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人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】
日時: 2011/12/28 09:35
名前: No315 (ID: D71pwe7j)

どもども〜、No315です。

とりあえず、小説描くのは初めてではないんですが、久しぶりにも程があるのでおそらく駄文です。
よろしくお願いしま〜す。
あ、荒らしはするなよ〜





ある日の彼は思いました。
  なぜ、自分だけがこんな目に遭うのかと。

ある日の彼は思いました。
  なぜ、他の人はみんな幸せなのだろうかと。

ある日の彼は思いました。
  他の人は人生をどう感じてるのだろうと。。

ある日の彼は考えました。
  どうすればそんなことを知ることができるのだろうと。

ある日の彼は気づきました。
  そんな方法などないと。

ある日の彼は思い出しました。
  自分の今までの最悪な人生を。

ある日の彼は思いつきました。
  人生が変わった時、人はその人生をどう見直すのだろうと。

ある日の彼は始めました。
  狂ったような、人生のデスゲームを。




 第一章「始まりの日 Geme Start」
>>1 >>2 >>7 >>8 >>9

 第二章「世界のルール Game Rule」
>>13 >>14 >>15 >>16

 第三章「真実は裏側に Darkness Truth」
>>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23

 第四章「プレイヤーと日常 Everyday Battle」
>>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38

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Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.39 )
日時: 2012/01/02 00:13
名前: No315 (ID: D71pwe7j)


「ったく手こずらせやがって。すぐ終わらせてやるからさっさとくたばれよ」

 そう言って来たのは銃を構えた男。こいつが撃ってきたらしく、銃口からは硝煙が出ている。えっと「くたばれよ」の中に俺も入ってる?
 後の二人はナイフ、長剣を構え、俺達を一瞥している。俺がいるという事に疑問は持たないのだろうか。多分仲間だと思われてんのかな?
 桜木はとっくに自分の武器、両剣(へ〜両剣って間近で見るとこんなんなんだ〜今まで西洋剣とか刀とかしか間近で見たことなかったからなぁ。ま、見てきたのは全部レプリカだけど)を構え、三人に意識を集中しながらも、俺を巻き込んだ事にどう対処するべきか迷ってるようだ。俺はやれやれと肩をすくめながら桜木と三人の間に割って入る。
 具体的に言うと桜木に向けられていた銃口を自分の体で遮ったということだ。

「え?」

 俺の行動に後ろの桜木が驚いた声を上げる。三人も俺の行動に怪訝な表情で、俺の様子を伺ってるそうだ。俺はそれをよ〜く確認し、桜木の方へ振り返る。

「紅架だ」

「え? あの、えっと?」

「篠崎紅架。俺の名前な。さぁ覚えたな? ならオッケーだ。少しだけ俺に任せろ」

 俺は、一方的にそう言い、桜木にアクセサリーの品がたんまりと詰まった袋を渡し、三人に向き直る。三人はまだ俺の様子を伺ってるようだ。そりゃあそうだろう。銃を向けてくる相手に簡単に背中を向けるんだからな。まぁ、俺もいつ撃たれるか分からないからさっさと向き直ったんだが。
 俺はイフリート・フレイムを出さないまま三人へと近づく。下手に威嚇したら即死だしな。でもなんか俺のその行動がますます不審に思えたのか、威嚇射撃で銃使いの男が俺の足元に一発撃ってきた。
 やばい、少々びびった。

