ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Every day the Killers †7つの結晶編†
- 日時: 2012/12/02 15:40
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
初めまして鈴音(すずね)と申します!!
小説カキコでは初めての投稿となります!
まだまだ中3の未熟者ですが、温かい目で見てください……
誤字、脱字などありましたら、気軽に指摘いただくとありがたいです。
※第一部の最後の方から、斬りのいい場所がないので長くなってしまっています…
※"結晶"は、"クリスタル"と読んでください。最初の方は"結晶【クリスタル】"と、表記されてますが、途中で省略する場合がありますので注意してください(汗
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- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.95 )
- 日時: 2012/11/30 21:27
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
■□■□
『啓一!?』
急に俯いていた顔を一気に振り上げ、危うく顎をぶつけそうになったものの、ウォーカーはなんとか避け、呼びかける。案の定彼はこちらを向き、不思議そうな顔をしている。何故ウォーカーが巡の横にいるのかが分からないのだろう。当然だ。彼はまだウォーカーたちが暴風壁の向こう側にいると思っていたのだから。
「ウォーカー…………俺は…………」
『結構の暴れ具合だったよ。 まあなんとか落ち着かせたけど。 …………暴行で』
「道理で身体の節々が痛いと…………って美優!美優はどこだ!!」
必死な形相で辺りを見回し始める巡。だが美優の姿は見当たらない。目には爛々とした光が戻っているものの、やはりまだ美優に執着しているのか、目はまだ曇っている。
巡の叫びも虚しく、美優は現れない。やはり現れないか、と悔しげな顔になる巡の肩を、叩く。
「啓一君!」
「うわっ!?」
急な、しかし聞きなれた声に、驚いて肩を跳ね上げる。肩を叩いた人物は美優で、彼女は満面の笑みで巡を見ている。彼が元に戻そうと努力していた人物は、その努力を知らないとでも言う顔でニコニコと笑っている。
「美優…………? お前、一体いつから……………」
「えっとね…………、ずっと暗い空間にいたんだけど、どこからか知らない人の声が聞こえてきて…………それで、気がついたら啓一君の真後ろにいた、って感じかな?」
きっと美優が聞いた知らない人の声というのは贄武器の声だろう。ちら、と手で持っている贄武器に目を向ける。そこには柄だけが残っているはずだったが、不思議なことに刃も残っていた。
———これは……………。
贄武器のサービスなのだろうか。それは分からないが、贄武器が何らかのことをしてくれたおかげで代償なしに剣が使えるのだろう。
「あら、お友達も元に戻ったのかしら」
遠くから、風・鈴の声がする。その声に対し、巡は彼女と相対し首を縦に数度振る。これから戦うのか、と巡が問うと、意外なことに風・鈴は首を横に振った。
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.96 )
- 日時: 2012/11/30 21:31
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
■□■□
「な…………お前、戦わないつもりなのか!?」
声のトーンを少し上げる。もしかして逃げるつもりか、と脳裏に過ぎったもののぬぐい捨てる。いや、彼女はそんなことをする人———正確にいえば魔物だが———ではない。相対して、戦って分かったのだ。思ったとおり、彼女はその言葉に否定の意を見せ、そうではないと前置きをした。
「啓一君の、彼女への執着を見て思ったわ。貴方は本当に彼女を大切にしているのね。 私はそう言う人とは戦えない。戦いたくない。 だから私は降参するわ。ちょっと待ってなさい」
そう言い、風・鈴は一歩下がると目を伏せ、何やら呪文を唱え始める。すると数秒後、風・鈴を包むように風が起こり、風が薄緑色に色づいていく。
「これは……………」
皆が圧倒される中、巡はポツリと呟く。攻撃をしようとしているわけではない。しかし防御をしようともしているわけではない。一体彼女は何をしようとしているのか、巡たちは一切分からない。が、どうやら危害は加えないようだ。
光の中から声がする。風の薄緑色はどんどん色濃くなっていき、今は眩しくて直視できない。
