ダーク・ファンタジー小説

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あの頃、私は確かに幸せだったのです。
日時: 2012/08/11 01:17
名前: すずか (ID: 8TfzicNZ)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=25449

小説が完結しないことに定評のあるすずかですいらっしゃいませ。
とりあえずポッと思い付いたので書き殴ってみようという次第。最後まで辿り着けたら良いのですが。タイトルはこんなのですがファンタジーものです。よろしければお付き合いください。コメントやアドバイス等頂けると喜びます。

URLの小説は、ストーリーとかシリアスとかそんなものは全く無視して突き進むコメディです。

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Re: あの頃、私は確かに幸せだったのです。 ( No.4 )
日時: 2012/06/21 16:19
名前: 風猫(元:風  ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)

すずかさま、初めまして。同じく小説を完結させられないことで定評のある風猫です^^
文章が丁寧で展開も丁寧な感じが有って良いですね♪ それで居て説明くさくないのが特に良いです!
応援してます、これからもがんばって下さい♪

Re: あの頃、私は確かに幸せだったのです。 ( No.5 )
日時: 2012/06/21 21:48
名前: すずか (ID: WylDIAQ4)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

>>4
どうも初めまして。コメントありがとうございます。
ファンタジーだとどうしても説明が増えてしまい、何とかくどくならないようにしようと考えながら書いていたので、そう言ってもらえると嬉しいです。
またお暇な時にお越しください。

3 ( No.6 )
日時: 2012/06/30 22:09
名前: すずか (ID: NRm3D0Z6)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

 レーグはばつが悪そうに俯いた。

「……それはすまないことを聞いた」
「気にせんでください。もう踏ん切りはついてます」

 キルは布を机に置き、代わりに鉄粉を手に取り剣にまぶし始める。

「使わずにしまっておくのも忍びないんで、どうせなんで思いっ切り使い古したろうと思ったんですわ。俺流の供養です」

 鉄粉をまぶし終わったところで、一度椅子から立ち上がり、傍にある巨大な水瓶から、小さな桶に水を汲む。居心地が悪そうに頬を指でかいていたレーグが、突然動きを止めて目を見開いた。ユズハが不思議そうに小首を傾げる。

「どうシた?」
「……姉?」
「姉が何です」

 水が8分目まで入った桶を机にドンと置き、再びに椅子に戻ってきたキルが、これまた怪訝そうにレーグを見る。レーグは、軽く呆然とした顔でキルに視線を返す。

「……今までに、女性で竜騎士を資格を持った人物は2人しかいないはずだ」

 今度はキルが目を見開く番となった。

「1人は、現騎士団団長。そして、もう1人が」
「……俺の姉、元騎士団団長のルキですわ。ほんま物知りですね」

 レーグの言葉尻を受け取って、キルが答えを出した。砥石を水に浸ける。

「ルキ?アのルキか?」
「そうだ」

 傭兵になって年が浅いユズハでさえ知っているルキという人物。
 弱冠10歳にして騎士団試験を突破し、それだけでも十分語り継がれるほどの逸材であったであろう彼女は、驚くべき早さで地位を上げ、史上最年少である12歳で団長の座を手に入れた。それも満場一致で、である。
 これから3,40年はルキが団長であろう、と言われるほどだった。しかし、現実はそうではない。僅か3年後、突然団長を止め、もう1人の女性竜騎士であるラトナにその座を譲る。当然騎士団では大変な騒ぎとなったが、理由を誰にも告げずルキは姿を消し、消息は掴めないままだった。

「亡くなっておられたのか……」
「ふらっと戻ってきて、しばらくしたらポックリ逝ってまいましたわ。何があったかは知りませんけど」

 砥石を桶から出し、膝の上に乗せ、更にその上に鉄粉が舞う剣を乗せる。服が濡れるのも汚れるのも気にしない。

「お前も強イ?」
「残念ながらからっきしや。強かったら姉ちゃんと一緒に城下まで行ってるわ」

 シャッ、シャッと砥石で剣を研ぐ音が鳴り響く。

「というわけで、このゴーグルは姉ちゃんので、姉ちゃんは元騎士団団長のルキです。これが質問の答えでええですか」
「ああ、充分すぎるほどだ、ありがとう。もう1つ質問があるんだが、聞いて良いか?」
「お客さん結構言いたい事は言わはるタイプですね。構わんですよ」

