ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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CRAZY REQUIEM
日時: 2013/02/17 21:40
名前: 蒼穹 (ID: 6fRH7Ess)

  始めまして!蒼穹と言います。

  シリアス・ダークでは初めて小説を書かせて頂きますが、どうか生暖かい(?)目で見守ってください(笑

  今回書かせてもらう、『CRAZY REQUIEM』はそのまま訳すと、「狂った鎮魂歌」って意味です。



 何故、狂っているのか。

 何故、鎮魂歌なのか。


  それは、読んで理解していただけるとうれしいです。

  基本、血みどろの話になってしまうかも、です。

  それでは、ダブルプロローグをどうぞ!


*************************************************

 【First Prologue 〜物語の幕開け〜】

  その日は、何時もとは少し違った。
  
  無限と思わせるような長い雨が、世界を灰色に染めてゆく。

  うな垂れる黒髪からは、吸いきれなかった水滴がポタポタと滴る。

  雨の冷たさなど、当に忘れてしまった。今は、もっと冷たいものが目の前にある。

 「——・・大、丈夫。私は大丈夫よ・・・」

  静かに消え入るような声は、黒髪の顔をハッと上げさせる。

 「・・ほら、そんな顔しない、で・・・」

  スッと頬を、髪を撫でるしなやかで白く細い腕は既に温もりを失いつつあった。
 
 「泣かない、で。ずっと・・笑っていて、私の分も・・あの人の分、も・・・ずっと、ずっと・———」

  スルリ、と。温もりを無くしていた手から力が抜けていく。

 「あ・・・・・」

  初めて、黒髪が口を開く。しかし、それはもう伝わらない。

  真っ赤に染まった水溜りを灰色の空がより一層鮮やかに映し出す。

 「・・・・。泣かないのか?」

  後ろから聞こえたテノールに、黒髪は振り返る。

 「・・・何故、泣かない?それとも、泣けないのか?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・お前は強い、それだけは確かだ。だが———」

  シルクハットにタキシード姿の男は、言葉を一度区切る。

 「それ以上なまでに感情が欠けている。そのままではお前は不完全な存在」

  男の言っている事が分からず、下を向く。それを察してか、男は「あぁ、すまない」と言って一礼する。

 「大切なものを、守る力が欲しいか?」

  『守る』という言葉に黒髪は顔をあげる。黒髪の紅い瞳と男の輝く金の瞳がぶつかる。

 「お前には、その資格がある。ついて来るかついて来ないかはお前次第。どうとでも決めろ」

  そう言って立ち去ろうとした男の服のすそを黒髪は掴む。

 「・・僕、は・・。もう、失いたくない。大切なものを、人を」

  黒髪の言葉に、フッと口元を緩めた男——否、青年は、

 「ならば、迎え入れよう」

  と、不敵な笑みを浮かべ、黒髪に向かってそう言った。

 
  ある日の灰色の雨の日。黒髪の幼子とシルクハットにタキシードの青年は闇に溶ける様にして姿を消した。




 【Second Pprologue 〜CRAZY REQUIEM〜】

  「狂った鎮魂歌」。それは幻想であり、故に存在するものでもある

  人々は、知らず知らずのうちに触れている。

  しかし、そんな人々の中には『狂った鎮魂歌』によって自我を失い、失った存在を求め彷徨うものがいる。

  そんな彼らの事を、「パラノイア」と呼んでいる。

  そんな彼らを異界の果て・・・つまりは、天国でも地獄でもない所に送り出す機関が存在していた。

  これは、そんな彼らの悲しくも、儚い物語—————





 >>3  登場人物紹介

 >>6  登場人物紹介2

 >>9-  第一幕 始まりの夜明け 〜Venus Oath〜

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Re: CRAZY REQUIEM ( No.21 )
日時: 2013/03/03 20:10
名前: 蒼穹 (ID: m1N/dDQG)


  大変しばらく更新をしておりませんでした・・・

  テストも終わったので、そろそろ更新を再開したいと思います!

  次回のスレッドで更新をしますー

Re: CRAZY REQUIEM ( No.22 )
日時: 2013/03/03 21:44
名前: 蒼穹 (ID: m1N/dDQG)

 (裏Side)

