ダーク・ファンタジー小説
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- SPACE WAR《祝!参照100突破》
- 日時: 2016/01/25 16:18
- 名前: 三田 新凪 (ID: dDPEYPay)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=397
【とある研究員の日記】
2XXX年 6月2日
アジア方面に隕石落下。今日は娘の誕生日だと言うのに、全く参ったものだ、博士の知識欲には困ったものだ。
6月3日
隕石が落下した場所に卵が引っ付いていた。大小形、色模様様々な卵が付いている様子は神秘を通り越して気持ち悪かった。あの博士でさえ、嘔吐していたくらいだ。
6月4日
大変なことがわかった!卵はどの遺伝子も引き継いでいなかった!つまり、未確認生物(UMA)だったのだ!我々ファビュレスは早速、卵の研究を始めた。卵は卵の中で一番小さな卵をもらった。普通なら絶対に卵をもらうことにはいかず、研究を断念していただろうが、ここは博士の人脈である。
8月1日
卵から未確認生物が生まれた。その姿はまるで人間、ただし頭に触覚が生えていたが。非常に愛らしい生物にすっかり博士も骨抜きだ。その生物に我々は沈丁花からとって丁花、テーカと呼ぶことにした。
8月27日
テーカが喋るようになった。よく笑い、よく遊ぶ子供のような姿に癒されている。
その後、同じようなことが綴られている。
・
・
・
ここからは日付はなかった。
未確認生物達が孵化し、街を荒し始めた。何故だ。孵化期間がテーカよりも長い!テーカは心優しいのに何故他の未確認生物達は凶暴なのだ。
政府がテーカの引き渡しを望んだ。テーカは暴れたりしないと言うのに、全く聞いていない。でも、もしかしたら…テーカも、ああなって、しまうのか?
テーカの純白の髪が黒くなり始めた。政府がいっていた凶暴化する前兆と同じだ!やはり、テーカを殺さないといけないのか?
そこで研究員の日記は終わっていた。
ページが風に靡き、パタリと閉じる音がした。
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どおも。三田新凪なのですよ。
小説書きますね。あ、私は基本的にこういう感じの口調でいます。言われたら直す←
この間のゴジラ見て思い付いたんだなー
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【世界観 歴史】
地球に似た世界。所謂パワレルワールドっぽい。
但し言葉は統一、戦争も滅多に起こりません。
2XXX年に隕石落下。宇宙から未確認生物が運ばれる。
人類はその卵を調査した。研究所ファビュレスもその内である。
しかし、『世界初』孵化した未確認生物に街を壊され、数々の命が失われた。
3000年に突入。非力な人類は未確認生物たちに滅ぼされるかと思ったが…神は人類を見捨てなかった。
人類の一握りに、超能力者が発生したのだ。人類は未確認生物達と戦う超能力者集団『HOPE』を結成。しかし人類は未確認生物についての『記憶』を抹消されていたため、ゼロからの戦いとなった。
【未確認生物】
地球に現れた危険な生物。
孵化した瞬間は安全だが体の一部が黒く染まると凶暴化する。
テーカのような例もあったに関わらず未確認生物=凶暴という式ができている。
政府では『ヴァイス』と呼ばれている。
【HOPE】
未確認生物と戦う超能力者組織。年齢制限無し、性別も関係ない、強者のみ集う場所。入るためには試験に合格しなければならない。また、勘違いされやすいが超能力の有無は関係ない。
軍のような感じ。
ちなみに。
【沈丁花】
花言葉は「栄光」「不死」「不滅」「永遠」。
適当に決めました。
《目次》
【フェム・アイビトーチェ】>>1
【メリッフ・モーサ】>>2-3
【涅 凪】>>5
