ダーク・ファンタジー小説

命を売り買いする場所。
日時: 2018/10/05 08:16
名前: とりけらとぷす

第1話【囚われの身と貴族の僕】




今日も街は、奴隷の売り買いで賑わっている。
奴隷売り達に群がって、ただただ金のことを叫んでいる貴族達の中に、僕の父親がいた。
いつだってそうだ。僕のことなんか構ったこともないくせに。
今日も僕に、奴隷を選ばせるんだ。
誰だっていい。ただ僕は、人間を売り物にしているのが、気に食わないだけだ。
奴隷も、生きてる。僕たちと同じ、”人間”として。
売り買いだなんて、こんな世の中に生きてる僕が恥ずかしい。
「どうかしたのか?レオ。さあ、今日はたくさんいるぞ、どれがいい?」
父親が、まるで子供におもちゃを買ってあげるかのように言った。
人間は、おもちゃじゃない。生き物だ。
僕が睨み付けると、父親は笑った。
「誰でも、命の重さは同じだ」
僕が言うと、父親は鼻で笑った。
「命?何言ってるんだ、レオよ。アレは売り物だ」
「売り物じゃない、人間だ!」
「お前は、本当に分かってないな。奴隷の数は、貴族の誇りの高さであり、貴族の象徴だ」
「うるさい!分かってないのは、父上だ!」
僕は、父親を突き飛ばし、走った。
人混みを抜け、誰もいない場所へと走る。
途中で後ろを振り向くと、石台の上に、奴隷売りと縄に結ばれた奴隷の姿が見えた。
僕は、何もできない。それが、焦れったくて、辛くて、虚しくて、悲しくて、泣いた。
僕は、貴族の子供。僕の立場は、上。だけど…
「何も出来ない。僕には、何も出来ないんだ」




ここで一旦切らせて頂きます!

自己紹介遅れました、とりけらとぷすです(=゚ω゚)ノ

第二作品目となります!よろしくお願いします!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第1話【囚われの身と貴族の僕】>>3

第2話【誰も救えない】>>4 >>5

第3話【カエルノコハカエル】(父親目線)>>6 >>7

第4話【冷たい夜が明ける】>>8 >>9 >>10

第5話【命を買うこと】>>11

第6話【彼女との日々(1)】>>12 >>13

(シフティの昔話)>>15 >>16 >>17

第6話【彼女との日々(1)】〔続き〕>>18

第7話【偽りの彼と秘密】>>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24

第8話【彼女との日々(2)】>>29 >>30

第9話【Witch hunting】>>33 >>34

第10話【Witch huntingーstartー】>>37 >>40

第11話【それぞれの約束を果たすために】>>43 >>44 >>45

第12話【始まりの鐘が鳴る】>>47

【参照500突破記念番外編】
#0-0【プレタリアの街】>>50 >>51

第13話【海の向こうの答え】>>52 >>53 >>54 >>55

【特別企画:キャラ選挙(結果)】 >>67 (現在閲覧不可)

【参照1000突破記念(イラスト)】 >> (現在閲覧不可)

第14話【作戦会議】 >>66 >>75

第15話【新たなはじまり】 >>76

第16話【地下道を行く】 >>77 >>78

第17話【松明の夜】 >>86 >>87 >>88

第18話【王様の秘密】 >>89 >>90 >>91

第19話【空虚な王座と真実の種】>>92 >>93

【訪問者様】

○電波様
この小説に初コメしてくれた方です。
著書:リアルゲーム

○みーこ様
著書:凛花と恐怖のゲーム。〜人生ノ崩壊!〜

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著書:Amnesia

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とても素敵なお話を書いてらっしゃいます。カキコの中で、私の尊敬している方です。
著書:君の涙に小さな愛を。

○とらじ様
著書:世界を壊す精霊たちー人間たちに復讐しない?ー

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著書:

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著書:セイギセイギ

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著書:

