辺りは薄暗く、空は真っ赤な色で染められていた。
そんな森の中を、一人の少年が一つの方角の方に突き進んでいた。
少年は、身長の小さい、可愛らしい者だった。
髪は綺麗な銀色で、肩のところで切りそろえられている。
そんな少年が、怪しげな黒のコートに身を包んでいるのは、見るものに少し矛盾を感じさせる。
その少年の肩の上には、先ほどから小言を嘆いている小さいリスが乗っかっていた。
その小言の内容はというと、腹が減った、もう疲れたなど、少年を困惑させるようなことばかりなのだが、
少年の耳には全く聞こえていないようだ。
この二人は、少し前にこの世界に来たばかりの旅人だ。
少年の名はノア。
彼は、自分の正体、並びに自分の本当の名を知らない。
ノアという名前は、自分で勝手につけたものだ。
そして、この世界の名前は「world of the snow」。
簡単に言うと、白雪の世界。
そう、ここは童話の世界。
童話の人物だけが暮らす、人間にとって未知の異界。
童話の話によって、それぞれ個々の世界があり、童話の人物達はそこで話を紡いでいるのだ。
当然、ノアもなにかの童話の人物と考えるのが妥当であろう。
しかし、ノアは違う。
ノアは、どの童話の物語にも該当しない、いわば特殊な人物。
ノアは、全ての童話の話を記録するために生まれてきた。
彼にとって、それが自分の唯一の生き方、そして使命なのだ。
この気持ちは、物心ついたときには既に備わっていた。
自分の目で童話の世界を確かめ、それを自分の持っている「Book」に書き表す。
そうすることで、ノアは生きてきた。
ちなみに、ノアの肩に乗っているのはラークというシマリスで、これはどこかの世界でノアが拾ったただのある童話の人物だ。
今はノアと共に、童話の世界を渡り歩いている。
今回二人がやってきたのは、この世界の名前の通り、グリム童話に出てくる「白雪姫」の世界。
ここでノアは、Bookに新しい文字を紡いでいくのだ。
- Re: コヤ ( No.2 )
- 日時: 2010/05/09 15:53
- 名前: 由愛 (ID: L6rZBPa0)
しばらく歩いていくと、ノアたちは小さな小屋にたどり着いた。
外見はただの丸太で作った雑な小屋だが、辺りはとても柔らかい雰囲気に包まれていた。
その理由は、これから会う人の正体で分かるのではないだろうか。
ノアは深く呼吸をしてから、無造作に取り付けてあるドアを三回、ノックした。
すると、はい、という少女の返事がして、もれなくその女がドアを開けた。
彼女は、綺麗な金髪を後ろのほうでくくり、真っ白なエプロンをつけている美少女だった。
彼女こそが、この世界の主人公、白雪だ。
まだ顔に幼さが残っていることから、まだあの女は来ていないだろう。
少女は首をかしげ
「どちら様?」
とノアに尋ねた。
すると、ノアはにっこりと笑顔を作って
「ただの旅人です。すみませんが、しばらくここに泊めさせていただけないでしょうか。
生憎道を間違えてしまって」
と答えた。勿論、これは物語を記録するための口実だ。
白雪は戸惑っていた。
まあ、当たり前のことだろう。
第一今はこの小屋の主がいないのだ。
泊めていいかどうかは、彼女には決められない。
おろおろしている彼女を見て、ノアはあたかも悲しそうにつぶやく。
「嗚呼、ダメでしょうか。ならいいのです。
実は、ボクはこの森の向こうにある城に住む王女に追放されたものなのです。
今は旅人として生きておりますが、もともとはあの城の召使でした」
そう言った途端、白雪ははっとして
「そうだったのですか? 実は私も同じようなことに逢いました。
だから、その気持ちは良く分かります。さあ、家の中に入って下さい」
と、同情するかのように答えた。
この反応は、ノアにとっては予想範囲内だ。
白雪だった同じ目に逢ったのだから、そこに漬け込めば潜入できる。
そうあらかじめ踏んでいたのだ。
しかし、その方法はラークが思いついたもので、
ノアにとっては人を騙すのはそれほど心地よいものではなかった。
ノアはそっと小屋の中に入った。
そこは、全てが通常よりも少し小さかった。
といっても、ノアは元々小さいほうなので、苦にはならなかったのだが。
白雪にテーブルに座っておいてといわれたので、ノアはおとなしく座っていることにした。
しかしその椅子も小さかったので、ノアには少し窮屈だったのだが。
座った途端、ラークがノアの肩からひょいと飛び降り、ノアに話しかけた。
「みろよ、ノア。オレのいうとおりだっただろ? あの女、あっさり入れてくれたぜ」
ラークの自慢話には耳を傾けず、ノアは静かにBookを取り出し、メモをすることにした。
‘‘The snow white lives in the hut of dwarfs.
