ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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白銀神騎アルファリーゼ
日時: 2011/01/10 23:05
名前: 深山羊 (ID: S.vQGXD5)

初めましての方は初めまして、知ってる方はこんにちは。
深山羊みやまひつじです。

今回はシリアス(多分)な現代ファンタジーを書かせていただきます。
ちなみにタイトルの読みは「白銀神騎はくぎんしんきアルファリーゼ」です。略し方とかご自由にお願いします。良いのがあったらそれを全面的に使うかも……。
多少暴力的な表現やグロっぽいこともするかも知れないのでシリアス・ダークの方で書かせていただきます。
全体的な流れとして、タイトル通り神騎と呼ばれる動く無人鎧「アルファリーゼ」が戦いそして未来をつかもうとするお話です(きっとおそらくそう多分)。

これとは別に「Walking」という作品も書いておりますのでよろしければそちらもどうぞ、これとは違う雰囲気の物語となっております。

よければ感想やアドバイス、一応酷評とかも大好きです(Mじゃないよ?)
少しでも面白いと感じていただけたらちょろっとで良いので感想を頂けたらなんて思ってます。

色々グダグダ書いてても仕方ないのでこの辺でまえがき(?)を終わります。
深山羊でした。

それではごゆっくりと本編をお楽しみください。

追伸。
友人に前タイトルの「アルファード」を見て「ん?おんなじ名前の車なかったっけ」と言われ検索するとありました。なんてコッタイ、という訳で急遽タイトル変更となったしだいです。
余計な事をしてくれたな友人Aよ……。


【語群】
天城都市新渡《てんじょうとしあらと》
那緒《なお》
那緒敍昂学園《なおじょこうがくえん》
同調者《どうちょうしゃ》
神騎《しんき》
天上位階《てんじょういかい》
セネシグ《せねしぐ》
次元石《じげんせき》
異次元世界《いじげんせかい》
方舟計画《はこぶねけいかく》

【名前】
霧蛇 鴉《きりみ からす》
アルファリーゼ《あるふぁりーぜ》
鈴野 紗枝《すずの さえ》
上瑠 華《あるり はな》

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第一章 白銀と自己紹介と潰し合い ( No.8 )
日時: 2011/01/12 00:13
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)