○亜咲 りん様
著書:*童話集*白雪姫の林檎

※間違い等ありましたらお知らせ下さい。
※現在特別企画、記念イラストの閲覧が出来ません。申し訳ありませんが、もう暫くお待ちください。

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Re: 命を売り買いする場所。 ( No.92 )
日時: 2018/09/05 22:10
名前: とりけらとぷす


第19話【空虚な王座と真実の種】


思い蓋のようなものを押すと、光ある場所へ出た。白いカーテンに、様々な足が見える。運の悪いことに、会議中の長テーブルの下に出てしまったらしかった。


「さて、本題へ入りましょうか」

「こんな早くに緊急会議とは何事ですかな。わしゃ眠くてたまらん」

「まあまあ、国家の一大事です。ゴホン。何やら国家の安泰を壊そうと企んでいる輩がいるようで…」

「アルドリア一族の一人息子。名はーーーアルドリア・レオ」


ーーーえ?
僕の心臓はこれまでにないほどバクバクと音を立てていた。まるで、心臓のポンプが無理やり血液を押し出すように。


「ハッハッハッ、アルドリア一族の息子とは。カナリア様もとんだ恥をかかされたものだ」

「まぁ、何かあれば打ち首か絞首刑にすればよかろう」

「そうだな。そんな小僧一人に我らが動くまでもなかろう。放っておきたまえよ。いざとなれば、手段はいくらでもある」


「さあ、今は亡き王に、我らの自由奔放な国家に祝杯をあげようじゃないか!」


グラスが動く音がしたから、きっと乾杯でもしたに違いない。
どうやら、会話内容から察するに、国家の幹部か何かには違いないが、一つ、気になる点がある。
それは、彼らが「今は亡き王」「我らの自由奔放な国家」と言ったことだった。
ここが会議室なら、昔一度来たことがあるところかもしれない。2歳か3歳くらいの事だからよく覚えてはいないが、窓ガラスのあたりに王座があったはずだ。立派な、黄金の椅子が。
僕は気づかれないよう最新の注意を払いながら、床を這って光の一番当たっている所へ向かった。
会議の長机は幅が広いから、誰かが足を伸ばしたりしない限り容易に移動できる。


「それで、戦争の件はどうなったのかね」

戦争…確か魔女狩りが始まるとロベルトから聞いた時、そんな事を言っていたような。

「他国が攻めてくるというのはデマだよ。分かっているものを」

デマ?どういうことだ?

「ハハハ、そうだったそうだった。では、例の件の事かね」

「ああ、そうさ。例の件だよ」

「順調か?」

「ああ、全く計画通りだよ。ピエタ君、結果報告をしたまえ」

「ははっ、現状を述べますと、青目は現在562人、アルビノは14人、プレタリアはまだ見つかっておりません」

その声に聞き覚えがあったが、ピエタなんて聞いたこともなかった。きっと声の似ている人なのだろう。
例の件とは、あの島のことだろうか。何故か青い目、アルビノ、プレタリアの女性を集めているという、前代未聞の魔女狩り。そして、その人達はある島へ集められ、しかも、何故か殺されていないという…。

「結構。それでは、実験結果は」

「細胞の取り出しには成功した様ですが…現実的にはまだまだ……」

「そうか…後何年かかる」

「最低でも10年は…」

「何?それでは遅い!!」

この中で一番偉いと思われる人がダンっと机を突いて立ち上がった。

「15の齢になればカナリア様の息子であるレオ様が王宮に使えることになる…それまでに完成せねばいかんのだ!完成すれば我が国は繁栄すること間違いなし、作り上げた人間ならば、問題となっている奴隷問題にも対処できよう!この実験が完成して初めて、我が国は安定を取り戻し、誰もが身分秩序を気にかけることなく生活することができるのだ!」

内容から判断するに、作り上げた人間を奴隷として売ることで、生身の人間を売らなくて済むということらしい。
でも、作り上げた人間って…?それが、あの島で行われていることなのか。
この大臣と思わしき人が平等な世を作ろうとしているのは確かだが…何だか、僕の考えとは違うような気がした。

