ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Return Days
- 日時: 2010/11/18 20:06
- 名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=NkWjsT_SJNI
クリックありがとうございます、遮犬と申します。
この作品だけはどうしても出したかったのです。いくつも作品を重ねてしまい、申し訳ないです><;
この物語は、居場所を失った少年少女の話です。感動系シリアス学園物語です。
戦闘とか一切ありません。普通に感動作にしたいと思っております。
注意事項は、読んで鬱っぽい感じになりそうなことですかね…?自分にはそれほどの文才はないですが。
読んで、皆様に感動を与えれるような小説にしたいと思ってます。どうか宜しくお願いいたします。
イメージソング…「戦場のメリークリスマス」(参照にて)
〜目次〜
プロローグ…>>1
第1話:居場所を探す少年少女
♯1>>6 ♯2>>7 ♯3>>9 ♯4>>11
第2話:
幻想夢想
♯1…>>8 ♯2…>>10 ♯3…>>12
- Re: Return Days ( No.8 )
- 日時: 2010/11/05 22:52
- 名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)
目が覚める。視界が瞬く間に広がっていく。そこに表れたもの。
それはそれはとても寒い、雪が舞い、草木も覆われた白銀の世界。
真っ白で、綺麗で、足跡をつけることさえも勿体無いと感じるほど。
でも、何か悲しかった。
それは、何も足跡がないから。何一つ。何にも、なかった。
それが意味するもの。そう、この世界には、誰もいない。存在しているものがいない。
それでも僕は笑った。
この世界には、誰もいない。誰も。
自分を、責めるものもいない。自分を、罵るものもいない。
そう、何もないんだ。だからこそ、良かった。
ここなら、死んでも構わないと。
僕は歩き出した。地面に広がる銀世界に心の中で謝りながら。
——ごめんね、ごめんね。辛いよね。
なぜだか、そう呟いていた。
——辛い…のは?
辛いのは、誰なのだろう。
——悲…しい?
悲しいのは、誰なのだろう。
——泣き…たい?
泣きたいのは、誰なのだろう。
何でそんなことを思うのか、全く分からない。
自分はここで生まれたのか、そもそも、生きているのか。
それすらもわからない。
自分の手足がだんだん冷たくなるのを感じる。
——感じる。感じる。感じる?
——あぁ、そうか。そうだったのか。
僕は歩みだす。この美しい銀世界を。
僕は、感じている。つまりは、生きている。
ここに、この銀世界に存在しているのだから。
- Re: Return Days ( No.9 )
- 日時: 2010/11/11 23:33
- 名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)
「ッ……?」
目を開けると眩しい光が自分の顔を照らす。
日の光ではなく、これは恐らく部屋の電気だと思われた。
自分は電気を消さずに寝てしまったようだな、と簡素なただ広いベットからゆっくりと起き上がる。
視界がまだボヤけ、うっすらとしているために何がなんだかわからない。
とりあえず目を擦り、背伸びをしてから時間を確認しようと頭の中で算段をつけ、立ち上がろうとした時。
目の前に、扉の前に、見知らぬ男がいた。
「……?」
状況が全く把握できない。
「…誰?」
扉の前で呆然と晴樹の顔を見ている少々茶髪で一本の長いアホ毛の目立つ男…?を見ながら言った。
(…男、だよな?)
その男と思わしき人間は、顔がまさに女顔だった。
性別が確認するのが曖昧なためだろうが、正直晴樹は焦った。
しばしの沈黙。何を言えばいいのか分からない。
(まいったな……。もしかして、間違えてるのって俺か?)
とはいってもこの部屋が自分の部屋なのかどうか確認出来るものがない。
だが、確かにこの605号室のはずだ。何度も確認した結果だから自信がもてるはずなんだが…
そうやって晴樹は心の中で葛藤を繰り返し、とりあえず話しかけようとした。
「な、なぁ——」
「あ〜〜〜〜〜!!」
…いきなりなんなんだ?