「あの、紅架? 彼らが狙ってるのは君じゃなくて私なんだよ? だからわざわざ巻き込まれた君が戦わなくても……」

「あー、別にお前が俺を紅架と呼ぼうが俺は桜木って呼ぶぞ」

 後ろから桜木がなにか言ってきたが俺は振り返らないまま適当に返事する。なんか今度振り向いたら後ろから撃たれそうな気がするし。後ろで「そういう状況じゃないと思うんだけど……」と桜木が呟いていたがとりあえず無視。
 俺がこんな行動を取り出したのは理由がいくつかある。まず一つはNPCがいない空間のおかげで俺がプレイヤーだという事はとっくにばれている。このまま慌てて逃げようとすればあの銃使いの男に撃たれかねない。
 二つ目。このまま逃げても桜木が逃がしてくれる可能性もあるのだが、女の子を置いて自分だけ逃げるなど男の名が廃る。
 三つ目。初撃で俺を殺そうとした。四つ目。ここを動くのが面倒臭い。
 五つ目。なんかこの三人がウザイ。
 ま、これだけ理由があれば動かない訳にもいかない。俺がゆっくりと三人に近づいて行くと、銃使いの男が銃口を桜木に向け、長剣使いの男が前に出てきた。そして長剣使いの男はただ一言。

「何者だ」

「漬物だ」

 俺、即答。
 後ろで「ズルッ」体勢を崩したような音がしたがとりあえず無視。長剣使いの男は少し眉を顰め、長剣を俺の首筋に突きつける。それでも俺は、表面上は冷静な表情で肩をすくめる。ま、内心ではものすごく脅えてる訳だけど。だいたいこの前まで俺は普通の高校生だったんだ。それがいきなりこんな状況に放り込まれて本心から全く動じるなというのがおかしい。
 それにしても、俺って答えるセリフ間違えたかなぁ。なんか俺に対する警戒心が格段に増してる気がするんだけど。俺はただこの緊張した雰囲気を紛らわそうとしただけなのに。

「とりあえず俺達はあの女を狙ってるんだ。邪魔するなら殺すが?」

 うわ怖! 無表情で「殺す」とか言われると物凄く怖い。しかも剣が突き付けられてる状態だからさらに怖い。

「なるほど。俺はあいつに荷物を預けてるんだが、それを取りに行くことは邪魔の範囲に入るのかな?」

「まぁ、そうなるな」

「あ、そう」

「それに、あの女を仕留めたらあの女が持っていた物は全て俺達の物だ」

 おいおい。そりゃあ強引すぎるだろ! と俺は突っかかろうとしたが首筋に長剣があることを思い出してどうにか抑える。

「それは少し困るな。俺の全財産をほぼ使い果たして手に入れた物なんだけど」

「いいことを聞いた。後で貰っておこう」

 やべ、言い方間違えた。実際は三千程度しかなかった金を使い果たして安物を買いまくっただけなんだが、おそらくこの長剣使いの男はものすごく貴重なお宝があると勘違いしているのだろう。失敗したぜ。
 後ろの二人を見ると、ナイフ使いの男は桜木の方に集中しているらしく、俺と長剣使いの男との会話は聞こえていないらしいが、銃使いの男はばっちり聞いており、長剣使いと同じ勘違いをしたらしく、やや嬉しそうな笑みを浮かべながら、今まで桜木に向いていた銃口をゆっくりと俺に合わせて————

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.40 )
日時: 2012/07/21 20:54
名前: No315 (ID: iGvI5nur)

「やべ!」

 俺がそこまで理解した瞬間、右斜め後ろへと飛ぶ。それと同時に俺と長剣使いの間を三発の弾丸が飛来し、それを確認しながらイフリート・フレイムを出現させる。そして神速の速さで両腕を交差させ、俺が動くと同時に追撃してきた長剣使いの攻撃を防ぐ。
 そして即座にバックステップ。軽く地面を蹴ったつもりなんだが動くと同時に俺の視界がぶれる。気付いたら桜木の隣まで来ていたし、やっぱまだ使いにくいよ『身体能力倍化』。

「え?」

 桜木は俺がいきなり隣に現れた事にひどく驚いているようで俺の方を見たまま呆然としている。俺は問答無用で桜木の手を掴み、もう一度バックステップ。一瞬で三人と大きく距離をとる。桜木が体勢を崩して俺の荷物を落としたが、まぁ今持ってても邪魔なだけだし、よしとしよう。