《お知らせ》
2016.1.24【復帰です!】>>4
2016.1.24【参照100突破】
- Re: SPACE WAR ( No.1 )
- 日時: 2016/01/26 18:33
- 名前: 三田 新凪 (ID: dDPEYPay)
「ねえ、お母さん、アレ、なに?」
その言葉が鍵だったのだろうか。
地の底から響くような恐ろしげな声とともに、何棟かのビルが吹き飛んだ。人々のつんざくような悲鳴があがり、まさに地獄絵図、阿鼻叫喚であった。小さな子供の母親は本能からか子供を反射的に庇った。
人々は、絶望した。
視界に映るのは異形の化け物。全長9m程の黒色の双頭の蛇。真っ赤な舌をチロチロと出し入れする様子は獲物を見定めているようでもあった。双頭の蛇の爬虫類特有の生理的嫌悪感を抱く瞳は母子の方に目をやった。
母親は子供だけでも逃がそうと、必死であっちに行け、と叫ぶ。しかし子供はなぜ逃げないといけないかを理解するのにはまだ幼く、母を不安そうに見ておろおろしている。
双頭の蛇はずずっ、ずずっ、とワザと恐怖感を抱かせるためかゆっくりと、母子に歩み寄る。母親は子供を抱きしめ、ぎゅっと目を瞑った。
「___ねえ、諦めないで。」
騒がしい筈なのに、その少女の声だけは聞こえた。母親がハッと見上げると__
「ギイイイイイッッッ!!!」
双頭の蛇の悲鳴が上がった。憤怒と苦痛、半々といったところだ。何があったのかと人々は化け物を必死で目で追った。双頭の蛇に相対するは小柄な少女。さして珍しくもない薄紫のサイドテールを靡かせている。人々は口々に危ないと叫んだ。怒り狂う双頭の蛇は少女に食らいつこうとしている。次に起こるであろう惨劇に人々は目を逸らし__かけた。
双頭の蛇の顔が少女の目の前で止まっていた。いや、止めさせられていた。少女はその細く白い指先を双頭の蛇に突きつけていた。ありえない状況に、人々は固唾を飲んで見た。
少女は突きつけていない左手で、双頭の蛇を撫でた。ゆっくりと、双頭の蛇の体の色が薄くなり始めた。白いインクを垂らすように、少しずつ。少女はにこり、と初めて笑いかける。
「元いた場所へ帰りなよ。さ。」
双頭の蛇はゆっくりと、後退していく。なるべく物を壊さないよう気遣っているように、大きい道路を選んで。暫くして双頭の蛇が見えなくなると、少女は人々へも笑いかけた。
「私は未確認生物戦闘隊『HOPE』の一人。どうぞお見知り置きを。」
少女は恭しくお辞儀し、それだけ言うとその場から立ち去った。『HOPE』がこの世界で周知したきっかけであった。
- Re: SPACE WAR ( No.2 )
- 日時: 2016/01/26 18:32
- 名前: 三田 新凪 (ID: dDPEYPay)
「っはぁ〜……全く彼奴はぁ〜!」
深い深い、全くもって隠すつもりのなさそうな溜息を吐くHOPE最高司令官がその人、ウェン・E・パリスシュト。クリーム色の柔らかな髪にアイスブルーの冷たそうな瞳、街を歩けば誰もが振り向くであろう美貌だ。重苦しい机には重要な書類が乱雑に積み上げられ、最高司令官室に入ってきた秘書とみられる女性は書類に埋もれるウェンに驚き、またまた溜息を吐いた。
「パリスシュト様……お疲れのところ申し訳ございませんが、フェム・アイビトーチェが面会を申し込んでいます。」
秘書の女性、ことエイラ・ラバスは垂れてきた艶のある灰色の髪を耳に引っ掛けた。ウェンは呆れた様子で承諾の意を示し、エイラは了解しました、とだけ言うと丁寧に書類を片付けた。と、控えめとは到底言えないような音量でノックが響く。コンコン、ではなくドンドンッ!だ。慌てるウェンの返事を聞かずにノックの主、フェム・アイビトーチェは扉を開けた。
「やあ、ウェン!仕事の進み具合はどうだいっ!」
室内の重苦しい雰囲気を吹き飛ばすような明るい声色で、挨拶__とは到底思えない台詞を言いながら薄紫色のサイドテールの少女は入ってきた。迷彩柄の軍服の上から羽織っている白衣。その服装はなんともチグハグなイメージを受ける。
