シリアス・ダーク小説

(自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(祝!閲覧1000!)
日時: 2016/11/01 22:50
名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)

(紹介前に総合掲示板の雑談掲示板に「異世界ぐらしはじめます 雑談所」を設けました!お気軽にお聞き下さいませ♪Twitterにて基本活動しておりますので急ぎでしたらTwitterまで!)

はじめましてミヤビと言います。

異世界ぐらしでは中世チックなフィールドを好きなように駆け回り。
共闘するもよし自分で国をつくるもよし。
自分ならこうすると言ったことを書いちゃって下さい。

これはリレー小説形式で。
参加型の小説です。全てが正規ですべてが外伝であるこの世界にようこそ!

では下記に簡単な説明を乗せておこう。

また、【あくまで楽しむことを前提に】書いて下さい。
マナーを守り規則正しいもう一人の自分を小説で動かしましょう!

【異世界ぐらしはじめます】設定資料

世界観設定

【属性】

〔英雄〕基本人類のクラス、技術スキル高 基本値低
〔人外〕魔物相当のクラス、特殊スキル高 致命的な弱点有
〔自然〕精霊とかのクラス、保持スキル多 異常体勢低

【能力、職業】

能力

先天性、後天性のオリジナルスキル。

ストックは2まで。
強力な能力であればデメリットも付属させる。


能力(時を3秒止める)デメリット(次発動まで3時間チャージ)


職業(有利→不利)

〔英雄〕騎士→弓兵→魔術師→
〔人外〕死兵→呪士→死霊使→〔自然〕巨神→獣人→エルフ→

職業はオリジナルスキルの関係上でオリジナルの職業の作成可


能力(竜属性の召喚)職業(竜騎士『騎士』)

【武器】

武器や技術は中世17世紀ちょっと先程度、よくて蒸気機関までが好ましい。
(無論新型でボルトアクションのライフルから有線電気機材は可、
ただ量産する技術、発展途上の技術に留める)

【世界観】

世界が1度、人類文明が滅び再び現文明まで築き上げて17世紀。
過去の遺跡・遺産から可能な限り再現可能なものを生産しまた1から作り上げた物を使って
レンガ造りの建物や紙の作成。現歴史までなかった生命に宿る超能力『魔導力』によって可動する
乗り物や工具を作り。世界各地には『神殿』や『城都市』といった文化が確立されていった。

世界にはいくつかの大陸と無数の島があり、
上陸してすぐ山道を登ってはハルピュイアやマンドラゴラと遭遇する島もあれば
果てしない雪の平原で巨大な生物や奇妙な知的生命体に襲われる所も、

この世界で生き残ることは出来るか・・・


(参加者の視点)
あなたは普通の現実世界では人気ゲーム「ワールドレコード」をプレイしていたゲーマーで、
特殊ソフト(3DCG作成ソフト等)を使えば、自分好みの見た目をつくれたりする狩猟を目的にした
一大娯楽として確立されたゲームで早7年。
発信元の大企業『ノア』現社長『イズミ』はユーザーの期待に応えるべく。新技術の投入によって現ワールドレコードは
全く新しいゲームに生まれ変わると宣言。

同時刻、新デバイス『スフィア』と呼ばれる掌サイズのマウスの形のした機械(子機)を発売。
これと連動することで新感覚の体験ができるとのこと。

それを使うと一瞬白い閃光に包まれたと思ったら。
なんと自身が作成したキャラクターになっていた。

だが世界観は全くの別物。
土地勘無し、お金なし。ログアウト画面無し。
あるのは以前のステータスとスキル、アイテムのみ。

一応地理は現実世界の配備で問題なし

スタート地点は自由。
国を創るも奪うも自由。
この世界に入ったプレーヤーはここの住人となって元の世界に帰る方法を模索あるいは
世界征服を目論むことも自由。

* * * *

御用の方は下記まで御連絡下さい
(質問・感想お気軽に)

https://twitter.com/miyabi_virossa(ミヤビアドレス)

https://twitter.com/yawashigure(柔時雨)

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Re: 異世界ぐらしはじめます(レックス視点) ( No.68 )
日時: 2020/07/16 15:22
名前: ka☆zu (ID: Uc2gDK.7)

act12 事実?は恋愛小説より奇なり


アレンさん達を見送った日の翌日、ここ数日忙しかったので休日として、各自が好きなように過ごしていた。
僕は軽いトレーニングと持ち物の確認を済ませ、作戦会議室で寛いでいた。
ボルトは朝から城下町に出かけている。
明日件の騎士団に向かうらしく、その為の準備だとか。
ハーミアは昼頃に起きてきて、さっきから魔導書を読んでいる。
元々外で遊び回るような人間でもないので、そのまま動くこともなく僕の時間は過ぎていく。
とはいえ座りっぱなしも体に悪いので、僕は寝室に戻って、ベッドに寝転がった。
市場で買った小説を読む事にしたわけだ。
元の世界でも、休みの日は本にかじり付いていた。
文字で紡がれた情景が、美しく切なく頭にイメージできるからだ。
人気の小説というだけで何も考えずに買ってしまったが、内容はどんなものなのだろう?