「俺はナイフ使いと銃使いをやる。桜木はあのリーダーっぽい長剣使いをやれ」

 俺は、距離を取ると同時に桜木に早口で言う。

「あ、えっと?」

「お前が俺を巻き込んだんだから責任とってリーダーくらい倒せ——っと!」

 俺が話している内に銃使いの男が銃を乱射してくる。俺は桜木を引っ張ったまま反復横飛びをするように左右に飛ぶ。

「でも……」

 銃の乱射が止まると、桜木がどこか戸惑ったように言う。

「あの人達は私達を殺す気で来てるけど、私にはできない。私は人を殺したくなんてないから……」

 正直、この言葉だけでこいつの性格が大体分かった気がした。こいつはまだまともな奴だ。正影のような戦いに慣れた奴でもなく、あの三人のように殺しに飢えた奴でもない。
 こんな世界に放り込まれながらも、未だに普通の日常を歩もうとしている。桜木はそんな奴のように思えた。ま、まだ初対面だから分からないけど。

「あぁ、それなら問題ない」

 俺は距離を詰めてくる三人に集中しながら桜木に笑いかける。

「俺もまだ人を殺した事なんてないし、誰も殺せなんて言ってない」

 桜木が驚いたように俺を見る。俺はそれにもう一度笑いかけ、桜木の腕を少し強く握る。

「さて、行きますか!」

 俺は桜木の腕を掴んだまま全力で三人に向けてダッシュする。当然、俺はもう速すぎて何も見えない。とりあえず三秒くらいたってから立ち止まると、予想通り三人を通り越している。三人も、俺達が消えたと思って数秒絶句しているが、長剣使いの男は勘がいいらしく、すぐ後ろを振り返って長剣を構える。
 あいつは桜木の担当。俺は高速で他の二人へと迫り、銃使いの男にタックルする。

「がっ!?」

 なるほど、俺のタックルは相当な威力だったそうで、銃使いの男は少し離れたとこまで吹っ飛ぶ。これくらいの威力だったらもう倒せたんじゃね? 隣にいたナイフ使いはいきなり仲間がやられてしばし呆然としている。やっぱり不意打ちはいいねぇ。
 後ろから長剣使いが長剣を振り下ろしてきたので防ぐべきかどうか少し迷ったが、俺より少し遅れて行動した桜木がぎりぎり間に合って、両剣で振り下ろされた長剣を防ぐ。
 長剣使いは少々目を見開き、後ろに大きく跳ぶ、桜木はそれを一度体勢を立て直すのだと勘違いし、二対一のこっちが危ないと思ったのだろうか、俺の方に加勢しようとする。
 しかし、長剣使いの男は地面に着地すると同時に足に力を込め、
 ——『筋力増強』——
 俺の『身体能力倍化』と同等の早さで桜木に迫っていき、長剣を突き刺すように構える。当然、桜木は気付いていない。

「桜木!」

 俺は叫びながら桜木に足払いを掛け、とりあえず地面に倒し、突進の射程内から外す。そしてどうやってあの長剣を防ぐか考えている内に硬直から立ち直ったナイフ使いが後ろから不意打ちしようと接近してくる。
 しかたなく俺は、もの凄いスピードで迫って来る長剣使いに正面からこちらも全速力で走る。『身体能力倍化』での全速力はそれこそ瞬間移動のような勢いで、俺は長剣使いの肩へとぶつかり、双方どこかへ飛んで地面へと転がり落ちる。

「いってぇ……」

 俺は立ち上がりながら左肩を押さえ、呻く。なんとかこの程度で済んだものの、下手したら長剣に貫かれて即死する所であった。おぉ危ない危ない。
 しかし、立ち止まってる暇はない。俺はナイフ使いへ急接近し、右腕のイフリート・フレイムを横薙ぎに振るうが、もう俺が高速移動するくらいじゃ驚かないのか、ナイフ使いの男は冷静に一歩後ろへと下がり、ナイフを構えて反撃の準備をする。
 俺はそれでも止まらず、一回転する形で左足の足払い、右腕の裏拳を繰り出す。そして、右足で地を蹴り、空中でハイキックをプレゼントする。
 足払いと裏拳を軽々と避けていたナイフ使いだが、ハイキックまでは予測してなかったのか、咄嗟に小さいナイフで防御しようとするが、俺のハイキックは易々と薄いガードをすり抜け、ナイフ使いの顔面へとクリティカルヒットする。