「今から私の中の結晶を貴方に渡すわ」
その声からは、どこか物悲しそうな雰囲気と、若干だが声が震えている。その理由を悟ったのは、ウォーカーだった。
『なっ、結晶を渡すだなんて…………!! 自殺するようなものじゃないか!!』
目を見開き驚愕の表情を見せるウォーカーを見て、巡は息を呑む。まさか、自滅しようとしているのかと思い、静止の言葉をかけようとするが、なかなか掛けられない。
何故なら、今行っているのは彼女の“意思”なのだから。下手に彼女を止めるよう言ったとしても、彼女のプライドに反しますます結晶化を進めるだろう。だが、正直に言えば巡たちに最も都合のいい事でもあった。無駄な戦いをせずに、無駄な犠牲者が出ずに結晶を手に入れられるからだ。
「そうよ。…………私たちクリスタクトは自身の中に埋め込まれた結晶を取り出されては“消滅”してしまう。 それは、貴方たちも分かっているわよね、ビビジガンの時に」
最後はきっと巡に向けられた言葉だろう。現にルナヴィンとロンリーは首をかしげている。消滅とは、この世界から消えてしまうということだ。“死ぬ”と同じ意味である。
「ゆ、許さねえからな!自分が死んで貢献しようだなんて!」
巡が必死に止めるが、微かに見える風・鈴は悲しげな顔をしたまま首を横に振り続け、やめる気配はない。それどころか勢いがましてきた。
「……………!」
美優は驚いたような顔で息を呑んでいる。どこか血の気が引いている。怯えているのか、はたまた恐怖なのか。
「おいっ…………風・鈴!!」
巡はさけぶが当然風・鈴は無視し、光が一層強くなる。そして今、風・鈴は結晶になる———。
その瞬間、薄緑の風が弾ける。
「えっ…………!?」
姿を現した風・鈴は驚愕の表情でその場に立っており、巡たちも何が起こったのか分からない。ただ分かることは、風・鈴が死なずに結晶化していないということだ。
「どういうこと…………?まさか、失敗して……………」
不意に、なんの前触れもなく風・鈴が前のめりになり重力に伴って前方に倒れる。うつ伏せの状態になっている風・鈴はピクリとも動かない。気絶しているのだろうか、本当に少しも動かない。
巡も同じく硬直している中、ウォーカーが少し口を開きこう言うのだ。「風がおかしい」と。
『何だか変じゃない…………? 嫌な予感がする』
そう言った途端、髪飾りが飛んだ時と同じような豪風が皆を襲う。突然のことで、危うく胸ポケットに入れておいた髪飾りが飛びそうになったがそこを抑える。風が来た方を見れば、そこには先程まで倒れていた風・鈴が悠然と立ちはばかっており、目はどこか虚ろだ。気絶したまま無意識のうちに立っているのか。
「クリスタクトは自らの意思で結晶を体外に出すことは許されていない」
目の前の、風・鈴の口からどこか聞いたことのある声が聞こえる。それは一番最初にこの世界にきた時に聞いた声だ。そう、式也の声である。
「式也…………!?」
ずり、と一歩下がる巡。何か下手なことをされてはこちらの身が危ない。それに何故風・鈴の口から式也の声が聞こえてくるのか。
「これはクリスタクトになるための契約でね。契約を守って初めてクリスタクトになれる。無論、一般の魔物がそう易易とはなれないように契約内容はとてつもなくハードだ」
風・鈴———、いや、式也が言っていることは本当なのか。もし本当なら何故彼が知っているのか。その思いに駆られ巡は徐々に混乱していく。
「もしクリスタクトが体外に結晶を取り出した場合、自身に掛けられたリミッターが外れる」
ぶつん、と音を出して切れる式也の声と同時に、風・鈴の虚ろな目にも光がもどる。どうやら半ば操られていたようで、先程までの記憶がないらしかった。
「大丈夫か、風・鈴……………」
手を伸ばす。彼女の安否を確かめに行こうとした。
が、手は届かず伸ばした手のひらに一閃が走る。瞬時一閃が走ったところから鮮血が流れ落ち、一瞬巡の顔が苦痛で染まる。
「ぐっ……………これは…………、鎌鼬?おい、風・鈴、どうし……………」
た、とは言えなかった。風・鈴が先ほどとは比べ物にならない位の量の鎌鼬を飛ばしてきたからだ。一体彼女に何があったのか。先ほど式也———らしきものだが———が、リミッターを外すと言っていたが、そのことが本当なら彼女も何かのリミッターが外れたことになる。
『まさか……………魔力のリミッターが外れたんじゃ…………!?』
不意にウォーカーからテレパシーが送られる。彼らは先ほど風・鈴が一撃目を巡に喰らわせた時に、巡が後ろへ下がるように指示しておいたため相当ではないが背後にいる。
「魔力の…………?それが外れるとどうなるんだ」
『基本的に、魔物の強さと魔力は比例するんだ。魔力が多ければ威力が絶大な魔法も普通に使えるようになるし、魔法同士を組み合わせることもできる。逆に言えば魔力が弱い魔物は低級魔法しか使うことができない。 でも、今までのクリスタクト…………目の前の風のクリスタクトの魔力はせいぜい見積もっても中級魔法までしか使えないぐらいだったのに———』
