ダーク・ファンタジー小説
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- 大罪のスペルビア(1/2追記、あとがき、Q&A有り)
- 日時: 2014/01/02 18:15
- 名前: 三井雄貴 (ID: Iohw8dVU)
人生初ライトノベルにして、いきなり長篇です。
初心者ですが厨弐病(邪気眼系の中二病はこう表記した方がそれっぽいと思っているw)をこじらせて書き上げてしまいました!
ジャンルは厨弐病による厨弐病のための厨弐病な剣と魔法の異世界ファンタジーとなっています。魔王、堕天使、七つの大罪、竜、騎士、といったベタな内容で、私の思い描く彼等を綴りました(天使や悪魔の設定は失○園など、キ○スト教関連の伝承で気に入った説を取り入れ、アレンジしています)
拙い出来で初歩的なミスも多いことでしょうが、計十二万字程度の完結までお付き合い頂ける酔狂なお方がいれば幸いです(※12/30 二十の罪で完結しました)
アドバイス、意見などお待ちしています。
あらすじ:行方不明となった眷属のベルゼブブを捜し、地獄より弟ミカエルの支配する現世へと舞い戻った魔王ルシファーが女騎士イヴと出会ったり、悪魔を使役する指環の使い手・ソロモン王権者や、堕天使となる以前より因縁の宿敵である竜族と戦いを繰り広げるお話。
登場人物
・ルシファー:七つの大罪に於ける“傲慢”を象徴せし魔王。通常時は銀髪に黒衣の美青年。“天界大戰”を引き起こし、弟のミカエルと激闘の末、地獄へと堕とされた。本気を出すと背や両腕脚より計十二枚の翼が現出し、紫の魔力光を纏う。魔力で周辺の物質を引き寄せて武器を生成するが、真の得物は悪魔による魂喰いの伝承を具現化した魔王剣カルタグラ。相手の心をカルタグラで斬って概念を否定し、存在ごと消し去る“グラディウス・レクイエム”や、前方に魔力を集束して放つ光線上の稲妻“天の雷”など破格の奥義を持つ。
・ベルゼブブ:七つの大罪に於ける“暴食”を象徴せし地獄宰相/大元帥。蝿に似た触角と羽を有する幼女の姿をしている。何かと背伸びしがちで一人称は「吾輩」。討ち果たした者の首、として多数の髑髏をぶら下げているが、重いので偽物を用いている。通称・蒼き彗星。空中戦では無敵を誇るものの、子供っぽい性格とドジなことが災いしがち。天界にいた頃よりルシファーの側近で「ご主人様」と慕っている。
・アモン:ルシファーの盟友。“屠竜戰役”こと竜族の征討を観戦していた折にルシファーの圧倒的な強さに惚れ込み、天界大戰に際しては義勇軍を率いて加勢した。見た目は渋い老女。戦いに特化するあまり、両腕は猛禽の如き翼と化し、指が刃状となってしまった。愛する人の手を握ることすら叶わなくなっても、誰を恨むこともなしに潔く今を楽しむ。奥義は怒濤の高速突きを連発する“ディメント・インクルシオ”と、両手より爆炎を噴出しながら最高速度で貫く“煉獄の業火を纏いし一閃”。さらに、リミッターを解除することで、他の武器へと上腕を変化できる。
・隻眼王ソロモン:七十二柱の悪魔を召喚、使役できる“王権者の指環”を継承せし男。左眼を対価として世界と契約、普段は包帯を巻いて隠している。力こそが野望を実現するとし、幼い子供であろうと被験体として扱う等、その為には手段を選ばない。
・イヴ:ヒロインの女騎士。英雄と讃えられた亡き父ローランに憧れ、彼の遺剣を愛用する。戦場で拾った自分を我が子として愛し、騎士としての心構えと剣技を授けたローランが悪魔に殺されたと聞いて復讐を誓い、人一倍の努力を重ね十八歳の若さで隊長となった。美人ではあるものの、女というだけで正当な評価をされないことを嫌い、言動は男勝り。
