ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 死への誘い
- 日時: 2011/08/20 19:48
- 名前: 夕海 ◆7ZaptAU4u2 (ID: MDTVtle4)
初めましてこんにちわ、[怖いよね?]の作者、夕海です。
懲りず、二作目を作った馬鹿ですいません。
まあ、私の存在自体が馬鹿ですけどね(笑
というわけでどうぞ、暖かい目で見守ってくだされば、嬉しいです(
じゃあ、頑張りますっ!
目次|注意事項
01 / シリアス、ダーク、グロ、死、猟奇的な描写が出ます、ご注意を
02 / オムニバスストーリー、短編集でございます
03 / 更新度が何度もゆーよーに、亀様並み、亀の方が早いか(
04 / 宣伝は軽ければ良いです、しかし、見るのが遅い(
05 / 荒らしや口論、苦情は受け付けませんで笑
それでは、罪深き人間の業をお楽しみあれ……
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- Re: 死への誘い ( No.7 )
- 日時: 2011/08/27 21:38
- 名前: 夕海 ◆7ZaptAU4u2 (ID: MDTVtle4)
二人の結婚は仕方ないことだ。両家の両親が決めて二人も納得し、子供も出来て幸せな婚約だと分かっている。
自分は所詮あの二人からしたら、ただの〝友達〟としか思われてないことも十分この稚拙な頭でも分かっている。
あの二人もお互い婚約者のことを満足し、もうすぐ幸せな将来が来ることも分かっている。
だけど—— 長い間、ずっと思い続けた自分が惨めに思えた。自分が祥太郎に言わないからだと分かっている。
「分かっているのに……!」
………妬みの感情が湧き出てくる。
まるで泉のように胸をだんだんと沁み出すのだ。自分勝手で自己中心であることも心の奥隅で思っている。
言葉や口では分かっていると言えど、内心は妬みと理不尽な怒りが治まらなかった。
自分が妙に馬鹿馬鹿しく感じ、被害者だと思えてきて……妬みはまだ治まらない。
水で濡らした手拭いが額の上で温くなっていた。
■
赤く染まった夕焼けが沈む夕闇のころ。お春は調子が戻り、起き上がっていた。
心配する両親を余所に、お春は長屋の外へ出た。中心にある井戸周りで女達が食事の支度をしている。
野菜を洗ったり、食器を洗ったり、あるいは洗濯をしていたりと様々な理由で井戸の周りを集って談笑している。
女達の明るく逞しい笑い声が辺りに響き渡る。
そこにある女が大根を洗いながら、隣にいる女に嘆いた声でこう言う。
「全くうちの亭主は本当にぐうたらしてて、呆れたことに今日は仕事がねぇから、と言って朝から酒を飲む始末であたしゃ、もう呆れ果てて。子供もせっかく遊んで貰おうと思ったのに、亭主が酒を飲むもんだから、すっかりと落ち込んでね。……ったく、ロクな亭主を貰ったもんじゃあないよ。あんな亭主はさ、さっさと離縁してもらって地獄にでも、遊廓でも何処にでも行って死にゃあ良いさ。あたしゃ、子供と一緒に針仕事でもしながら、慎ましく暮らしてやるよ。あたしだってね、やれば出来るんだよ。やれば」
近所の中年くらいの女だった。名はたしかお留と言ったはず。
良く母とお喋りを楽しんでいる女だ。
隣の同い年そうな女は、苦笑いしつつ、話を聞いている。
「それじゃあ、〝恨み流し〟でもすりゃ、良いじゃないかェ」
「はあ?……何だい、恨み流し、っていうのは」
不思議そうにお留は聞き返す。
女は口を吊り上げ、不敵に笑って言った。
「恨み流し、って言うのはねェ……真夜中の丑三つ時ぐらいに神社の鳥居の目の前に立つんだ。そうして目を閉じて心の中で復讐したい奴を、思い浮かべながら、一心に復讐したいと願うんだよォ。そうすりゃア、復讐を代理して復讐相手を殺してくれる奴が現れるんだってさァ。えェ、どうするんだい?………やってみる価値はありそうだねェ」
