ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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【Veronica】 *人気投票中。参加頼みます!!
日時: 2012/01/15 17:20
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
参照: http://nishiwestgo.web.fc2.com/index.html/

投票有難うございました!銀賞感謝!!謝辞>>347
記念ということで人気投票やっています。>>350



Veronica(ウェロニカ)
*1世紀ごろエルサレムで活動したキリスト教の伝説上の聖女。ゴルゴタに向かうイエスの血と汗にまみれた顔を拭いたという伝説的聖女。

クリック有難うございます(*´∀`*)ノ
(※小説データベースから来た方はまずこちらへ→>>48
初めまして!
の人が殆どだと思います^^;
過去(といってももう四年くらい経つかも)に"燈(アカリ)"という別名で小説を書いていたものです(笑)

気を取りなおしまして、
初めまして!朔(モト)と申します。
某ゲームキャラじゃなくて、野村望東尼って人の名前が由来です。多分。もしかしたら、春風(←高杉晋作の名)に改名するorほかの場所に出没するかもしれません
期末テスト症候群…心理学的にいえば"逃避"に陥って、小説を書こうと思いやり始めました。ツッコミは心の中のみでお願いします^^
書くの久しぶりで、しかも元から文章力皆無人間なので、いっやー、ちゃんと書けるかなあとか不安ありつつ((オイ
頑張ってちまちま(←)書きたいと思います!

◆Attention
※注意※
・荒らし、悪口等厳禁。宣伝OKです^^いつ見に行くかは分かりませんが汗
・コメントへの返信、小説の更新不定期です。
・誤字・脱字、文章等いろいろおかし(←この場合の"おかし"は"趣深い"ではなく"変"という意味でつかわれています)。ツッコミ大歓迎ヽ(*´∀`*)ノ
・ジャンルはファタジー 一直線(笑)だと思いますけどねえ…(^^ゞ
・グロイのかなあ。怖い話苦手なんでそうでもないと思うけど一応流血表現あり(汗
◆Component
題名:Veronica(ウェロニカ)
作者:朔(もと)
ジャンル:ファンタジー・バトル、 "ツッコミ箇所満載"紀伝体ドラマ。
成分:ツッコミ箇所満載、多少流血表現あり、登場人物がKY、誤字・脱字・文章が基本オカシイ、Not神文
使用方法:ツッコミを入れながら読んでください。「お気に入りに登録しました」や「応援してます」などのコメントが入ると狂喜します。勿論、ツッコミ大歓迎。
2012年度冬の大会にてシリダク銀賞を受賞。本当に感謝感謝の大嵐。
製造日時:2010.11.30

◆Contents
*本編*
登場人物 >>4 (一覧編>>220※ネタバレ有)
まとめぺえじ>>219
歌 >>85(楓様に作っていただいた歌詞です)
Main↓
◇序:recitativo >>3
◇Oz.1: Blast-竜と少年の協奏曲コンチェルト- >>285
◇Oz.2: Norn-運命の女神と混乱の関係- >>286
◇Oz.3: GrandSlam-錫杖、両刃、骨牌の独り勝ち- >>287
◇Oz.4: Obsession-戦意喪失-
・Part1>>57 ・Part2>>58 ・Part3>>62 ・Part4>>64 ・Part5>>68
◇Oz.5: Potholing- 一樹の陰一河の流れも他生の縁-
・Part1>>73 ・Part2>>75 ・Part3>>77 ・Part4>>79 ・Patr5>>84
◇Oz.6: Hallelujah-神様っているのかなあ-
・Part1>>90 ・Part2>>93
◇Oz.7: Engulf-風に櫛(くしけず)り雨に沐(かみあら)う-
・Part1>>94 ・Part2>>104 ・Patr3>>105
◇Oz.8: Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて-
・Part1>>111 ・Part2>>114 ・Part3>>119 ・Part4>>120
◇Oz.9:Nighter-眠れない夜に-
・Part1>>128 ・Part2>>131
◇Oz.10:Howling-母と子(Frigg)、忘れ路-
・Part1>>133 ・Part2>>134 ・Part3>>136
◇Oz.11:Howling-母(Tiamat)と子、追憶-
・Paet1>>141 ・Part2>>145 ・Part3>>146 ・Part4>>148 ・Part5>>154 ・Part6>>161 ・Part7>>162
◇Oz.12:Tagesanbruch-黎明-
・Part1>>164 ・Part2>>165 ・Part3>>170 ・Part4>>174 ・Part5>>189
◇Oz.13・Part1>>198 ・Part2>>210 ・Part3>>218 ・Part4>>223 ・Part5>>226 
◇Oz.14・Part1>>228 ・Part2>>234 ・Part3>>237
◇Oz.15・Part1>>247 ・Part2>>248 ・Part3>>249 ・Part5>>250 ・Part6>>251 ・Part7>>252
◇Oz.16・Part1>>257 ・Part2>>270 ・Part3>>275 ・Part4>>282 ・Part5>>288
◇Oz.17 >>305
◇Oz.18 >>340
◇Oz.19 >>340
◇Oz.20 >>352
◆外伝>>235
作品を十字以内に簡潔に紹介しなさい。↓
『た た か う は な し』!どうだ!!
※参考
広辞苑、ジーニアス英和辞典、ブリタニカ、マイペディア、ウィキペディア等から抜粋。そして、相棒・電子辞書有難う、!!