・アザミ:ヒロイン。長い黒髪の似合う十五歳の美少女だが、ソロモンと天使方による実験で半人半竜の身にされている。一人称は「ぼく」。薄幸な境遇から、心を閉ざしてしまっている。
・ミカエル:。四大天使の筆頭格。ルシファーの弟で“天界大戰”における活躍により、兄の後任として第二代大天使長となった。金髪に黒縁メガネという出で立ちで、常に微笑を絶やさない。神の力があるという武器“鞘より出でし剣”を駆使する。
・ガブリエル:四大天使の紅一点。スタイル抜群、男を魅了する美貌と思わせぶりな言動で、大人の女性に憧れるベルゼブブから嫉妬されている。“必中必殺”の弓矢を所有。狡猾で、ルシファー謀叛の黒幕であると噂される。
・大鎌のアリオト:“異端狩り”の暗殺者。フードの下は小柄な美少女だが、一人称「アリオト」で無表情、寡黙という不思議ちゃん。“Ad augusta perangusta(狭き道によって高みに)”の詠唱と共に、無数の分身を生み出す“幻影の処刑人”を発動できる。
※)追記:>>047で、あとがき及びシリーズ他作品の展開について少し触れています(ネタバレ含む)
>>048で、参考文献、最後に>>049で、ご意見に対するコメントを一部ですが、書かせていただきました。
- Re: 大罪のスペルビア ( No.45 )
- 日時: 2013/12/30 15:48
- 名前: 三井雄貴 (ID: s4axHMlC)
† 二十の罪 “大罪のスペルビア” (中)
「魔力反応が止んだから何かと思って来てみたってのに……なんなのよ、あれ」
遠巻きに眺めてイヴが呟く。
「しばらく放置するのだ」
静観する一行。
「身も心も強い兄さんが長となり、僕は二番手に甘んじ続けるのは必然だったんだ……いや、二番手すら務まらない。弱い僕は自分を守ろうとするあまり、本当に護るべきものを見失った。目的と手段を取り違えた出来損ないの弟だ」
慇懃無礼な大天使長でもなく、先程までの宿敵でもない、誰よりも近くでルシファーを支えていた頃と同じ、優しくて少し気弱なミカエルがそこにはいた。
「たとえ出来損ないであったとしても、お前は此の世に一人しかいない我が弟であることに変わりない」
兄もまた、温かな面持ちで向き合う。その言葉は、普段の冷淡なものではなく、柔らかい声色だった。
「……たった一人の家族を突き落としてしまった……闇に落ちたのは、僕の方だったんだ————」
「変わらぬな。やはり変わらない。お前は何時もそうであった。誰よりも正直であろうとするあまり、自分に嘘をつき、その葛藤を独り抱え込む。
他者に弱さを見せたくないのであれば見せなくても良い。然れど、家族ぐらいには頼っても良かろう。他人ではないのだ、云えば良い。苦しい時は苦しいと、辛い時は辛いと。そして——泣きたい時は、泣けば良いではないか。俺を頼れと、あれ程云ったと云うのに……まったく、兄不孝な弟よ」
俯く弟に、彼は穏やかに呼びかける。
「帰ろうか、弟よ。長い——回り道であったな」
「……甘いな。実に甘い————」
空気を裂くようにして、敵意のこもった声が雲間に木霊した。
「えっ……!?」
驚愕する全員。それもその筈、佇んでいる青年はルシファーに酷似していた。
「——ル、ルシファーが二人……?」
刮目して見入るイヴ。
「うーん、よく見ると違うような…………」
デアフリンガーの言う通り、異なる点が有るとすれば、黒衣の代わりに藍色の装いを纏っていることと、十二枚もの翼が漆黒ではなく、ミカエルと同様に純白であることか。
「いや、間違いない。あれもご主人様だ」