——— けらけら、と笑う女。お留は吊った苦笑いを浮かべる。
「な、……何だよ。ただの冗談じゃあないか。そんなの若い娘さんや、子供がすれば良いじゃあないか。あ、あたしゃ、絶対にお断りだよォ。そんな気味の悪い噂、なんかをね!!……全く脅かさないでおくれよ、び、びっくりするじゃないかァ………」
言語が途切れがちに言う。
見え透かしたように、女がその乾いた唇から零れた言葉は。
「もしも……あたいがしたら、どうするんだろうねェ?」
「………は………?」
お留の目が丸くなる。
「ん?……まさか、本気で信じたんじゃあないだろォねェ!?あはははっ!嫌だねェ。昔あんたの主人があんたに惚れてあたしの元から去ったという昔話はとっくの当に忘れたさ!というか、今は今の亭主で満足してるし、それにあたしゃあ、あんたの話であの人と結婚して良かったと思ってんだ。それにあんたの亭主が決めたんだからァ、あたしが何を言おうがもう意味がないじゃないかァ?………あははははっ!」
女は怪しげに笑いながら、お留の背中を叩いた。
………強く叩いたのか、お留は痛そうに背中を片手でさする。
そうしている内に、空が真っ暗になっていた。
早く帰らなければ、と—— 踵を引き返す前。お留の引きつった笑い声が聞こえた。
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- Re: 死への誘い ( No.8 )
- 日時: 2011/08/28 15:19
- 名前: 夕海 ◆7ZaptAU4u2 (ID: MDTVtle4)
町は大騒ぎだった。
この長屋に長く住んでいたお留が何者かに殺されたのだ。平和な町で起こった—— 殺人事件。何でもお留は口から血を流し、死んでたとか。
あっという間に町中どころか江戸中に知れ渡った。瓦版も連日大げさだと思えるような紙を撒き散らしながら、民衆に向かって喋り出す。
ああ、煩いな—— と何処か他人事のように思いながら、お春は大通りの隅を歩いていた。
瓦版のお陰で中央に人が集い、比較的そこ以外は空いてまばらだった。途中の茶屋で一休みする。
店主に抹茶とみたらし団子を頼み、赤い布を敷かれた長椅子に座る。
中央に人々は互いに瓦版の言うことを聞き流したり、喋り合ったり、金を出して隣人と談話したり。
ぼんやり、と眺めていると店主がうんざりしたような口調で話しかけてきた。
「まァったく、嫌なご時世になッちまったもんだねェ。お嬢さん」
そうですね、とだけ言った。店主はわざとらしく不幸を面白がるような嘆く声で、商売上がったりですよ、と言う。
事件が起こったときから、町から人気がまばらになったのだ。誰もが、辻斬りは嫌だと喚く。
……武士で辻斬りを行う輩は最近滅多にしないので犯人は怨恨からだと言う噂もささやかれてた。
「お嬢さん、はい。お待たせしやした。べらぼうに高い値打ちの抹茶をこんな値段で出したのはもう、ヤケクソですよォ。全く何処の誰だが、知らねぇが、良い迷惑なもんです。今日はお嬢さんがやっと来店した客だと言うんで半額にします。さあさ、今は真ッ昼間ですが、お帰りはお気をつけてくださいね、辻斬りはお断りですよ。ははははッ」
悪い冗談を口にし、笑いながら店の奥へ引っ込んでしまう。お春は口に団子を入れ込む。そして抹茶で喉へと流し込んだ。
ここの茶屋は初めてだからか、美味しいと感じない。不快な気分になりつつも銭を払い、茶屋を後にした。
大通りはまだ瓦版たちの大声が辺りに響き渡っている。
———煩い、煩い、煩い、煩い、煩い、煩い。
思わず両手で耳を塞いだ。
お留が殺された事件を面白おかしく捏造し解釈し面白がる。
人間とは馬鹿みたいだな、と冷めた感じで瓦版に集う人だかりを見る。
きっと、とお春は呟く。きっと——……母が落ち込んでいるだろう。
今朝、話を聞き、落ち込んでいた。かこん、と下駄が鳴る。自然と早足になり、帰路を急ぐ。