読み込んでみると、恋愛小説のようだった。
種族の違う二人が恋に落ちるのだが、それが故に起こる相手の文化と生態の違いや差別にぶつかりながら、仲を深めていく。
作中ではエルフの女性とオーガの男性の恋を描いているが、色々な種族が入り混じるこの世界だからこそ色々なカップルの励みになるのだろう。
人気が出るのも頷ける、良い物語だった。
……読み終えた時、頭にドロップの笑顔が浮かんでからずっと離れないのは何故なのだろう。

「何読んでるの?」
いつも間にか男部屋に入っていたハーミアが、小説を見て言う。
「恋愛小説。僕は読み終わったからハーミアが読むかい?」
「ありがと。じゃあ借りるね」
本を渡すとハーミアは部屋を出た。
……去り際に、「そういえば…この前助けてくれたドロップっていうスライムの子、可愛かったね」とニヤニヤしながら言ったもんだから、一瞬びっくりした。

それからは過去に買った本を読み返したり、この世界の鉱石や植物について知るために辞典を開いたりしていた。
ソルストーンやルナストーン以外にも、エネルギー事情を委ねられそうな不思議な宝石がいくつかあるらしい。
魔導力にあふれる世界だからこそ成り立つ植物も沢山あるようだ。マナを溜め込むヤシの木とか。

現実世界とは違う地理環境によって形成された世界に想いを馳せていると、ハーミアが再び部屋に入って来た。
「ねえレックス、さっきパパの使いが
来て、こんな手紙を置いて行ったの」
それを僕が読んでみると、習得し切れていない魔法の会得のため、しばらくハーミアを城に返して欲しいという旨が書かれていた。
「成る程ね…ハーミアはどうしたい?」
「うーん……正直こっちにいたいけど、戦力の増強がこれからの冒険の役に立ちそうよね……そう考えたら、一度勉強しに帰るのも悪くないかも」
そうやって話していたら、ボルトが帰ってきたらしい。
「なあ二人とも、少し話があるんダ」


僕らは作戦会議室に移動した。
「ボルト、話ってなんだい?」
「そんな改まって、すごく大事な話なの?」
「あア。そうだナ」
そういうと、ボルトは話し始める。
「今日の交渉は上手く行ってな、パラディンのライセンス講習は受けられる事になったんダ。だがその為に、ポロニアーナの聖騎士隊に所属するって話ダ。講習期間が終わるまでは、そこの正規兵としての訓練と士官を積む事になル」
「って事は……」
「あア。暫くの間、パーティから離脱する事になっちまウ。それでも問題ないか確認したイ」
ボルトの目は真剣だった。
「……わかった。無茶はしないでね」
「すまねえナ、待たせる事になっちまウ」
「……あのさ、あたしも……」
ハーミアはさっきの手紙をボルトにも見せる。
「多分……あたしも同じくらい抜ける事になるわ。ごめんね二人とも」
少し寂しいけれど、僕は笑顔を崩さないようにして言った。
「大丈夫。二人が強くなって帰ってくるのを待ってるよ」
「ありがとナ……リーダー!」
「あたし達、絶対に強くなって帰ってくるわ!」
三人で手を重ね、誓い合った。
翌日の朝早く、二人は必要なものを持って拠点を発った。


「僕は、何をしよう」
僕はバトラーやアンペアに溢した。
「非常事態でない限り、私は動けませんからね……お一人での探索は危険かと」
「とは言え市場に行く用事もないし、いつもの如くこの周辺を探索や掃除するしかないかもしれないな」
その言葉通り、周辺の素材をアンペアと共に採集したり、周辺のモンスターを一人で掃除する生活が数日続いた。
元々来たばかりの頃は一人だったし、今でもバトラー達は居るのにも関わらず、心は寂しいままだった。
あの賑やかな日常が、僕にとってかけがえのないものであったと再認識した。
1週間程でなんとか立ち直り、自分にできる事を考え始めた。
街のギルドに通っては、一人か少人数のお尋ね者を捕らえる事を繰り返すようになったんだ。


