ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 魔人ラプソディ
- 日時: 2012/04/10 14:15
- 名前: sora ◆vcRbhehpKE (ID: k5KQofO8)
- 参照: http://ameblo.jp/gureryu/
始まりましたね、新学期。
桜の花びらが妙に映えて見えます。
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- Re: 魔人ラプソディ ( No.25 )
- 日時: 2012/02/21 19:17
- 名前: sora ◆vcRbhehpKE (ID: k5KQofO8)
朝は一面真っ青だった空には、昼下がりから雲がかかり始めていた。
空を覆う薄い青色の板に、綿がちりばめられている。
この学校の屋上も、私が好きな場所のひとつだ。風は鋭い冷気といっしょに心地よさを運んでくる。
ビルやマンション、家の壁などが視界をせばめてしまう道路と違って、大小さまざまの灰色の長方形を見渡せる。
何より、高い場所にいると少しだけ自分がえらくなったように感じられるのだ。
実際にはそんなことないと言われるかもしれない。
でもだったとしたら、何が偉くて何が偉くないと定義すればいいのだろう。
「少し遅かったのね。指先が冷え切ってしまったわ」
屋上の扉がきしみながらゆっくりと開いた。扉の後ろから現れた人影に私は声を投げかけた。
相変わらず彼の制服はちゃんと着込まれている。
実を言うと、第一ボタンまできっちり閉じている生徒はこの学校では彼くらいのものだ。
他の男子生徒は、首元が苦しいからといって、第一ボタンか第二ボタンまではあけている。
けれど彼はそうでもないらしい。
そんな彼は今、私の発言に対して少し困ったような表情を浮かべていた。
「そんな顔しないでもいいわよ……今日はあなたが日直だったのでしょう?」
彼は、少々むっとしたようにわずかながら眉をひそめた。
分かっていたのなら意地悪を言うな、とでも言いたいのだろうか。
もしかしたらこの少年は、私が思っているよりも表情が豊かなのかもしれない。
そんな案外人間らしい部分も手伝ってか、私はこうして彼に話しかけることに抵抗を感じずにいられる。
けれど、そのせいで未だ現実味が無いのも確かだ。
今目の前にいるこの少年が連続殺人犯で、この間など私の目の前で、人を喰うような化け物を惨殺したなんて。
ひょっとしたら他にも、いやきっと、この間のアレと同じような化け物を殺してきたのだろう。
目の前にたたずむ殺人鬼の身長は私より少し高い程度で、同年代の男子としては決して高いほうではない。
「今日も、たくさんあなたのことについて知りたいのだけれど」
手に持っていた新聞の切抜きを、再び少年の前にかざす。
連続失踪事件の、新たな被害者が出たことを伝える記事だ。
「おそらく、私のために丸一日潰す暇も無いのでしょう?