ベルゼブブの見解もまた、是であった。ただ、強いて言うなら、他ならぬルシファーその者であって、傍らにいるルシファーとは別の存在だが。
「二人とも、まったく同質、同量の魔力を持っている……でも同じ時間、同じ場に両方ともいられるってことは————」
息を呑むアザミ。
そう、悪魔たちは元を正せば天使であった。堕天した際に霊格は失われ、彼らは地獄で実体として活動している。無論、その長たるルシファーも然り。仮に、時空の彼方に霊体としての自身を置き去りにしていたのだとすれば————
「……フッ。伊達に最強の身だけあるな、貴様——否、我が身よ」
悠然と振り向くと、容貌(すがた)を同じくする男に、彼は問いかけた。
「貴様が現世(こちら)で魔王としての力を使い、世界を歪めた故我が身が魔王になる未来が絶たれてしまうではないか」
細い眉を歪める堕天使。暫し魔王となった自分(ルシファー)を見据えていたが、ミカエルに視線を移した。
「やめ——」
ルシファーが制止する間も無く、巨大な雷が放たれる。
「うがッ……!」
胸を貫かれ、倒れ伏す弟。
「ミカエル……ッ!?」
「まあ此の忌々しき者に復讐を果たせただけでも良いとしよう。魔王ルシファーよ、かの戰で我が身を貫かれておきながらも、斯様に生温い結末に甘んじた己が愚かさを怨むとせよ。尚も異なる歴史を望むのであれば、遥かなる時空(とき)を超え、己が宿命に抗うが良い!」
高らかに宣告すると、当時(あちら)のルシファーは、外套を靡かせて影と消えた。誰もが呆然と立ち尽くす中、魔王は弟に駆け寄る。
「ごめんなさい兄さん。あなたを置いていってしまう兄不孝者をお許しください」
覗き込む兄を半笑いで見上げるミカエル。止めど無く鮮血が流れ続けてゆく。
「でも、最後に話せて良かった…………」
微笑みを浮かべた口元より、深紅の雫が滴り落ちた。
「ゆくなミカエル。お前は俺の唯一の家族と云ったであろう!」
瀕死の弟を抱き締めるルシファー。
「兄さんなら大丈夫ですよ。あなたは強いから。……この剣を。彼を止められるのは——あなたしかいません」
鞘より出でし剣を手渡し、満足気に頷くと、彼は瞼を閉じる。
「ミカ……エル…………」
震える声で糸の切れた人形のように項垂れる弟を見つめたままの後ろ姿を、居合わせた者たちは見守る他無かった。
- Re: 大罪のスペルビア ( No.46 )
- 日時: 2013/12/30 20:29
- 名前: 三井雄貴 (ID: fYNkPhEq)
† 二十の罪 “大罪のスペルビア” (終)
「……決着を、つけにゆくのね」
盟友(アモン)と弟(ミカエル)を弔い、傷も癒えない内に旅立とうとした彼に、イヴは声をかける。
「然であれば如何する? 連れてはゆかぬぞ」
肩越しに流し見る魔王。
「まったく、ほんっと最後の最後まで愛想悪い男ねー」
大袈裟に溜息を吐く。
「相手は同じく大罪の傲慢(スペルビア)を司る者。平穏に事が済みはせぬであろう。巻き込む訳にはゆかぬ」
「女を一人ぼっちにする男はろくなもんじゃないわ」
そう言いつつも、彼女の瞳は呼び止める気が感じられない。
「何人も皆一人だ。己以外は他人である故な。ただ、人間は独りでは生きられない。誰とも関わらずに生きてはゆけぬ。如何なる者の物語にも他者は登場する——其れが故に、やはり人間とは面白きもの」
向き直ったルシファーに、イヴが抱き着いた。
「ばかばかばか! あなたは高慢ちきで無愛想でイヤミったらしくて、本当に挙げてったらキリがないぐらい文句を言いたいわ。……だから、だから必ずまた——会いに来なさいよね」
軽く吐息を吐くと、彼は苦笑する。