当のウェンは心の中で『お前のせいで進まねえよ!』と毒づきながらもまあな、と曖昧な返事をする。
ウェンは先日の「私は未確認生物戦闘隊『HOPE』の一人。どうぞお見知り置きを。」という台詞の後始末に追われていた。
というのも、世界は、滅亡の危機にあった。
未確認生物、政府たちからはヴァイスと呼ばれている人類の敵たちは__『突然』出現した。未確認生物は異常な力により破壊の限りを尽くすのみ、ただただそれだけだった。人類の光、それは先日世界に周知した『HOPE』の存在だった。
『HOPE』とは、とりあえず『強者』が集められた。中には『超能力者』と呼ばれる者もいる。
フェムもその一人である。その能力は感情誘導。実際のところ、感情を操ることができるような代物だ。しかし感情”誘導”なのは限界まで能力を使えば良くて全治二週間、最悪の場合死に至るからだ。故に、能力は本来の能力より一段階下げたものを使うとされている。
それはともかく。
『HOPE』はヴァイスを倒すために結成された、強力無比な軍団なのだ。しかしその力が戦争に使われることもない。そもそも、戦争は滅多に起こらないのだが。
そんな『HOPE』の存在が世界に周知すれば、世界中から各国のお偉い方がその頂点である最高司令官にやってくるのは当たり前のことであろう。確かに、旧知の知り合いであるフェムと飲んでいて深夜のテンションで『HOPE』のこと知らせようぜ!と一応前々から言っていたことを派手に!と言ったのだ。過去に戻れるならば真っ先に過去の自分を殴りたい、と思うくらいには大変だった。
「んで?何の用だ?」
もう既に諦めたのか魚が死んだような目でフェムに問うウェン。にこ、と笑うフェムにつぅ、と冷や汗が流れ落ちる錯覚がする。
「今日は私だけじゃなくてもう一人いるんだよー!おいでー!」
フェムとは違い控えめなノック。入ってきたのは小柄なフェムよりも小さな少女。腰までの燻んだ金髪の三つ編みにおどおど、きょろきょろする翡翠色の瞳。その服装はただの一般市民にしか見えないし、『HOPE』のエースであるフェムがとてもじゃないが気にかける少女ではないと思う。
「ふふん!聞いて驚くな!彼女ことメリッフ・モーサは!回復系の超能力者なのだぁぁ!」
その言葉に、ウェンは徹夜続きで隈のくっきり浮かぶ目を大きく、それはそれは大きく見開いた。超能力者はいろいろとあるが、最も珍しいのが回復系だ。その理由は研究されてはいるが未だ解明されていない。そのため回復系の超能力者はとても貴重なのだ。
「それは本当か!?……は、入ってくれるか!!!」
ぐりん、と真剣な表情でメリッフの方を振り向く。メリッフはひびゃ!と奇声をあげ半歩後ずさった。しかし何かを思い出した表情をすると、真剣な表情で話し始めた。
「わ、私の家、とっても貧乏なんです…でも私、人に役立つ人になりたくて…そしたらお母さんとお父さん、自分の生活費叩いて、これで高校と大学行きなさい、って…だから、私自分が不甲斐なくて…だから!」
ごく、とメリッフが息を呑む。本気と書いてマジと読む、の目をしていた。
「ここでっ…いろんな人の命、救わせてください!」
フェムがニヤリと魔王のような笑みを浮かべながら、ウェンの方を見た。
「ね、いい人材でしょう?」
有無を言わさないその言葉に、ウェンは力強くうなづいた。
- Re: SPACE WAR ( No.3 )
- 日時: 2016/01/26 18:35
- 名前: 三田 新凪 (ID: dDPEYPay)
私の名前はメリッフ・モーサ。田舎に住む平々凡々という言葉がお似合いな、普通な少女。そんな私は、今話題の『HOPE』本部に居た。何故か。事の発端は、目の前の少女だった。
いつもの通り、畑を手伝っていると、同じ村の人が私に用がある客がいる、と慌てて駆け寄ってきた。無論、何かいい事をしたわけでもないし、むしろ悪い方があり得る、私達一家は正に顔面蒼白、であった。