そんなある日、ギルド帰りに市場の方から喧騒が聞こえた。
行ってみると、盗賊団のような連中が略奪行為をしているらしい。
見て見ぬ振りは出来ず、真ん中に飛び込む。
悪漢の振り上げる斧を間一髪でかわし、トンファーを喰らわせる。
するとすぐに次の男が槍を突き出してくる。
一人一人は大したことがなくても、大勢で一斉に襲われると分が悪い。
次第に回避と防御ばかりになってくると、集団を挟んで反対側にも戦いの声がする。
止まない攻撃を何とかいなしながらそちらに近づいていく。
向こうも同じ考えだったようで、喧騒がこちらに近づいてくる。
喧騒がかなり近づいて、間の数人を吹き飛ばせば合流出来そうな距離になる。
僕は意を決して、右手のトンファーを回転させ、渾身の力を込めて振り上げた。
それと同時に、向こうからも大規模な斬撃が飛んだ。
その時に聞こえたのは、聞き覚えのある声だった。
「一角閃撃!」
「ワイドスラッシュ!」
二つの技が生んだ余波は、ぶつかりあって間にいた連中を弾き飛ばし、僕達の隔たりを完全に破壊した。


「レックス!」
「ドロップ!」
斬撃を飛ばしたのは、人型状態で大剣を構えたドロップだった。
「ごめん、また手伝ってもらう事になった!」
「こっちの台詞ですよっ!手伝ってください!」
僕達は背中合わせになって、盗賊団の残党に囲まれた。


「合流したところでたかが2人だ!数で押し切れ!」
頭らしき男の怒号が飛ぶ。
大勢の悪漢はニヤつきながらにじり寄る。
だけど不思議と負ける気はしなかった。
「スキル、疾風」
僕はトンファーを赤熱させ、そこに追加でスキルをかけた。
ドロップは大剣に水の魔力を纏わせる。
「熱風鋼鉄拳!」
「メイルシュトローム!」
僕の放った熱風と、ドロップの放った渦潮が互いに作用する。
それは大きな竜巻となり、暴漢一派を吹き飛ばした。
自由落下で地面に激突し、動けなくなっている彼らを拘束し、ひとまず事態は収束した。


憲兵が現場検証をしている間、関係者ゆえの事情聴取のため待機している僕に、ドロップが話しかけてきた。
「この前は、沢山仲間がいましたよねっ?今日はお一人の用事でもあったんですか?」
「ううん。あの時の面々のうち何人かは別世界から来た友達で、残りは仲間なんだけど、今各々の事情で別行動してるんだ。だからここ数日1人だよ」
それを聞くと、ドロップはにぱっと笑ってこう言った。
「じゃあ、皆さんが帰ってくるまで、私と組みませんかっ?一人旅に飽きてたんです」
その提案を受けて、ここぞとばかりに僕は答えた。

「帰ってくるまでと言わず、良かったら…その、ずっと一緒に来てくれないかな……?きっとみんな、ドロップなら大歓迎だよ」
「ふふっ、なんかプロポーズみたいっ」
爆弾発言に僕が赤くなっていると、ドロップは答えた。
「それなら、ずっと一緒に着いていきますね!よろしくっ、レックス!」
ドロップはにーっと笑ってみせる。
僕はふと、この前のカプセルを持っていた事を思い出した。
一瞬考えがよぎったが、すぐにかき消す事にした。
(無理矢理捕まえるなんて、この子にそんな事は出来ない)
それから気をそらそうとドロップの方を見ると、アーマーの端に何か、スフィアのような物が付いているように見えた。
とはいえすぐに憲兵に呼ばれたので、それを聞くタイミングは逃してしまった。


事情聴取が終わり、僕達2人はオーベロン様の御前にいた。
「ドロップ殿、そしてレックス。此度の市場の鎮静化、そなた達の働きと聞いた。民を代表して感謝の意を伝えさせて貰う」
「ありがとうございます。しかし…」
「当然の事をしたまでですからっ」
「そうか。してレックスよ。我が娘は今帰省させているが、ボルトはそなたと一緒ではないのか?」
「ボルトは現在、新たな技能の獲得を目指して離脱しています。なので今は、さっき組む事になったドロップと2人のパーティです」
「ですっ」
「そうか…そうなると前衛2人で、探索にはきつい物があるな」
「今まではボルトが回復薬などをすぐに作ってくれていたので多少無茶な探索でもやっていけましたが、この状態だと難しいですね…」
「2人とも回復が出来ないのですっ」
オーベロン様は少し考えると、こんな事を提案してくれた。
「ならば今回の礼として、国領にある、未開拓の土地を譲渡しよう。どう使うかはそなた達の自由であるし、必要とあらば専門の人員を派遣しよう」
「ありがとうございます!」
移動拠点も使い続ければメンテナンスの必要があるし、外の景色が変わらないのもいいものだしで、僕達はそれを喜んだ。


