ダーク・ファンタジー小説

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【紫電スパイダー】
日時: 2014/02/20 22:57
名前: 紅蓮の流星 (ID: 1T0V/L.3)

*



「興味が無い、金も命も」
「ただ俺が楽しければそれでいい」



紫電スパイダー

【挨拶】>>15

【本編】>>16(New!!)

Re: 【紫電スパイダー】 ( No.32 )
日時: 2014/03/14 23:50
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: y1N6F4if)

夕衣さん→
コメントありがとうございます。
かくかくしかじかでしばらく
カキコを離れていましたが、
この度また書かせていただくことになりました。
彼等の戦闘とカッコよさを描写出来ていれば
幸いです。
更新頑張らせていただきます。

大関さん→
コメントありがとうございます。
お久し振りです。
オリキャラはどうでしょう(´・ω・`)
正直まだ検討中です。
更新頑張らせていただきます。

Re: 【紫電スパイダー】 ( No.33 )
日時: 2014/03/26 04:09
名前: S ◆vEK4Ux2NDY (ID: TAwMR6Xu)

こんにちは
紅蓮の流星さん、覚えてらっしゃいますか?
2010もしくは2011に旧紫電スパイダーのスレッドに書き込ませて頂いた、Sです
旧紫電スパイダー、ブラッドエッジなどの作品は読んでおりましたので、スレッドが消えた時のショックは大きかったですw
その時は殿堂の方に乗っていたので、ひとまず安心しました 今でも時々読ませていただいております
紫電スパイダーで検索したところ、ここのスレッドが出ました
紫電スパイダーのリメイク作品・・・
旧作では紫苑君と一馬君は戦ったことはなかったはずですが、序章から戦ってますね しかも一馬君の目標が紫苑君を倒すこと・・・ 紫苑君を倒せるのなら叢(?)さんは軽く倒せるのでは?
私の中では旧作から最強=紫苑君というイメージがあります
何と戦っても紫苑君が勝ちそうです
一馬君はどうなるのか、
更新がとても楽しみです 頑張ってください
それでは

Re: 【紫電スパイダー】 ( No.34 )
日時: 2014/03/26 14:36
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: VB7Q11rn)

Sさん→
こんぬずわ。覚えてまするよ。
以前は書き込みありがとうございました。
失踪に関しては深くお詫びします。
ブラッドエッジもいずれリメイクします。
大幅なリメイクになりますが……。

今作もシオンが最強というコンセプトは
変わりませんが、今回は一馬をはじめとした
彼を取り巻く人々のドラマに焦点を
当てていきたいなと思います。

はてさて、最後に勝つのは一馬か、シオンか。
コメントありがとうございます、
これからも頑張らせていただきます。

Re: 【紫電スパイダー】 ( No.35 )
日時: 2014/05/14 19:55
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: 3dpbYiWo)




   5



 黄河一馬がザイツェフ・エストランデルに啖呵を切った三日後、パンドラという店は潰れた。
 あの荒くれ者たちも、スキンヘッドのバーテンも、憎き悟堂巌さえもが皆——砕かれ、ひしゃげ、千切られ。
 血液と臓物と人骨で、赤黒く前衛的に彩られ。



 連日にぎわうワイドショーでは「暴力団同士の大規模な抗争」だとか「客同士の諍いが発展して、誰かがイグニスを使用した結果」だとか「単なる痴情のもつれ」だとか憶測が飛び交っている。
 スペルビアという単語こそ出ては来なかったものの、専門家と名乗る若い青年が一人、こんなことをテレビで話していた。
 全国各地の繁華街には、賭場が隠されている。そこは暴力とイグニスをぶつけ合い、勝敗を決める場所。そんな都市伝説がある——と。
 そして犯人は筋骨隆々で、2メートルもある大男で、肌は浅黒く、山の熊みたいな髭をぼうぼうと生やし、眼光は血走った野獣の目みたいだとかと言われていた。
 結局のところ、誰も真相に近づけてなどいない。
 今日も今日とてシブヤセントラルシティが誇る巨大モニターは、センセーショナルで耳当たりの良いヘッドラインを垂れ流すだけ。

「ぷっぷっぱーら、ぷっぷっぱーら。らったー、るっぷっぷっぷぱらっぱっぱるっぷーぱーらぱっ。ぷっぷっぱーら、ぷっぷっぱーら。らったー、るっぷっぷっぷぱらっぱっぱるっぷーぱーらぱっ」