 一度剣を揚げ、光沢を確認するキルに、レーグは次の問いを投げかける。

「その訛りはどこの訛りだ?初めて聞いたんだが」
「これですか?これは古代語ですよ、多分もう誰も使ってませんわ」
「へえ……古代語か。何故そんな言葉を?」
「その人が教えてくれたんです」

 少し形状が気に入らないのか、小型の金槌を手に取り、剣先を叩き始める。金属音を出しながら、キルは目線を右の棚へとやる。釣られてレーグもそちらへ視線を向けると、そこには小さな写真立て。
 
 金髪の青年と、10歳ほどの少女がそれは笑顔で写っていた。

4 ( No.7 )
日時: 2012/08/10 21:15
名前: すずか (ID: 8TfzicNZ)

「そっちの、金髪の人。女の子は姉です」

 小さい頃のルキを胸に抱きとめ、青年は、それはそれは綺麗な笑顔を浮かべていた。そして、その笑顔の青年の腕中にいるルキも、はにかむように、可愛らしい笑顔を見せていた。笑顔で溢れた、どこまでも幸せそうな写真。

「その人が古代語を使ってた最後の村民やったんですけど、魔獣に襲われてその村が全滅、生き残ったその人が何とか言葉を残そうと俺等に伝えたっちゅーわけです。あ、俺と姉は元々孤児で、その人に拾われたんですわ」

 次々と衝撃的な言葉を発するキルは、あくまでも淡々としていた。レーグとユズハには想像もできないが、恐らく色々と諦めたか、乗り越えたかしたのだろう。

「……この方は今?」
「ま、薄々分かってるからそんな顔してはるんでしょうけど。姉の後を追うみたいに、直ぐに病で死にました」
「そうか……大変だったんだな」

 軽く拳を握り、悲しげな表情で下を向くレーグに対して、キルはふっと笑う。整った顔立ちをしただけあり、女性だと見惚れてしまいそうなものだった。ユズハは特に何とも思っていないようだが。

「同情してくれておおきに。久しぶりに話したら、ちょっと気分が軽くなりましたわ。ところで、整備終わりましたよ、はい」

 キルが手渡した大剣は、明らかに光沢が良くなっていた。心なしか持ちやすくもなっている。

「本当に良い腕だな」
「おおきに。料金は800ラーズです」

 代金を払い、再度礼を言いいながら店を出る。キルも見送りに外まで着いてきた。

「また来る機会があるとは到底思えませんけど、一応言っておきますわ。今後とも御贔屓に」

 ポケットに手を突っ込み、だるそうに言葉を発するキルに、レーグは苦笑を洩らす。

「確かにな。ラベルまで足を運ぶことなんて、下手したら一生ないかもしれん」
「これからも頑張ってください、ほなさいなら」

 ひょこっと頭を下げて、キルは店の中へと戻っていった。それに合わせて、レーグとユズハは路地裏を抜け、大通りの人混みへと紛れていく。
 三人の出会いが、イルガ国を揺るがす大事件になることなど、この時は誰一人として思っていなかったのである。


 

 特に何事も無く時は過ぎ、レーグ達がラベルを訪れてから一カ月の月日が流れた。昼下がり時の人口密度の高い城下の大通りを、レーグはこれまたユズハを連れてぶらぶらと歩いている。城下の警備のお鉢が回ってきたのだ。

「わふ」

 ユズハが欠伸をする。城下の警備とは名目ばかり、特に事件が起こらない場合は散歩と大差ない。とはいえ、割と頻繁にいざこざが起こるので、気を抜いていると突然騒ぎが勃発することもある。しかし、それも主に夜の場合なので、結局昼の警備は散歩と成り下がる。
 ユズハの欠伸に釣られ、レーグが大きく伸びをした瞬間。

「隙だらけだぜェ」
「うひゃあァああッ!?何スる!?」
「っ!?」

 うなじに氷菓子が当てられ、ユズハが飛びあがった。その絶叫にレーグも思わず飛び上がり、騎士の癖か、町中であるというのに、剣の柄に手を掛け臨戦態勢となってしまう。
 そんな戦闘モード全開のレーグに対して、氷菓子を持った犯人はあくまでも自然体だった。