「心得た。魔王ルシファー、如何なる世に赴こうと決してお前を忘れはせぬ」
背後で拍手が鳴り響いた。にやにやと嗤うデアフリンガー、ばつの悪そうに顔を顰めるベルゼブブ、そして、見て見ぬふりをしているアザミ。
「ちょっと、あなたたち……!」
イヴが飛ぶように離れる。
「ご主人様になんてことを————」
「もー、そっちこそ何してんのよー」
「いやー、熱いとこ悪いとは思ったんだが、この童貞がどうしてもって騒ぐもんで」
「どゎーッ! なんでいつも僕のせいなんだよー」
狼狽する少年。
「……フッ、賑やかなことだ。穏やかに旅立てそうにも無いな」
口振りの割に、ルシファーの目元は嫌そうという訳でもない。
「どうしても昔の自分のとこに……?」
「此の世に偶然など存在しない、あらゆる事象には訳が有る。尤も、其れを如何様に捉えるかは其の者次第ではあるが」
彼の純粋な瞳を正視して答える。
「……デアフリンガー、此れをお前に預ける」
魔王剣カルタグラを具現させるルシファー。
「えっ……!?」
「案ずるな。堕天当時の俺は此れを持っていない。得物で劣らぬ以上、誰よりも知り尽くしている自分自身とは互角以上に渡り合えよう」
差し出されて戸惑うデアフリンガーに、そう語りかけた。
「……でもそれは魔王としての武器じゃ————」
アザミが不安気に口にする。
「我が身を魔王とせぬよう太古(あちら)に遡ると云うのに、魔王を象徴する剣を携えていては滑稽であろう。鞘は己で賄うとせよ」
心無しか、いつもより温和な眼差しで述べる魔王。
「うん! 次会う時までに使いこなせるようになってるよ」
身の丈程もある大剣を受け取ると、少年剣士は首肯した。
「良き顔だ。長老と兄の分も強くなるが良い。平和を望むのであればこそ、力を持て」
「……心得た。そっちも負けやがったら承知しないからな!」
不敵な面構えで応じてみせる。
「ご主人様ぁ……本当に一人でいってしまうの……?」
泣きじゃくるベルゼブブ。
「お前がいるが故に後顧の憂い無く旅立てると云うもの。ベルゼブブよ、地獄は任せた」
小さな頭に軽く手を置き、慰める。
「……其れと、料理の腕を磨いておけ。俺が還った折には美味なるものを食わせよ」
苦笑いと共に、付け加えた。
「アザミ。もう救いの手は差し伸べぬぞ」
イヴに気を遣って傍らに控えていた少女に歩み寄ると、微笑して告げる。
「わかってるよ。ぼくは大丈夫だから、くれぐれも無茶しないでね」
アザミは照れ臭そうに笑い返した。
「待って……!」
後ろを向きかけた黒装束に、彼女は早足で追い縋る。
「……ぼく、変われたよ。自分からこんなに生きたいって思う日がくるとは思わなかった。でも今は毎日がたのしい。きみのおかげだね」
不器用ながら懸命に伝えようとする彼女を、再び見定めるルシファー。
「我等悪魔と違い、人間は変わる。そして人間は我等と異なり永遠ではない。其れ故にこそ生きろ。此の世に二つと無き其の限りある生命(いのち)を燃やし尽くして見届けるが良い。此の世もまた——永遠であるのかを」
「うん……ありがとう」
以前の無表情とは別人のような満面の笑みでアザミは頷いた。
「では、また相見える日迄」
四人の顔をそれぞれ一瞥すると、簡潔に言い残し、ルシファーは歩き出す。
「必ず返すからなー! 取りに来いよー」
遠ざかる傷だらけの背に、デアフリンガーが叫んだ。
暫し荒野を往き、彼は徐に双唇を開く。
「……見送りは不要であると云った筈——」
言い終わるよりも先に、イヴが前方に歩み出た。
「悪い? 言い忘れたことがあっただけよ」
普段と同じく険のある物言いではあるが、その瞳は優しげである。