案内されたのは、城の裏からしばらく行った小高い丘の上。
川に面した場所に、これ見よがしに柵で囲われていた。
現実の日本で言えば、ガソリンスタンドくらいは建てられそうな広さの土地で、一軒家に庭を付けても窮屈さがなさそうな十分な土地だった。
ボルトが帰ってくるまで拠点の最適化は出来ないので、簡単に寝泊りできる建物を用意してそこでしばらく暮らす事になる。
少なくとも、これで拠点に何かあっても安全な場所で寝泊りができるわけだ。
支給された簡単組立式の家キットをパッと置いて、そこを仮設の拠点とした。
あとはその隣に平で綺麗なスペースを設け、いつもの拠点を停めた。
シャワーなどの最低限のものはいつもの拠点のものを使う。
それ以外は仮でベッドを置いた仮の家で済ませる事で、掃除の手間を省くわけだ。
そうしたら仮の家の前に生えた木を切り倒し、切り株を椅子がわりにこしらえて夕暮れを迎えた。

食事を済ませた僕達は、さっきの切り株に腰掛け、木箱を積んだだけの簡単なテーブルで寛いでいた。
浮かんだ満月を眺めながら、2人でお茶を飲んでいた。
今日1日で互いの事を話したり、また一緒に戦った事で、お互いの事をよく知れたと思う。
月光に照らされた笑顔は、やっぱり僕の心を掴んで離さない。
「どうしたんですかっ?黙っちゃって」
「へっ?いや…何でもないよ」
見惚れてしまった……なんて言ったら笑われるだろうか。
ボルトとハーミアが帰ってくるまで、どの位かかるかは判らない。
偶然が重なったこの不思議な生活が明日から本格的に始まる事が、僕は内心楽しみになっていた。

Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.69 )
日時: 2020/08/07 00:11
名前: 柔時雨 (ID: lU2b9h8R)

No.16 〜 知識の渇望者 〜

タドミール・テルミヌス・訓練場

「ブリリアント・アロー!!」

上空で剣を構えるフレデリカの側面に、光で作られた矢が数多出現する。

「ちっ!」

矢が大量に降ってくる兆しを感じ取り、地上で武器を構えていた俺とザイン、エルネストが各々の判断で武器を引き、矢の落下予測地点から離れる。

同時に光の矢が雨のように無人の場所に降り注いだ。

「流石皆様、避けられましたか。ならば私も地上で肉弾戦をするしかないようですね!」
「ほぅ……ならば下りてくると良い。俺の斬馬刀で正面から叩き斬ってやろう!」

上空から急降下してくるフレデリカを正面に見据え、ザインが斬馬刀を構える。

「フレデリカの相手をするのは良いけどさ……側面の防御ががら空きだぜ!」
「……っ!御館か!!」

横目で俺を捉えたザインに、もう少しで突撃槍の先端が届……きそうなところで、俺とザインの間に入って来たエルネストの突撃槍によって阻止されてしまった。

「アレン殿。今のは流石に騎士道に反するのでは?」
「そうは言うけどな、エルネスト。これがマジもんの戦場だったらザインは脇腹を突かれる・斬られるなんかして死んでたぜ?エルネストの言う騎士道精神は立派だと思うし、1対1の戦闘なら俺もそれなりに尊重するつもりではいるけどさ……今回の修練みたいな乱戦状態だと、そうも言ってられねえぜ?乱戦の恐ろしさは、エルネストも身を持って体験してるだろ?」
「……!そうですね、アレン殿の申される通りです。失礼しました。」
「いや、いいんだ。思うところがあるなら、ちゃんと言ってくれると俺も嬉しい。できるだけ改善するようにするからさ。」
「はっ!」
「ふむ……確かに親方の言うことは尤もだ。俺も全方位に攻撃できる手段を検討するべきかな?」
「そうですね。アレン様とエルネスト様の突撃槍は直線距離上の敵を攻撃するために特化している武器。横に薙ぐこともできますが、私の剣やザイン様の斬馬刀に比べるとカバーできる範囲が、ある程度限られているでしょうから。」
「よし……いろいろ試してみたい。中断して悪かったな、フレデリカ。今一度、相手を頼む!」
「はい!私で良ければ、喜んで!」
「頼む。御館もエルネストも、俺の隙を見つけたら攻め込んで来てくれ!可能な限り対処できるようになりたい。」
「おう!わかった!」
「承知しました!遠慮なくいかせてもらいます!」