「警備中に欠伸なんかしてるからでィ」
「お前にハ関係なイことダ!!いつカ殺す!!オ前いつか絶対殺スからナ!!!」
「やれるもンならやってみやがれってんだ」

 毛を逆立ててギャアギャアと騒ぐユズハを軽く受け流しながら氷菓子を食べる青年を、レーグは良く知っていた。

「シリィ君か」
「へい、シリィでさァ。レーグさんもこんなアホと契約結ぶとは、血迷ったんじゃねえですかィ?」

 その瞬間、シリィと名乗る青年の頭に拳骨が落ちた。

「っつー……」
「人のパートナーを貶すとは、例え冗談でも見逃す事はできないな」
「すいやせんでした……」
「ら、ラトナ団長!!」
「レーグか。御苦労だな」

 長い黒髪が無造作にはためき、切れ長の瞳が鋭く美しい女性、ラトナ。
 そして、そのラトナに拳骨を落とされ、頭を押さえて呻いている青年、シリィ。
 この二人が騎士最強と傭兵最強の名を欲しいままにする、騎士団団長ラトナと、国内最大の傭兵団、ベリクス傭兵団の筆頭傭兵シリィである。

5 ( No.8 )
日時: 2012/08/15 14:24
名前: すずか (ID: AvHGVUY9)

ラトナは女性にしてはかなり長身だが、その体付きはしなやかで細く、とても最強の異名を手にできるとは思えない見た目である。加えてシリィも、背が高いとはいえ女性であるラトナより背が低く、おまけに童顔かつ華奢であるため、こちらも見た目から強さを読むことはできない。
しかし、二人の実力は間違いなく本物であり、数々の伝説を携えている。曰く、大量発生した魔獣が村を襲うのを、たった二人で村の被害無しで抑えただの、盗賊団のアジトに乗り込んだ30分後には、全員を気絶させて捕らえていただの、聞くだけでは眉唾ものばかりだが、実際記録が残っているのである。イルガ国史上最強のコンビという通称は、恐らく間違いではない。所謂生ける伝説達なのだ。

「シリィ!!闇夜ノ背後にハ気をつけるんダな!!!」
「涙目で言われてもねェ。つーかオメェ、一体どこでそんな言葉覚えてきやがるんだ?」

 騒ぎ続けるユズハを面白そうにからかうシリィの姿は、どう見てもただの悪戯好きの青年である。いや、童顔のそれは少年といっても差支えない。それもそのはず、彼はまだ18歳なのだ。
 普通、この世界では経験の差が実力の差を生む。その結果、30から40歳ぐらいが、傭兵にとって一番脂の乗った時期となる。その経験の差を、シリィは天性の勘と才能で補っているというのだから、驚くほかない。

「……すまんな、レーグ。うちのシリィが」
「いえ、もう慣れたんで。恒例行事と言いますか、ああまたか、みたいな」

 意地の悪い笑みでユズハを眺めるシリィを、更にラトナが呆れた顔で眺める。レーグはその光景が少しおかしく、苦笑を浮かべた。

「あいつはずっと傭兵に囲まれて育ってきたから、同年代の職仲間がいなかったんだ。あれでも、ユズハが来て嬉しいんだろう。多分、遊び方が分からないんだろうな」
「確かに、傭兵には若い人はほとんどいませんからね。騎士には時々いますが」

 呆れた顔をしながらも、優しい目をするラトナに、思わずレーグは見惚れた。彼女は実力もさながら、美貌も国で有名なのだ。事実、彼女を知っているのか知らないのかは分からないが、通りすがる男性の多くがチラチラとラトナに視線を送る。
 その時何故か、レーグの頭の中にふとキルの姿が浮かんだ。そういえば、ルキが今でも生きていたら、丁度シリィと同じ年だ。ラトナはルキが顕在である最後の1年程は、副団長の座についていたはずである。ひょっとしたら、シリィとキルには面識があるかもしれない。

「シリィ君」
「何ですかィ?」

 氷菓子の匙を口に咥え、シリィが首をかしげる。シリィの背後で呻っているユズハは、一旦忘れる事にした。

「キルって子を知っているか?」
「キル?誰ですかィそりゃあ。ルキなら知ってやすがねェ」
「ん?ルキ殿は知っているのにか?ラベルに住んでるルキ殿の双子の弟なんだが」
「待て、ルキの弟だと?」

 眉に皺を寄せたラトナが言葉を遮った。

「……ルキに弟なんていたか?」


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