◆お客様
*葵那 *Neon様 *夏目様 *ラーズグリーズ様 * 玖炉 *雪ん子様 *月夜の救世主様 *ささめ *緑紫様 *楓様 *舞阪 肇様 *ひふみん様 *千臥様 *ち せ(´・・).様 *風様 *X4様 *Vermilion様 *紅蓮の流星様 *Ghost様 *夢姫様

◆連絡
敵陣営 葵那>>96 Neon様>>99 月夜の救世主様>>107 玖炉>>112>>181 舞阪 肇様>>150 ひふみん様>>151 千臥様>>168
大切に使わせて頂きます^^

◆戯言
小説大会銀賞受賞…だ、と!?
放置プレイ上等小説に投票有難うございました!
本当に感謝感謝感謝感謝の嵐です!
おこがましいですが、これからも宜しく頂けると幸いです<(_ _)>
あと諸連絡(?)ですが、Ghost様に外伝小説を書いていただくことになりました!本当に有難うございます。
人とのつながりって本当大切なんだなあ…

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Re: 【Veronica】 *参照3000突破、有難うございます! ( No.339 )
日時: 2012/01/05 18:05
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
参照: 貯めていた分を一気に更新(おい)

* * *



「劫焔者レーヴァテイン————"裏切りにみてる枝"、"傷つける魔の杖"、"害なす魔の杖"、"害をなす魔法の杖"と何れも不吉な名前を冠する業火の双杖……ロキ様の作った神器……」

赤々と燃ゆる双杖を構える【愚者】を見詰めながら、シギュンは譫言の様に言葉を放っていた。十二神将【愚者】のロキが、手にした二本一対の杖をくるくると廻す。すると、回転に従って火花が飛び散った。十字に組まれた杖は、蝋色の本体から火を放つ。熱風が、メリッサらに降り掛かった。
「『降り掛かる火の粉は払う』ってかあ?」
クラウドは掛かる火の粉を、眼前に腕を出して防ぐ。熱気はスノウィンの冷気で冷めることなく、逆に冷気さえも暖め始めてきている。
「やらなきゃ、でしょ」メリッサは目を細め、ノルネンを握る。「レーバなんちゃらとか、レバーなんちゃらとか言ってっけど、関係無いし」
「そう、だな」
クラウドも氷狐を握り直す。二人、ロキを睨み付け立っているので、フォルセティも少し遅れて書物を開き、少しだけ怖じ気付いた状態で二人に並んだ。
「俺の氷狐で凍らせてやる……!」
クラウドの蒼い眼光がギラリと光を放ち、十二神将を睨み付ける。

 直後、何故かその闘志に燃えていた(と思われる)クラウドにポチが噛み付いた。
「いてぇ!」
瞬間的な叫びを挙げたクラウドだが、ポチは全く無視している。そのまま、噛み付いた場所から離れない。クラウドは噛み付かれた肘を左右に激しく振り、振り落とそうとしたがポチは離れない。彼女の血の赤の眼光が、クラウドを捉えた。
『貴様らは阿呆か!』
「喋った !?」
耳孔内部に響いたポチのしゃがれた声に、三人同時に声を上げる。ポチの声など、今まで聞いたことなど無かったので、非常に驚いていた。
『脳に直接語り掛けてるだけだ』
ポチは涼しげな顔で宙を旋回している。絶対音感を持つフリッグなら、彼女の声など聞くも容易いのだが、普通の人間である彼等には通常のポチの声など届かない。今は彼女が故意に、三人の頭へ直接声を放っているので聞こえているのだ。
「流石、リヴァイアサンやアジ・ダハカという竜族の頂点に立つ竜と並ぶだけあるな」
会話を始めた三人(と一匹)ににやけた顔を向けながらロキはへらへらしていた。