巡は風・鈴を見る。確かに彼女から感じられる覇気は大きいものとなった。しかしウォーカーが言うまで警戒しないといけない相手なのだろうか。それともただ魔力の制御が出来ていないだけなのでは?リミッターを外すということは一時的に力の制御が出来なくなるということと同じだ。
「そこまで危険視する必要はなくないか?だってほら、ただ力の制御ができてないだけでそのうち出来るように…………」
『そんなことないよ』
巡の言葉を遮るように言い切る。疑問を浮かべている巡を一瞥し、早口でテレパシーを送る。
『この世界では力の制御ができない———たとえ一時的に制御ができないだけだとしてもだ———と、制御することは不可能に近い。そもそも力の制御ができないということは日常茶飯事、いつも起こってるわけじゃないからね』
「なんだよ、じゃあ…………、じゃあ風・鈴は俗に言う“暴走”している状態、なのか…………?」
『飲み込みが早くて助かるよ。 まあそんな感じ。だから早く元に戻してあげないと…………ッ!』
ウォーカーが言い終わる前に、大量の夥しい鎌鼬が空を切り裂く。風・鈴は自我はあるのだろうがこちらからは確認ができない。彼女が自分から率先して攻撃しているのか、それとも力に任せて身を委ねているだけなのか。
「も、戻すって言ってもどうやって———」
『選択肢は3つ。一つはある程度の攻撃を食らわせて正気に戻させる。一つは風・鈴をクリスタルごと封印する。最後の一つは…………考えたくはないけど、風・鈴から結晶を奪って彼女を消滅させる———、考えられるのはこれだけ』
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.97 )
- 日時: 2012/11/30 21:31
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
↑の話の続きです 文字数オーバーとかww
淡々と告げられる内容は、はっきり言って巡の頭の中には残っていない。ただ、最後の“消滅させる”という言葉だけは、彼の脳内をグルグルと廻っていた。
———消滅させる?風・鈴を?そんな馬鹿な、彼女は根っからの仲間思いの魔物だぞ…………?そんな、消滅させるだなんてこと…………。
「そんなこと言うんじゃねえよ、ウォーカー!! 俺はどの選択肢も使わない、俺が選択するのは4番———《口で説得する》だ!!」
そう言い、夥しい鎌鼬の中を、全速力で走り風・鈴へと近づいていく。彼女は本能的に敵が接近していると思い、鎌鼬を前方に集中させる。いつの間にか風・鈴の前には鎌鼬の壁が出来ていた。主人を守り、近づくものを拒み傷をつけさせる、そんな壁が。
『無駄だよ啓一!!彼女は自分を守るために鎌鼬で壁を作ってるんだ!自分に近寄って欲しくないんだよ!!だから啓一、諦めなよ!!』
「何だよウォーカー、珍しく引き腰じゃねーか、情けねえ。俺の同級生は必死に俺の後を着いてきてるって言うのによ!?」
『!!』
見れば、巡の背後に必死について行く美優の姿が見える。彼女は鎌鼬に当たるも自分の治癒能力を活かして今のところ怪我一つなく前へ、前へと進んでいる。その後には、臆病で知られるルナヴィンもいるではないか!ロンリーが拳法で鎌鼬を粉砕し、影でルナヴィンがロンリーの拳や脚と鎌鼬がぶつかる際に補助魔法をかけている。見事、としか言い様のない連携プレーだ。
対し自分、ウォーカーはどうだろうか。やる前から諦め、一旦ひこうとしている。時には引くことも大事なのだろうが、今はそう言う時ではない。今は、進む時なのだ。只ひたすらに進むだけなのだ。何を戸惑うことがあったのだろう。
ウォーカーは、動く。
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.98 )
- 日時: 2012/11/30 21:32
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
■□■□
かれこれ数十分が立つ。
いや、それは現実時間ではない。感覚時計ではの話だ。これ程までに疲労感を感じたことはあるだろうか。流石クリスタクト、風・鈴の鎌鼬は巡たちに休む暇さえ与えず次々と攻撃を繰り出していく。彼女は疲れ知らずなのか、済ました顔で攻撃を繰り出す。まあ鎌鼬は飛び道具だから使い手が疲れることはないだろう、と思っているだろうが、それは間違いだ。飛び道具でも物理攻撃でも、“魔法”を使うときは必ず生命エネルギーを消費するものだ。なので必ず風・鈴は疲労する、はずなのだが。