「そうです!そうして四民平等を実現することができれば、ルドルフ大臣の王座は間違いなしでございます!」

「とにかく…後5年だ。後5年…いや、その前にカナリオ様に気づかれては…。いや、もう勘付かれているかもしれない。なるべく早く…事を進めてくれ」

「はい…それでは…」

ピエタという男は下がったらしい。部屋から出て行った。

「さぁ、ピエタも出て行った事だし、本当の本題に入ろうではないか」

拍手喝采が起き、急に雰囲気が変わった。その異様な雰囲気に僕は思わず足を止めた。

「ルドルフ大臣が王座に着くとなりますと、問題はやはり、カナリオ様でございますな」

「ええ。庶民どもは王様の顔を知りますまい。しかも、まだ王様が存命だと思っておるわい」

「ならば、カナリオ様をどうにかする必要がありますな」

「それなら、丁度いいのがココへ入り込んだらしいじゃないか。レオ様がまだ此処にいるらしいからな。他の二人は捕まえたが」

二人が捕まった…?

「それをダシにすれば、カナリオ様の左遷は確定かと」

「いいや、それじゃ足りん。もっと大きな問題を起こさせて…濡れ衣をかぶせるのだ。それが王族直下の家臣のした事となれば、首はもう無い」

ガハハハっとルドルフ大臣は大笑いして、こう続けた。

「国民の信頼と、アルドリアの名誉を失った彼奴の顔が眼に浮かぶわ」

ルドルフ大臣に連れ、周りの人達も甲高い声を上げて笑い出した。
これは…僕の父親の左遷…いや、暗殺計画なのか?
いつからそうなんだ?父上は気付いているのか?

「カナリオ様は厄介だ。何せ、奴隷を買いあさっているからな」

「それはいいんじゃ無いですか?」

「いや、良くない。それは、一族の名誉のためでもなんでもなく、彼自身のためだからだ」

「と言いますと?」

「カナリオ様は、昔大きな罪を犯されている。それで救えなかった者たちを自分の金で買う事で救っているおつもりなのだよ」

罪を…?僕の父親が…?いや、まさか。そんな事、聞いたこともない。そんなこと、一度だって…。
それに、救えなかった者たちって…?一体、何がどうなってるんだ。

「それでは駄目なのだ。それでは、国家の繁栄は望めん。王族直下のものが払った金で王国を運営していてどうする。これじゃまるで利益がないじゃないか」

「そこで、ルドルフ大臣が他国へ奴隷を売る計画を思いついたわけですな」

「そう、しかも、これが成功すれば莫大な利益が望めるぞ。…研究費もそれなりにかかっているが…」

「そんなもの、完成して仕舞えば馬鹿にならんよ」

「そうだ。完成すれば、完成しさえすれば…我らは架空の四民平等を元に国民を自由に扱えよう。ただでさえ独裁国家を刷り込んで置いたのだ。そんなもの、いとも簡単さ」

「しかし…アルドリアが国家へ払ってきたものは莫大な額でございます。それをなくしてしまって宜しいのでしょうか…」

「良いだろう。消すのはカナリオ様のみだ。その際ギロチン台の前で命乞いの代わりに全財産を国家へ寄付する事を制約させれば良い」

「ルドルフ大臣、素晴らしゅうございます!流石次期王座につく者!」

また不気味な笑い声が響いた。
僕の拳は無意識に力が入っていて、手から少し血が出ても気付かなかった。
僕は怒りに震え、自分が壊れるのを感じた。
何処からか湧いてくる憎悪感は滝のようにとどまる事なく流れ出て、僕の身体中を駆け巡って熱くした。