  チカチカと、暗闇に灯る光が点滅する。

  ひらり、蛾が一匹、その場を舞う。

  周りは面白いくらい程静かだ。お陰様で己の呼吸音がより聞こえる。

 「現在、午前0時過ぎか・・・・」

  胸ポケットに忍ばせておいた懐中時計を一見して、パタリと閉じた。

 「・・さて、そろそろ始めるとしますか———!」

  片手に握られた相棒が鈍く光った。




 「・・・あっけないなぁ、人の命って」

  くるくると鍵のついた紐を指で回しながら俺はそう吐き捨てるように言った。

  目の前に転がるはほんの少し前まで動いていたもの。

  ちらりとそいつ等に目を向けた後、呟く。

 「・・でも、こいつ等は人であって人じゃねぇか・・・」

  そう。俺が相棒で打ち抜いたのは人であって人でないもの。

  俗に、俺たちの間で〝     ”と呼ばれる異形なモノ。

  足元に散らばる朱や塊を避けながら目的である箱の前まで歩み寄る。

 「ここに来たのは、    の情報集め」 

  俺は、静かにその箱にかかっている鍵を開けた。





 「やっぱり、な。そう簡単にはデータが流出しないような仕組みになってるか」

  一つ短くため息をつき、画面を見つめる。そこには「Error」の文字。

 「(多分このパスワードを知っているのは極一部の人間のみ・・)」

  手に握られているのは一枚のカードキー。いわゆる、マスターキーと呼ばれるもの。

 「(これで解除できなかったら、流石の俺でもお手上げだぞ・・)」

  そう思いながら、カードをパソコン内のデータに取り込む。

 「アップデート率43%・・・」

  椅子に腰かけ、頬杖をついて画面を見る。

  ———アップデート率、88%




  ピピッと小さな音が鳴る。うとうとしていた意識が戻ってくる。

  画面を見れば、「アップデート完了」の文字。

  表れたファイルをクリックする。

 「これって・・・」

  開かれたファイルの中身をみて、思わず俺は絶句した。



   We complete they call is "PARANOIA".

   We name is Raven. World for this name reverberate.

   ——Whole for one wish.                





 『 我々は、完成した彼らを〝パラノイア”と呼ぼう。

   我等が名は鴉。世界の為に、この名を轟かす。

   ———全ては、一つの願いの為に。 』

  

Re: CRAZY REQUIEM ( No.23 )
日時: 2013/03/03 22:57
名前: 蒼穹 (ID: m1N/dDQG)


  まだ続きます↓



  机の上に置いてあった携帯が震える。

  書きかけの書類から一度目を外し、ディスプレイに表示された名前を見た。

 「——珍しい、な」

  思わずそう呟く。表示された名前は「炎」。通話の為に画面を一度タッチする。

 「・・・もしもし」

  久しぶりに電話越しだからか。少しカタイ声になった。

 『もしもし、斑?久しぶりだな』

  携帯を通じて聞こえてきた声は、前に聞いた時と変化がない。思わずクスリと笑ってしまう。

 「・・・炎こそ、こんな時間に一体どうしたんだ?お前らしくない」

  ——慣れ親しんだ仲だからか。つい、〝昔”の自分で話してしまう。

  手に収まる小さな電子機器から『悪かったな』と少し拗ねた様な声が聞こえた。

 「悪い、悪い。・・用件があって電話、してきたんだろ?」

  声のトーンを低くした。すぐに『あぁ』と短い返事が聞こえ、すぐに俺は〝仕事”へと頭を切り替える。

 「それで?今回はどんな情報が?」

  ゆっくりと椅子に腰かけながらも、意識は会話の中。

 『              』

  知らされた事実に、〝俺”は静かに耳を傾けた。

  ただ、それだけしかできない。今の俺には。





  静かな静寂の中。異様なほど自分の声が透き通って聞こえた。

 「——そうか、わかった。・・さすがはTSAのトップだ。」

 『褒めていただき光栄だ。だけどそれ程でもないだろ?』

  電話の向こうでかすかに笑い声が聞こえる。

 「・・炎、何かあったか?」

 『え、特に何もなかったよ』

  少し不自然な返し。俺は眉を顰めた。

 「嘘だ、お前がそうやって隠す時は何かあった時だ」

 『・・・・。何でお前にはバレるんだろうな』

  少しの間の末、炎が口を開いた。

 『今から言う事は、全て紛れもなく真実だ』




 「わかった。わざわざ言いづらい事を言わせてすまない」

 『確かに言いづらかったけど、相手がお前だから』

  「どういう意味だ」と軽く笑いを含めて言ったら、『それほど信頼出来る相手って意味』と返された。

 『・・じゃ、そろそろ切るな。まだ任務の途中なんで』

 「せいぜい、死なない程度に頑張れよ」

  もう一度、電話の向こうで小さな笑い声がして『せいぜい死なない程度に頑張るよ』と聞こえ、通話が切れた。

  通話の切れた携帯をそっと机上におき、椅子に深く体を預けるようにもたれる。

  ふと外を見れば少し白く霞んでいて。

 「もう、そんな時間なんだな・・・」

  時計の針は午前4時を指していて。

 「中々・・厄介なことになったな・・・」

  段々と薄れていく意識。多分、このまま寝たら焔とかに怒られそうだけども。

 「大丈夫、少しの間の仮眠だから・・・」

  そうして、俺は意識を手放した。

  朝、いつものように誰かが起こしに来るまでの僅かな時に身を委ねて。




Re: CRAZY REQUIEM ( No.24 )
日時: 2013/04/23 21:24
名前: 蒼穹 (ID: Ji63CujB)


(表Side)