 ノートにはそれしか書いていなかった。方舟計画なんてあからさまにおかしな名前だ。
「そうだな。異次元についてから説明する」
 少し間をあけて声にした。
「ノートに書いた通り私たちの世界は一つの点だ。分かりやすく言うなら目に映る景色、三次元に真横に一本の線を入れてその線通りに切り、それを真上から見ると二次元になる。それを二次元一次元と繰り返す、最後の零次元は点になる。その点がこの世界そして他の世界」
 彼女の口から聞いても信じられないがこの生きている世界それは無数にあった点の一つにすぎないらしい。
「その点はぶつけ合うとその二つが爆発の様なものをおこして幾つかの点が生まれ、それが世界の元になる。だが今、点は私の世界とこの世界の二つしかない、その原因は全くもって不明」
 彼女のデータにはそうメモリーされているらしい。
「そこでだ。先ほど言った通り点はぶつけ合うと幾つかの点が生まれる、しかし点は二つしかないとなると必然的に世界を増やすにはこの二つの点をぶつけなくてはならない」
 コクリと頷く。
「しかし厄介なことに点はぶつかると元あった点の世界は消滅する」
 ノートに書かれていなことであったが静かに聞くことができた。
「もちろんそんなことをしたら計画者までもが消滅することになる、だが奴らは方舟を作り上げた。点のある次元、次元の狭間に大量の人間や食料物資といったものを補完できる方舟を、その方舟は次元の狭間に居ることができるすなわち消滅せずに残ることができる」
「そんなことをしてどうするんだ?」
「最後まで聞け」
 おとなしく口を閉じた
「生まれた点というのは言わば生まれたての世界だ。その世界でも勿論人間という生命体は生まれるようになっているがさまざまな違いは生まれる。簡単な話がさっきのアニメというものの世界観と同じ世界が出来るかも知れないという訳だ」
 結構しっかり見てたんだな
「新たな点を利用して、この私の世界にある、神軌皇話〈しんきこうわ〉で起こった出来事を疑似的にかつ人為的に再現し神話を作り神を作る、神になろうという計画」
「神軌皇話?」
 初めて聞く単語だ。
「この世界でたとえるならば神話の様なものだ」
「神話なんてよく知っているな」
「データにメモリーされている」
「さいですか」
 便利だね、そのデータメモリーっての。うらやましいよ。
「まあ、方舟計画とはセネシグという組織の奴らが神になるための計画という訳だ」
 ちょっと待て。
「セネシグはお前を作った組織じゃないのか?」
「そうだが、私を作ったヤハム・リーウェという人物は方舟計画を望んでいない」
「なら、神騎とはなんだ」
 そう。ここまで聞いて理解したのは方舟計画について、これを聞く限り神騎とは何のために必要なのか。
「方舟計画の核となる存在」
「意味が理解できない。神騎を作るということは方舟計画を進行させる上で必要な物だろ?望んでいないのに作ったというのはどういう意味だ?」
「セネシグを止める為。内側からセネシグをつぶそうとしている、そのために私の様な神騎を上手い具合にこっちの世界へ送り込んでいる」
「神騎は計画の核でもあり最後の砦ってことか」
「そういうことだ。だから私は鴉に協力してほしいと願ったのだ」
「やっと全体が掴めてきている、要するにだ。方舟計画を止めたい、だろ?」
 彼女が小さく頷き、こっちを見つめる。
「どうした。顔になんかついてるか?」
「いや、なんでもない」
 そう言って目をそらす。
「変な奴だな」
「変な奴ではない。そのなんだ。本当に私の言っていることを信じてくれるのか?」
 不安そうに聞くその表情が可愛かった。
「勿論。疑う理由がない」
「信じる理由もないだろう」
「俺の為に信じる。俺の欲の為に。これでいいか」
 向かい側に座っている彼女の目を見て答える
「いいが。欲とはなんだ、気になるぞ」
 別に隠すことでもない、ただ汚い自分をさらすことになる。だがそんなことを恐れていてはいけない。これからは彼女を信頼していかなければならないのだから。
「誰かを守ること、自己満足の偽善さ。不純だろ?」
「偽善でも、その……カッコいいじゃないか」
 そういった彼女も照れくさいのか頬を赤く染めて
「そう言ってもらえるのは嬉しいな」
 出来る限りの笑顔を彼女に見せる、すると彼女もやわらかな笑みを浮かべて見つめ返す。
「では。改めて。よろしくお願いする」
「こっちこそ、よろしくな」
 二人で見つめあい、その後同時に噴出して少しの間だけ笑いが部屋に満ちていた。

・設定集(一部) ( No.9 )
日時: 2011/01/13 22:08
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)

・天上位階(天使9階級)
上位三隊「父」
熾天使してんしセラフィム S級
智天使ちてんしケルビム A上位級
座天使ざてんしスローンズ A中位級

中位三隊 「子」
主天使しゅてんしドミニオンズ A下位級
力天使りきてんしデュナメイス B上位級
能天使のうてんしエクスシアイ B下位級

下位三隊 「聖霊」
権天使けんてんしアルヒャイ C級
大天使だいてんしアルヒアンゲロイ D級
E天使てんしアンゲロイ E級

右側の級は強さをわかりやすくしたもの


天城都市新渡あらと
新エネルギーにより空中に浮上することが可能になり新たな都市または国目的として作られた第一空中都市。
人口約280万人。総面積約85万k㎡(大体広島と大きさ人口は一緒)都庁は那緒なお


・神騎(ディヴァインとも呼ぶ)