途中ですれ違った。………その人は、祥太郎だった。
思わず後ろを振り向くと、隣に心配そうな表情で寄り添う女、お桜と共に歩いていた。
そのまま一緒に、瓦版の紙を買って二人で読んでいる。
近所の人と話し合い、お互いにお留の噂をし合い、世話話をして口が動いてなくとも祥太郎の手を握った。
—— 人が死んだのに。
勝手に口が開いて恨み声のような口調になる。
—— のんきに噂して知らずにお互いを色恋を他人に見せつけて。
怒りが体を震わせる。
「あんたらは………何にも分かッちゃいやしないっ………」
低い声は決して彼等に届かなかった。
■
机に飾られている百日紅の枝。多く実るように咲き誇る花々を鋏を使って切り落とす。
机が赤い百日紅の花で埋めつかされた。遂に枝も切り落とす。両親はお留の所へ行ったのだろう、留守だった。
「私だって……私だって………私だって!!」
枝がほとんど切り落とされた。
「………やれば、出来る……出来るんだっ!!」
枝に飽き足らず、葉も切り刻む。
「…………祥太郎を結ばれるっ………のは、あたしだァ!!」
湯呑が割れた。
——— 粉々に砕け散る。
「結ばれる………のは、あたしだよ…………!」
それ以降、唇をきつく噛み締めて無言になった。
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- Re: 死への誘い ( No.9 )
- 日時: 2011/08/28 16:54
- 名前: 夕海 ◆7ZaptAU4u2 (ID: MDTVtle4)
外は月光で薄く照らされた民家や商店が戸を重苦しい雰囲気で閉じて立ち並ぶ大通り。ある娘が片隅を逃げ隠れるように走っている。
右手に持つ提灯の炎が揺れて、今にも消えてしまいそうな、頼りない光で道を灯してる。鋭く細い三日月の晩だ。
大して光らない月光を頼るのは忍びない。娘は走っていた足取りを止め、ゆっくりと歩き始めた。
「うふふ……」
娘は微笑を浮かべてた。軽やかな足取りで大通りの外れにある神社の方角へ向かう。
神社に着いた。遠い先に鳥居が見える。娘は階段を上り始めた。鳥居の前に来たころ、息が荒れ、疲れた様子であった。
しかし、鳥居の前に進み、手を合わせて目を閉じる。そこから一歩も動かない。
しばらく一心に祈っていた。すると、気配を感じた。恐る恐る目を開けたら、……少女がいた。
「あたしと契約をしたいのね。この風車を吹くと契約成立するわ。すると復讐相手は死ぬ。けど、相手の生命を奪ったからには汝もその代償を払って貰う。それでも……したいのね」
花と蝶柄の振袖を着て黒の袴を着た少女が差し出す、黒い風車をお春は受け取る。
最後に少女の無表情な眼差しを向けたまま、辺りに霧が立ち込めて少女の姿が消えた。
後に神社の境内から、冷たい夜風が頬を掠めたという。
■
明け方近く目が覚めた。昨日のは夢だったか、と落胆した時、目に映ったのは……黒い風車。驚きの余り目を見張る。
震えだす手で風車を握った。左右の横で両親はまだ寝ている。起こさないよう、静かに外へ出た。
暑い夏がもうすぐ秋めいてくる微妙な季節。葉も花も次第に朽ちてゆく中、長屋の井戸に腰かけた。
——— 昨夜の出来事はしっかりと記憶に刻まれている。
ああ、と呟いた。手に握る風車を見つめながら、考えに耽る。少女は復讐を果たす代わり、代償を払うと言った。
それは何の代償なのか、良く分からない。もしも、代償が命に関わる事だったら、と思えば気分が悪くなった。
復讐したい、という気持ちと代償を払いたくないの気持ちが複雑に絡み合って胸が痛む。
しかし、頭の片隅に浮かんだ二人の姿。
—— 私達の子供、ちゃんと育てようね。
—— ああ、そうだね。僕の可愛いややこを、さ。
お腹をさすって見遣りながら、笑う二人。
成長するまでずっと思い続けていた人が違う女と結ばれてしまった。