しかも今の時刻を確認すると7:00を指している。
1時間も寝たことに驚くところだが今はそんなことに驚いている場合じゃない。
まず、この不法侵入者の所在が——
「今日からよろしくねっ!」
「……は?」
いきなり近づいてきたかと思うと、晴樹の手を取り、満面の笑みで言った。
こうやって近くで見れば見るほど女子っぽかった。
しかし声を聞く限り、果てしなく女子っぽかったのだ。思いっきり女声。
もし女子だったらと考えると自然に頬が熱くなる。
「お前……一体?」
別の意味も兼ねての質問を投げかけた。
するとその女子っぽい奴は笑顔から一転してキョトンとした顔をしたかと思うとまた笑顔に戻し
「僕は早坂 憐(はやさか れん)! この部屋の、ううん、"君の同居人"だよっ!」
「——ちょっと待て」
今さっき、というか最後の方におかしな単語が混じっていたような気がする。
「うん?」
憐は首をかしげ、何事かというような顔をして晴樹を見つめる。
「……同居人ってどういうことだ?」
そんな晴樹の言葉に憐は笑って
「あはは、そのまんまだよ〜! 僕も今日からここに住むの! よろしくね?」
笑顔で手を握ってきて、ぶんぶんと上下に腕を強引に振り回された。
「この部屋って一人専用の個室じゃなかったのか?」
晴樹がそう言うと再びキョトンとした顔を憐はした後に再び笑う。
「あはは、違うよ〜。そんな豪華な学校じゃないよ。一部屋確か3人までだったと思うよ?」
「うぁ……」
なんていうことだ。なんで自分はちゃんと書類を見ていなかったのだろう。
きっとどうでもよかったからだろうが、一人になりたかった晴樹にとってはかなり面倒くさいことだった。
むしろ、迷惑だと感じるほどに。
晴樹が手を頭に抱えて、悩んでいるような苦しんでいるような感じに対して憐はにこやかに笑っている。
「……ということは後もう一人、ここにくるのか?」
晴樹の言葉に手を横に振り、人差し指を上に伸ばして憐は説明しだした。
「ううん。この部屋はまだ新しい方らしくてね? 僕と君……えっと?」
そういえば自分の名前を明かしていなかったことに今更気がつく。
「東雲だ」
「下は?」
下まで言うのか、と心の中でぼやきながらも答える。
「晴樹」
「晴れ晴れとした名前だねっ!」
…こいつは俺にケンカを売っているのか?
「あ、じゃあ東雲君って呼んで良いかな?」
「あぁ、別に構わない」
呼び方など、つまらないと思っていた俺は素っ気無く言った。
「じゃあはるっち」
「まて」
「え? 何かあった?」
さっきから相変わらずのキョトンとした顔で晴樹を見る。
「何かあったもクソもねぇ。いきなり名前変わってんじゃねぇか!」
「はるっちのこと? いいでしょ? 可愛いよね〜」
…全く聞いちゃいなかった。
「はぁ……もう好きにしろ」
「え? 何でそんな怒ってるの? あ、そうそう僕のことは憐って呼んでね? あだ名でもいいけど」
「誰があだ名で呼ぶかっ! ……って! もうこんな時間じゃねぇかっ!」
時計を見ると時刻は7:30を指していた。
「あ、うん。本当だね?」
「呑気にしてる場合かよ……。俺は行くからな?」
「え? あ、ちょっとまっ——」
後ろから何やら自分を呼び止めるような声が聞こえたが、晴樹は無視して外へ出た。
歩きながら、また思い出す。
ここで最初に会ったあの少女のことを。
(……なんで俺は今日会ったばかりの奴のことを気にしてるんだ?)
アホらしい、そう思った晴樹は目の前の一階へと続く角を曲がろうとした。
「わっ!」
「うぉっ!」
その角に、早坂 憐がいた。
「あはは、ビックリした?」
「……」
何も言わずに去ろうとする。
「あ、ちょっと! 待ってよ、はるっち!」
憐はまんま女の子みたいな声を出しながら晴樹の元へと駆け寄っていく。
身長もさほど憐はなく、自分より何十センチか下だった。
(こいつ……本当に性別どっちなんだ?)