「よし!」

 これでナイフ使いの男は仕留めただろう。いくらハイキック一発とはいえ、イフリート・フレイムという鋼鉄の具足に近い武器を『身体能力倍化』でぎりぎりまで加速させた一発で顔面に喰らわせたのだ。気絶というものが存在しなくてもしばらく動けないだろう。
 後ろに気を向けると、体勢を立て直した桜木と長剣使いが抗戦している。この世界には、血も涙も汗もないから気付かなかったが、桜木はだいぶ疲労しているらしい、先程の甘い判断もそうだし今も少し動きが鈍い。時折なにかのスキルで無理やり動かしているが、その分、スキルを解除した時の動きが鈍くなっていってる。
 さっさと加勢しようと、俺はイフリート・フレイムを構え、タイミングを見極めるが、

「———っ!?」

 突如銃声が鳴り響き、俺の左腕が何か小さな物質によって浅く抉られた。それが銃弾だと分かったのは、左腕に張り詰めた激痛が襲ってきてからだ。
 銃声がした方を見ると、俺のロケットタックルで倒したと思っていた銃使いの男が、俺に銃口を向けていた。
 それを認識するよりも早く、銃声と右足に新たな激痛。現実では滅多に体験することのない痛みに、俺は数秒間硬直してしまう。
 その隙を殺しに慣れている奴が逃すはずもなく、銃使いの男は照準を俺の頭に合わせ、すっ、と目を細める。そしてゆっくりと引き金を引き……
 ——『精密射撃』——
 引き終わる前に、銃使いの男の、銃を持っていた右腕が、謎のエネルギーの塊によって引き裂かれる。
 切り離された右手は銃を持ったまま銃使いの男の目の前でクルクルと宙を舞い、数秒後にビチャ、と落ちると同時に、

「————うわああぁぁぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!」

 銃使いの男がようやく落ちた手が自分のものだと気が付き、ものすごい痛みによるものか、目の前にある千切れた手への恐怖なのか察しがつかない絶叫を上げ、地面を転げ回る。
 血は出ていない。しかし、千切れた肉の塊や所々に飛び散った肉の欠片はリアルに再現されており、千切れた右手の断面には、所々欠けた白い骨さえも見える。やがてそれらは数秒後に全て光の粒子となって消えていった。
 やっべ、修学旅行の時の人体博物館に行っていなかったら吐いてた。

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.41 )
日時: 2012/07/21 20:55
名前: No315 (ID: iGvI5nur)


「ったく、怪かと思って急いで来てみたら、プレイヤーかよ」

 声のした方を見ると、ビスマルクを構えた正影が「休憩所」と書かれた看板の下で堂々と立っていた。いや、急いできたって絶対そこで見物してたろ。登場するタイミングとか絶対合わせて来たろ。長剣使いの男は銃使いの絶叫に始めて戸惑いを見せ、その隙を残さず桜木が長剣を遠くに弾き飛ばす。
 すかさず俺がロケットタックルを長剣使いにおみまいし、近くにいた桜木の手を引っ張って、高速で正影の所まで移動する。

「んで、面倒だから簡潔に言うぞ。ここでそこの倒れてる奴みたいに生きたまま体を引き千切られるか、ここでこいつらを見逃すか、さっさと選べ」

 正影が言うと同時にビスマルクから発せられたエネルギーの塊が長剣使いの足元に着弾する。しかし長剣使いは武器が無いにも関わらず平然と立ち上がり、まずナイフ使いの男を起こす。