 夜空の下。雑踏の中。少女が歩いていく。

「ぴりぴりぴりぴりぱすたるたん。ぴりぴりぴりぴりぱすたるたん。ぴりぴりぴりぴりぱすたるたん。ぴりぴりぴりぴりぱすたるたん」

 雪のように白く絹みたいに繊細な髪を、自らの背丈ほども伸ばした少女だ。肌も髪と同様に白く、整った顔立ちと相まって人形のよう。黒いワンピースを身に纏っており、両脚には靴の代わりに包帯が巻かれている。白と黒のコントラストだけで構成されたような少女は、瞳と首元のリボンだけが鮮血のように紅い。
 この辺りは、奇抜なファッションを自慢げに見せつけて練り歩く若者も多い。しかしそれらと比べても尚浮くほど、少女の異質は際立っていた。通りすがる人々が皆、その美しさと奇妙さに一度は振り返る。

「もうどうっでもいいじゃんって、切り捨てコギャル。マゴギャル担いじゃって、ぱっぱっぱーら」

 誰も知らない。彼女が手からぶら下げている大きな楽器袋のようなものの中には、巨大なノコギリが仕込まれているなどとは。

「どうっでもいいじゃんって、切り捨てコギャル。マゴギャル担いじゃって、ぱっぱっぱーら」

 誰も気付かない。彼女が、あの悟堂巌ら屈強な猛者どもをたった一人で圧倒し、惨殺したその張本人であるなどとは。

「あいらぶゆー、あいうぉんちゅー、あいにーぢゅー、何度もゆー、愛してる」

 ワイドショーの話題を掻っ攫う、今を時めく愉快な素敵な現代アート的解体ショーを繰り広げた犯人は、髭を生やした熊の擬人化でもなんでもない。この可憐で華奢でお人形さんのようで、ちょっと頭のネジが外れた年頃の乙女だった。

「君と出会って十数年。休憩なしでノンストップ、にゃー」

 しかし誰も気付かない。誰も知らない。まっとうに生きてさえいれば、生涯気付かない隣の闇。世の中には知らない方が良い事もある、なんていう誰かのセリフは的確に本質を捉えている。

「隠しー事はひとつだけ。二の腕のタトゥー、実はサインペン」

 だが、別の誰かはこうも言った。あなたが深淵を覗いているとき、深淵もまたあなたを見ているのだ——と。

「だからその、結婚してくだ&%&#&%……噛んじゃった」

 リズムよく歌詞を口ずさむが、表情一つ変えない白髪の少女。彼女は不意に歌うことを止め、ひとつ呟いた。



「——次こそ見つけ出してやる、藤堂紫苑。差し当たっては、まだ生き残っている黄河一馬。それからザイツェフ・エストランデルとやらを探ってみようじゃないか」



 そしてとぷん、と。
 ビルとビルの隙間、影で覆われた闇の空間。彼女は一瞬で、溶けるようにそこへ消えてしまった。
 誰にも気付かれず、まるで最初からいなかったように。



 ——これは、イグニスという力がある世界の話。
 陽射しが当たらぬ裏の社会に生き、スペルビアに興じ殉じる命知らず共と——後にその世界で、伝説として名を馳せる男・藤堂紫苑の物語。



#1【パンドラ】了



※オレンジレンジ『DANCE2(feat.Soysauce)』より歌詞を一部引用

Re: 【紫電スパイダー】 ( No.36 )
日時: 2019/08/27 11:26
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: xEKpdEI2)





 手始めにパンドラでのし上がってやろうと思ったら、パンドラ潰されてた。

「どう! いう! こっちゃねん!」

 大げさにのけ反りながら叫ぶ一馬と、深くため息混じりにタバコをふかすザイツェフ。
 都内の某ファミレスで平日昼間からとぐろを巻く2人の姿は、そこそこ物珍しい光景であった。

「俺が聞きてぇよ。まったくお陰で俺も最近このところロクに寝れん」

 スペルビアを取り扱っている店として、パンドラは有名だ。
 有名であるから腕利きも集う。真っ向からRPG7の直撃を耐えた巌を筆頭に猛者が数多いる。
 彼ら全員が一夜にして惨殺された。ザイツェフは目下その後処理や捜査に追われている。こうして一馬と対面するのも久しぶりだ。

「本当に酷いもんだ。まず身元の照会から困難を極めてる……。まあパンドラの客に、真っ当な身分の奴なんてほとんど居ないが」
「葬儀屋は大儲けだ」
「葬儀屋だって困るさ。誰の遺影を使えば良いのか分からんからな」

 一馬とザイツェフ、お互い本日何度目かの深いため息。

「本当に犯人の目星はついてないのかよ?」

 ザイツェフはタバコの火を灰皿に押し付けながら思案する。何か言いかねていた様子だが、渋々な様子で口を開く。

「他の誰にも言うなよ」
「じゃあ何で俺に言うんだよ」
「テメエが聞いたんだろうが。それに次はお前が狙われるかもしれん」

 黒いワンピースを着たノコギリ少女、とザイツェフは言う。

「なんだそりゃ都市伝説か? 妖怪赤マントみたいな」
「良いから黙って聞け」

 茶化し半分で応じる一馬だったが、真剣な面持ちのザイツェフに気圧されて口をつぐむ。
 一連の大量殺人に目撃者は居ない。その場に居合わせた全員が死んでいるからだ。
 ただ幾度か付近で共通する不審者の目撃情報があった。
 ボロボロに擦り切れた黒いワンピースをまとい、膝ほどまであろうか銀髪の少女。瞳は映像越しでも分かるほど、爛々と血のように赤く光っていたという。