俺達は各々再び武器を構え、乱闘を再開した。

「おうおう。これだけ武器持ちの味方が手合わせをしている光景ってのは、なかなか壮観だねェ。」
「あら?マウトは参加しないのですか?」
「オレが?あの中に?はっはァ!冗談きついぜ、シルヴィアさんよォ。俺があの中に行ったら、真っ先にザインとフレデリカの剣で斬られて、大将とエルネストの槍で穴だらけにされて終了だっつうの!」
「それでも死なないのが、貴方の強みでしょうに。」
「そういうシルヴィアはどうなんだよ?せっかく弓を持ってるんだ。試しに大将を狙ってみたらどうだ?」
「…………そうですね。ですが、地上に居る主様、ザイン、エルネストは狙いません。」

シルヴィアは弓に5本の矢を番えて、上空に居るフレデリカに狙いを定める。

「……っ!?シルヴィア様?もしかして……私を狙っておられますか?」
「えぇ。貴方に恨みはありませんが……上空で動く敵にどれだけ矢を当てられるのか、自分の腕を確かめてみたいと思いまして。」
「なるほど。では、私もアレン様達と交戦しつつ、シルヴィア様の矢を防ぎ、避ける訓練をしましょう。いつでもどうぞ!」
「えぇ!いきますよ!!その6枚の黒い翼のうち、5枚を一度に射抜いてみせます!」

〜 数分後 〜

訓練を終えた俺達は、井戸から汲み上げた地下水で濡らしたタオルで、汗を拭っていた。

「ふぅ……たまにはこういう大乱闘も悪くねえな。」
「そうですね。これで各々、課題ができたでしょうし……何より、仲間の実力がどれほどのものかを知る機会ができたのは良いことだと思います。」

俺の隣でシルヴィアが賛同してくれる。

「今度はマウトとも手合わせしたいところだな。」
「そうですね。今回は見学されておられたが……貴殿も戦えるのでしょう?」
「まァ、お前等とは、ちょっと毛色が違うけどな。」

「……あっ」

マウトやザイン、エルネストが話をしている場所から少し離れた処で、フレデリカが短く声を上げた。

「ん?どうした?フレデリカ。」
「アレン様……いえ、大したことでは……ただ、剣が少し刃毀れしているのに、気が付きまして……」
「そういえば、何度かザイン殿の斬馬刀やアレン殿や私の槍と交えましたね。十中八九それが原因でしょう。」
「そういえば、俺の槍もちょっと先端が歪んできてるな……軽微なモノなら自力で何とか出来るかもしれねえけど、あんまり酷いと職人さんに頼むしかなくなってくるだろうな。」
「なァ、大将。戦力増強は結構なことだけどよォ。そういう武器の手入れをメインでやってくれる職人みてェな奴を仲間にするのも、検討した方がいいんじゃねェか?」
「そうだな。うん。マウトの言う通りだ……今後何かの戦いに参加する際に、武器が使い物にならないってんじゃ話にならないからな。」
「では、ドワーフの集落にでも出向きますか?彼等の技術であれば、武器の修繕などは……」
「駄目です!ドワーフを仲間に迎え入れるというのは、私は納得できません!」

エルネストの提案を、シルヴィアが声を上げて断固反対の意思を示す。

「珍しいな。シルヴィアが頭ごなしに否定するなんて……」
「まぁ、エルフとドワーフは遥か古より、種族間の仲が御世辞にも良いとは言えませんから。」
「あぁ……なるほど。」

多少のことなら思うところがあっても、そこに利さえあれば納得してくれていたシルヴィアが……と思ったけど、フレデリカの助言で全てが納得できた。

「御館。俺からも意見具申、構わんだろうか?」
「おう。何だ?ザイン。」
「ウチは御館を初め、俺とエルネスト、フレデリカが前衛を固め、マウトが好き勝手に動き、シルヴィアが後衛として矢を放つ……おそらく、これが組織で戦う際の基本的な動きになるだろうと、俺は思っている。」
「あぁ……確かに、そうなるかも。」
「先のエルセアの軍勢との戦いでシルヴィアの腕を見せてもらった……が、流石にシルヴィア1人で後衛全てを任せるというのは、彼女への負担が大きくなるのでは?と、思ってな。」
「確かに、私の弓だけではカバーできる範囲・距離は限られていますから……」
「なるほど。確かにシルヴィアとフレデリカは魔法を使えるみたいだけど、それとは別に魔法を専念職にして、高火力な魔法で敵を一掃!……みたいな戦い方ができる味方が居てくれたら心強いな。」
「仲間が増えるのは純粋に良い事じゃねェか!仮にどっかへ遠征に行くトコになった場合、条件に合ったヤツを選べる選択肢が増えるんだからな。」
「そうだな。よし!じゃあ、当面の目的は魔法使いと鍛冶職人を仲間に迎え入れるよう、情報収集を頑張ってみるかな。」