 元は人間の女性であるポチことティアマットであるが、その力は一般の竜を凌駕する。他に古来から強力な竜として上げられる、水竜リヴァイアサンやアジ・ダハカ、アナンタと並ぶほどだ。ロキに賞賛されたポチは鼻で笑った。
『当たり前だ』しゃがれた女声が言葉を続ける。『だが、貴様ごときに誉められても嬉しくはないな』
「そりゃあ、ドーモ」
ロキは悔しいのか、少しだけ皮肉った喋り方で返した。メリッサは呆れながら彼等を交互に指す。
「まった、仲良く話すし……」
「旧友と言いますか、旧知の仲と言いますか……————仕方無いでしょう」
フォルセティも強張っていたのが解けたのか、落ち着いた様子でメリッサの独り言に相槌を打った。我ながら律儀だと思いながら。


 少し和んだ場の空気にハッと気が付いたロキは、急に焦燥に駆られた顔になり、殺気を纏わせた。その戻った威圧感にメリッサは押され、無意識に半歩下がる。ポチは平然と、メリッサに言った。
『レーヴァテインはかなり強い。氷狐などでは敵わないし、今の小娘のノルネンでも勝てん』
その言葉に、メリッサとクラウドは動揺。喧嘩腰で声を上げた。対照的に、フォルセティは涼しい顔をしている。年長者に比べ、名前が上がらなかったのは優等生な気がしたのだ。
そもそも氷狐は氷雪系の神器であろう?業火を纏う劫焔者レーヴァテインに勝てるでも思ったか?』
冷静沈着な老女の言葉に、青年は沈黙。
『小娘のは全神器の中でも強力なものに属する運命聖杖ノルネンだが、現時点では力が出し切れておらん』
続けてメリッサも沈黙。言い返す皮肉が見つからなかった。フォルセティは、恐る恐る自分を指差してみた。幸い今のところ、唯一ポチから厳しい指摘を受けていない。その中には、僅かに自分に対する自信があった。
『貴様は————』
ポチはまじまじと少年を見た。フォルセティはつい、背筋を伸ばす。何を言われても動揺しないようにと心に決めながら。
『分からんな……』
ポチの呟きに、期待外れで転びかけた。まあ、厳しい言葉を避けれたので、良しとする。誉められなかったのは少し残念だったが。

 そんな話し込む彼等の間に突如火柱が立った。眉睫に現れたその火柱を、目を見開いて少年は立ち尽くしていた。唐突すぎて、意識が追い付かないのだ。メリッサがひょい、と少年を担ぐ。そのまま俊敏な動きで退いた。
「ノルネン!」
少女の喉が反り、甲高く黄色い声が轟く。金の錫杖が光を籠めた。メリッサの唇が斜めに傾く。

「<スクルド>ォオッッ!!」
怒号に限り無く近い声と同時にロキの周囲に光の柱が立ち並んだ。それが秒速でロキを覆い尽くし、パンと軽音を立てて爆ぜた。よっし!とメリッサは小さくガッツポーズ。
『馬鹿、まだだ!』
察知した竜がメリッサに告げるよりも早く、【愚者】の指に光る環から一柱の柱が建ち、メリッサを貫いた。幸い脇腹に少々血が滲む程度で済んだが、顔は痛みで歪んでいる。
「おーおーおー」飄々とした声を鳴らし、ロキがポチを横目で見詰めた。「高貴なる竜サマが人間なんかと馴れ合って良いもんなんかねェ」
『元は人間の異端な存在だ』ポチは掃き捨てた。『他と一緒にするな』
「リヴァイアサンだったかは何年も前に人間の男との間に子供を産んで殺されたってハナシがあんだ。————竜も変わりつつあるねぇ」
『ふむ、それは初耳だ』
相変わらずに変に他愛ない会話にはなを咲かせる一人と一匹である。ロキの言葉にポチは少し笑顔を見せた。

————脳裏に羽の無い蛇のような白竜の姿が映る。透き通るような莱姆緑ライムグリーンの鋭い眼光を持ち、白銀の鱗に身を包んだ海に棲む海竜リヴァイアサン————ポチことティアマットには正直なところ、あまり親しくした記憶はないが、その少ない馴れ合いから感じとることには、彼女は自分よりも人間には厳しい奴だと言うことだった。眼前の奴が言うように、人間に敵意を燃やしていた筈の"彼女"でさえもそうならば、やはり竜の対人間関係が緩和されつつあるのだろう。何故か何処か嬉しくあった。