記号名α-F01
α-F01/アルファーリーゼ/権天使けんてんしアルヒャイ級(C級)
名称アルファリーゼ-呼び名アルフ-鴉のディヴァイン
外殻の強度は高く防御力は高い。メインカラーは白と銀、身長約180cm、体重約75kg。
見た目は鷹をモデルにしたかの様なヘルメット、クリアブルーの瞳、西洋の鎧の上半身から下半身にかけて逆三角形のような形、刀の様に美しくそれでいて滑らかな腕、肩は城の様な外壁にも見える突出したショルダーガードに守られ足は股から足先まで白いグリーブに覆われている。
武器や背中の物は普段は異次元(次元石の力)にしまってある。次元石はとても小さく携帯のストラップ程度である。
戦闘スタイル.剣術と銃使い。
主力武器.「右型-壱」(うけい‐いち)銀色のツーハンデッドソード「左型-閃」(さけい‐せん)白い拳銃
「左型-閃」全長約400mm/重量約1200g/口経.44マグナムに類似している。×二丁
「右型-壱」全長約1.3m/重量約5kg/横幅最長約7.5cm 一本
細長いが強度はどんなものよりも高くツーハンデッドソードをモデルにしているが切れ味は日本刀をも超える。柄はアルフが握りやすいようになっており腕を切りおとしでもしない限り落とすことはないほどのもの。

第一章 白銀と自己紹介と潰し合い ( No.10 )
日時: 2011/01/15 23:40
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)