「難しいことは分からないけど、あなたには視えているんでしょうね。もう一つの世界の未来が——だから、あなたの創る別の世界にもし、わたしがいたら……そっちでは奥さんにしてよね」
小恥ずかしそうに打ち明けた彼女を、ルシファーは抱き寄せた。
「心得た」
そう耳元で囁くと、白い肌を紅潮させるイヴを尻目に、颯爽と立ち去る。
「……まったく、罪なお方なのだ」
遠望するベルゼブブが呆れたように呟いた。
「大罪だよ、大罪……!」
不服そうなデアフリンガー。
「……やっぱり胸の大きな女の人が好きなんだ————」
アザミは赤面した顔を覆って歩き回っている。
「ね、ねぇルシファー!」
イヴの声に、彼は再び立ち止まった。
「……元気でね————」
ルシファーは黙したまま彼女の方に上体を翻し、僅かに目尻を緩める。その横顔は、絵画などで描かれる忌々しい悪魔とは違う——美しくも力強い、そして信念に満ち溢れた目をしていた。
どこまでも果てしない世界。突き抜けるような青空を臨む人影が二つ。
「——兄さん、夢は何?」
爽やかな笑顔で金髪の天使が尋ねた。
「愛すべき此の世界を、天使を、我が瞳(め)に映る存在を——其れ等凡てを護ってゆくことだ。俺は変わらぬ、此の眼(まなこ)の視ているものを護り続ける」
その言葉に安堵したように、笑いかける弟。
「できますよ。兄さんなら、きっとできる!」
二人が眺める先(みらい)は、ただ一つの雲も無く、澄み渡っていた。
(終幕)
- Re: 大罪のスペルビア ( No.47 )
- 日時: 2013/12/31 02:23
- 名前: 三井雄貴 (ID: 0YtH4wPS)
以上です。長々と漢字ばかりの文を書き続けましたが、最後まで読んで下さった方はありがとうございます!
実は、本作は私の構想する“大罪のスペルビア”の1エピソードを圧縮したものに過ぎません。尺の都合上、割愛することになってしまいましたが、お蔵入りした話も機会があれば是非とも執筆したいです。
最後に、現時点で内容が固まっているシリーズの一部を時系列順に、軽く紹介してみたいと思います。
・ “バアル征討”
ルシファー(初代大天使長)、メタトロン(宰相)、ガブリエル、ラファエル、ミカエル、ウリエルの六柱からなる熾天使を中心とした天使方がその勢力を拡大してゆく様を描いた、最初のエピソード。
神の威光を示すため、いまだ天使方の元に馳せ参じない凶悪な邪神モロクを打倒すべき、というラファエル、ウリエルらの主張が天界を席巻していた。ルシファーは、さらなる敵に備えて戦力は温存すべき、と話し合いで解決するためモロクの森を訪問。その圧倒的な覇気で、戦わずして彼を傘下へ収めることに成功する。
版図を広げ続け、気象を司るバアル神と一触即発の事態に至った天使方。これらを屈服させるため、熾天使の一角であるウリエルが派遣された。ウリエルの軍勢はバアルと、彼に与するアシュタロトの眷属を悉く打ち破る。降伏勧告が受け入れられなかったため、ウリエル側は総攻撃を開始するも、雨と風を自在に操るバアルの前に、炎の天使であるウリエルは完封され、部隊も壊滅して作戦は断念。
ウリエルが敗れたことを受け、ルシファーが「勝者の軍門に下る」という条件で、バアルと決闘を行う。ルシファーが辛勝し、バアルはアシュタロトと共に忠誠を誓った。ルシファーは、二枚しか翼を持たぬゆえに下賤と扱われていたベルゼブブの実力を評価し、アシュタロト撃破の功で彼女を熾天使に昇格させる。
・ “屠竜戰役”
過去篇の続きで、隆盛を極める天使方の光と影に迫る。
竜王フューラーより族長の座を譲り受けた竜帝フォルテは、竜族こそが最も尊い存在であると宣言し、天使や人間の排除を掲げた。天使方は天使が至高でありながら、竜族や人間と共に生きるという姿勢をながらく保っていたが、遂に竜族と開戦。
