ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- E2(エキストリーム・エキセキューション)
- 日時: 2010/11/26 17:56
- 名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)
はじめまして。
なるべくリアルに迫力のある小説を書きたいと思います。矛盾点や問題点が多々あると思いますが、素人の勉強不足だと思って見逃してください。
よろしくお願いします。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.43 )
- 日時: 2011/09/07 21:31
- 名前: レッドラム (ID: g7AzXONx)
「鍵をよこせ!!」
門田は一気にカツに詰め寄る。
結果はどうでも良かった。
ただその場で立っていても時間オーバーで射殺、家には入れなくても射殺、カツに斬殺される可能性もある。
このままではどちらにしても死が待っている。
だから考えることをやめ、まずは行動!
その後の結果は自分が生きていることが大前提だった。
「やはりな。お前ならそうすると思ったよ。」
カツは刀を思いっきり下から上へと振り上げる。
光を帯びた一線はバリアとなり、門田はそれを避ける。
その瞬間、門田のかかとが花壇の石にぶつかり後ろ向きに倒れ、仰向け状態になる。
「さぁ、処刑の時間だ。」
カツは静かな口調で、門田に近づく。
門田に一抹の不安と戦慄が走るが、死を避けたい本能が体を動かす。
地面の土を握り、それをカツに投げつける。
礫がカツの視界を奪い、刀を構えた姿勢が崩れる。
その瞬間を逃すことなく、門田はカツの腰をめがけてタックルする。
しかし…
「そんなタックルじゃ俺は倒せないぜ」
カツは片目を開けながら、刀の持ち方を変え、目の前で腰を掴む門田の背中に向けて思いっきり刀を突き刺す。
レーザービームのような光が門田の背中と腹を貫通する。
「うわぎゃ!!!」
あまりの激痛とショックが門田を襲い、刀が突き刺さったまま暴れ回る。
「ぐは!ぐぎゅあげえあ!」
吐血し、大量の失血のため横向きに門田は倒れ込む。
それを黙ってカツは見ていた。
「くは!はぁ、はぁ、はぁ、し…しぬ…」
「そうだ。死ぬんだ。」
「ふっふっ、し…し…しにたく…ない。」
「それは無理だ。俺たちは死んで罪を償うしかない。安心しろ。俺も後でお前の元に行く。」
「!?」
「死んでも尚償わなければいけない。地獄に行っても。それだけのことを俺たちはこの世で犯してきたんだ。」
「やっやだ。いっいきたくにゃい。しっしにたくなーい!!!」
門田の壮絶な叫びが月夜の住宅街に響き渡る。
次第に真っ白になる意識の中で、いわゆる走馬燈などはない。
ただ門田のような利己的で、欲望のまま人の命を殺め、現実に戻れば死に自らの死に怯える下種な犯罪者に残る二文字の漢字。
その漢字だけが白い空間の奥に残っていた。
その文字は…
後悔。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.44 )
- 日時: 2011/09/07 22:18
- 名前: レッドラム (ID: g7AzXONx)
門田が横たわっている。
そこには命の香りはしない。
ただ、静かに横たわっている。
カツは門田の頸動脈と心臓の音を確認し、投げ捨てた鞘を拾う。
刀を丁寧に鞘にしまい、そして一息つく。
「終わった。終わりましたよ。南さん。」
その一言で家の中の電気がつく。
ベランダのドアを開け、南が現れる。
「本当にありがとう。君のおかげで俺の目的が達成できた。」
南は静かにカツにお礼を言う。
「俺は…本当に最後の最後に…初めて人の役に立った。」
カツは瞼に涙を浮かべる。
「怖かった。はっきり言って門田と対面し、あいつを殺せるか不安だった。でも、俺たちは結局詰まるところ死ぬしかない。だから死ぬ気であいつを殺した。あんたの依頼を遂行させるために。そして、俺自身の目的を遂行させるために。」
「どうですか。覚悟は決まりましたか?」
南はカツに向かって言う。
「この質問さえも愚問でしたね。あなたはすでに覚悟している。そうしなければこんな依頼は受けない。」
南は続ける。
「俺ははあなたをE2の隠し球として残した意味を考えていた。それはあなたが真のE2の標的者であるということ。御堂はきっと俺や美尾の殺し合いは望んでなく、あくまでも被害者の感情を緩和させ、かつ美尾のような興味本位で殺人を犯そうとする予定のある者達を殲滅する目的があったと思う。本当に加害者を殺す者は加害者であるべきだとかんがえていたのではないかと思う。だから、同じ境遇のあなたをE2の処刑人として御堂は選んだ。そしてあなたも快く引き受けた。」
「俺はあの時…死ぬ予定だったんだ。でも生かされた。いや、どちらにしろ向かうべき死を少し遅らせたんだ。」
カツは南に真相を話す。
「あんたの意見はもっともだ。御堂は一般人同士の殺し合いは望んでない。だから、もとより罪を背負っている犯罪者に対象者の処刑を任せた。俺はそれを引き受ける代わりに、ある条件を御堂に話した。シンプルなこと…処刑が完了したら、俺の処刑もしてくれと。」
「その話は御堂から聞きました。だから…俺が、あなたを処刑します。」
季節が変わろうとしていた。
すこし冷たい風が二人の間を流れた。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.45 )
- 日時: 2011/09/07 22:42
- 名前: レッドラム (ID: g7AzXONx)
「本当にいいですか?こんな犯罪者のためにあなたの手を汚すことになる。」
カツは南に言う。
「あなたは覚悟してる人だ。もっと言うと犯した罪の重大さを感じ、反省している。その反省も言葉ではなく、死を持って償わなければいけないと分かっている。」
南が続ける。
「門田は俺の敵だが、結局何の関係もないあなたが奴を処刑した。だから俺も何かこの件に関わるとするなら、あなたを処刑しこの事件を完結させる。手を汚すことになっても。」
「…ありがとう。」
カツはその場に座り込み、首を差し出す。
南は自ら準備した刀を振り上げ、そして息を止め一気に振り下げる。
介錯は見事に成功した。
その庭には二人の死体が横たわっていた。
一夜にして二人の命が消えた。
しかし、その二人は死刑に値する罪を犯した犯罪者。
南は言葉を失いながらも、気持ちは一貫していた。
それは、その死は正しい、必然の死であり、自分はそれを見届けながら生きるべきだと。
第8章 生と死 完
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.46 )
- 日時: 2011/09/08 11:49
- 名前: レッドラム (ID: h6L5LvqV)
最終章 E2終了
門田の死を持って、E2は終了した。
御堂は青木勝也をE2本来のルールを無視して釈放した件により、逮捕された。
美尾は死の恐怖に怯えながら、未だ職場に戻れない。
南は妹達の墓の前に立っていた。
「無事終わったよ。母さんたちにも伝えてくれ。」
花を手向けると、手を合わせ報告した。
帰る途中、南は特に何も考えなかった。
少し前まで生と死の激流に流されていた分、ただ今は静かだった。
秋の香りを感じながら、一人帰路に向かう。
最終章 E2終了 完
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.47 )
- 日時: 2011/09/08 11:58
- 名前: レッドラム (ID: h6L5LvqV)
作者より
無事E2を完結させることができました。
長きに渡って愛読してくれました皆様に感謝を申し上げます。
次回作の構想も出来上がっていますので、またこの場にお邪魔するかもしれません。
その時はよろしくお願い致します。
本当にありがとうございました。
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