だから、一緒に行きましょう」
少年が表情を変えないところを見ると、どうやら却下するつもりも無いのだろう。
あるいはここで断ったとしても無駄だろうと察したのかもしれない。だとしたら、大当たりだ。
私のヒールが乾いた音を鳴らす。それを見届けて、少年も扉のほうへ向く。
しかし不意に少年が、何か思い至ったように立ち止まる。
彼は昨日の手帳とシャーペンを取り出すと、慣れた手つきで手帳に何か書いて、私に見せた。
整った字で、『丸一日僕を付き合わせるつもりなの?』と書かれていた。
「そんな訳ないじゃない、付き合わせるだなんて。私が付き合ってあげるのよ」
少年はひどく戸惑ったような表情を浮かべた後、なぜだか大いにため息をついた。
本当にこの少年は、表情が豊かなのかもしれない。
一方で私は、何も間違ったことなど言ってはいない。
私の日常に付き合わせたところで、平凡で平和な『いつも』が流れていくだけだ。
なので私は、非凡で異常な『いつも』を渡り歩いているだろうこの少年に付き合ってあげる。
そうすればきっと、自分もその一端に触れることが出来るだろうから。
『非凡』『異常』『非日常』。それらの単語には、私をとても惹き付ける魅力があるのだ。
それらに比べれば、新しいヘッドフォンを買う用事なんて後でも良い。
「さあ、まずはどこへ向かうのかしら?」
- Re: 魔人ラプソディ ( No.26 )
- 日時: 2012/03/01 13:24
- 名前: 朝倉疾風 (ID: 2WH8DHxb)
- 参照: http://ameblo.jp/asakura-3-hayate/
テストも終わり、参上いたしました朝倉です。
ざざざざーとコメントを返していきます。うふ。
死体が好きだ、というと悪趣味ですが
その悪趣味なものが好きなのだから、
仕方がないといえば仕方がない。
朝倉も、「検索してはいけない」 云々で
とある言葉を調べて死体の画像を見ては、
不謹慎ではありますが普通に見てます。
好奇心というか興味というか趣味というか。
ここに書いたら絶対に調べる人がいるので、
絶対に言いませんけども(*´∀`*)ノ
なにやらふたりを観察している人物が、
ミサキちゃんという方を見てよからぬことを
考えてますが…。
死体が好きだ、と言った子でしょうか。
第一ボタンか…。 朝倉はつけてないなー。
というか、ボタンがかたすぎて付けれないです。
友だちに付けてもらってますな( ´,_ゝ`)
「私が付き合ってあげるのよ」だなんて、
良い意味で自由奔放、悪い意味ではジコチューです。
これはもあう諦めなきゃだめですね。
付き合わされてもらいましょう (あれ、日本語わからん)。
なんとなくですが、アヤネが貴方に似ています。
なんとなーく、ですが。
- Re: 魔人ラプソディ ( No.27 )
- 日時: 2012/03/01 17:10
- 名前: 暁 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
どうも、暁です。
やっと更新分読んだので、コメを。
一言感想
アヤネの口調がGOTHの森野に似てる件。
更新がんばってくださいな。
- Re: 魔人ラプソディ ( No.28 )
- 日時: 2012/04/10 13:14
- 名前: sora ◆vcRbhehpKE (ID: k5KQofO8)
朝倉疾風s⇒
いつも、ありがとうございます。
彼女は、良くも悪くも自分に嘘をつかないのでしょうね。
正直者だと思います。
アヤネは確かに、僕に似ているかもしれません。
僕も、不思議なことは大好きです。
あれ、それって僕が自己中ってことなのかな。
暁s⇒
モロに、影響受けています。
大好きですもの。
あの小説のように、
人間の暗黒面を書けたらいいなと思います。
- Re: 魔人ラプソディ ( No.29 )
- 日時: 2012/04/10 14:15
- 名前: sora ◆vcRbhehpKE (ID: k5KQofO8)
僕の隣で、美鏡アヤネは目を輝かせている。
僕が来たのは、電気屋であった。幾つかの目的を持って来たのである。
一つ目は、単純に僕の家の電球が一つ切れていたことを思い出したからだ。
廊下の電球なので、つかないと微妙に困るのである。
二つ目は、美鏡アヤネのヘッドフォンのためだ。
寝ているときはともかく、どうやら彼女はヘッドフォンがないと、ずっとそわそわしている性質らしい。