 再び放たれた火柱を軽やかな足取りでクラウドが避ける。刀が水晶の煌めきを魅せたが、一瞬で業火に融解される。彼の眉が微動した。やはり、自然の理には勝れない————どう足掻いても氷は炎に溶かされるのだ。
「そーゆー心構え的なのは良いねえ!」
背後から発された不吉な声と同時にクラウドの体が前方に跳ね飛ぶ。着地できず、体は暫く床の上を滑った。クラウド!とメリッサが悲鳴をあげる。

 フォルセティもじっとはしていられない。天命の書版を開き、仄かな光を宿らせながらじっとロキを窺った。
「貴方の相手は私が」
途端、冷徹な女性が耳に入る。——シギュンが金糸を顔につけながら、青白い唇に笑みを浮かべていた。
「そう言えば、居ましたね。まだ、一人」
少年の顔が青くなる。冷や汗が止まらない。絶対零度のシギュンの冷徹な声が彼の耳に入っていっていた。
「あの、二種族混血児の男が亡くなったことに対して、何か怒りでも?」
「————当たり前です!」
威圧と恐怖に圧倒され、臓器が収縮したような感覚で苦しみを感じているフォルセティは声を捻りだし、怒鳴るように叫んだ。「他人事のように感じてなんかいない」と続けて出したかったが、其処までは続かなかった。
その様子を見ていたのか、「威勢が宜しい様で」と遠くでロキが嘲った。そんな【愚者】をサイドから現れたメリッサがノルネンで殴りにかかる。打撃は彼の脇腹に上手く当たったのだが、不思議と男は微動だにもしなかった。まるで聳える岩山の様にずっしりとその場に居るのだ。不思議に思った彼女を思考が走るよりも早くにロキが指環から出現させた石柱で吹き飛ばす。飛んだ彼女の服をクラウドが乱暴に掴み、無理矢理停止させた。一部始終をロキは口笛を吹いて優雅に眺めていた。


「そういやあ、よお」
男の口が卑しく斜めに吊り上がる。
「昔のど偉ーくて、強くて頭の良い某大魔導師が言ってたねえ」
彼が哂ったと同時に、閃光。眩しい光に三人は目を閉じた。その光に覚えのあったティアマットが急いでロキ目掛けて飛翔する。————が、遅かったようだ。

 地面に巨大魔法陣が展開する。その陣を、一瞬だけ目を開いたフォルセティが捉えていた。同時に彼は頭の中にある記憶に、その魔法陣の見覚えがあったことに気付く。その魔法陣が繰り出す魔法を思い出したと同時に、体が石の様に硬くなった。身動きができなくなり、更に意識が遠のく。まるで突然電源を切った電化製品の様に、三人は動かなくなった。不幸中の幸いか、まだ意識の残っていた竜が血の瞳で男女を睨みながら低く唸る。
『————禁呪"好ましく無い者(ペルソナ・ノン・グラータ)"だ、と……!?
そんなもの、使用する人間などフリッグ以外に覚えは無いぞ!』
「バアサン、お前は考えが間にあって無い。なにせ、アンタが知っている歴史より、今は断然進んだ先にあるんだぜ?」
そうロキは身を翻す。そのまま前進、この場を去ろうとしていた。その後に忠実な女性が続く。背中を向けながら、【愚者】はつづけた。
「"好ましく無い者(ペルソナ・ノン・グラータ)"なんてふさわしい台詞だと思わねえ?
使用者が排除すべき人間だと思った奴らを一瞬でこの場から"退場"させられるんだから————つまり、あんた等はこの雪国という舞台では"好ましく無い者"ってことさ」

 そのまま歩いて行く彼らの後をポチは追うことが出来なかった。羽が徐々に石化していき、数秒足らずで全身が石と化したのだ。そのまま静かに墜落する。数体の石像だけが残された静かな空間で、最後にこだましたのはやはり【愚者】ロキの独り言だった。



「————"Qu'est-ce que c'est que moi(私とは何か)?"ってな」







<Oz.19:tragedy-哀しきさゞめごと③ もう送れぬ愛情表現- -Fin.->

Re: 【Veronica】 *参照3000突破、有難うございます! ( No.340 )
日時: 2012/01/05 18:22
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
参照: 貯めていた分を一気に更新(おい)

□Oz.18 目次

・Part1 >>311
・Part2 >>312
・Part3 >>313
・Part4 >>322
・Part5 >>325
・Part6 >>329

□Oz.19 目次
・Part1 >>334
・Part2 >>336
・Part3 >>337
・Part4 >>339

【題名について】
◇Schneesturm(シュネーマン)
独語で「雪だるま」の意味。リュミ姉妹等の生みの親であるひふみ(※旧名)様に作って頂いた素敵タイトルだったり。

◇Tragedy(トラジェディー)
英語で「悲劇」の意味。此方も上と同じで作って頂いたものです。本当ありがとう!

