ダーク・ファンタジー小説
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- 「愛されたい」
- 日時: 2013/03/14 18:24
- 名前: 哀歌 ◆wcVYJeVNy. (ID: IfRkr8gZ)
初めまして。訪問ありがとうございます。
普段は別館に出没している、哀歌と申します。
駄作ですが、読んでいただけると幸いです。
*目次*
プロローグ >>1
1話「……格好いい……」 >>2
2話 「……嘘……」 >>3
3話 「可哀想」 >>4
- Re: 「愛されたい」 ( No.1 )
- 日時: 2013/03/02 17:42
- 名前: 哀歌 ◆wcVYJeVNy. (ID: IfRkr8gZ)
プロローグ
私が好きになる人は、皆姉さんを好きになる。
小さい頃、片思いしていた近所のお兄ちゃんも。
小学生の頃、片思いしていた1つ上の少年も。
父さんや、母さんだって……
皆……姉さんを好きになった。
私は、姉さんの引き立て役。
光には、影があるように。
美人には、引き立て役が必要なの。
私は一生、姉さんの引き立て役として生きて行くんだ。
そう、それが私の運命。
きっと、この恋も叶わない。
姉さん。
お願いだからーー
もう、私の大切な人を奪わないで下さい。
- Re: 「愛されたい」 ( No.2 )
- 日時: 2013/03/04 20:59
- 名前: 哀歌 ◆wcVYJeVNy. (ID: IfRkr8gZ)
1話 「……格好いい……」
20xx年、4月。とある中学校の体育館ーー
私は、音を立てずに体育館に並べられた椅子に座った。
あと少しで、この中学校の恒例行事、部活動紹介が始まる。
それまで少し時間があるから、自己紹介をさせてもらうね。
私の名前は、安藤冷夏。
3日前にココーー味蕾中学校に入学した、ピカピカの中学1年生です。
1年1組で、学級委員をやっています。
よろしくね。
「これから、部活動紹介を始めます。校長先生のお話。校長先生お願いします」
熊みたいな先生ーー伊東祐先生が、この行事を進めるらしい。
私が小さく溜息を吐いた瞬間、小太りで背の小さな先生が壇上に上がった。小野里美校長先生だ。
彼女は独身。仕事に青春を捧げ、校長の座まで上り詰めたらしい。
彼女が家庭を持てば、きっと良い家庭になると思う。
だって、そんじょそこらに居る先生と比べればーー人相も言葉遣いも悪く、敬語も使えない先生よりは、絶対良い先生だと思う。
何時の間にか校長先生の話が終わり、野球部の紹介が始まっていた。
野球部は男子ばかりで、すごく気分が悪くなった。
次は、女バレー部。
皆、とても仲が良くて、幸せそうだった。
でも、入る気は無い。さぁ、どうしてでしょう?
その次は、ソフトボール部、男女バスケ部、卓球部、テニス部、サッカー部と続く。
運動部の最後に発表されたのは、柔道部だった。
3年生が5人。2年生が1人だけで、活動してるらしい。
「えーっと、今から40kgの里山宏大君が、90kgの近藤伸君を投げます!」
縦にも横にも大きい部長さんらしき人がそう言うと、体育館は拍手や歓声に包まれる。
体育館の空気が変わった。私がそう思った時ーー
里山宏大先輩が、近藤伸先輩を投げ飛ばした。
「……格好いい……」
私は思わず、口に出していた。
部活動紹介が終わり、家に帰っても。
お風呂に入っても。
布団に入り、眠っても。
朝、起きてもーー
胸の鼓動は収まらなかった。
- Re: 「愛されたい」 ( No.3 )
- 日時: 2013/03/14 18:20
- 名前: 哀歌 ◆wcVYJeVNy. (ID: IfRkr8gZ)
2話 「……嘘……」
翌日の放課後。
私は、柔道部に来ていた。
「……つーかぁーさぁー」
私は、クラスメイト・田宮ツカサを呼ぶ。
「……なんだ。冷夏か。何の用?」
「見学したいんだけど。……ここ、本当に柔道部?」
私は、チラリと畳を見る。
そこには、野球の真似事をしている先輩達が居た。
……ここ、野球部ですか?
「一応……待ってろ。部長呼んで来る」
「うん。待ってる」
私は、ツカサを目で追う。
一番体が大きい男性と、話すツカサ。
ツカサの方が、背が大きい。2cmくらい差がある。
「冷夏。来い」
「あ、うん」
私は、小さく頷き、ツカサの元へ走って行った。
「冷夏。自己紹介」
「えっと……安藤冷夏です。…………よ……よろしくお願いします……」
部長さんに睨まれる。怖い。
私は、ツカサの後ろに隠れる。
「あははは! 面白いね、安藤ちゃん! あのアマ……じゃなかった。千夏と違って可愛いね」
「……姉さんのこと……ご存知なんですか!?」
ぴょこんとツカサの後ろから出る。
「うん。同じクラスだったんだ。モテてたよね」
「……可哀想ですね、騙された男性」
「ちょっと待って。今……軽く「姉さんって性格悪い」発言したよね」
「何か問題でも?」
私は、にっこりと微笑んだ。
「……田宮くん。この子、意外と黒いね」
「そうなんですよ。性格メチャクチャ悪いんです」
「テメェに言われたか無いわ。田宮ツカサ」
私は、ツカサを軽く睨む。
「……よし、合格!」
「良かったな、冷夏! 今日からお前は、柔道部員だ!」
「……嘘……」
ツカサが、私の頭を撫でた。
「ちょっ……! 髪が乱れる!」
「……安藤さん?」
「……あ、部活動紹介の……!」
私の目の前に現れたのは、あの里山巧先輩だった。
私は、慌てて髪の毛を整えた。
胸の鼓動が、確実に早くなる。
「俺、里山巧。よろしくね、安藤さん!」
先輩は、お日様のような笑顔を見せてくれた。
あの時の凛々しい顔とは違う。暖かい笑顔だった。
……間違いない。
私は、里山巧先輩が好きなんだ。
- Re: 「愛されたい」 ( No.4 )
- 日時: 2013/03/14 18:22
- 名前: 哀歌 ◆wcVYJeVNy. (ID: IfRkr8gZ)
3話 「可哀想」
翌日。
学校の校舎に入り、靴箱へ向かう。
靴を履こうと上靴を持つと、手に何かが刺さった。
「またか。ワンパターンね」
クスクスと笑っているクラスメイト達を見る。
手から血が流れてきた。不思議と、痛みは感じない。
「安藤さん! どうしたの? うわ、血ぃ出てるじゃん! 大丈夫!?」
急に出てきた里山先輩が、私の手首を掴む。
「大丈夫です、里山先輩。最近、「古くて」「幼稚な」嫌がらせが多いんですよねぇ〜。人を傷つけることしか出来ないんですね。可哀想」
「本当だ。最低な奴らだな」
私の嫌味に、乗ってくれるとは。流石先輩!
「ーーとにかく、保健室行こう。黴菌が入る」
「はぁーい」
里山先輩は、私の手首を掴んだまま歩き始めた。手首が痛い。
でも、嫌な痛みじゃなかった。
すごく、幸せだった。
「……先輩、手首……」
さすがに、もう放してほしい。痛い。
「アザできてる……! ごめんね」
「いえ、大丈夫です」
私は、首を振った。
「……あのさ、いじめられてるの?」
先輩が、私の顔を覗き込む。
……きっと今、私の顔は真っ赤だろう。
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