思いを言えず、更に彼は自分を置き去りにした。
馬鹿みたいだ。
本当に馬鹿で仕方ない。だから、もうこの方法しか残ってなかった。
思いを告げる為、もう………自分は最低で地の底まで落ちる行為をするしかない。
一粒の涙を流す。風車に当たった。風車を顔に近づけて一吹きした。
—— からら、と音を立てて風車の羽根が回る。
風車を握る手が震えていたが、しっかりと握り締めて引きつった笑みを浮かべて笑う。
「あ、はははは…………死んじゃえ、死んじゃえ、お桜なんか、死んじゃえば良いんだ」
それ以降ずっとお春は笑い続けていた。
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- Re: 死への誘い ( No.10 )
- 日時: 2011/08/30 20:10
- 名前: 夕海 ◆7ZaptAU4u2 (ID: MDTVtle4)
—— 娘はやめて、と悲願した。
しかし、少女は容赦なくそれを聞き逃した。
生温かい風が艶めいて色っぽい娘の黒髪を梳る。きちんと整った髷は振り乱れ、台無しだ。
逃げ惑う娘の行く道はどんどんと闇に近くなり、気付くと人影どころか家の明かりすらない。
だが—— 背後から迫る足音が娘を逃げ惑わせる。幾分か逃げ続けた結果、娘の前に立ち塞ぐ行き止まりの壁。
ずしんと重苦しく立ち塞いでいた。上ろうかと思考が上手く回らない頭で壁に縋りつく。
しかし、……見事に掴むところがなかった。そうして背後に迫る足音とその人影の気配を感じる。
声ならぬ声で悲鳴を上げた。それは他人から見れば小さな呻き声であり、到底人の耳に届く声ではない。
「もう、鬼ごっこは、おしまいよ」
—— 少女の声だった。まだ思春期前半と思しき身長と声からして。けれど、今の娘に十分な脅し言葉だった。
あああ、と娘は泣き崩れた。両手で顔を覆い被さって泣き叫ぶ。何を喚いてるか、もはや知る由もない。
少女の影が揺らめく。薄く細長く伸びる月光が娘の首元を映し出す。少女は細い喉を鷲掴みした。
そして、喉を強く絞めた。娘が野太い声で低く唸った。引きはがそうと手首を掴んだ。けど、振りきれなかった。
何かが折れる音がした。それは、自分の喉からしている。
………少女が娘の耳元に顔を近寄せて、小さな声で呟いた。
「悲しい生贄よ、……死になさい」
話し終えた瞬間、大きく折れた音がし、娘の呻く声が途絶えた。そして力なくその場で地面に倒れ込んだ。
口から血を流して、その大きく見開いた目は何も映さない。まるで硝子玉のようだった。
そして少女の横を淡く儚げに光る、何かが横切った。—— 魂である。娘の魂はそのまま、闇に包まれた天へと昇ってゆく。
それを少女はただ無言で見つめていた。
■
数日後、お春の元にある知らせが届いた。—— お桜が何者かにより、絞殺され、死後数日が経った状態で見つかった、と。
今度は町中が大騒ぎになっていた。相変わらず瓦版の紙は事実と異なることを書いているようでお春の気分は清々しい。
しかし、お腹に子供がいて父親になるはずだった—— 祥太郎の様子が気にかかる。
だが、今は行かないほうが良い。なんとなくそう思ったのでお春が祥太郎の元へ行くことはなかった。
数日後、まだ町中は大騒ぎ。いずれ静まるだろうと思い、大して気にしないが、祥太郎の姿を見かけない。
心配したお春が祥太郎の元へ行こうと玄関の戸を開けたら、目の前に両親がいた。
「—— お春っ!!た、大変だよ——………あそこの家の祥太郎が死んじまったよっ!!」
お桜が殺されたと聞いた祥太郎が悲しみの余り、数日間、酒を飲んでたところ、彼の両親が事故で死んだと知らせが来た。
度重なる不幸と信頼していた両親の死で気が狂った祥太郎は家に引きこもった末。
犯人も分からぬ世を怨みながら、自らの喉に刃を突き刺し、自害したとのことらしい。
知らせを聞いたお春は、その場で立ち竦んでしまった。