当時まだ実績に乏しかったミカエルが先鋒を買って出るが、竜鬼ラファール率いる部隊に一蹴される。竜族を本格的な脅威と見なした天使方は、ルシファーやガブリエルをはじめとする主力を以て制圧すると決定。大規模な激戦が繰り広げられる。フォルテ自ら天使軍に大打撃を与えるが、最後は想像を超えるルシファーの力に捻じ伏せられた。
この戦により、竜族は絶滅。唯一の生き残りとされるフューラーも、行方を眩ませた。
・ “天界大戰”
過去篇の最後にして、山場となる話。
誰もが畏怖する大天使長ルシファーへのミカエルの複雑な想いは募り、いつしか兄弟は擦れ違い始めていた。ルシファーが天使方より離反を宣言したことで、二人の溝は決定的なものとなる。ベルゼブブ、バアル、アシュタロト、マモン、モロク、パイモンなどの有力な諸侯も彼に従って下野。ガブリエルを買っていたルシファーは同行を促すが、彼女は様々な理由をつけて様子見に徹する。
指導者を欠いた天使方ではミカエル、ウリエルら主戦派に対し、ルシファーの実力を理解しているがゆえに激突は回避すべきと説くガブリエル、中立ではあるが事が起これば死力を尽くして立ち向かうというラファエルなどに意見が分かれていた。その矢先、別件の罰で天界を追われた強力な智天使のベリアルとアスモデウスがルシファーと合流したと判明。これ以上ルシファー一派が強化される前に叩くべきという声が押し切り、ミカエル、ラファエル、ウリエルを含む征討部隊が出陣する。堕天使側でも、強硬論を唱える元熾天使のベルゼブブが支持を集め、戦闘に突入した。
盟友ルシファー挙兵を知ってアモンも加勢し、序盤は天使方を圧倒。堕天使たちの猛攻に、やむを得ずメタトロンも重い腰を上げる。ルシファーと同等かそれ以上の戦闘力を誇るメタトロン参戦で多くの堕天使が斃され、戦局は膠着。堕天使側は再び攻勢を仕掛けるが、乱戦の最中ミカエルとの一騎討ちで闇へとルシファーが堕とされ、戦術に乏しい残党は各個撃破された。
乱の鎮圧後メタトロンが新たな大天使長と目されるが、多くの犠牲に嫌気が差し、ルシファーを退けた戦果からミカエルを推して一線から退く。以後、メタトロンは四大天使に意見と承認を与えるだけの顧問となり、第二代大天使長に就任したミカエルの実質的な独裁政権が確立されることとなった。
・ “終焉の方舟”
後日談にあたる外伝。
本作の六年後、デアフリンガーは、旅の途上で地下闘技場に立ち寄った。無敵を誇る仮面の女賞金稼ぎと対決し、逞しい青年剣士に成長した彼はこれを下す。その剣技から彼女の正体がイヴだと見破り、再会を喜ぶデアフリンガー。ふと訪れた教会で不思議な悪魔たちとの思い出に浸る彼らは、歪められた悪魔の真実を少しでも伝えようと修道女となっていたアザミに出くわした。重なった偶然は“世界の理”による導きではないかと思案する二人に、次期ソロモン王の座をめぐる政争に敗れた宗教勢力の指導者パストール卿が懇意であった軍部を頼って悪魔ベリアルを召喚しようと計画しており、自分も儀式に同行させられると彼女は明かす。
ルシファーならどうするか考えたデアフリンガーとイヴは、降霊が実施されるという艦隊の旗艦に潜入。ベリアル復活を阻止すべく、彼らは徹底抗戦を決意する。多勢に無勢、二人は捕縛され、遂に絶望と共にベリアルが降り立った。
同じ頃、デアフリンガーの預かっていた魔王剣カルタグラを触媒に別の悪魔も現世へと姿を現し、海軍大臣と接触する。圧倒的なベリアルの力を召喚者であるパストールも御することが敵わず、誰もが覚悟した時、魔王ルシファーが燃え盛る甲板に舞い降りた。