『何で……何で疲労が感じられない———?』
「いや、その考えは違うと思うよ、ウォーカー」
真横で、真剣な顔で風・鈴を見つめるルナヴィン。彼はウォーカーが思ったことを瞬時に思ったらしく、否定の言葉を出す。
『でも……僕から見て、彼女は“無限に生命エネルギーが湧き出している”ようにしか見えないんだよ、ルナヴィン……。 それに、彼女の魔力は絶大だ。アレが出来ないってことはないだろ……?』
「———まさか、そんなはずは……。だってアレは…………」
けど、信じられない、とルナヴィンは困惑したが、納得したような顔でウォーカーと顔を見合わせる。
「彼女になら……出来るかもしれない…………」
「子供が?」
「違うよ!!」
途中で乱入して、見事にシリアスな雰囲気を壊してくれたロンリーにルナヴィンがものすごい反射神経でツッコミを入れる。ウォーカーは少し面白かったのか、ぷ、と吹き出してしまう。
「おいお前ら!そっちに鎌鼬いったぞ!!」
遠くで、巡の叫び声が聞こえる。が、時すでに遅し、皆宙を見上げて目を見開きあんぐりした顔で微動だにしない。どうやら脳が動くということをやめたらしい。
ドンッ、と何かが衝突する音が聞こえた。
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.99 )
- 日時: 2012/12/02 15:40
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
■□■□
「はあー……啓一君たち頑張ってるかなあ」
暗い校内、電気もつけずに校長室で一人ため息を付く少年、いや青年がそう呟いた。
「折角啓一君のために時暗刻斬剣スパッジオ・スパーダを差し上げてあげたのになあ。話によれば、そんなに使いこなせていないようだし、逆に贄武器に飲み込まれそうになったって言うじゃないか。大丈夫かなあ。こんなんじゃ一千万年掛かってもクリスタルを集めることなんて出来そうにないけど……」
はあ、と盛大にため息を付く校長悪谷式也がそう呟く。彼は独特な黒髪を掻き毟りながら、二度目のため息を付く。
「そんなため息をこぼしてたら幸せが逃げますよー。 まあ学園長のところに幸せは元々ないですけどね」
「それ、笑いながら言うことじゃないよね?組織ちゃん」
目の前の茶髪おかっぱメガネ、もとい山我先 組織は淡々と式也から言われた言葉を返す。ただ、彼女は少し几帳面なので、式也の日本語がおかしいとちょくちょく直してくる教頭だ。
「いえ、冗談のつもりで言っているので笑って済ませてもいいかと判断いたしまして。 それで、どうなったのですか?彼、巡啓一は」
「ああ」、と思い出したかのように言葉を放つ。が、それに続く言葉がなかなか出てこず、組織は眉間にシワを寄せている。それは彼女なりの“早くしてください遅いです”サインで、最近よく見られるようになった。
「なんっていうかさあ、苦戦してるらしいのね?」
「ほう、興味深いですね。学園長が見かねたあの少年が“苦戦”するだなんて。それで?今誰と戦闘を行っているのですか?」
何げ詳しく聞いてくるよね、と式也は一言、そして机の引き出しの中から数枚の白紙プリントを取り出し、上に手をかざす。すると彼の手から紫色の炎が出現し、白紙を燃やす。炭が残る、と思いきや紙は燃えておらず、白紙上に地図が浮かび上がっていた。
「大胆すぎる炙り出しですね。そこまでして目立ちたいんですかこの不人気学園長」
「いくら教頭だからって、あんまり言い過ぎないでよー、許さないんだからっ! まあ、今彼らがいるのがウィルディンで……」
「ちょっと待ってください、“まだ”ウィルディンにいるんですか?何用で?それに、あそこは別に滞る理由もないんですけど…………まさか、学園長」
「うん、そのまさか」
ニコッ、と満面の笑みを見せる。が、その笑みには裏があるように見え、見るものを不安にさせる類のものであった。
「アレの実験をするつもりですか……。 触媒になったクリスタクトには同情せざるを得ませんね。 見たところによると、まだ発動できていないようですが……」
組織もため息を付く。最近忙しいですね、と再びため息をついてから式也の話を聞く姿勢に入る。それに加え学園長室の机の上に放置されているバインダーを持ち出し、自前のボールペンでメモを取る用意をする。
「……いいですよ、お話になられて」
と、組織が言うと、えっ、と驚いた顔をする式也。どうやら別のことを考えていたらしく、目が点になっている。そして数秒たち、やっと意味が理解できたのか、ちゃんと椅子に座りなおす。
「それでは…………」
式也は、いやらしい笑みを浮かべながら、淡々と話を切り出していった——。
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