両親が心配し、掛け声をかけると同時に天から激しい夕立ちが降ったのだった。
細長く流れる江戸川。川辺の青々と生い茂る草花たちは、もうすぐ訪れる秋の気配で徐々に萎びれていく。
そんな川辺の土手に腰を下ろし、何処までも果てなく伸びる川を見つめながら、少女は呟いた。
——— 手に瓦版の紙を握って。
「せっかく代償を払ってまで思いを寄せる人と近づこうとしたのにね、哀れにも………台無しになっちゃったわね。だけど、彼女はそれを乗り越えようとせず、あっけなくこの川に身を投げて死んでしまった。まあ、所詮、彼女はそれだけの人ってこと」
仔猫が鳴いた。喉を掻いてやると嬉しそうに唸る。
手にした瓦版の紙を握り潰して丸め込み、川へと投げ捨てた。
「ねこ、……行こう」
少女は底なしのような薄暗い川辺の奥へと姿を無くした。
——— その後、ある女の泣き声が川辺から聞こえるという噂が立ったという。
完結
- Re: 死への誘い ( No.11 )
- 日時: 2011/09/03 22:04
- 名前: 夕海 ◆7ZaptAU4u2 (ID: MDTVtle4)
■第二章 [信じてたのに]
体が空腹を訴えている。彼女だった美央が死んで以来、何事に対しても無気力となった青年が、鈍く布団から起き上がった。もう三日もまともな食事をしていない。空腹なのは、当たり前である。彼はまだ17歳なのに、一人暮らしをしている。
親元を離れ、一人暮らししたのも、全て彼女であった美央が関係していた。
このまま死んでも良いと思うが、良く考えると両親に迷惑がかかる為、仕方なく台所に行き、冷蔵庫の中から何かを探す。
中に入ってたのは、玉子など色々とある。
面倒臭がって玉子かけご飯にしようと、玉子を一個取り出す。炊飯器からご飯をよそい、溶き玉子をご飯の中へ流し込んだ。
……食べ終えたころ、彼はまた引きっぱなしの布団へ寝転んだ。
—— 富沢幸夫、富沢幸夫に一票を!
何処の誰かの政治家が選挙する声。大音量で宣伝する内容にうんざりする。煩くて睡眠の邪魔になるからだ。
窓から射し込んでくる太陽の日差し、じりじりと肌を蝕む汗でエアコンのリモコンを探し、クーラーをつける。暇潰しにテレビをつけた。
テレビの特集は犯罪者達が刑務所の中で日々を過ごす一日を紹介する内容だった。美央の事を思い出し、……チャンネルを変えた。
■
……美央とは中学生時代の終わりころに結ばれた。
最初は受験とかで、面倒だと思ってしまったが成績優秀な美央はまめまめしく彼の勉強を面倒見し、見事お互い同じ高校に合格へと導いた。
それからというもの、彼は片時も美央の事しか考えられなくなった。両親も美央の評判を知り、微笑ましく見守ってくれる。
友人達の冷やかしや女子の軽い嫉妬でせいぜいからかわれるくらいで、二人の仲は安定し全てが順風満帆だった。
—— ただし、最近いつからか美央の陰で執拗な嫌がらせが始まった時期でもあった。
周囲の皆で犯人捜しをすれど見つからない。彼は美央の事を気にかけ、毎日メールで安否を確認し、慰めたりする。
そんな日々を過ごした、冬の寒さが一段と厳しい日だった。
美央が死んだ。
死因は鋭利な刃物で脇腹を刺され、大量出血の末のショック死だった。
犯人は現場で居たので判明した。
美央の妹、奈央だった。理由は奈央の異常な被害妄想で周囲がいつも美央ばかり注目を集め、自分は地味で何もかも美央に奪われた、と。両親の愛も友人も何かも。奈央の黒い被害妄想の末に美央は勘違いした奈央の手で16歳という生涯を突然見るも無残に打ち砕かれた。
「………美央………」
それからと言う彼は変わった。
明るく男らしい勇敢な性格が冷たく無関心な性格へと変わってしまったのである。
—— 当然、周囲は心配したが次第に彼の元から離れてしまった。
それでも、彼の冷たい眼差しが変わらなかった。
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