慌てて村長宅に駆け込むと、そこには一人の少女が優雅にお茶を飲んでいた。田舎では珍しいものの、都会ではさして珍しくない薄紫の髪を左耳上に結い上げている。迷彩柄の軍服に科学者のような白衣。どれをとってもチグハグな容姿に私達一家は失礼にも目を見開いた。
少女__フェム・アイビトーチェと言うらしい__は私達の姿を確認すると、非常に悪どい笑みを浮かべた。
「やあ。君がメリッフ・モーサだね?実は用があるんだ、君の能力に。」
笑顔で告げられた残酷な言葉に、私は青を通り越して白くなった。
私には、世界中で数人しか確認されていない貴重な回復系超能力者だ。その能力は他人の傷、疲労を引き受ける。勿論沢山の傷や疲労を引き受ければ死んじゃうかもしれないけど。能力が発覚したのは母さんが包丁で怪我した時。
「痛いの痛いのとんでいけ〜」
ただ単に、気休めになれば、そう思っただけなのに__
「いっ…!」
私の指からはだくだくと血が溢れていた。傷の場所は、母さんが怪我したところと全く一緒。試しに、母さんが薄くカッターで手に傷を作って、私が痛いの痛いの飛んでいけ、と言う。結果は、変わらなかった。
そのことに母さんと父さんは歓喜するよりも、それを知られるのを恐れた。私の能力は癒すことではない、自己犠牲により人を助ける能力。この力がお金持ちの病気持ちとかに知られれば、私の身が危ないと、そう感じたらしい。
ドクリドクリと心臓が暴れる。母さんと父さんはぎゅっと私の手を握った。その様子を見て、アイビトーチェさんは緊張を和らげるように、先日のように優しく笑った。
私の恐怖感は何かに食べられたかのように__消えた。
「そう怖がらないで。確か君は人の役に立ちたいんでしょ?」
そんな情報どこから__と思うものの、恐怖感は発しない。ただどうして、という好奇心は感じたが。
「君の能力を、是非とも『HOPE』で役に立ってほしい。勿論無理をさせるような真似はしない。」
とても、とても不安だ。でも私は__この人に何か心惹かれる部分があったから___
そうして私は『HOPE』の一員となった。
ふと、隣に歩くウェンさんを見る。最初のうちこそパリスシュトさんと呼んでいたがウェンさん本人から名前でいい、と言われたため控えめにウェンさん、と呼んでいる。
「よし、ここがお前の部屋だ。」
A49番というプレートが立てかけてある部屋は、どうやら私の部屋になるらしい。少し覗いてみると、なかなかに、というか見たこともないくらい広かった。個室というには広すぎるくらいだ。驚く私に、ウェンさんは軽快そうに笑う。
「俺は仕事があるから戻る__お、丁度いーところに。」
私の部屋の隣のドアががちゃりと開いた。中から出てきたのは黒髪に薄紫の瞳。黒くゴツゴツとした戦闘服など見たこともない私は思わず後退りしてしまう。
「あ、ウェンさん。どうしたんですか。つか奏太見ませんでした?」
「奏太ならさっきアルバと希望者について喋りながら歩いてたぞ。それよりも此奴。メリッフ・モーサって言うんだが回復系の超能力者でよぉ。お前の隣部屋になるから面倒見てやってくんね?」
ひょい、と比喩でもなくウェンさんに摘まれて前に出される。
「あぅ…あの、め、メリッフ、です…」
「俺は望月颯太だ、よろしくな!」
ニコ、と笑顔を浮かべる望月さん。お兄さん、と呼びたくなる。びし!と背筋を伸ばしてしっかり一礼。
「よろしくお願いします!」
- Re: SPACE WAR ( No.4 )
- 日時: 2016/01/24 15:52
- 名前: 三田 新凪 (ID: dDPEYPay)
- 参照: https://twitter.com/olina_jugris/status/691099492880248832?s=09
こんにちは、三田新凪です。
骨折、大分良くなってきたのでぼちぼち更新していきます!
そして私が更新を再開した一番の理由うううう!
神瀬 参さんにイラストを描いてもらいました!可愛いいぃいい!