     ◆


 本当の世界観を知ってから早くも数日が経つがそれなのに何一つ音沙汰はなし。学校に行って帰って来てから彼女と会話をするルーチンワークをさらに数日。
 運命というべきか物語というべきか。話が動き始めたのはあの日から約5日後、土曜日のことだった。
 彼女が来てから初めての土曜日。今日は彼女の為に衣類や日用品を買いに行くために二人で出掛けた先でのことだ。
 明らかに異様な二人組。喪服を着た、黒髪にセミロングで見た感じまだ中校生にも満たない少女とは対照的に白い清楚なワンピースを着た二十歳すぎくらいの女性の二人組。
 気がついたのは彼女で俺はというと何事かと思い呆けていただけ、喪服の少女に言われてやっと理解が追いついた。
「ここじゃ危ない。人気のないところへ」
 少女独特の幼い声でありながらそれは一般人を巻き込まないようにとの考えを持てる人間の言葉だった。勿論周りに迷惑をかけるのは問題がある、おとなしく二人の背中を見つめながらついていくだけ。
 足が止まったのは約数十分後。まだ作りかけなのだが明らかに放置されたままの建造物、面積は広く実際に出来上がれば良かったのだろうが他の、特に住宅地がまだまだ未完成なのでそっちに手をまわしているのだろう。この間行ったところとは別のところであったため少し驚きを覚えた。あそこ以外にこんな場所があるとは思わなかった。
 簡単にいえば暴れても気付かれないくらい殺風景で静寂な場所だった。口を一番に開いたのは俺だった
「少し話をしたいんだが」
 喪服の少女は睨むように俺の顔を見た。そして嘆息し
「いい。話って何」
 中々独特な感性を持った少女だことで。
「単刀直入に君はなぜセネシグに就く」
 少女は呆れたように答えた
「私は神騎」
 次の瞬間、喪服の少女は黒い神騎へと姿を変えていた。モチーフとなっているのは猫だろうか、猫の様な細さとしなやかさが見て取れる。その割に不釣り合いな大きな金砕棒と呼ばれる武器、いわゆる鬼の金棒、それもだが
「君が神騎だったのか」
 とすると同調者はあの白いワンピースの女性
「貴女はなぜセネシグに」
「無駄。彼女は声を失っている、精神的理由で」
 黒い鎧は答える、聞いてもいないことまで
「セネシグは貴方の神騎を壊せば彼女がもう一度声をだせるようにするといった」
 なら、と鎧は続け
「私は貴方の神騎を壊すまで。止まらない」
「ご指名だ、アルフ」
「格好つけおって、鴉には似合わぬぞ」
「ほざいてろ」
 言い終える前に彼女は白銀に輝く鎧となり銃を構え、黒い鎧を見据える。
「推して、参る……」
 低く唸るような声が鼓膜を揺さぶり威嚇のような前口上にも黒い鎧は動ずることもなくただ静かに答えた。
「来るといい」
 黒い鎧は金砕棒を右手に構える。
 最初に動いたのはアルフ、両手に構えられた長い銃身の銃を軽々と連射する。押し出された弾丸は黒い鎧に向かって進む。
 弾丸は黒い鎧による金砕棒の一振りで弾かれ、数発遅れてきた弾丸は黒い鎧に当たりはしたが致命傷になるはずもなく黒い鎧は一気に距離を詰る。
 アルフは予想していた。瞬時に片手の銃を剣へと切り替え対応する、得物の長さは剣の方が長い。金砕棒では少し届かない、その間合いをキープして開いている手の方で銃を撃ち続ける。
 勿論先ほどと同じく致命傷にはならないが確実にダメージは蓄積されている。だが長い間、間合いをキープできる訳ではない。少しずつ距離を詰められた。
 剣を振るうが金砕棒に弾かれ、金砕棒の先端。尖り鋭い先がアルフの脇を掠め、金属同士が擦れ合う時の様な音をだしたかと思うと脇に入った金砕棒をそのままアルフに向け力任せに振りぬく。
 その際に左から右に振りぬかれることにより金砕棒の周りに付いている棘がアルフに刺さり、金砕棒を引くと棘はアルフの左わき腹を抉り嫌な音を響かせ、左わき腹からは血の様な液体が流れ出て止まらない。
 白銀の鎧を赤く染めあげた金砕棒は黒く光り所々に赤みを帯びている。
「中々、出来る」
「強がり。だから負ける」
 アルフは片膝を地に突き左わき腹を抑えて、それを黒い鎧は見下ろす。
「まだ、終わっていないであろうが……っ!」
 剣を杖に立ち上がり、剣を構えるが血に染まった左わき腹のせいで明らかに左腕がしっかりしていない。
「左肩。震えている」
「……」
 無言。そして。
 走る一筋の閃光。
 煌めく刃が黒い鎧をすり抜けたように見える。
 この世界は甘くない。
 実力差が埋まるとこなんてない。
 悲しいことに奇跡なんて起きない。
 明らかに倒れているのは。
 白銀の鎧。走った閃光は黒く赤く光る金砕棒。脇の甘くなった胴に思いっきり叩きつけられ棘により装甲はへこみ所々穴があいている。
 仰向けに倒れているそれは動きを見せない、ほんのわずかな動きさえも。
「終わった。軟弱者」
 黒い鎧に似合わない幼い声は白銀の鎧に向けられた言葉。冷たくて嘲笑うかのような台詞。
 知っていた、この世界の英雄は俺じゃないなんて、でも見てしまった、こいつを使えば誰かを守れる英雄になれるんじゃないか。
 そうさ、こいつを利用しようと俺はそう思っていたんだろ?なのになんでこんな……腹が立つんだ。

第一章 白銀と自己紹介と潰し合い ( No.11 )
日時: 2011/01/19 00:18
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)