◇◇◇

翌日

タドミール・テルミヌス・図書館

久しぶりに本を読もうと思って来てみたら、案の定シルヴィアが居たので、そのまま2人で読書を楽しむことにした。

「…………ふむ。主様の世界の書物は、どれも興味深いですね。私達のこの拠点に兵は居ませんが、軍師と呼ばれる役職の方々の策の立て方は勉強になります。」
「半分は創作かもしれねえけど……それが実話で、尚且つ実現できるってんなら……格好良いよな。」
「うふふ。そうですね。さて……」

手にしていた1冊を読み終えたシルヴィアが本を閉じ、ゆっくりと立ち上がる。

「えっと、これの次の巻は……」
「お主が探しておるのは、この本ではないか?」
「あっ、ありがとうござ……………っ!?」

背筋に悪寒が走ったのであろうシルヴィアが慌ててその場から跳び退き、弓矢を構える。

「どうした!?シルヴィア!」
「貴方は何者ですか!?いつから……どうやって、この図書館に入ったのです!?主様が来るまで、物音1つしなかったのに……」

弓を構えるシルヴィアの前方では、骸骨が厳かに装飾された黒と紫が混ざったような色のローブを纏って浮遊していた。

「ふぁっふぁっふぁ!そう警戒するでない。それにしてもこの書庫は実に良い!我もこの姿になり、久遠の時を生きつつ、数多の知識を得てきた……否!習得しきったと思っておったが、まだ我の知らぬ知識が存在していたというのか!」
「質問に答えなさい!」

1人で盛り上がる骸骨に痺れを切らしたのか、シルヴィアが1本の矢を放った。

そして……その矢を骸骨が片手でキャッチした。

「なっ!?」
「お主……このような場所で矢を放つとは何を考えておる?貴重な書物に傷がついてしまっては、価値が下がるであろうが!」
「嘘だろ……シルヴィアの矢を、片手で受け止める奴が居るなんて……」
「む……?おぉ!お主がこの城の主だな!名は確か……アレンと申したか?」
「え?あぁ、うん。そうだけど……あんたは、一体?」
「これは失礼した。我の名は『アルフォンス』!。種族は【 人外 】、クラスは【 死霊魔導士( リッチ ) 】である!」
「リッチ!?」

目の前にいる骸骨……もとい、死霊魔導師は御丁寧に、先端に大きなルビーが装飾された杖を取り出して名乗ってくれた。

それにしてもリッチか……最強クラスのアンデッドで、俺も違うゲームでコイツが出て来た時は倒すのに苦労させられたなぁ。

「貴方がリッチであることは解りました。では、聖櫃を出していただきましょうか?」
「お主……知識はあるようだが、交渉はまだまだよのぅ。我がそう言われて、簡単に出すとでも思っておるのか?」
「くっ……!」
「シルヴィア、聖櫃って何だ?」
「リッチが自分の魂を納めている箱です。これを……中の魂を攻撃・浄化しない限り、リッチを討伐することができません。」
「それって、つまり……仮にリッチが此処にその聖櫃ってやつを置いて外出したとして、その外出先で戦闘になった場合……建物内にある聖櫃の中の魂を攻撃されることはないから、その戦闘では絶対に死なない、不死身になるってこと?」
「はい。そういうことです。」