 「・・・あ」

  小さな声が厨房に伝わる。

 「どうした、怪我でもしたか?」

  その声に、いち早く気づいた茶髪の少年——彪が駆け寄る。

 「ううん。コーヒーの豆、切らしちゃって・・」

  声をあげた少女、甍が手に持つのは普段コーヒー豆が入っているビン。

  現在その中は空っぽになっており、ほのかにコーヒーの香りがするだけである。

 「あぁ、本当だ。確かこれって、一番人気の豆だよな?」

  彪の言葉に一度小さく頷く。

 「私、買出しにいってくるよ」

  そう言うが否や。厨房の奥の部屋に引っ込んだと思ったら、ものの数分で外出用の姿で出てきた。

  その手には小さいとは言いがたいが、やや小ぶりのカバン。

  お世辞にも可愛いとは言えない変なマスコットキャラのキーホルダーがぶら下っている。

 「あ、甍。もしかして今から買出しに行く?ならさ、これもお願いできるかな?」

  ・・一体何処から現れたのか。ズイッと一枚のメモを突き出して、そう言ったのは白髪の青年。

  楽しそうにニコニコと細められた双眸からは金の瞳が覗く。

 「・・店長ぉ?こーんなか弱い女の子にこんだけの物を買ってこいと?」

  白髪の青年・・もとい、店長である斑につき返された一枚のメモ。

  そこには、本来の紙の色が分からなくなるほど品物の名前がびっちりと書いてあった。

 「・・うわぁ・・・」

  思わずそう口から出てしまうほどにびっちりと。

 「誰も一人で行けなんて言ってないでしょ。・・ほら、隣に暇そうなのが居るじゃないか」

  スッと一指し指が宙を移動し、ピタリと止まる。指の先は——俺。

 「わぁ、彪が荷物持ちになってくれるの?」

 「いや、まだそうと決まった訳じゃ・・」

 「いいじゃないか、折角だし。二人で買出しお願いね〜」

  少し遠くで声が聞こえたと思って、顔をそちらに向ければ店長は厨房の入り口に居た。・・いつの間に?

 「拒否権は・・ない、のか」

 「さ、行こっ!」

  俺の隣で楽しそうにキラキラ笑う少女を見て、思わず苦笑が漏れる。

 「・・嫌な予感がするけどなぁ・・・」

  ポツリと呟く。

  ——昔から、俺の予感はよく当たるのだ。





  

Re: CRAZY REQUIEM ( No.25 )
日時: 2013/04/23 21:58
名前: 蒼穹 (ID: Ji63CujB)


(裏Side)

 「———————・・・」

  そっと、鏡の中に映る自分に触れる。

  分かってはいたが、生身の己とは違って鏡中の自分はヒヤリと冷たい。

 「こんな所で何してるの、字」

  聞きなれた、というか自分と変わらない声。振り返らずとも声の主は目の前の鏡に映し出される。

 「———斑さんに呼ばれて。」

  一言そう言えば、納得がいったようで、双子の姉——薊は字、つまり自分の横に立った。

 「・・少し、考えたことがあるんだ」

  ポツリと静かにそう呟く。いつもはお喋りな姉もこういうのはきちんと聞いてくれる。

  その証拠に、特に何かを話すわけでもなく。

  ただ、字自身が語りだすのを待つように目を閉じて黙っている。

 「僕たちは、このままでいいのかなって。」

 「・・・・・・」

 「薊だって覚えてるでしょ、6年前のこと」

 「覚えてない、とは言わないわ」

  自分と同じ茶の瞳が静かに鏡越しに字の瞳に映る。

 「6年前、私たちは助けられた。・・ただ、それだけよ」

  淡々と薊の口から出る言葉。

  無言の圧力、とはこういうのを言うのではないだろうか。

  喉まで出掛った言葉を呑み、思わず口をつぐむ。

 「・・でも、このままじゃ終われないんだ」

  自信なさ気にそう呟いたが、薊は腕を組んで目を閉じたまま何も言わなかった。

  ———嫌なほど、時計の秒針の音が耳に響いた。
















  ———体が重い。まるで、鉛を飲み込んだみたいに。



  ぐにゃぐにゃと視界が歪んで。

  思わず倒れそうになる自身を支えるべく、椅子に片手をつく。

  椅子に片手をついて肩で息をすれば、幾分かは楽になって。

  まだ霞む目を彷徨わせながら、黒色のポケットサイズのケースを手に取り、中身を取り出す。


  ——あぁ、まただ。


  この症状はいつからだったのか。正直、よく分からない。

  しかし、“あの日”から月日が経つにつれてどんどん悪化している気がした。

 「頭が重いなぁ・・。一気に服用し過ぎたかなぁ」

  少し自嘲気味に笑えば、カラカラと渇いた喉が鳴る。実に不愉快だ。

  机上に散らばる“薬”の残骸を見れば、無機質なそれはいつもに益して毒々しく見えた。

 「もう“あの日”から何年も経つのになぁ・・・」

  人前ではけして見せない弱音を吐き、そのまま崩れ落ちるように椅子に深く腰掛ければ、急な睡魔が襲ってきて。



  ——そのまま眠りに堕ちた。


  ストン、と主人の手から滑り落ちた『ソレ』は明るくディスプレイを照らし出す。

 

  『着信: 炎 』



  と。




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