「……おい」
 思わず口が動く、黒い鎧はこっちを見据え金色の瞳を見せる。
「なに。貴方の神騎は見ての通りスクラップ」
 頭に血が上る。訳がわからないが無性に苛つく。なんだこいつの物言いは、人舐めてんのか。
「まだ俺がいるけど構わないのか?」
「貴方の殺害は入っていない。おとなしく全てを忘れて生きること。それが最善」
 最善?ふざけるな。まだだ、まだ終わらせない。
「そうだ。忘れていた」
 黒い鎧はそういうとスクラップ同然のアルフに金砕棒を向けた。
「中の石を壊すのを」
 振り上げた金砕棒。それをアルフに狙いを定める。
「……やらせるかよ」
 すでに手遅れかもしれないが、これ以上アルフが壊されるのを黙って見ている訳にはいかない。両手を広げ黒い鎧の前に立ちふさがる。
「なんのつもり?」
「正義の味方のつもり」
 音もなく黒い鎧の手から金砕棒が消えたと思った時、首に圧迫感を覚え、その次に浮遊感が体を支配した。状況を理解するのには一瞬の時間しか必要としなかった。
「うぐぅ……離せ……っ」
「うるさい。貴方みたいな馬鹿は初めて。おとなしくしていれば苦しいことなんてないのに」
 首が締め付けられないように必死で首を絞められている手に力を込める。もちろん黒い鎧からしてみればなんてことないことだろう。
「ぐぅぇ……」
「本当に馬鹿。正義の味方?聞いた方が赤面するような恥ずかしいことよく言える」
 やばい、苦しいぞ、これ。
「こんな馬鹿をパートナーに持つと苦労する。ああ、苦労しただろう、か」
「うる……っせぇぞ……ぐうぇ……」
「まだ喋る。そろそろ楽にしてあげる」
 首を持つ右手に力が入る。さっきとは比べ物にならない握力、本気で死ぬかも。あと少しあと少しでも力を強められたら人間が発しちゃいけない音が出そうだ。
 これは完全に持って行かれた。もう駄目だ。折れ———

 馬鹿みたいにあっさりとその音はした。

ギャグ漫画じゃないんだ首の骨なんて折れたらお終いだ。畜生、守れなかったのかよ。彼女も俺も。この世界も。
「う……っ!」

「ずいぶん軟らかいじゃないか、黒いの」

 浮遊感は消え尻から地面に落ちる。打ちつけた背中などに痛みを感じ起き上がる。眼の前にはまぶしくて見えないほどに光輝く鎧。どうやらまだ終わってなかったようだ。まだチャンスはあるみたいだ何かを守る。
「待たせて済まなかった。きっちりやることはする」
 首をさする、まだ終わっちゃいない。彼女が居るなら。
「構わないさ。ヒーローって奴は遅れてくるもんだからな」
 音を鳴らしたのは黒い鎧の腕。あり得ないくらいに綺麗な音を出し肘が曲がらない方向に曲がっている。
「何故っ!」
 曲がった腕を抑え距離を取る。
 目の前に立つ白銀の鎧を纏いし彼女の眼は勝利のみを見据えて疑わない。両手で構えられた剣は防御の概念を捨て去ったのか力強く構えられている。
「どうして。すでにスクラップだったお前が」
「私は彼の剣だから、彼が私を欲するなら私は立ち上がり剣となるだろう、それだけだ」
 片腕を失い完全に不利になった黒い鎧。しかし、その眼に宿る闘争心は消えるどころかさらに強く研ぎ澄まされた。
「アルフ、やれるか?」
「無論」
 さっき打ち抜かれた脇腹からの出血は止まり赤黒くなったそれが脇腹に付着しているだけ。胴の穴は依然治っていないがへこみは消えていた。
「全く、このご都合主義の主人公め」
「鴉が死にかけていなければあのまま終わっていた。良い仕事をしたのは鴉だ」
 完全に忘れていたが俺が死にかければ。正しくは同調者が死にかけるか死ぬかすると両方共の生存本能が働き一時的に同調率を上げ通常以上の力を発揮できる。もちろん治癒能力も含めて。
「それじゃあ、行きますか。」
「応ッ!」

第一章 白銀と自己紹介と潰し合い ( No.12 )
日時: 2011/01/23 22:58
名前: 深山羊 (ID: /w7jENjD)