何だ?そのチートキャラ……

「なぁ、アルフォンス。話は戻るんだけど……あんた、何で此処に居るんだ?」
「む?なに、そう大した理由などありはせんよ。ただ……己の持つ書物で得られる内容は全て覚えてしまったのでな。昨夜のうちに各町の書店を転々と移動しておったのだが……今、世間に出回っておる知識は、我の既知のものばかり!あるいは、我の持つ知識を活用すれば概ね理解できてしまうものが殆どでな。知識を得るために我は人としての生を捨て、冥土へ赴くことも拒否したというのに!そんな新たな知識を渇望してこの幽体で彷徨っていた時に……」
「此処を見つけたのか。」
「うむ!先程も申したが、この書庫は実に素晴らしい!我の知らぬ知識や、久しく忘れていた心が躍るような物語が記された書物が沢山あるのだからな!心配せずとも、此処にある書物の知識を全て把握できたら、この地から去ってやろう。」
「…………いや、去る必要はねえよ。」
「何?」
「アルフォンス。俺達の仲間になってくれねえか?そしたら、此処の本はいつでも好きに堂々と読むことだってできるし、必要とあらば研究室みたいな小部屋だって提供してやれるんだけど……」
「ほぅ……それは実に魅力的だが、アレンよ。お主が我に求める見返りは何だ?」
「ウチは時々あちこちの戦に首を突っ込んだりしてる。最近は比較的平和だけど……その戦闘時に、アンタの扱うことができる魔法で、仲間を守り、敵を倒してほしい。それを約束してくれるなら、あとは此処で好きなように生活してくれて良いよ。」
「我の魔法を頼るか……ふぉっふぉっふぉ!」

俺の話を聞いて、アルフォンスが楽しそうに笑う。

「何がおかしいのですか?主様は真面目な話をされているのですよ?」
「いや……これは失敬。別に小馬鹿にして笑ったのではない。我は知識や力を得るために、この死霊魔導士としての姿となったのだが……人前に姿を現すと忌み嫌われるわ、討伐対象として見られる日々が続いておったのでな。まさか、我を受け入れてくれるような場所が、この世界にあったとは……それが嬉しくて、ついな。」
「そういうことですか……」
「で?俺の提案、受けてくれるかな?」
「うむ!その提案、喜んで御受けしよう!そして同時に、我は今、この時よりお主に忠誠を、此処に居る同胞のために尽力することを誓おう。終わることのない我の第2の生は汝等と共に。」
「おう!これから宜しくな、アルフォンス!」

その後……

最上階の大広間でアルフォンスを他の皆に紹介した。

最初からあまり気負いしている風には感じられなかったけど、他の皆……特にマウトとエルネストを見た時は、安堵していたようにも思う。

フレデリカを見た瞬間、マウトが冗談でやった浄化のくだりがあったけど……聖櫃の中にあるという魂が浄化されかけたんだろうか?

まぁ、アルフォンス本人の気合で、何とか現世に魂を繋ぎとめることができたみたいだけど……

何にしても、これで後衛に新たに魔導士……しかも、最強クラスの死霊魔導士が仲間になってくれたんだ。
これでまた此処も賑やかになるし、有事の際はその力を頼らせてもらおう。

Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.70 )
日時: 2020/08/07 00:12
名前: 柔時雨 (ID: lU2b9h8R)

No.17 〜 古より腕を引き継ぐ種族 〜

当初目標として挙げていた魔導士は、アルフォンスという死霊魔導士が仲間入れしてくれたことにより達成され
もう1つの目標、鍛冶職人を仲間に迎え入れようにも、今のトコロ有力な情報は無く、俺は自分の武器と、刃毀れをしたというフレデリカの武器を持って最寄りの村の鍛冶屋を訪れていた。

まだ拠点を入手する前……盗賊の襲撃に遭っていたこの村をシルヴィアと2人で守って以来、村の人達と親しくなり
食料調達や……こうして、拠点に無い施設の利用を、ちょくちょくさせてもらっている。

「………………いっそのこと、オヤジさんでもいいかもな。」
「ん?何だい?アレンさん。」
「あぁ、いや。武器に不具合を見つけたら、こうしてオヤジさんの店に来れば良いだけの話なんだけどさ。こうして出向いてる間、修繕してもらってる間にまた拠点の襲撃とか、他の戦の増援に呼ばれたりするかも……とか考えたらさ、自分の拠点にも鍛冶職人が居てくれたらなぁって。」
「それで俺をスカウトしてくれるってか?」
「どうだい?オヤジさん。モンスターだらけの職場だけど、よかったら……」
「アレンさんの御誘いは嬉しいんだけどねぇ。俺が此処に店を構えてから長年付き合ってきた窯やその他設備と離れるってのはなぁ……」
「わかってる。俺も言ってみただけさ。オヤジさん、常々『俺はこの店に骨をうずめる』って言ってたもんな。」
「悪いね。でも、そういう話なら適任が居るぞ。」
「適任?」
「おぉい!『ラフィス』ちゃん!」
「はい!」

オヤジさんが店の奥に向かって声を掛けてからしばらくして、1人の女の子が店の奥から出てきた。
紺色のショートヘアで、女の子にしては腕にもしっかり筋肉がついていて……耳と鼻、口は人間と何ら変わらないんだけど、顔の真ん中に大きな目が1つだけ付いている。