【小ネタとか】
何となく色々と入れてたような気がします。思いだせる範囲ってOz.19のしかないのですが。

・レーヴァテイン
北欧神話より。"裏切りにみてる枝"(以下略)等の呼称はウィキさんで引いたら出てきたので(笑)。
剣だか杖だか分からないくらいに資料が無いらしい。ちなみに【Veronica】では二対の双杖(二本の杖)になってます。…両利き専用か?

・ペルソナ・ノン・グラータ
外交用語の一つ。辞書で遊んでいたら発見(おい)
ラテン語で「好ましく無い者」の意。詳しい意味は忘れたので、気になる人は調べて私に教えてください((((おいおい

・Qu'est-ce que c'est que moi?
「私とは何か?」の意味の仏語。中原中也の詩のタイトルから。

あと、リヴァイアサンとかアナンタとかアジ・ダハカっていうのは大体竜の名前です。手元に電子辞書が無いのと、下手をしたらネタバレになると思うので避けますが…。
リヴァイアサンはティアマットと幾つか似た点があるとか無いとか。すみません、記憶があいまいです。多分この先、アジ・ダハカ以外のやつらは確実に出るはずなので、出てきたときに色々話します。え、要らないだって?

Re: 【Veronica】 *参照3000突破、有難うございます! ( No.341 )
日時: 2012/01/07 17:43
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
参照: 貯めていた分を一気に更新(おい)

『おかあさん』
小さな少女が、喉を震わせた。次に
『おとうさん…』
と擦りきれるくらいの微弱な声で叫んだ。

灰色の前髪は彼女の可愛らしい童顔を隠していた。彼女は、冷たい鉄格子にしがみ付いていた。その鉄格子の向こうで、何人かの老若男女が灰色の軍服を纏った軍人たちに連れて行かれている。先には゛シャワー室゛という文字が刻まれた看板が立ち、汚れたコンクリの建物がいくつか建っていた。少女は鉄格子の隙間から右腕を伸ばした。幼い少女の手は容易にそれをすり抜けたが、体まで通り抜けることなどまず無かった。——もどかしさが残った。

 少女と同じ琥珀の眼をした男女が一瞬振り返り、微笑みを向けた。それが自分の両親なのだと分かった少女は更に腕を伸ばし、鉄格子に体を嵌めるように近く、強く体躯を押し当てた。厚手のコートから覗かれる、僅かに露出された彼女の肌には青黒い痣が何か所もあった。
『お、かあ………、お、と』
最早彼女の声帯は声をひねり出せそうになかった。そして親に近付けない自分に嫌でも気付いた。両親が何故、あの場所にいるのか分からない————自分たち゛琥珀の種゛がこのネージュと言う雪国で何をしたのだろうか?

 平穏に暮らしていたはずの村人たちが一斉に連れだされた理由も分からない。その中で暴行を受け、強制労働を受け——そして命を奪われていく理由も分からない。

『準備は出来たな』
と低い男の声が響いた。はい、と近くの軍人がすぐに答えた。それは何かの合図だったらしい。数秒も経たないうちに、連行されていた数名がコンクリの施設の中に押しいれられた。それでも、最後の最後に男女二人が後ろを見て微笑んだ。——まるで、我が子に「大丈夫よ」とでも言い聞かせるような顔で。