「分かった。ここは見逃しておこう。だがお前はそこの二人をどうする気なんだ? 俺達がいなくなったら自分の獲物にする気か?」

「そんなことはお前に関係ない。お前はこいつらを手放したんだ。だからお前達とこいつらの関係はもうない。だから俺がこいつらをどうしようとお前に入り込む資格なんてない」

 正影の言葉に長剣使いの男は妙に余裕な笑みを浮かべ、地面を転がっている銃使いの男を起こしながら銃を拾い、きっちり左手に握らせる。

「関係ないことは無いさ。俺達はみんな同じ、このゲームをプレイするプレイヤーなのだからな。そうだろ? 勝井正影」

 再び銃声。長剣使いの足元をもう一度エネルギーの塊が抉る。

「……俺の名前は他人に知られるような有名なものじゃない。明らかに怪しそうな演出してんじゃねぇ」

 最後に自分の長剣を拾って肩に担ぎ、ナイフ使いの男が銃使いを担ぐのを確認しながら正影と俺に視線を向ける。今まで何も感じなかった癖に、なぜかその目には見覚えがある気がした。

「では、俺達は退かせてもらうとするよ。また縁があれは会おうか」

 長剣使いの男は二人が先に行くのを見送ってからやがて自身も背を向けて歩き出す。

「そうそう。もう一つ言うことがあった」

 正影が唐突に何か言い出し、長剣使いの足が止まる。

「無表情から急に喋りだしたり、キャラがブレてんだよ。芝居するならもっとうまくやれ」

 長剣使いの男はその言葉をどう取ったのか、背を向けたまま、どこかに去っていった。

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.42 )
日時: 2012/07/21 21:00
名前: No315 (ID: iGvI5nur)


「さて、お前も敵か。始末しよう」

「違います!」

 あれ? なんでこんなことになってんだ? 確か三人が去ってから、一安心して桜木が正影に御礼を言おうと近づいたら正影が面倒臭そうに頭を掻きながらビスマルクを桜木に突き付けたんだっけ? そして桜木が必死に弁解していると。これと似たような状況を、つい最近どこかで見たような気がするのは俺だけだろうか?

「まぁ、初対面だけど悪い奴じゃないからさ。とりあえず銃を降ろしてやれよ正影」

 いつ発砲するか分からないのでそろそろ止めに入る。正影は俺と桜木をしばらく交互に見比べていたが、やがて短く嘆息し、ビスマルクを降ろす。

「え〜と、とりあえず紹介するぞ。こっちは(一応)俺の命の恩人の、勝井正影。んで、こいつは桜木優。さっきの三人に狙われてたらしいが、別に悪い奴じゃない……いきなりぶつかって人を三メートル吹っ飛ばす奴だけど」

「ねぇ、今小言で何か付け足さなかった?」

「気っのせいだべ〜」

「本当かな……」

 俺は慣れない口笛を吹きながら、ずっと放置していたアクセサリーがたんまりと入った袋を回収する。

「とにかく、危ない所を助けてくれて、ありがとう御座いました」

「そんなことはどうでもいい。どうしてお前はあの三人に狙われていた? 十秒以内に、十文字以内で答えろ。さもないと撃つ」

「……紅架ぁ〜。私この人苦手かも〜」

「馴れ馴れしい。初対面の癖にさも自分の友達のような口調で話し掛けてくるな。あと早く答えないと本当に撃ってくると思うぞ」

「えぇ!? それじゃあえっと——」

 桜木がものすごく必死に答える言葉を考えるが、俺に話し掛けてきたこともあって、既に十秒たってしまい、正影がビスマルクを容赦なく桜木に突き付ける。数えると十五秒だった気がするが、まぁいいだろう。

「はいはいストップー。そうやってすぐに撃とうとするなよな、話が進まない」

 そして俺が必死になだめる、と。そのような状況が数分間続いたが、とりあえず桜木は武器や金が目当てであの三人に狙われていたらしい。それで逃げている途中で俺と衝突。そして今に至ると。こんなこともあるんなら敵は怪だけじゃなさそうだな。これから会うプレイヤーには充分警戒心を持っておこう。