そう思いながらも、晴樹は少々歩くスピードを上げてあらかじめ指定されていた場所へと行く。
転入生が集められるという、体育館へと向かっていた。
(俺の後をついてくるということはコイツも転入生なのだろう……)
歳は自分の方が上だろうが、と軽く鼻で笑った。
- Re: Return Days ( No.10 )
- 日時: 2010/11/15 13:30
- 名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)
僕は歩いた。ずっと、遠くまで。
いくら歩こうが、生き物は見つからない。
ここにあるのは、曇った空と、静かにゆっくりと降る雪。そして枯れた木たち。
どうして僕はこの世界に生まれたんだろう。
——はぁ。
一つ、ため息を吐いてみる。
白い息が見えて、生きているんだと実感する。
でも、一人。
何故だか寂しかった。
これでいいと、そう、思っていたはずなのに。
——何故だか、何故だか、涙が零れるんだ。
雪はやまない。
そして、僕の目から流れ落ちる雫もまた、やまない。
——そうだ。
僕はあることを思いついた。それはとっても素敵なこと。
——お友達を作ろう。たくさん。
僕は唯一、この世界にあるといえる雪を手のひらいっぱいに掬い取り、できるだけ大きな玉を作る。
——よし、これで…
大きな玉が作れたと思ったら、すぐに壊れた。
——そうだよね、簡単にはお友達、作れないもんね。
僕は必死に、丁寧に、大きな玉を作り始めた。
——出来た。
僕の目の前には、自分の身長の半分ぐらいの雪だるまがいる。
——えへへ。
なんだか嬉しくなった。
木の枝で作られた目や、手が何だか愛らしく思えた。
—— 一人じゃないんだ。
そう思えただけで、どれほど楽になったことか。
- Re: Return Days ( No.11 )
- 日時: 2010/11/17 18:38
- 名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)
憐はそのまま晴樹の後をついてきた。
仕方なく晴樹は無視しつつ、同行を口では言わずに許可する。
「すっごいねー! ひっろいねー!」
憐が寮の広さか何かの凄さに言葉を費やしているが全く気にする素振りも見せずに寮の出口を目指す。
向かう先は、転入生用のクラスである。
この学校は転入生専用クラスというものがあり、
高等学校を中退して、こちらに転入してきた者だけが集められたクラスがそれだった。
晴樹は高校二年。つまり高校を中退してこちらにきたのだ。
やる気がなかった、授業態度が悪かったという表向きな理由があるが
実質のとこ、あんなところにいたくなかった。
何不自由なく、暮らしている普通の学生が、何の罪もないというのに恨んでしまう。
その結果ケンカをしたりして何度も停学をくらったりもした。
だが、父親は自分のせいで由梨があんなことになったと落ち込み、俺に前のように叱らなくなった。
まるで、生きているのかどうかも分からないほどに肌には血の気がなくなっており、酒に飲んだくれる毎日
そんな親の場所から逃げたいというのも、また一つの目的といえた。
もう嫌だった。何もかも。
普通が、自分にとって普通の生活というのはまさに恐怖そのもののように感じたのである。
寮を出てもずっと笑顔のまま憐は晴樹の後についてくる。
それを見かねた晴樹はようやく自分から憐へと話しかけた。
「……お前さ? 何学年?」
晴樹的にはいけて高校1年生ぐらいだろうと思っていた。
「僕? 高校二年生だよ〜」
話しかけてくれたのがよほど嬉しかったのか、眩しいほどの笑顔で晴樹の問いに答えた。
(こ……こいつ、俺と同学年かよ……)
「ん? 何? 僕の顔に何かついてる?」
「い、いや……」
憐は無邪気に自分の顔を手で拭っている。
そんな憐には聞こえない程度のため息を吐き、そしてまた転入生クラスに向かおうとした時、
「ん……?」
ある人影に気付く。
それは見覚えがあるものだった。
「上谷か……?」
それは今日の朝にここで初めて会ったあの少女であった。
少し長いセミロングの黒髪を小さくなびかせながらも真剣な顔で歩いている。
「あ、わっ……!」
下にある段差に気付かずに、そこへと足がぶつかって転びそうになる。
ガシッ。
転ぶ刹那、晴樹がそのか細い腕をしっかりと握っていた。
「大丈夫かよ?」
自分でもなんでこんな行動に出たのかまるでわからない。
だけど、どこか心の中で安心した。