The thing of the hut has a small all.’’
このメモは本当の記録ではなくて、あとから話を作るためのものだ。
ちなみに、この文の意味は、
<白雪は小人たちの小屋に住んでいる。この小屋のものは、全て小さい。>
ということだ。
メモをし終わったら、ちょうど白雪が部屋の向こうからやってきた。
手には、苺のジャムがたっぷり塗ってあるスコーン入りの皿があった。
「今、あるもので間に合わせたものだけど、よかったらどうぞ」
そんな白雪の声よりも先に、ラークはスコーンにがっつき始めた。
食べまくるラークをまたも無視して、ノアは白雪と話をすることにした。
「本当に、ありがとうございました。こんな見ず知らずのものを泊めてくれるなんて」
とりあえず、お礼を言う。
「そんなことありません。私も追放された身です。貴方の気持ちはよく分かりますわ」
そんなことをいわれると、自分への罪悪感が身をよぎる。
痛い心をむりやり押さえつける。
「では、貴方も使用人だったのですか?」
できるだけ、ばれないように聞く。
「……いいえ。私は王女の娘です。名は白雪と言います」
その悲しそうな声は、彼女自身に問いかけるような雰囲気があった。
「もしかして、あの白雪姫でしたか……いやはや、驚きました。
しかし、こんな美しい方だったとは!」
「そんなことありません。どちらかというと、貴方のほうがお綺麗ですよ」
二人はしばらく見つめあった後、同時に笑ってしまった。
こんなくだらない挨拶に疲れたのだろう。笑いはしばらく続いた。
「私のことは白雪って呼んで。後、敬語は使わなくていいわよ。貴方の名前は?」
笑いながらも、白雪は気軽に尋ねた。
「ボクはノアって言います……いや、ボクはノアって言うんだ。
歳は白雪と同じくらいと思うよ。よろしくね」
「こちらこそ、よろしく」
そして、もう一度笑顔を浮かべた。
やはり、ノアにはこのほうが合っている。
嘘を突き通して黙ってしまうノアより、少しふざけて情報を集めるノアのほうがいい。
それに、記録もこのほうがしやすいだろう。
スコーン四個目に手を伸ばしながら、ラークは父親のように微笑んだ。
- Re: シアワセ ( No.3 )
- 日時: 2010/06/13 22:11
- 名前: 由愛 (ID: L6rZBPa0)
白雪のいる小屋で住み始めてから三日目になった。
始めの会話ですっかり仲良くなった二人は、
意気揚々と楽しい話を繰り出していた。
しだいに空が真っ赤に染まってきた頃、小人達が帰ってきた。
小人達は、始めは陰気臭そうな顔をしていたが、白雪の説得により、
害の無い者だと分かったのか、快く迎えてくれた。
小人達の話も白雪に劣らず愉快で、
その日は夜が明けるまで楽しいお喋りをしていた。
その日から、ノアと白雪達の生活が始まったのだ。
ノアは小人達の手伝いをできるだけやった。
始めは、薪を運ぶことくらいしかできなかったのだが、
次第に慣れてくると、薪割りなどの重労働もできるようになった。
白雪の手伝いも、たくさんした。
もともと料理などは上手い方だったので、
ノアが台所を任される日も増えていった。
ノアは幸せだった。
今までたった一人で生きてきたノアの冷たい心は、
白雪達によって少しずつ溶かされていった。
ノア自身、それを感じていたのだろう。
日に日に、笑顔になる回数も増えていった。
しかし、その間ラークは寝て食べてばかりを繰り返していて、
すっかりふくよかになってしまったのだが。
ある日の夜。
いつものようにノアと白雪はテーブルで向かい合い、一番幸せな時をすごしていた。
二人が話す内容は、それほど個人に触れるものではない。
ノアはただの旅人として、白雪はコヤで暮らすただの女として、
今までにあった愉快な話を盛り上げていた。
ノアの人参が空を飛んだという話が終わってから、ふいに白雪が話しかけていた。
「ところで、貴方はいつまでここにいてくれるの?」
突然の話に、ノアは少し驚いた。
「えっと……そうだね、もう少しってところかな」
そう返した途端、急に白雪がノアの手をとった。
「もう少しってどれくらい? 明日、明後日?
それくらいで帰ってしまうのなら、私、耐えられない……」
その言葉に彼女の深い悲しみが見えて、ノアは言葉を失ってしまった。
「私、貴方と……ずっと一緒にいたい。
ここでずっと暮らしてほしい。ねえ、だめなの?」
どうすればいいか分からなくて戸惑うノアに、
いつの間にかノアのそばにいたラークがこっそり話しかけた。
「ダメだよ、ノア。君には使命があるんだ。恋にうつつを抜かすんじゃないよ」
ラークの言葉は間違っていない。
しかし、ノアにはどうしてもその言葉が嘘のように聞こえた。
「ダメじゃないよ……でも……その、迷惑でしょ?