「えぇ、ところで、どうしてアルドリア一族はそんなに莫大な財産を持っているのでしょう?」

あまり喋っていなかった男が期限を伺うように聞いた。
ルドルフ大臣は、なんだ、そんなことも知らんのかというばかりに鼻で笑った。

「アルドリア一族は、元王族だからだよ。この国は元々ーーーーーアルドリア王国であったのだ」


Re: 命を売り買いする場所。 ( No.93 )
日時: 2018/10/05 08:13
名前: とりけらとぷす


その声が聞こえたのと同時に、僕は古びた王座の上に見慣れた紋章を目にしたのだった。
盾の形をした、アルドリアの紋章。赤地に黒いライオンのマーク、その頭上に金の冠が施されたそれは、間違いなく僕の一族のものだった。
僕の知らないところで世界は廻っている。これはきっと、僕なんかが首を突っ込んではいけないことだったのだ。
ふと左の脇腹に強い痛みを感じた。

「ん?何だどうした」

「いや、何か今足に当たった様な」

まずいと思った時には、時すでに遅し。

「おや、いいカモがおりますぞ」

僕は机の下から引きずり出され、初めて大臣全員の顔を見たのだった。恰幅が良く、カツラでも被っているのだろうか、パーマのかかった白い髪を一つに結っている。
ルドルフ大臣は二人に拘束され睨みつける僕を見て腹を抱えて笑った。

「…何がおかしい」

「いや、ははは。まさか御本人自ら出向いてくれるとは。私どもが手を下す手間が省けたわい」

「いつからここにいたのかわかりませんが、どうします?話を聞かれたからには、処分するのが適切かと」

処分だって?そんな、まだまだしないといけない事が沢山あるのに。父上に伝えなければ。一刻も早く、父上に伝えなければならないんだ。
僕が必死に抵抗すると、ルドルフ大臣は哀れむ様な目で見て、予想外のことを言い出した。

「いや、落ち着きたまえ。国家の反逆者たるものと雖も、まだ子供ではないか。処罰というのは少しばかり重すぎる。…捉えた二人とともに返してやれ」

「しかし…」

「早急にだ」

「はい、わかりました」

こうして僕はほぼ6時間ぶりにロベルトとおじさんと再会したのだった。ロベルトは裏切り者かもしれない。会ったら一度殴らなくては済まないほど煮え立っていた僕の心は、ロベルトを前にしたところで何も起こらなかった。そんなことより、さっきの会話と空虚な王座の上の紋章が何度も何度も脳裏をよぎった。
僕らは貧相な馬車に乗せられ、早急に家へと帰された。
何も出来なかった。僕は人を巻き込んだ上に、親族までもを危険な目に合わせるきっかけを作ってしまったかもしれない。自分の無力さを噛み締める他なかった。大人の世界に首を突っ込めるほど、僕はまだ大きくなかったし、子供だった。僕が直談判すれば聞いてくれると思っていた王様はすでに存在不明。いや、そもそもそんな理想像は呆気なく崩れ落ち、貪欲な大臣らの下、独裁国家が作り上げられていたというのだから、僕らはありもしない相手に立ち向かっていたに過ぎなかった。
何も、手掛かりすらつかめなかった。島の事だって、何か実験が行われているという事だけで。


ーーー沈んだ空気の中、馬の蹄の音だけが軽快に鳴っていた。教会の鐘の音がこの街に朝を与える。虚構の世界で生かされているとも知らずに、沢山の人が操り人形のように動かされている。
全ての人に自由を与えるなんてただのエゴは、掲げたところで何の役にも立たず、呆気なく消えてしまうのだろう。
カーテンの隙間から今日もあの石台の上で、命の売り買いが行われていた。
街の喧騒が、嫌に煩かった。












「しかし、本当によろしかったのですか、帰してしまって。きっとカナリオ様に言い付けるに違いありません」



「カナリオ様も前々から勘付かれていた事であろう。少しばかり時期が早まっただけだ」



「只今、王子から、興味深いものが届きましたよ。資料室で使用人が見つけたものだそうです」



「…良いものを残してくれたな。さぁ、我々も準備に掛かろうではないかーーー」






Re: 命を売り買いする場所。 ( No.94 )
日時: 2018/10/09 06:58
名前: 双葉アリア

感想を小説板に書くのは不適切と思い削除しました
ご迷惑をおかけしました

Re: 命を売り買いする場所。 ( No.95 )
日時: 2019/02/11 19:29
名前: とりけらとぷす

第20話【罪と報復】



「…どこで何をして来た」

そこには予想していた通りの父親の顔があった。いつものように強張った顔で、僕を見下ろしている。
父がいつものようにガミガミと説教を始めたが、そんなのは僕の耳に入ってこなかった。

