ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

世界の破滅を僕は望む
日時: 2013/07/26 15:39
名前: @此向 (ID: q4IWVUNW)


-prologue-




雪が、降っていた。



見渡せば、いつのまにか辺り一面は真っ白に染まっている。
その白の中で一人、僕はただじっと儚げに舞う雪を眺めていた。
しんしんと降りしきる雪が、ゆっくりと視界を埋めていく。

視界が白で侵されていく不快感に目を細めると視界が朧気に歪んだ。
それは何も、雪のせいだけではない。
真っ白な世界の中、ポツンと浮いた黒い僕を嘲笑うかのように
目の前に浮かび上がる「それ」が僕の理性を粉々に打ち砕いていく。

ただ、僕は呆然と立ち尽くしていた。

現実から目を背けるように。
目の前の覆しがたい現実から逃げるように。


喉が、焼けるように熱い。
ひりついて上手く言葉が出ずに喘ぐ様にして呻く。

呼吸が出来ない。
酸素が足りないと脳が訴え、視界が、脳が、グルグルと回り始める。

「っ、ぁ、」

とてつもない嘔吐感に胸を焼かれる。
僕は一歩、前に踏み出した。

「ぁ、あぁあああぁ、」

滑稽なほど弱弱しい声が口から漏れた。

「な、んで、」


やがて、
白い、白い、白い世界に僕と「キミ」だけが浮かび上がる。


「あ、ああぁああぁああぁぁあっぁあぁあああああ!!」


堪え切れなかった悲鳴が喉から零れ落ちる。
僕は滝のように汗と涙を流しながら絶叫を続けた。


真っ白な世界で僕が独り、ただ立ちすくす。




僕の世界が崩壊した、あの日。
大切な人を失った、あの日。
過去に囚われた僕の心的外傷である、あの日。



大好きだった彼女の死をきっかけに、僕は、僕の世界は崩壊した。


そして僕は過去を引き摺ったまま、今を生きている。








あの日を未だに夢見続けながら、僕は

















—————————————————————

どうも此向シナタです。
きっと何処かでお会いした気がすると思う方も、
いらっしゃることでしょう。
本作の出だしを前も御覧になった方もいるかもしれません。
前回、同じ題名で投稿したのですが挫折してしまい、
再度書き直しとさせていただきました。
前作とは少し違う世界観を作りたいと思っております。

どうぞ、向後期待ください。      
                    @此向

Re: 世界の破滅を僕は望む ( No.1 )
日時: 2013/07/27 19:26
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: zHNOEbBz)

前回のは見たことがないですが
此向さんの文は言葉の響きが良いと思います(*^_^*)
それに文が格好いいと思いました
今作では挫折せずに頑張って下さいね(^^)

Re: 世界の破滅を僕は望む ( No.2 )
日時: 2013/07/27 21:22
名前: 華世 (ID: FDRArTRL)  

こんばんは、以前お会いした事があるような……。
間違っていなければリアの方、そして、前回の小説にコメントした気がします。
ですが、私の勘違いであったのならお詫び申し上げます。

読んでいる人を引き付ける文章だと思います。
そして表現力が素晴らしいですね。
今後に期待です。

小説を書く身、お互い頑張りましょう(^-^)
時間があればまた来ますね〜

Re: 世界の破滅を僕は望む ( No.3 )
日時: 2013/07/28 14:17
名前: @此向 (ID: q4IWVUNW)


返信

王様 ◆qEUaErayeYさん>

文の響きがいいといってくださって有難う御座います!!(土下座
格好良いなんてそんな...(震え声
ぜひ、頑張らせていただきます!!
コメント有難う御座いました!!


華世さん>

お久し振りです(感激
その通り、私は華世さんのリア友です(笑
今作品は頑張って仕上げたいと思いますのでどうぞよろしく。
お互い頑張りましょう!!


Re: 世界の破滅を僕は望む ( No.4 )
日時: 2013/07/28 15:27
名前: @此向 (ID: q4IWVUNW)


-chapter 1 -


「ねぇねぇ、最近この辺りで通り魔が出没してるらしいよ?」
「それってやばくない?夜に外出とか怖くて出来ないじゃん!」
「え、通り魔ってあの出会った人を片っ端から殺してくって奴?」
「そうそう!三日前から今日までで死者10名だってさ!」


通り魔、殺人、死者10名。
目が覚めたら何故か教室の机に寝そべって熟睡していた僕の耳に、
何やら不穏な単語ばかりが耳に入り込む。
何故ここに寝ているんだろう、とよく分からないまま寝ぼけた頭をフル回転させて、
寝る前の記憶を辿るけれど一向に思い出せず、僕は再びゆっくりと目を閉じる。