「なるほど。それはそれは災難なこった。んで、お前はこれからどうするんだ?」

「あ、えっと、とりあえずあの三人がまた狙って来るかもしれないから、できれば君達と同行したいんだけど」

「断る」

 俺、即答。

「……ふぇ!?」

 俺の返答が予想外だったのか、それとも俺の返答の速さに驚いたのか、桜木が素っ頓狂な声を上げる。

「だってさ、別に初対面だし、完全に信頼した訳じゃないからさ〜。それに、今は正影の簡潔かつ大雑把なチュートリアルを頭の中で整理するので忙しいんだ。後々、面倒な事に巻き込まれるのは御免だぞ」

「でも、私が狙われてる時に庇ってくれたでしょ。その御礼ってことで私が君達を同行させるのは……」

「あれは俺が巻き込まれたから、迅速に話し合いで解決しようとしただけだ」

「戦ってる時も、命を懸けて私への攻撃を防いでくれたでしょ。命の恩人って事で……」

「あそこでお前が死んだら俺が集団リンチされるかと思ったからな。助けたのは戦力として、かな。それにしても同行する理由が全く見当たらない会話だな」

「名前を教え合った仲でしょ!」

「ノリ」

「う〜!」

 なんか桜木が子供みたいに唸りながら俺を睨んでくる。こいつなんか子供っぽいな。
 俺の頭の中では子供っぽい=俺の妹の性格に似てる=面倒な奴、だからな。少々こいつと関わるのは避けたいものだな。

「っていうかどうして俺達をそこまでして同行させたいんだ?」

「なんとなく!」

「うぉい」

 訂正。子供っぽいじゃなく完全に子供だ。イコールものすごく面倒な奴だ。
 半ばやけくそなのか顔を赤らめて叫ぶその言葉は全く意味が分からない。だが安心しろ俺。こういう子供の扱いは昔から泣き叫びたくなるほど妹から学んでいる。
 俺は袋の中を適当に漁り、超安物の飾り付けを一つ取り出して桜木の手を取り、その手に無理やり握らせる。
 これぞ、物で手懐けるの法則。

「ふぇ?」

 桜木は、突然の俺の行動に戸惑っていたが、おそるおそる握られた手をゆっくりと開く。桜木の手に握られていた物は、小さい涙のような形をした水晶のネックレス。だいたい九百二十円程度。俺が買った中で一番高いやつだ。いくらランダムで選んだとはいえ、少しミスったと心中で舌打ちする。

「えっと……?」

「やる」

「え?」

どうやら桜木は今だに戸惑っているらしく、その隙に俺は、限界まで頭を超神速トルネード風高速ドリルエンジン全開回転(簡単に言うと頭を回転させる)させ、桜木にどんな言葉を掛ければ、この面倒臭い状況を打破し、さらに俺達の同行を諦めさせるのかを模索する。

「え〜と、コホン……残念ながら君と同行することはできません。その代わりと言ってはなんですが、そのネックレスを差し上げてやりやがりましょう。一人では辛い事が幾多も襲い掛かりやがるでしょうが、挫けそうになりやがった時はそのネックレスを大切に握ってください。我々は、そのネックレスの中であなたを優しく見守りやがります」

所々おかしくなった気がするが、桜木はそのネックレスが大層気に入ったらしく、俺のおかしなセリフにまるで気付いていない。

「ありがとう……大切にするね!」

「あぁ、大切に持っておけよ(訳:高かったんだから大切に扱えよ)」

それにしてもさっきまであんなに唸ってた癖に、ネックレスあげたら思いっ切り切り替わりやがった。ほんとに子供っぽいな。単純とも言うが。

「それじゃ、私は行くよ。二人とも気をつけてね」

「あぁ、こっちは大丈夫だから気にするな(訳:こっちは二人で充分だから気に留めるな)」

っていうかさっさと行け。俺は心の中だけで言う。
どうやら、ネックレスのおかげで俺達と同行するのは諦めたようだ。物凄く嬉しそうにネックレスを抱きながらどこかへ走り去っていく。