 それが、彼女の肉親の最期の姿だったのだ。




<Oz.20:Canossa-薄倖の少女、憂鬱の日々->





 白い呼吸は、懐かしく思われた。ずっと雪国で暮らしていたフリッグにとって、その感覚、感触は久しぶりのものだったからだ。帝国に発ってからというもの、気候の全く違う環境にいたのだから、これはとても懐かしく、そして落ちつけるものだった。その安心感の中に、粉雪に紛れて吹きこむように耳の中に入ってくる゛風゛を心地よく感じるというものが雑じっているのに気付く。途端に、憂鬱になってきた。自分の中にある、過去の自分——マーリンという存在が次第に今ある゛フリッグ゛という概念をのみこんでしまうのではという不安に駆られる。そもそも今ある自分自体が一体何なのだろうか————その疑問が体中に渦巻いた。
 咄嗟に首を激しく左右に振り、その疑問を振り払った。そうでは無ければ、きっとこのままこの場に停滞したままで居てしまうのではないかと思ったからだ。急いで他の思考を始めようとした。手探りで、今ある現状から何か深く考えていられるようなものを漁る。記憶の海の浅瀬にあったのは、つい最近邂逅したばかりのユールヒェンという少女だった。「儚さ」という言葉がいかにも似合う、そんな薄倖の少女だ。同じ種族であるメリッサやレイスと比べると、断然思い空気が漂っていた。メリッサよりも、どちらかと言うとレイスの方が近い雰囲気を持っているが、やはり何処か二人とは違う何かがある。それでも、何か三人に共通するものがあり、それはもしかしたら彼らアンバー種全員に共通するものではないのだろうかと思い始めた。彼らは自分の境遇を嘆くような事をしないくらい、何処か崇高な種族なのかもしれない。悲劇的な状況に置かれていても、偶像崇拝(※像などを宗教的対象として尊重すること)することも、選民思想(※神から選ばれた民族で、他民族を導くという使命を持つという思想。世界の終わりには神を信じることで自分たちは救われると言うもの)に
走ることも無い。きっと彼らには自分たちに絶対的な自信があるのだろう。

 レイスは孤児院出身であると語っていた。メリッサは自分の過去を晒そうとしていないが、何か秘めているものがあるに違いない。どうように、ユールヒェンも何かを背負っている。共通するのは、過去を自分から洗いざらいに吐きだして、それを同情するように誘ってこないところだった。「自分の事は自分でやる」と言った感じだ。

————あの子にも、何かあるんだろうな……。

 脳裏の中で吹雪で消えそうな背中を魅せるユールヒェンの姿を思い浮かべながら、耽る。何か追われている様子から、彼女には切っても切り離せない何かがあるはずだ。それに何処まで関わっていいかは分からない。しかし、いつの間にかフリッグは眼の前の人間を見放すことが出来なくなっていた。ついこの前までは他人に干渉することも、される事も嫌っていたはずなのに。人間との出会いが人を変えると言うのは、間違いではなさそうだ。

 嫌がれるかもしれないけれども、訊いてみようと思った矢先だった。外にいたフリッグの敏感な耳に、硝子の割れる音が響いたのだ。ついついうっかりして、周囲を警戒する体制を取っていなかった。ハッとして、急いで戻る。靴に付着した雪を払うことなく、どかどかと家中に入った。そのまま荒い呼吸で、乱暴にドアを開け、階段を突き進む。耳は人間の存在を捉えていなかった。それでも、それはきっと誤った情報だと自分に言い聞かせ、ユールヒェンが安らかな寝息をたてて眠っている姿を思い描いた。しかし、現実は情報通りだった。寝室を開けた瞬間、視界に飛び込んできたのは空になった寝台と、割られた窓硝子————少女の姿など、何処にも無かったのだ。

 荒れた形跡をぼんやりと眺め、脱力してその場に膝を付けた。ハッとして、急いでヘッドフォンを外し、耳を澄ました。微弱ながらも、人間の歩いて行く音が吹雪に紛れて二、三聞こえた。——まだ間に合うかもしれないと言い聞かせ、反射的に立ち上がって方向転換、今迄辿ってきた道を全速力で戻った。ヘッドフォンは付け直されること無く、床に放置してきていたので、゛絶対音感゛の耳はフルパワーで使えた。その耳を頼って、恐らくユールヒェンと彼女を連れ去ったと思われる者達の後を追った。雪で視界が悪く、更に足元のそれ程良いとは言えない状態だったが、それでも突き進んだ。細雪が目に入る。くそ、と吐き捨てながら、走り続けた。途中、深い雪に躓き、顔面を雪に埋めた。それでも咄嗟に起き上がり、顔にべったりと付いた雪など取らずにまた走り出す。口内が鉄の味に満ちていた。肺が痛かった。——まるでウェロニカを失ったあの時のように。最悪のケース——血まみれになって倒れるユールヒェンの姿——が脳裏を駆けた。その姿が自然とウェロニカに重なった。涕泗が無意識に垂れ流しになっていた。——それでも、と首を激しくふるう。

——分かっていた。これは、無意識に行っている罪滅ぼしの行為だと言うことを。

あの日、兄弟であり幼馴染であった最愛の彼女を救うことが出来なかった自分には、罪が無いことを証明するための様な行為にしかならないと言うことを嫌でも理解し始めていた。自分に関係してきたものを、全て救おうとしている行為が即ち助けられなかった彼女への罪滅ぼしの証なのだ。それは今や敵となってしまったウェロニカと対峙することに対する恐れでもあるようだった。今はもう、全てを救う気でいるのだ。