見るに耐えなかった。
美鏡アヤネはあまり表情を変えない。
けれど、無表情のままでも、今の彼女は目の輝きが明らかに違って見えた。
こだわりでもあるのだろうか。彼女は、ヘッドフォンの棚を物色していた。
僕は、ひとつ電球を手に取ると、レジへ向かう。
何度か買い換えたことはあるので、買い間違えるということはないはずだ。
レジには、案の定見知った顔が立っていた。とは言っても、会話を交わしたことは殆どない。
「あ……珍しいね、学校の外で会うなんて」
畑野ミサキ。クラスメイトの少女である。
彼女はいつごろからか、左目に眼帯をつけていた。
ものもらいになってしまったのだと、以前彼女が友人に話しているのを聞いたことがある。
僕は、返事の変わりに頷いた。
畑野ミサキは微笑んだ。彼女は優しい性格だという評判がある。
ここでバイトをしていることは、彼女の友人から聞いた。
彼女は電球を受け取り、値段を読み上げる。
僕は、千円札を渡すとき、一緒に一枚の紙を渡した。
いつも使っているメモ帳のうち、一ページを切り取ったものだ。
畑野ミサキは怪訝な表情を浮かべたが、その紙に書かれていたことを見て、目を見開いた。
彼女が小さく「嘘だ」と言葉を漏らしたのは、意図的だったのだろうか。
ただ、それらは一瞬だった。
畑野ミサキはすぐにいつもの調子に戻ると、僕にレシートとつり銭を渡した。
丁寧な渡し方だ、と思った。
彼女の笑顔は、可愛らしい。丁寧な対応も、営業に向いていると思う。
その上、自分を隠し通すことに慣れているのだという。
僕は、別のレジで会計を済ませた美鏡アヤネと共に、何事もなかったかのようにその場を去った。
よほど気に入ったヘッドフォンが見つかったのか、美鏡アヤネは電気屋を出るなり、
歩きながらヘッドフォンのパッケージを開けると、説明書とパッケージを投げ捨てて、
無表情のまま至極満足そうに、ヘッドフォンを装着した。
ビニール袋は風に飛ばされて、どこかへいってしまった。
♪
頭を何か重いもので、があんと殴られたような気がした。
ふらりと私のバイト先である電気屋に現れた、あのクラスメイトの少年のせいだ。
学校で彼と美鏡さんが話していたことは、聞き間違いではなかったのだ。
けれどもっと衝撃を受けたのは、あの少年の正体だった。
もうすぐで、午後九時になる。
彼はそろそろ、この私の家へ来るはずだ。
私は、氷漬けになった両親の死体を見上げた。
両親だけではない。私の家の中には、たくさんの、氷漬けになった死体が並んでいる。
動かなくなった人形みたいだと思った。
この空間にいることが、私の幸せだった。
廊下しか電気をつけていないから、家の中は薄暗い。
私が【魔人】と【契約】を交わした、九月のあの日から、私の家の中は凍えるほどの冷気に包まれている。
私が化け物になってから、畑野家は死体倉庫に変貌したのだ。
私は、氷漬けの両親に抱きついた。
部屋の中も、両親も、冷たいはずなのに、胸の奥から熱いものがこみ上げてくるのを感じる。
どうしようもないほどに、いとおしかった。
私と【契約】した【魔人】が私に与えた【能力】は、いつまでも死体と一緒にいられる能力だった。
私はここしばらくの間、外で人を殺して、ここに連れてきては凍らせていた。
けれど、一番凍らせたい人がいた。
それが、あのクラスメイトの少年だった。
どうしてかはわからないけれど、いつも一人でクラスの中にいる、あの少年が気になっていた。
なんとなく、よく私と仲良くしてくれているクラスメイトの
『早川クルミ』ちゃんにに似ているとも思ったけれど、理由はわからなかった。
そうして、今日初めて気づいた。どうして私が彼に惹かれていたのか。
彼が私に渡した紙を見て、彼は私と同じ化け物なのだと知った。
嬉しすぎて、頭を何か重いもので殴られたような感覚がした。
化け物になってしまった自分の家に、化け物になってしまった彼はもうすぐ来る。
彼を凍らせて、永遠に私のものにしたい。ずっとずっと愛していたい。
きっと私は、彼に恋したのだ。
たぶん、歪んでいるって言われてしまうのだろう。
けど、私にはこれ以上なく、これが素敵なかたちの恋愛なのだ。
インターホンが鳴る音が響いた。私は玄関へと駆け寄った。
ドアを開いた向こうに立っていたのは、案の定、クラスメイトの彼だった。
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