何故だか、由梨のことがフラッシュバックしたような気がしたのだ。
「あ、えっと……はい」
呆然としつつも、返事は笑顔で返された。
晴樹は上谷がしっかりと立つことを確認すると、腕を下ろした。
上谷は手で制服などを払い、再び笑顔となって晴樹に向き合ってきた。
「あの、ありがとうございます。東雲君」
「あ、あぁ……」
まだ自分のやった行動にいまいちわからない晴樹は淡々とした返事を返す。
そんな晴樹と上谷に憐は相変わらずの笑顔で近寄ってくる。
「あれ? お二人共お知り合い?」
笑顔のままで言ってくるのでなかなか憎めない。
そんな憐に笑顔を向け、上谷はお辞儀する。
「初めまして。私、上谷 櫻っていいます。高校2年生です」
「えっ!?」
晴樹が上谷の言葉に鋭く反応した。
その様子に上谷は首を傾げながら
「どうしたんですか? 東雲君。何か……おかしなところでもありました?」
「いや……おかしいというか、お前ら……俺と同学年?」
「「そうですけど(だよ)?」」
二人して声を合わせて晴樹に言ってくる。
「マジか……」
晴樹は何だか最近の高校二年は童顔が多いなぁとも思った。
そういえば寮長の人が俺のこと童顔とか言っていたが…このさい気にしないでおこう。
「上谷。お前一人か?」
「え? あ、はい。そうですけど……今から転入生のクラスに向かわないと……」
おどおどした様子で晴樹の様子を伺ってくる上谷。
何故だか安心感みたいなものを感じつつ、上谷に向かって晴樹は言った。
「じゃあ一緒にいかないか? どうせそこまでだしな」
晴樹の言葉に上谷は呆然とした顔になる。
「え……いいんですか?」
「あぁ。変なのついてきてるしな」
晴樹は後ろを指でさす。そこにいたのはもちろん憐だった。
「変なのって、失礼だなぁ。一応同居人なのにさー」
憐は怒ったように頬を膨らむすがそれがまた男か女か区別がつかない。どちらかというと女の方だろう。
(いずれ性別聞こう……今はいいか)
同居人ということなので嫌でも顔を見ることになりそうだし、と心の中で思う。
それにしてもまた自分は上谷をなんで誘ったのだろうか。
今思えばこの決断は結構恥ずかしいことなんじゃないのか?
初対面で、一緒に行こうと誘うだなんんて。
「うぁ……!」
「東雲君? どうかしましたか?」
「い、いや……なんでもない。とにかく、行くか」
誰とも関わらない。そう決めていた。
これぐらいならいいだろう。許してくれるだろうと、晴樹は青空を仰いだ。
清々しい風が三人を包む。
——今思えば、これは始まりだったんだろう。
俺たちの、居場所を見つける長い旅は
まさに、これからだったんだ。
- Re: Return Days ( No.12 )
- 日時: 2010/11/18 20:06
- 名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)
どれぐらい作ったのだろう。
見渡す限り、自らの手で作った雪だるまがあった。
冷たい手で、必死に作った。
どれだけ念じても、雪だるまは動いてくれない。
動いては、くれない。
——どうして……動かないの?
呆然と、僕はそう呟いた。
表情がそれぞれ少し違う雪だるまたちを見渡しながら、
僕は、泣いた。
どれほど泣いただろうか。
泣いても泣いても、何も動かず、何も始まらなかった。
あぁ、これが一人なんだ、と。心から思った。
何て、何て悲しいのだろう。この世界は、そして、僕は。
涙が、止まらない。いや、止めたくなかった。
止めたら、感情がなくなるような気がして。
本当に、一人になるような気がして。
——僕は……どうしてここに生まれたの?
自分の作った雪だるまに問う。
しかし、表情は変わらない。少し笑ったような顔で雪だるまは僕の顔を覗く。
——もう……いいや。
何もかも、やめてしまえばいいと思った。
もう一度生まれ変わったら、いいと思った。
僕は、白い草原の中へと倒れこんだ。
だんだん体が冷たくなるのが分かる。それも急速に。
——あぁ、悲しいな。
ゆっくりと、目を閉じた。
だが、その時ふと、手に優しい暖かさが伝わった。
それは僕の全てを優しく包み込むようだった。
僕は顔をあげた。
そこにいたのは、一人の少女だった。
——よかった。一人じゃなかったんだね。
そう、呟いて僕は、意識を失った。
優しい笑顔を浮かべる可憐な少女の姿を後にして。
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