儚い白い影を漂わせたユールヒェン・エトワールと言う名の極寒の白い死神。
彼女の灰色の髪が、何処かウェロニカに重なった。

「くっそぉ!」
躓き、倒れた自分に対して彼は怒鳴った。走りたくても、足が、体が、自分の機能が限界をきたしてきているようだった。更に寒さで体が動かなくなってきているのも理解出来た。その理解は、したくなかったのだが嫌でもしなくてはいけないものだったので、悔しさが更に募った。募った悔しさを鬱憤するかのように、彼は自分の唇を血が出るくらい噛み締めた。出来るのなら、意識だけでも飛んで、彼女に追いついてほしい。それが出来ないのが、更に悔しい。無力な自分を嫌々思い知らされる様だった。こんな状態をみたマーリンはきっとほくそ笑むような感じでいるのだろうと思うと、腹立たしくなってくる。起き上がっても、もうふらついて歩けそうにない。フリッグの耳が捉えていた足音が、段々と遠のいて行く。聞こえなくなるのが怖くて、彼は足を踏み出した。が、一歩はとてもゆっくりなものになっていた。もう歩くことも儘ならなくなっている状態だったのだ。

 とうとう足が凍ったように動かなくなった。雪が降り積もり、茫然とした体を白く包んでいく。粉雪を体にまとわせながら、彼は北の虚空を見上げた。そして大口を開けて咆哮する。
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ !! 」
その啼き聲は、虚しく雪に掻き消されるだけだった。



>>

Re: 【Veronica】 *参照3000突破、有難うございます! ( No.342 )
日時: 2012/01/07 17:43
名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: ikU9JQfk)
参照: 貯めていた分を一気に更新(おい)

* * *

 乱暴に体躯が雪面に叩きつけられる。喘ぐような悲鳴を上げ、ユールヒェンの華奢な体が雪の白に紛れた。それを見下すように、二人の男が仁王立ちで居る。すぐさまに、少女は上体を起こし、琥珀の眼光で二人を睨みつけた。
「何の用事」少女の青白い唇が微量の音量で言葉を奏でた。「即急に言って」
「誰に物を言っている?」
二人のうちの一人であるラピス種の男は卑しい笑みを浮かべ、彼女の灰色の髪を掴んだ。ぐい、と顎を引きよせ、顔を急接近させる。威圧感を出していたつもりだった。が、ユールヒェンはその顔に唾を吐き捨てた。その態度は凛としていた。あごひげを生やした逞しい肉体のその男は、青筋を立てたが、それ以外は一切怒りをあらわにしなかった。掴まれたままのユールヒェンは冷静に淡々と言葉を紡ぐ。
「殺すなら殺して。何をするか知らないけど、早くして。……時間がかかることは嫌いだから」
「良く言う女だなァ」
「……゛無駄゛と言う二字熟語が嫌いなの」
そう言ってユールヒェンはふい、と顔をそらした。その態度に男は再度顔を向けさせる。眉を顰め、不愉快な気分を丸出しにしたユールヒェンが
「淑女(レディ)に対して名を名乗ることはしないのね」
と挑発的に言う。男は大きく笑ってから、
「淑女なんてお前の様な小汚い奴が言うなよ」
と大きな声で答えた。それでも彼は律義なようで、言葉の尾に「ザグレヴだ」と付け足した。
「そう」
少女は淡とした言葉だけを返す。ザグレヴは彼女の態度が気に食わないようで、また少女を雪中に叩きおろした。今度は先程よりも強かったようで、衝撃が走った体を直ぐに起きあがらせることは出来なかった。少しして、体が感覚を取り戻してきたところで起き上がろうとした彼女をザグレヴの巨体が覆いかぶさった。彼女の黒いインナーを乱暴に掴む。一瞬動揺したように眼球が揺れたが、少女は直ぐに気持ちを落ち着かせ、また冷静に言い放った。
「殺すなら早くしてよ」
むっとした表情の彼女には恐怖の色が無かった。それがつまらないザグレヴが少女の頬を殴りつける。それで小さく呻いた彼女を、もう一発殴った。頬を赤く腫らし、口元から一筋の血液を流しながらのユールヒェンの上に馬乗りになる。
「可愛げが無いな!」彼は銅鑼声で罵った。「他の女はまだ泣き叫ぶぐらいはしたのによお」
「ザグレヴ、それは死神だから常識は通じねえよ」
ザグレヴと一緒にいた男が苦笑いをする。彼はこけた頬を温めるように手で擦りながら、大男の下にいるユールヒェンを見た。ザグレヴとは対照的に、細い男だった。