「何だそりゃ……めっちゃ怪しいな」
「都内各所の監視カメラに姿は残っている。しかし実際のところ足取りは掴めない」

 雑踏にかき消された足跡を追えないほど、断罪者という組織は無能ではない。ザイツェフが言うには、ある地点を境にぷっつりと痕跡が途絶えてしまっているそうだ。
 間違いなくイグニスを使っているだろう。

「空間移動系か? でもテレポート出来るだけの女の子がそんな事件を起こせるもんかよ」
「今のところグループによる犯行で、少女は転送役って見方が強い。それだけじゃ説明つかない部分も多いから捜査が行き詰ってんだけどな」

 とにかく、とザイツェフが話を切って。

「お前はあの一件の後、パンドラでちょっとした話題になってたんだ。まあ話題の大半は藤堂紫苑がさらっていったがな」
「最後の部分さえ無ければちょっと嬉しかった」
「だから次はお前が目を付けられる可能性もある。これは忠告だ。似たような少女を見かけたらそれとなく逃げろ。そして俺に連絡を入れろ。良いな?」
「わあったよ。心配性め」

 一馬の言葉が合図みたいに、2人はファミリー席から立ち上がる。例によって一馬はザイツェフに勘定を押し付けた。
 ザイツェフは本日何度目になるか分からないため息を吐く。出世払いと一馬は言うが、きっと払った金は戻ってこないだろう。


 ──そのような経緯が、今日の昼。時間流れて今は夕方。
 自宅へ戻る道すがら、近道のために建設中ビルの敷地内を横切ろうとした時である。

「コウガカズマだな?」

 鈴が鳴るような声に呼び止められて振り返る。
 斜陽をバックに長髪の少女が立っていた。小柄な身丈より大きい楽器ケースらしきものを携えている。
 銀の長髪、黒いワンピース、紅色の瞳。俺を見てすぐに名を呼んだ。
 間違いない、ザイツェフに聞いていた女だ。

 正直なところ一馬は、彼女と遭遇したら返り討ちにしてやる腹積もりで居た。そうすればザイツェフも少しは自分を見直すだろうと思っていたからだ。
 しかし彼女が発す異質な雰囲気に呑まれる。銀髪の間から覗く眼光に捉えられていた。
 少女は不意に口角を上げる。
 可憐な笑みは──そのまま下へ沈む。

「あ?」

 直立のまま水没していくように。
 影へ吸い込まれた少女の鼻先が、今度は一馬の鼻先にある。 
 空間移動のイグニスだ。気付く。けれど遅い。既に何か刃物が、一馬のうなじに添えられていた。
 まるで抱くように腕を回された体勢で、そのまま動けない。動けば殺される。それだけ伝わっている。

「藤堂紫苑の行方を知らないか?」
「……知らねえ」
「そうか。なら死ね」

 なぜ……ここで藤堂紫苑の名前が?
 考えるより先に、少女が言うが早いか、首に添えられた刃物が動く、その今際の際。
 響いた銃声。弾かれ軌道を反れる刃物。すぐ体勢を沈める一馬。

「エル……ドラドッ!」

 加減を考慮する暇などない。至近距離で即座に炎を放つ。反動を使い後退する。
 一馬が少女を距離を取ってから、建材の陰に隠れていたザイツェフも姿を現す。その手には拳銃が握られていた。

「だから言ったろう一馬、おそらくお前だけじゃ無理だと」
「うるせえ。とりあえずおびき出すのは成功したんだから良いだろ」

 悪態をつきながらも、2人は少女から視線を外さない。
 空間を移動する瞬間にでも取り出していたのか、確かに彼女は刃物を握っていた。ただ尋常な刃物ではない。
 バカみたいにデカいノコギリだ。そして赤茶けた錆が付着している。

「そっちは……ザイツェフ・エストランデルか」

 振り乱した長髪、引きずるノコギリ、さながら幽鬼のような少女はザイツェフに舐め回すような視線を向ける。

「一馬」
「ああ。尋常じゃねえのは俺でもわかる。他の断罪者と警察に連絡入れりゃ良いんだな?」
「頼むぞ」

 足元の砂利をにじりながら、少女と向かい合ったまま一馬は下がろうとする。ここまでは打ち合わせた通りだった。

「増援を呼ぶつもりか」

 しかし少女がつぶやいて、ノコギリを握っていない方の指先をすい、と中空で動かすと。

「それは困るな」

 ──即座、影から伸びる真っ黒な槍が2人を射抜いた。



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