「あ、そうそう」

……と、思ったが、桜木が何かに気付いたように振り返り、すたすたと俺達の方に戻ってくる。

「……ちっ(訳:戻ってくるなぁあぁあぁあぁあぁ)」

 思わず舌打ちしてしまったが、どうやら桜木は気付いていないようだ。

「そういえばまだちゃんと言っていなかったね」

 桜木は俺の前で立ち止まり、かなりの至近距離まで顔を俺に近づける。

「……なんだ?(訳:そういえばこの世界にカレーとかあるのかな? リンゴがあるから存在するだろ。うん、今度探しておこう{さらに訳:もう訳ですらない})」

 俺は、なるべく早く用を終わらせるために、ただ適当に返事をする。
桜木は、そんな俺の対応に気付かないまま、顔を至近距離まで近づけた後、満面の笑みを俺に見せて——

「——いろいろ助けてくれ本当にありがとう。また会えるといいね」

「…………(訳:…………{さらに訳:呆然})」

桜木はそれだけ言うと、クルリと身を翻し、時折こちらに手を振りながらどこかへ走り去っていった。
 ……なるほど。まぁ、面倒だけど嫌いじゃないか。

「結局なんだったんだ? あのサクラギとか言う奴は」

「……さぁな」

正影は桜木が去っていった方向を見据えながら俺に聞く。俺は少し遅れて返事しながら正影と同じように桜木が去っていった方向を見据える。

「ま、いいか。そんなことより、店どうする? 俺、アクセサリーか買ってないぞ」

「ん? あぁ、そうだな」

 正影は、俺が手渡した袋の中身をと通り見る。そして返しながら俺に首を傾げ一言。

「何にする?」

「なるほど。何も思いつかないと」

 こいつは戦闘しか脳がないのか? まぁいいが。

「この飾りつけでなんとかならないのか?」

「あ〜、いろいろ加工したりして売ったら少しは高くは売れると思うが、加工なんてできないだろ」

「確かに」

んじゃ、買ってきて残念だけどアクセサリーは売り物にならないと。これらには本来の役割を果たしてもらうことになるか。それにしても売り物ね……

「……ん?」

俺はふとなにか嗅覚をくすぐられた気がして、臭いのした方を向く。どうやらそこはラーメン屋らしく、腹を空かせた商人や客達が列を並べてその店を目指している。

「……なぁ、ここってなんか食い物を売るのもいいのか?」

「ん? あぁ。一応俺の権限ならギリギリオーケーだな。ちょいと場所を変えることになるが、それがどうしたんだ?」

「いや……ちょっとな」

 ……食い物、ね。
 そのキーワードには色々と覚えがある。あまりいい思い出ではないが。俺はゆっくりと空を見上げながら、記憶の海へとダイブした。

Re: 人生ゲームはデスゲーム 【四章目開始っすな】 ( No.43 )
日時: 2012/07/21 21:03
名前: No315 (ID: iGvI5nur)

「紅架ぁ〜。私お腹すいた〜」

「黙れ」

時は四年前、つまり俺がクラスメイトから恐怖と蔑みの視線を向けられ始めた時期の事。
 場所は、ずっと記憶に焼きついている篠崎家のリビング。そこに二人の人物が居座っている。
 一人は、ソファに寝転りながら、クッションを抱き枕がわりに抱いて、呻いている少女。俺の妹である篠崎紗奈しのざきさなだ。現在小学五年生。
 もう一人は、床に座りながらテレビを眺めている中二の頃の俺。
 時刻は夜の八時。只今、母さんが仕事で帰ってこれなくなり、晩飯をどうするか決めてる最中である。もちろん父さんも仕事。今は俺と紗奈しかいない。