「ちょぉぉぉおおっとぉ!もう昼休みよ!?良い加減起きなさいっ!」

威勢の良い声と共に寝ていた僕の頭に軽い衝撃が走った。

「...」

無言のまま視線だけを声の方向に向けると、憤然として腕を組んだ学級委員が僕をにらみ付けていた。

「あー...、」

出来れば見たくなかった顔だな、と僕は内心ため息を吐く。
僕の所属しているこの如月高校、2年4組。
2年4組といえば何かと問題を起こす生徒が多く、学校にまつわる事件が起こると「あぁ、また2-4の生徒か」とため息をつかれる...いわゆる問題クラスである。
そんなクラスと統制しようと日々奮闘しているのがわがクラスの学級委員、井ノ川灯である。
ちなみに井ノ川はいのかわと読み、灯はあかりと読む。
気の強そうなつりあがった瞳に肩口で切りそろえられたストレート、そしてきちんと制服を着用しているあたり、まさに学級委員だと僕は一人感心する。

「僕に何の用ですか学級委員さん」

いつも通りの無感情な声で彼女に声をかける。

「何の用ですか、ですって?」

彼女はヒクヒクと口元を引き攣らせて怒気の篭った声で呟くと僕の机を勢いよく叩く。
バンッと勢いのよい音を立てて机が揺れる。
うわぁ、意外と怪力だなこの人。

「日野村くん、貴方の頭の中には何も入っていないのかしら!?珍しくちゃんと登校してきたと思ったら1限からずぅぅううーっと今まで寝てるだけ!一体何しに学校にきてんのよ!」

至近距離で説教混じりの言葉を叫ばれる。
その怒号を聞き流しながら、そーいや学校来るの久し振りかも、と辺りを見回す。
クラスの4分の2の視線が僕に突き刺さっている気がした。
半分は好奇の目、半分は奇異の目だ。
一瞬で有名人になった気分だ、と僕は内心方を落とす。

「...って日野村くん、私の話聞いてんの?」

「あー聞いてます聞いてます、すいませんでした」

微塵もそう思っていないような口ぶりでそう呟くと学級委員から本日二度目の鉄拳を頂いた。
流石に僕もやられてばかりなのは癪なので言い返そうとしたところで教室のドアが勢いよく開け放たれる。

「...井ノ川、今から緊急招集だって」

僕より感情が抜け落ちたような声が静かになった教室に響き渡る。

「っおい、氷無月だ、」
「うわマジだ、早くしまえ!!」

ドアを開け放って登場した生徒会副委員長、氷無月依更(ひなづき いさら)に教室の空気が凍りつく。
感情の感じられない凍った瞳に、バツバツと切りそろえられたロングヘアー、そして何よりその制服の腕に縫い付けられた「生徒会」の証。
この学校で唯一の恐怖の存在。
女子とは思えないほどの強さで学校を守っている番犬。
それが氷無月依更である。
さしもの男子も震え上がり、教室の後ろに非難する姿が見受けられた。

「い、いまからですか?」

井ノ川は戸惑ったように僕と氷無月を交互に見やる。
いやいや、学校の仕事より僕の成敗を選ぶなんて選択肢はないだろう。
氷無月生徒会副会長の視線が僕に動く。

「...コイツを殺ればちゃんと召集できる?」

こてん、と首を傾げて恐ろしいことを呟く彼女に後の方の男子がひぃっと悲鳴をあげていた。
いやいや、悲鳴をあげたいのは僕の方なんだけど。

「えぇええ、いや大丈夫です!!いますぐ行きます!」

焦ったように冷や汗をたらしながら井ノ川は氷無月のほうへ駆け寄る。

「...そう、」

少し残念そうに呟いて踵を返す氷無月に井ノ川はたどたどと付いていく。
...起きてから今までのやり取りで僕の精神はガタガタだよこのやろう。

ふあぁ、と欠伸をしてからもう一度目を閉じる。
開け放されたままの扉から少し寒いような風が入り込んで体を震わせる。

僕の生活にどうか平和と平穏が訪れますように。
氷無月が急に教室に現れたことと先ほど聞いた無粋な単語に不安感を募らせながら、僕は再び眠りに付いた。

Re: 世界の破滅を僕は望む ( No.5 )
日時: 2013/07/28 20:19
名前: 遊麻 (ID: PMzvo2iV)

面白いです!!

言葉の選び方がすごくいいですよね
語り手の動作や周りの空気の変化などもわかりやすかったです!
そして、最初の始まり方…
ああいう始まり方大好きなんですよね!謎があって。
興味がわくといいますか…笑

また、読みにこさしていただきます!

失礼しました))


Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。