二パターンも書いてくださった神瀬さんに感謝です、本当にありがとうございました!
絵はURLからどうぞ!
- Re: SPACE WAR ( No.5 )
- 日時: 2016/01/26 18:37
- 名前: 三田 新凪 (ID: dDPEYPay)
「___っ! くそ。くそ、くそ!」
瓦礫の下にいる大切な弟。必死でその瓦礫を退けてゆく。けれど幼いその手では持ち上げるのは小さい物が精々。視界は涙で歪み、手からは血が流れ出ている。
_____グルルルウゥゥ……!
瞬間、自分と弟を影が覆った。はっ、と上を見上げると三つ頭の巨大な犬がいた。口には巨大な牙が生え揃えられ、その毒々しい薄紅色の舌をダラシなく出していた。どこかで見た『ケルベロス』という言葉が頭を過ぎった。
「__兄ちゃん、逃げて、…」
掠れた声で弟は言った。その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。駄目だ、駄目だ。絶対にそんなことはしない。絶対に助ける。
_______けれどそれは、叶わなかった。
ーーーーーーーーー
俺……涅凪は『HOPE試験』と紙に書かれた時刻表を確認した。もうそろそろ、試験が始まる頃だ。今では世界的に有名な『HOPE』に入る為の試験。
白を基調としたどこか硬い雰囲気の試験会場には多種多様な人々が集っていた。
俺の隣の席には俺と同じ日本人の少女。
少女はその橙色の目でどこか遠い所を光のない目で見つめていた。
「何?君、僕に何か用?」
「え、いや……」
何か用、と聞いている割にはその瞳はさして知りたくもなさそうだ。不意だった為、思わず吃る。少女はやっぱいい、と言うとそっぽを向いた。
「はーーい!!注目ーーー!!」
想定外の音量に騒めいていた希望者達はその声の主の方を向いた。
一つに縛られた黒髪に同じ色の妙にゴツゴツとした戦闘服の男は、人当たりの良さそうな笑みを浮かべた。男の隣にはショートヘアに暗い金色の眠たげな瞳の女性。
その女性にさっきの音量の原因であろうマイクを渡した。
「えーと、こんにちは。『HOPE』の一人であるアルバ・クロックマンです。」
先ほどとは打って変わった普通の音量に思わず安堵の溜め息を吐いてしまった。
「あ、隣は望月奏太。彼も同僚だよ。今日はご存知の通りHOPEに入る試験を行う。そう生易しいものではないから駄目な人は今帰ってもいい。誰も責めはしないからね。」
女性__アルバさんは優しげにそう言った。しかし、希望者の誰一人も動きはしない。そのことにアルバさんは微笑んだ。
「さて、ではまず第一試験。とりあえず数を絞るので君らとは一対一で戦ってもらう。組み合わせはもう考えてあるから、そこの表を見るといい。」
一旦アルバさんは言葉を区切る。望月さんにマイクを渡すのかと思ったがただ単に息を吐いただけのようだ。
「対戦相手がわかったら会場に入る前に渡した番号札と同じ番号の控室に行ってね。順番が来たら呼ぶから。まあでも、他の人の戦闘を見たかったら戦闘場は6階だから行ってもいいよ。」
長文を言って疲れたのかふぅ、と一息つくとアルバさんは会場の後ろに貼ってあった表を指した。一対一で戦うことは大体予想していたのか、騒めいたりはしなかった。
俺の番号札は82。これでどれだけの人数が来たのかが予想できた。
対戦相手は___リリィ・リラリア。リがとことん多い名前だ。
さっき隣だった少女が気になり、盗み見る。視線を辿ると、水上睦月、という名前と外国人の名前。どう考えても少女は日本人なので少女の名前は水上睦月というのだろう。勝手に名前を知ってしまったことに少々罪悪感を覚えるも、名前が知れてすっきりとしている自分もいた。
しばらくして、表に群がっていた希望者達は徐々に波を引くように少なくなっていく。
自分もそれに流されるように控え室に向かう。
どうやら俺の控え室は9階のAフロアのようだ。行列のできたエレベーターに、時間はあることだし、と外にでることにした。
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