 短くコンクリートを蹴る音がすると白銀の剣は眼にもとまらぬ速さで黒い鎧から左腕を切り落とす、関節部分を狙ったのか、金属音は全くしなかった。
「くっ……!」
 黒い鎧は左腕を失い、これで腕はないものと同じ。白銀の一閃は瞬く間に黒い鎧を切り刻む、この時は皮肉にも金属音がこの場所を支配していた。そこにはアルフの憤怒が見て取れるかのようだ
「貴様の私に対する暴力、傷害、粉砕、その他諸々気にしていないっ!」
「なら、何をっ!」
「彼を殺そうとしたこと、彼を侮辱したこと、これだけは許さない。絶っ対にだッ!」
 斧を振り下ろすように強く、針に糸を通すように精密に、散弾銃の様により多く、大小様々な傷が黒い鎧に刻まれていく。
「……!」
 その途中もう一つの白い何かが黒い鎧に近づいた。それと同時に白の閃光は消え、剣先が白いワンピースを着た女性に付きつけられていた。
「そこをどけ」
 黒い鎧を抱きしめ小刻みに震えながらも首を横に振る。その眼には涙がうっすらと浮かんでいた。
「危ないよ。私は良いから」
「…………!」
 さらに強く抱きしめ、そのせいで切り傷から出た血により白いワンピースは赤に染まっていく。
「どけぇっ!」
 咆える様にアルフの怒声がワンピースの女性をびくつかせるが離れようとしない。
「アルフ、もういい」
 対照的に静かにそういうと
「だがしかし!」
「いいんだよ。さすがに黒い鎧の方も当分動けないだろうし、何より」
 白いワンピースを着た女性と抱きしめられている黒い鎧を見て言った。
「誰かの為に涙を流せる人が悪い人じゃないだろうし、聞きたいことも幾つかある。黒い鎧の方は知らないけどな」
 先ほどから白いワンピースを着た女性は嗚咽しながら涙を流し黒い鎧を解いた左腕のない少女を抱きしめている。
「本当に。いいのか?」
 黒い鎧は白いワンピースを着た女性を折れた右腕で撫でながら聞く。
「ああ。少し話を聞かせてもらえれば構わないさ」
「鴉!」
「いいんだ。あれは俺が勝手にしたこと、アルフがこいつを攻めるのはおかしな話だと思うが」
 アルフは剣を消して人の姿になる。その表情は苛立ち、少し怖い顔をしていた。どうやら彼女はキレると止まらないタイプの性格みたいだ。ストッパーとして俺が居ないとまずいかもしれない。
「とりあえず一番知りたいのは黒い鎧とワンピースのこの名前かな」
 出来るだけ柔和な表情でワンピースの女性に聞く、答えるのは黒い鎧だろうけど。
「彼女は萌渡真衣。私はイープシエンロン。シェンと呼べばいい」
 すんなりと答えた。
「中々物分かりのいい奴だな」
 結構さっきから虚勢を張っているがさまになっているのかおとなしくしてくれている。いや、単に眼つきが悪いからだろうか……
「こんな姿で意地を張っても虚勢。おとなしくしたがって壊されないようにするのが最善の策」
「目の前で言うなよ」
 少女の姿になっているそれは不敵な笑みを浮かべ
「構わない。余計殺しづらいだろ?」
 まあ、そうなんだけどさ。でもとりあえず
「黙れ、物を壊すのに躊躇が必要か?」
「大切なもなら」
 余計なことばっかいうとけしかけるぞ?
「壊れかけのテレビ同然の物に躊躇はいらんさ、なんならその足も切り落としてやってもいい」
「これ以上壊されたらどうしようもない。おとなしく言うことを聞こう」
「始めっからそうしとけ」
 聞きたいことは山ほどあ……。無い気もする。
「あー。セネシグ側の残りの稼働機体は何機位なんだ?」
「知りえてるのは七機。私を除いて。内私と同じ位の機体はない」
 そいつは僥倖。位は知らないが強敵だったのはまちがいない。
「三機が天使、分かりやすく言うならEクラスが3機、Dクラスが2機、Cクラスが2機で合計七機」
「アルフと同じのが二機か」
 とりあえずは簡単に死ぬことは無くなったみたいだな。
「じゃ、まぁ御二人さん」
 真衣という女性は少しおびえた様子だったので。
「デートでもどうでしょう?」
 思いのほかさらりと言えた。


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