ダーク・ファンタジー小説

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人食い病(ゾンビもの)
日時: 2016/09/13 14:25
名前: 斎藤メロン (ID: k7pNoPCO)

はじめまして、メロンです。
ゾンビもの投稿します。グロ描写などがあるので、苦手な方はご遠慮くださいね。
あ、ちなみに作品に登場する地域、団体名等はすべてフィクションであり、現実に存在しません!

——————プロローグ——————

北海道某所。大晦日の前々日私たちは実家で年を越そうとある町に向かっていた。

周りを山々に囲まれた町の名前は「布浸町」(ふしみちょう)。人口2万人、高齢者はその20%を占めている錆びれた町である。

夫の実家である布浸に行く旅路、彼女は不機嫌だった。
都会生まれの彼女にとって田舎へ向かうことは苦痛でしかなかったのだ。
そしてもうひとつ…。

彼女は何か嫌な予感をしていた。

彼女の名前は小田真由美(おだまゆみ)。本作の主人公である。

>>1


Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.164 )
日時: 2016/09/04 14:50
名前: 斉藤メロン (ID: .1vW5oTT)

福井はそれを聞いて、ゆっくりと真由美の顔を見た。そして、軽蔑の表情をする。

「何をいっているんです。そんなこと出来るわけがない。」

「とにかくお願い。大事なことなの。貴方に託したからね。」

福井は憤慨し、「俺は認めませんよ。」といいながら前列に戻っていった。

その後ろ姿に真由美は小さく「ありがとう」と呟く。




それから少し歩いていくと、足を踏み込んだ時の感触がやけに固くなったのに気がついた。
皆一様にスキー場をみながら進んでいたので地面の異変に誰も気がつかなかったのである。

気づけば、足元にあれほど積もっていた雪は道路からなくなり、コンクリートが見えている場所もぽつりぽつり見えるほどだった。

「除雪されてる?」

「あぁ、除雪機で誰かがやったんだ。」

スキー場のキャビンの手前には、遠くからでも除雪機が3台ほど列をなしているのが見てとれた。

福井は「きっとスキー場にいる生存者がやったんだな。」という。

「って事はここら辺からは安全だってことですよね?」

「そうなるだろうな。安全が確保できていない場所まで除雪しないだろうし。ここらへんに奴等の姿が見えないのも納得出来る。」

「一掃したんですかね?」

「わからない。だが、進めばわかることだ。行くぞ。」

ふたたび歩き出した一行。

スキー場は目と鼻の先だった。
近づいていくと、古びた商店が立ち並ぶ小さな街道に出た。
そこを抜ければ恐らく、スキー場だろう。

一件一件の店を福井と速水が慎重に確認する。

店のガラスは割られ、壁には穴や傷が至るところにあり、まるで廃墟のようだった。

速水はこの商店街のような場所を知っているようで感慨深く、険しい表情をしていた。

一応の念のために台所の蛇口を捻るが、そこからは錆の混じった水が鈍い音と共に少しだけ出るだけですぐにそれも停まってしまった。

床には、寝袋がいくつも置いてあり、その近くにはカップ麺や菓子類の残骸が散らばっている。

福井が寝袋に触る。

「まだ、暖かいな。」

慎重に進む福井に、速水は痺れを切らせる。

「とにかくここが安全なのはわかりましたよね。もういきましょう。」

「そうだな。次の店だ。」

「ここの店全て回って安全を確認するつもりですか?日がくれてしまいますよ。」

次の店に入ろうとしていた福井が速水の方に振り返り、二人はしばらく見つめあっていた。

確かにそうかもしれない、そう思った福井は一呼吸置いた後に「それとそうだな」と店に入るのをやめ、先を急いだ。

そんな矢先である。
一行がずんずんと商店街を進んでいくと、前方に見える一件の店から、なんとも奇妙な、そして聞きなれた音が聞こえてきた。

福井は小さく合図し全員を止まらせる。

ばりばり、くちゃくちゃ。

ぴちゃぴちゃ、ごりごり

がぶがぶ、ぼりぼり、もぐもぐ、ぬちゃぬちゃ



音の聞こえる店の軒先をゆっくりと覗くと

そこには食事に夢中のカミツキが、
やはりそこにいた。








Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.165 )
日時: 2016/09/04 17:01
名前: 名無 (ID: jWLR8WQp)

2016年 夏の小説大会

金賞受賞おめでとうございます

Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.166 )
日時: 2016/09/08 02:43
名前: 斉藤メロン (ID: FX8aUA2f)