対峙する両悪魔。一方、解放されたデアフリンガーは、船の最深部でパストールの娘という不思議な少女を見つける——新時代の方舟が齎すものは光か、それとも闇なのか……世界の命運は彼らに委ねられた。
- Re: 大罪のスペルビア(12/30追記、あとがき有り) ( No.48 )
- 日時: 2013/12/31 11:11
- 名前: 三井雄貴 (ID: Th22uItU)
Special Thanks
本作を執筆するにあたり、多くの文献を参考にさせて頂きました。この場を借りてお礼を申し上げます。
・ジョン・ミルトン「失楽園」
・ダンテ・アリギエーリ「神曲」
・宝島社 「天使・悪魔・妖精イラスト大事典EX」
・西東社 「天使・聖獣と悪魔・魔獣」
・新紀元社 「幻想ネーミング辞典」
・山北篤 「ゲームシナリオのためのファンタジー事典 知っておきたい歴史・文化・お約束110」
- Re: 大罪のスペルビア(12/31追記、あとがき有り) ( No.49 )
- 日時: 2014/01/02 18:10
- 名前: 三井雄貴 (ID: Iohw8dVU)
P.S.
あけましておめでとうございます!
元旦は秋葉原から徒歩で押上を回って「スカイツリーって前から思ってたけど1930年代以前のアメリカ戦艦の籠マストに似てるよねー」などと言いながら、なんだかんだで渋谷まで数時間かけて歩いてしまった作者の三井雄貴です。
本作を読んだと家族、小学校から大学時代までの友人から言っていただけたり、メールが来るのが嬉しくて、励みになりました。本名でやっていて良かったと実感です。
最後に、よく頂いた意見や質問などに出来る限り答えてゆきます!
・「漢字多くない?」
> 仰せの通り、漢字が多い作風です(笑)
当て字も中二病らしくて大好きなので多用しています。
・「神様は出さなかったんだー」
> キリ〇ト教徒ではありませんが、名前が四文字のあのお方は安易に登場させない方が良いと判断しました。新人賞に応募できる文字数では、天使の上位に神というボスを用意すると上手くまとめられるか怪しいという懸念もありますが……笑
まあこれによりルシファーが最強クラスになってしまいました。最初はいわゆる“俺TUEEE系”とは似て非なるものを目指しており、主人公は強いけど他のキャラクターも実力者が多い路線だった訳ですが……苦笑
元々7人いた異端狩り最高峰の通称“断罪の七騎士”も3人しか描けず、特にルシファーの好敵手と予定されていた双剣の使い手もボリューム関係の犠牲となってお蔵入りしてしまったのは悔やまれます。
・「ライトノベルって普段は読まないんだけど、なんかBGMで推奨みたいなのってある?」
> アニメやPCゲームも好きなので、シーン毎にBGMを考えるのも楽しんでいます(笑)
やはりファンタジーなので、妖精帝國さん、Sound Horizonさん、ALI PROJECTさん、Kalafinaさん、などといったアーティストの曲と親和性が高いと思いたいです。剣と魔法ということで、戦闘シーンはシンフォニックメタル、メロディックスピードメタル、ネオクラシカルメタル系のジャンルと相性が良さそうだと感じます。
回想シーンはクラシックでも合うかもしれません。ベタですが、汎用性に定評のある、ベートーベンの月光を推したいです。
・「次はどういうの書こうと思ってるのー?」
> しばらく異世界ファンタジーからは離れて、近未来の日本を舞台に裏政府や組織が暗躍する作品を構想しています。結局は中二病っぽい作風です(笑)
今年も宜しくお願いします!
三井雄貴