「それでもアグラム……」
ザグレヴが一瞬下品な笑みを浮かべた。と同時に、彼女の黒い衣服を引き裂く。
「ッ————!」
予想だにして居なかった事態に彼女の顔に焦燥と恐怖が現れた。露わになった少女の白い肌は、周囲の雪と同化するくらいに白かった。アグラムと呼ばれた痩せ男は察したようで、無言で顔をにやつかせながらにザグレヴに近づき、ユールヒェンの頭を手で押さえた。彼女に身動きできないようにしたのだ。
「゛極寒の白い死神゛と謳われていても所詮は女に変わりねえ」
そう言って彼は更に彼女の纏う衣服を引き裂いていく。流石に危険を感じたユールヒェンが叫んだ。
「殺すんでしょ !? 何をするの!」
「そりゃあ、勿論殺すが、その前にお前が人間の女かどうか確かめるんだよ」
土の様な肌のアグラムが唇を吊りあげた。
「どうせ殺すんだ。その前に凌辱して孕ませたって誰も文句は言わねえさ」
ザグレヴも卑しい笑みで言う。抵抗しようと少女が激しく体を振った。が、大人の男二人の力によって抑えつけられる。それでも抵抗を続けた。体に触れようとしてくる、自分に覆いかぶさっているザグレヴの局部目掛けて折り曲げた膝をぶつけた。上手い具合に当たったので、彼は痛みに悶えた。そのすきに逃げようとしたが、頭を抑えるアグラムに殴られ、そのまま雪中に浸かった。

「ンの餓鬼ィイィイイ」

阿修羅のごとく、酷く憤慨した形相のザグレヴが少女を抑え込み、首を絞めた。圧迫された喉が呼吸を困難にさせる。苦しむ彼女の腹を、ザグレヴが折りたたんだ膝で蹴った。それだけではない、アグラムも彼女の顔を殴りつけた。二人による暴行は絶えることなく続く。

————死ぬなら、これで良い。

遂に走馬灯が見えるのではと思えるくらいに意識が薄れていた。ユールヒェンには、きっとこれは自分に与えられた末路だと感じられた。殴る蹴るだけの暴行の末に死ぬのなら良い。凌辱の様な事をされて死ぬよりはましだった。
「死ねよ、死ね、死ね、死ねええええ」
口から涎を垂れ流しながら狂ったようにザグレヴが連呼する。しかし直後、その動作を拒むように何かがザグレヴとアグラムの体に衝突した。その衝撃はあまりにもすさまじく、彼らの体をユールヒェンから引き離し、雪中へと叩き落とした。——げほげほと咳き込みながら起きあがった少女の眼に入ったのは、翡翠の眼をぎらつかせながら立つ、飴色の髪の少年の姿。

「大の男二人で抵抗も無い少女を犯そうとして暴行するなんて情けないじゃないの?」

フリッグは不敵な笑みを浮かべて立っていた。ユールヒェンの様子を見て直ぐ様に彼は彼女に駆け寄り、自分の上着をユールヒェンに掛けた。そのまま彼女を護るように前に立ち、二人を見下ろす。
「てめえ、あのときの…!」
そう言いながら二人は散弾銃を手におさめる。そして一斉にそれを乱射した。が、フリッグの前になると何故かそれらが反射して、地面に落ちる。まるで少年の前に何か見えない防壁があるようだった。
「————掴まって」
フリッグがユールヒェンに手を伸ばす。恐る恐る伸びた彼女の手をフリッグはしっかりと掴み、それから流れるような動作で彼女を背中に背負った。予想してなかったユールヒェンは動揺を見せたが、抵抗する気力は残っていなかったので彼の背中に大人しく収まった。


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Re: 【Veronica】 *参照3000突破、有難うございます! ( No.343 )
日時: 2012/01/07 18:46
名前: 葵那 ◆1R8FyXsIeY (ID: e6h1dNNB)


お、お、お久しぶり———ッ!?(
明けましておめでとうございますン<(_ _)>
どうも、葵那でした←


と、言う事でお久しぶりでっす!ご無沙汰です!(`・ω・´)
ま、まさか久しぶりにここに来てみれば更新してただなんて…うああああああry 嬉しすぎるw
…実はまだ更新した所読めてないけど衝動的にコメントしてみたくなったり(´・ω・`)
ワクワクしながら読みますのぜ!更新お疲れさまでした(*´ω`*)


という事で葵那でした(
どうもすいませんorz


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