僕が宮殿へ侵入したことがバレた。
父親が殺されるかもしれない。
どうして黙って帰してくれたんだ?

そればかりが頭の中を埋め尽くして、他のものが入ってくるのを断固として受け入れなかった。

「ーーー僕、」

「アルドリア・カナリオ殿に、国家からの勅令である」

大きな声が聞こえて、シフティが深刻な顔で父親を呼びに来た。

「カナリオ様、国家から使いが来ております」

「国家からだと?」

「はい…至急こちらへ。レオ様はここでお待ちください」

父親はシフティと同様真剣な顔をして部屋を出た。
窓を覗くと、宮殿から10人ほど召使いが来ていて、巻物のようなものを開き、読み上げているようだ。何と言っているのかははっきりと聞き取れなかった。
その後、血塗られたような紅い封筒を渡すのを見て、僕は窓から飛び退いた。

「あれって…まさか」

僕はあの封筒の意味を知っている。あの紅い封筒の意味することを。
先に帰しておいたのはそのせいか。僕みたいなバカで未熟な奴は帰したところで逃げたいということを想定したのだろう。その思惑通り、僕は逃げずに屋敷にいたというわけだ。
父が急いで駆けつけて来て、シフティに外で待つようにと命じて扉を閉めた。

「この意味がわかるか」

父親の顔はさっきまでの表情とは一変して、変に穏やかな顔をしていた。
いや、穏やかなんじゃない。もはや呆れ果ててどうしようもない顔だった。
僕は黙って頷いた。

「ナイフを持ってるか」

「え、ああーーー」

ナイフと呼んだのは、僕の帯刀している短刀のことだった。腰のあたりを探って、初めてないことに気づく。

「あれ…無い?」

「はぁ…。もういい」

身の回りを慌てて探す僕をよそに、父親は机の引き出しからナイフを取り出して、封を開けた。
最初からそうすれば良いものを、と溜息をつく。

「読め」

「読まなくてもわかる」

父親が差し出した紙に顔を背けると、いいから読め、と顔のすぐそばまで持ってくるので、僕は仕方なくそれを受け取った。

「ちゃんと読むんだぞ。一字一句逃すな」

「わかってる」

読んでも読まなくても同じだ。
そう思いながらも、父親が目の前に腕組みをして座っているものだから、ゆっくり目を通してゆくことにした。

『先日、アルドリア一族の御子息、レオ殿が王の間に侵入し………ーーーーーーーーーーーーーーー宮殿の資料室に放火した模様ーーーー』

は…?僕は1枚目から手が止まった。
確かに、僕は偶然エレベーターを降りてしまった為に資料室へ入った。そしてそこから会議室(手紙では王の間)に侵入した事は確かだ。
何か言おうと父親の方を見ると、いいから全て読めと合図してきたので、読み続ける事にした。