ボクなんかが一緒にいたら」
これが、今のノアの精一杯。
自分の心を偽って、彼女を悲しませることが、どんなに辛いことか。
二人はしばらく黙っていた。
口を開いたのは白雪だった。
「迷惑じゃないわ。だから……考えておいて。お願い」
そう告げると、自分のベッドに戻っていった。
ノアはしばらく動かなかった。
ほとんど動かず、静かに涙を零していた。
喋らないノアにラークは独り言のように言った。
「断るんだよ、ノア。
さもないと、彼女にとっても迷惑だ。それに……明日なんだろ? あの運命の日は」
「分かってる」
暗く沈んだ声でそう返すと、ノアも自分のベッドに戻った。
分かっているんだ。
明日程でボクの仕事は終わる。
そうしたら、また別の世界へ行くのだ。
そうすれば、彼女を忘れられる。
きっと————
そうして運命の日は、静かに幕を上げる——!
- Re: リンゴ ( No.4 )
- 日時: 2010/07/10 19:33
- 名前: 由愛 (ID: L6rZBPa0)
運命の日は、思いがけなくあっという間にきてしまう。
ノアは昨日、全然眠ることができなかった。
白雪の言葉と、運命の日というのが彼の頭に重くのしかかってきたのだ。
いつも通りの朝食の時間だったが、白雪は普段どおりに笑ってはくれなかった。
仕事をしている最中も。お昼ごはんだって、作らせてくれなかった。
白雪がこんなにもよそよそしい理由は、いくら鈍感なノアでも分かる。
自分が悪いのは分かっている。
しかし、白雪の幸せを願うのならば、ノアはどうすることもできないのだった。
そして、迎えたお昼下がり。
小人達は木を集めに行き、ノアは出かけてくるといって外へでた。
小屋の近くの大きな木の陰に隠れて、ドアの辺りが一番良く見える位置に座った。
深呼吸をして、落ち着こうとしていると、ラークがノアの鞄からひょこっとでてきてこういった。
「始めに言っておくけどね。間違っても出て行ったりしないでよ」
余計なおせっかいだな、と思いながらも、ノアは
「分かってるって」
と答えた。
「絶対だからね。たとえ、彼女が倒れて……」
「それ以上言わないでよ」
ラークの気遣いに少し不満を覚えたのか、最後は軽く突き放した。
しばらくすると、真っ黒な布で体を包みこんだ者が小屋の入り口のほうにやってきた。
体型からして、おそらく女性。腰が曲がっているところから、老婆のようにとらえられる。
右手には陰気臭い杖を、左手には赤い果実の詰まったかごを持っていた。
彼女こそ、白雪の継母が変身した姿である。
継母は小屋のドアを強く叩いた。少ししてから、白雪がそうっと戸を開けた。
「えっと……どちら様でしょうか」
始めてノアと会ったときのように白雪はおずおずと尋ねる。
すると、継母はしゃがれた声で、
「なあに、あたしゃただの林檎売りだよ。お嬢ちゃん、林檎はいかがかね」
と話しかけた。
「いえ……今は必要ないですわ」
白雪が遠慮がちにそう答えると、継母は、
「あらあら、残念。この林檎はとてもおいしいものなのに」
とあたかも残念そうに答えた。
「そうなのですか。でも、今は小人さんたちがいないし……」
少し林檎を食べてみたいと思ったのか、白雪の声が幾分悲しそうな声になった。
その微妙な違いを受け取ったのか、継母がにやりと笑った。
「そうだ。嬢ちゃん少し食べてみないかい? 一口だけならおまけするよ」
「そうですか。それなら一口だけ……」
林檎を食べたいという誘惑に負けて、白雪の手が継母の持つかごの中身にそっと触れる。
そして、少しためらってから、林檎を一つ、細長い指で取った。
しばらくその紅をうっとり眺めてから——やがて、一口、かぷりと食べた。
その瞬間、思わずノアは目を瞑りたくなった。
何も見たくなかった。
林檎を食べた白雪は、眠るように倒れこんだ。
白雪の齧ったあとが残っている林檎が、ころりと落ちる。
その様子を、継母は眺め、やがて笑った。
それは高らかに、嬉しそうに。
継母は白雪の呼吸を確かめてから、再びにやりと笑い、その場を去っていった。
ノアには分かっていた。
ノアの頭の中には、有名な話の大筋の一部が入っている。
勿論、この白雪姫の話も。
あの林檎は継母の作った毒林檎で。
あの瞬間白雪は命を落としてしまって。
そんなところをただ見守ることしかできない自分が悲しくて。
ノアの服は、いつの間にか塩辛い水で濡らされていた。
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