金賞ありがとうございます!
続き書きます。

カミツキは全部で四体。
全員が横たわる肉塊を貪り食うのに夢中なようだった。

こちらにはまだ気づいていない。
福井は一旦、覗きこんだ上半身を戻し一同の方を向いた。

「どこが、安全ですか。いるじゃないですか。」

「さっきの店に置いてあった寝袋、まだ暖かかった。壁の傷やガラスが割れた後も真新しいものだったから、おそらく奴等は最近変異したんだろう。」

福井は安全だと言っておきながら店の見回りを徹底しようとしていた。
おそらく、寝袋に触れたときからこの事を予想していたのだろう。

福井は続けて、「ここで発砲するのは得策とは思えない。幸い奴等は食事に夢中のようだ。ゆっくりと通り過ぎよう。」

真由美を含めた、一同は同時に頷く。
しかし、真由美にはこんな時に限って嫌な事が起こる。そんな予感がしていた。

そして、その予感は的中する。

通り過ぎようとした矢先。
商店街の出口にあたる部分から人影が現れた。

そしてこちらに向かって大きな声で叫んだのである。

「おーい!!どうなってるんだ!?」

その人影が何の事を言っているのかはわからなかったが、この状況がかなりまずい事だけは理解できた。

案の定、食事中のカミツキはこちらに気づき、顔を上げる。
速水がすかさず4発の銃弾を発つ。
2発はカミツキ2体の眉間に命中し、他の2発はカミツキの肩ともう一匹の耳を霞めたのみ

怯まずに2体のカミツキが立ち上がる。
そして、後方からも雄叫びと共に店先からカミツキが飛び出してきた。

「他にもいたのか!」

神田は大きな悲鳴をあげる。

「とにかく走れ!!」

一同は走り出した。
気づけば、出口にいた人影も、どこかに消えてなくなっている。

速水は後方に発砲しながら全速力で走るが、弾は一発も命中しておらず、しばらくすると拳銃の弾がなくなっていた。

カミツキの数は減る所か、どこから現れたのか、追ってくるカミツキの数は、先程よりも増えている。


「くそがっ!」
弾切れの拳銃を苦し紛れにカミツキに投げる。
追いかけてくるカミツキの頭部に当たるが微動だにせず向かってくる。

走って逃げるしかない。
安全な地帯があるかもわからない、もしかしたらこの先にはもっとカミツキがいるかもしれない。

先の見えない恐怖を誤魔化しながら、この先に希望があると信じ、一同は精一杯走った。


商店街を抜けると、雪の固められたような足場の広場に出た。
目の前には「マウント布浸スキーリゾート」という看板とスキー場に隣接する大きなホテルが見えてきた。
全体がガラス張りで太陽の光を反射している。

あそこまでいけば、助かるのか?
後ろのカミツキは一体、また一体と増えてきている。



その時、目の前にこちらに手を降る、人物がいた。
大柄の体格と長く伸びた顎髭の男性が少し先に立っている。

気付けば、白く広大な地面にポツンと板が置いてある。

「おーい!!こっちだ!一列になって、その板の上を走れ!」

まるで、ドワーフのようなその男の言葉を信じるしかない。

一同は一列になり、その板の上を突っ切った。

「もう大丈夫だ。お前たち!!奴等はもういない!」

一同が板を通りすぎた後、その後から追ってくるカミツキは一匹としていなかった。

息を切らして、速水は言う。

「はぁ、はぁ…、すごい初めて見た。こんな大きな」

カミツキは突然姿を消したわけではなかった。
髭の男は地面を見下ろして言う。

「奴等は奈落に落っこちた。」

地面には二階建ての建物ぐらいの広さ、そして深さの落とし穴が掘ってあったのである。

その落とし穴には無数に蠢く奴等が溜まっていた。
そして、その落とし穴は良く見るとスキー場を囲うようにいくつも存在しているようだった。

「ここらへんは冬になると、何十センチもの雪を積み上げて足場を作る。だからこんな大きな落とし穴が作れるのさ。」

自慢げに話す髭の男に、息を切らせた福井が言う。

「あんたが掘ったのか?」

「あぁん?まぁな、オレというより、オレたちだったがな。それよりさっきは悪かった。まさかあそこがあんな有り様になっていると思わなくて、つい大きな声を上げてしまった。」

「本当ですよ。死ぬところだったんですからね。」

速水が怒りながら「もう走りたくない。」とその場にうずくまる。

「あの、さっきの場所は最近まで人が生活していたんですか?」

真由美が聞くと、髭の男は気さくに答える。

「あぁ、最近なんてもんじゃない、今朝までみんなあそこにいたさ。食料を届けに行ってみれば、あんたたちがいて、そのうえこんな毎になっていたんだ。」

「あんたもあそこで生活を?」

「はん、まさか!オレはこっちだよ。」

髭の男は、自分の後ろにそびえ立ちホテルを指差した。

「何故彼らはホテルに入れないの?あんな場所じゃ凍え死ぬわよ。」

「奴等は、教祖に逆らった連中だ。だから入れてもらえないのさ。俺はそんな奴等に食事を届ける役、そしてここの管理を任されてる。あんたたちもラジオを聞いてきたんだろう?歓迎するよ。俺は島貫忠雄ってもんだ。そしてここに来たんならひとつ忠告だ。絶対に教祖には逆らうな。それがルールだ。わかったな。」

Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.167 )
日時: 2016/10/18 14:41
名前: 斉藤メロン (ID: XnbZDj7O)


顎髭をもしゃもしゃと動かしながらその男はそう言い放った。

「ちょっとまってくれ、教祖とやらは神にでもなったつもりか?そんな理屈が通るわけがない。自分の行動は誰かに左右されるもんじゃないし、操作できるものでもない。ルールはあんたや教祖が作るものじゃない。」

「ふん、この街は数日前に死んだ。倫理観、道徳心なんかと一緒にな。そのなかで生き抜くにゃ、従うしかないんだ。」

「そんなのおかしい。」
速水が列の前に出て来て言った。

「お前は…。速水くんか。大きくなったな。」

速水と島貫は面識があるようだった。
速水の姿を見たとき、目を大きくしていた島貫だが、視線を落としつぶやいた。

「おかしいことは百も承知さ。だが、生き抜くにはそうしなきゃならねぇ。分かるだろ?」

速水はさらに島貫に駆け寄り反論しようとした。
しかし、島貫は手を前に出して速水の胸を押さえた。

島貫は先ほどカミツキが落下した落とし穴を指差す。
「待て。その前にあれをなんとか始末しないとならねぇ、奴等が呻き声でおびき寄せられる。」

そういうと島貫はせっせとその準備に取りかかる。

速水を含め一同はやるせない気持ちでその様子を見つめていた。

それを見ていた島貫はたまらず作業をやめて小声でいった。

「あんたたちは中に入れてやる。今した話も教祖には漏らさない。もし言えば絶対にホテルには入れてくれないだろうからな。だから後は教祖がどうするかだ。それから、色々と聞きたいこともあるようだ。これが終わったらなんでも聞くといい。俺のわかるとこなら教えてやれないこともない。」

そういうと島貫は一人で作業を再開する。


Re: 人食い病(ゾンビもの) ( No.168 )
日時: 2019/07/09 02:31
名前: 齋藤メロン (ID: GbOqdb.J)

毛むくじゃらの男は除雪機を巧みに操縦し、先程カミツキが落ちた穴に雪をかけ埋め立てていく。

小田達も渡されたスコップで穴の底で蠢く奴らに雪を流し込んでいく。

ある程度雪を流し込み、カミツキが雪に埋まったのを見計らうと、島貫は除雪車のエンジンを止めた。

「これくらいでいいだろう。さぁホテルに入ろう、ついてきな。」

「あの!」

小田が島貫を引き止めた。

「なにか?」

「私たちよりも前に小さな女の子がここに来ませんでしたか?」

「あぁ、数時間前に女の子がここで保護されたが、…あんたまさか、その子の母親かい?」

驚いた顔をしている島貫をまっすぐに見て、真由美は頷いた。

「こりゃあ困ったな。じゃああんた、小田さんちの奥さんなんだな。」

島貫は、顔を歪め、髭を触りながらしばらく考え込んだ。

「そういうことなら悪いがあんたらを中に入れる訳には行かない。すまないが、出ていってくれ。」

「おじさん、頼みます。この人は子供を攫われたんだ。」

速水が島貫に歩み寄る。

「ここに入れる訳にはいかない。あんたが来たら追い払うように言われてる。悪いが帰ってくれ。」

そういうと島貫は腰に下げていた拳銃を取り出し小田に向ける。

福井は持っていたスコップを島貫に突き立て「おいおい、物騒なものを出すじゃないですか。」といった。

「お願い!弘美を助けたいの。」

「それは出来ない。あの子には役割がある。撃たれたくなければ大人しくここを去ってくれ。」

「あの子を生贄にするつもりだろう。」

「そうだ。この災害を終わらせるためにあの子を、あの子の血を神に捧げるそうだ。」

「あんな小さな子供を殺そうというのか?」

「やり方なんで俺の知ったこっちゃない。ただ、このやばい状況が終わればそれでいい。」

島貫は引き金に指をかけ、スコップ向けている福井の眉間に照準を合わせた。

その時、島貫の後頭部に鈍痛が走る。

「女を舐めんじゃないわよ。」

神田が持っていたスコップを島貫の頭に振り下ろしたのだ。


衝撃で島貫はその場に四つん這いになり、拳銃を落としてしまった。

直ぐに拾おうとしたが、速水が先にそれを拾い上げ、素早く島貫に向ける。

「形勢逆転ですね。おじさんには悪いけど中に入れてもらいますよ。」






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