『ーーー資料室にアルドリアの紋章の刻まれし
刃物がーーーーにより発見され………ーーーー此れを以てそなたのご子息を国家への反逆者と見做す』

「…僕の首が飛ぶんだろ?父上、」

後一枚残して手を止めて父親を見上げる。残り枚は見ても見なくても同じだ。
というより、少し怖かったのかもしれない。今こうして生きている命が、この脈打つ心臓が、一瞬にして止まってしまうという現実を受け止めたくなかった。
まだやらなきゃならないことが沢山ある。
皆が平等な世を作るんだ。奴隷制度なんか無くなればいい。皆が皆、ひとりの人間として人生を全うできるように。
そのために、やっと動き出したのに。僕は僕自身で、その歯車の根を止めてしまうのか?
このままではただの独りよがりに終わってしまうじゃないか。そんなの嫌だ。絶対に。
僕の正義は確かに、現時点ではただの偽善者たる行為でしかない。だけど、それが全うされて、人々の自由が保障された時、初めて僕は僕の正義を認めることが出来る。これまでしてきたことが無駄でなかったと思えるはずなのに。これまで父親に散々馬鹿にされたことが、父親に認めてもらえるようになるはずだったのに。
こんなことで呆気なく消えてしまうなんてあんまりだ。
今にも泣きそうなのをぐっとこらえて最後の紙を見ることのできない僕を見て、父親は苦渋の表情を浮かべた。
こんな父親の顔を見たのは初めてだった。

「それを貸せ」

父親は僕から紙を奪い取って、最後の一枚を僕の目の前に提示した。

「レオ。顔を上げろ。ちゃんと見るんだ。ちゃんと見ろ!」

だんだん大きくなる声にびっくりして、僕は死刑囚の名前を嫌でも見なければならなかった。
そこに書かれていたのはーーーー。


『ーーーー死刑:アルドリア・カナリオ殿』


僕は驚いて声も出せずにいた。

「死刑執行日は明日の夕刻だ」

明日の夕刻、父親が死んでしまう?そんな馬鹿な話があるのか。
大体、一体全体、どうして僕じゃないんだ。

「…何で。何でなんだ。どうして父上が…」

「私がこうなる事は前からわかっていた事だ」

そういえば、と思い出す。会議室の中で、ルドルフとか言う大臣が時期王座を狙っていて、父が邪魔だと言っていた事を。
前々からわかっていたといえ、その時期を早めてしまったのは確実に僕のせいだ。

「父上、でも…王様はいない。ルドルフって大臣が王座を狙っていて、父上を殺そうとしているんだ!」

そこで、ふと一つの疑問が湧いて来た。
それは、父親は王族に仕える王の第1秘書出会ったにもかかわらず、王様がいないとなれば、父親は一体今日の今まで誰に仕えてきたのか、と言う事だった。

「父上…王様はいないんだ。僕は見てきたんだ!それに、僕は確かに資料室に迷い込んだ。だけど、燃やしてもないし短刀をそこに落とした覚えも…」

父親は僕が言い終わらないうちに「わかっている」と言った。

「王様はいなかった。みんなが恐れおののいていた王様はいないんだ。そんな、大臣からの死刑宣告に父上が従わなくてもいいじゃないか。それに、王様がいないのに、父上は一体今まで誰に仕えてきたんだ!」

「…王様はいる。私はそのお方に仕えてきた。時期王座はルドルフではない」

「王様はいるって、あのボロボロの王座ーーーあんなのに、王様が座っているっていうのか?父上、ちゃんと本当の事を言ってくれ!この国は、アルドリア王国だったのか?それは本当なのか?」

もう、何が何だか訳がわからなかった。王様は亡命だと聞いていたのに、父親は、王様はいると言う。その方に仕えてきたのだと。
もしかして、父親は何かに騙されていて、虚構の王様に仕えてきたのではなかろうかと言う悪い考えが頭に浮かんだ。

「どうして、お前がそれを…」

「僕は見たんだ。王座の上の獅子の紋章、アルドリアの紋章を!教えてくれ、父上。全て、教えてくれ!僕もあそこで見た事全てを話すから」

父親は明らかに動揺している様子だった。でも、すぐにいつものしかめっ面に戻って話し始めた。

「…本当は、レオ、お前が十五で元服を迎える際に全て話すつもりだった。でももう時間がない。時間のある限り全て話そうーーー」




























Re: 命を売り買いする場所。 ( No.96 )
日時: 2019/02/13 08:13
名前: マリック



ハンドパワ-!!

ウオォォォォ!!!

山田『す、すごい!!なんてパワ−だ!!』

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