「いいじゃん。晩飯作ってよ〜。お腹すいたよ〜。おーなーかーすーいーたー」

「うるさい。カップ麺でも食べてろ」

「うぇ〜。それ系飽きた〜。紅架作ってよ〜。料理上手いんだし」

「誰のせいだと思ってる」

「それはおかげと言ってほしいな〜」

 紗奈がいろいろと駄々をこねるが俺は適当に返事して切り捨てる。そんな光景はもう数ヶ月前から何度も続いている。
 この頃の俺は、クラスから完全孤立させられた直後なのだが、俺はあまり感情的でもないので、顔に表すことはなく、家族には俺の学校内の状況などは、まだばれていない。
 だからこそ今でもこんな他愛もない会話ができ、家族との生活に支障はでていない。
 俺ははぁ、と深い溜息を吐きながら携帯を取り出し、母さんの携帯番号を打ち込んでコール。五秒で連絡が付く。

『はい、もしもし?』

「母さん助けて。妹に調理の強制労働をやらされる」

 こんなにも早く電話に出られるとは、本当に仕事やっているのか? と毎回疑問に思う。

『いいじゃない。作ってあげたら? 料理上手なんだし』

「だれのせいだ」

『それはおかげだと思うよ』

 妹よ、お前は母親似だ。

「はいはい、作ればいいんでしょ。作れば」

 俺は何度目かも分からないこのやり取りを早々に切り上げ、一言二言話してから電話を切る。

「……んじゃ、作るけど何が食べたいんだ?」

「ん〜と、北京ダック〜!」

「よし、カップラーメンだな」

「嘘嘘! チャーハンがいい!」

「……はぁ、少し待ってろ」

 俺はため息をつきながら立ち上がり、一人空しげにキッチンへと向かった。



「……という訳で食い物作るからこれ買ってきて」

「独り言も大概にしろ」

 俺は、そこらへんで拾った紙に、材料を書いて正影に渡す。正影は俺から紙を受け取り、それらを数秒間見つめる。そして眉を顰めながら一言。

「……何作る気だ?」

「見て分からないか?」

「……できれば冷えた白飯、肉汁がたくさんでる肉、なんかうまい卵、油(大量)、塩、コショウ、カレー粉、魚(適当なの選んできて)、ネギ、食べてしまうラー油、ハバネロ、唐辛子、火薬もしくは爆薬、チョコ、クリーム、飴、砂糖、佐藤、加藤、武藤……なにを作るか検討も付かない材料だな。後半は冗談か?」

「あぁ、佐藤と加藤と武藤は冗談だから」

「火薬は本気なんだな」

 正影は浅い溜息を吐きながら壁に張られた紙を剥がし、俺に渡す。どうやらこの街の地図のようだ。

「俺は買出しに行ってくる。その間にお前はこの大商業区の食売通りに行ってそこの責任者に許可貰ってこい。このカード見せればなんとかなるはずだからな」

 そう言って正影が俺に渡したのはご丁寧に正影の顔写真が貼られたカード。何かの証明書といったところだろう。

「了解」

 俺は短く言いながら、そのまま食売通りに向かう。正影も食材が売っている店が逆方向なのか、俺と背を向ける形で歩き出す。

「……あれ?」

 俺はふと思いついて後ろを振り返る。かなり時間が経ってからなので、当然正影はいない。

「ん〜。『食売』通りなんだから、材料もそこで売ってるんだと思うんだけどなぁ……まぁいっか」


大商業区 商売通り 休憩所

「あー、生き返るー」

 正影は、先程座っていたベンチに座りながら悠然とタバコを吸っていた。


大商業区 食売通り 管理人部屋

「断る!」

「それをどうにかしてくださいよ。僕はただ店を開きたいだけなんです」

「だめだ。権限のないものは、安全な商売をすると保証されていない。つまりそんな信用できん奴に商売をやらせてはいかんのだ!」

「そこをなんと……」

「いかん!」

「頼みま……」

「断る!」

「…………」

「だめだ!」

「あ、はい。このカードなんですけど……」

「店を出してもよいぞ!」

「うぉい」

 なんなんだここの責任者は……


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