「悪いんだけど、この突撃槍と剣の修復を頼む。」
「わかりました!えっと……そうですね。これくらいでしたら、夕刻には全て終えることができると思います。」
「そうか。じゃあ、頼むよ。」
「はい!お任せください!」

そう言って微笑んだラフィスと呼ばれた女の子は、俺とフレデリカの武器を持って再び店の奥へと小走りで戻って行った。

「オヤジさん、あの子は?」
「ん?アレンさんは『サイクロプス』族を見るのは、初めてかい?」
「話くらいは……単眼の巨人で、力が強く本能で暴れまわる種族だと……」
「そりゃまあ、そういう奴等も居るが……全員が全員、武骨で粗野な奴等ばかりじゃねぇってことさ。」
「なるほどな。でも、俺が前に来た時は見なかったな……あの子はいつから?」
「先月くらいかな?最低限の鍛冶用の道具を持って、この村に来たのさ。何でも、自分の店を持ちたいそうなんだが金が無くてな。そんで店を建てるための資金を集めようといろんな町や村の鍛冶屋に『働かせてくれ!』って頼んで回ったそうなんだが……ほら、あの目だろ?」
「まぁ、俺も最初はちょっとビックリしたけど……目が1つってだけだろ?そんなの、ウチのゾンビやデュラハン、リッチに比べたら可愛いもんさ。」
「しれっとまたモンスターが増えてんねえ。アレンさんのトコ、デュラハンやリッチも居るのかい?」
「見た目はアレだけど、気の良い奴等だぜ?それで、話を戻すけど……確かに、抵抗の無い人からしたら、受け入れがたいだろうな。」
「何件も断れているうちにラフィスちゃんも薄々感じ始めたみたいで、此処に来た時もすっかり滅入っちまってたな。」
「そりゃまあ、そうなるだろうな。でも、オヤジさんは受け入れたんだな。」
「おう!この村の連中はアレンさん……は、人間だけど、シルヴィアさんを見ていて異種族にも良い奴が居るってことを、他の町よりは理解できてるつもりなんでね。ラフィスちゃんだけに限らず、他の異種族の奴等とも可能な限り関わろうと取り組んでんだよ。」
「そっか……うん。良いことだと思うよ。」
「で!だ。アレンさん、どうだい?ラフィスちゃんをアレンさん達専属の鍛冶職人として、迎え入れてやってくんねえかな?」
「え?そりゃ目的通り鍛冶職人が仲間になってくれるのは、俺も嬉しいけど……いいのか?ラフィスを俺達が迎え入れちまったら、またオヤジさん1人になっちまうぞ?」
「はっはっは!何だ?俺のことを心配してくれるのか?大丈夫だ!ラフィスちゃんが来るまでずっと1人で切り盛りしてたんだぜ?まだそこまで老いぼれちゃいねえ、まだまだ現役でやれるぞ!」

オヤジさんは豪快に笑いながら、仕事用だろうか?大きなハンマーを振って見せる。

「それにな……1日でも早く、あの子の店を出させてやりてぇんだよ。此処だと、俺が本当に引退するまで店を譲ってやれないからな。だったら、信頼できるアレンさんトコで店を……御仲間さんのために鍛冶屋を切り盛りしてもらうほうが、俺も安心できるってワケよ!近場だから会おうと思えば会いに行けるしな。」
「そっか……」
「どうしても後継者のことを考えるようになったら、そうだな……人間の弟子を取るなり、ドワーフの集落からスカウトでもするさ!どうだい?アレンさん。お願いできねえかな?」
「うん、わかった。けど、とりあえず……まずはラフィスの腕が見たいかな。それと、俺は無理強いをするつもりは無いよ。オヤジさんの気持ちも理解してるけど、あくまでラフィスの意思を尊重してやりたいって思ってる。」
「はっはぁ!まあ、当然の筋だろうな。」
「それじゃあ、夕方にまた来るよ。この話の続きはその時に。」
「おう!アレンさんが来るまで店を開けておくよ。」

***

その日の夕方

俺は再び村の鍛冶屋を訪れていた。

「いらっしゃ……あっ、お昼のお客さんですね。依頼された武器の修繕、終わってますよ。」

店に入るとラフィスが出迎えてくれた。

「ありがとう。オヤジさんは?」
「晩酌用のお酒が無くなったとかで、ちょっと買い物に……はい!こちらの突撃槍と剣ですね。」

昼間も思ったが……一般的な女の人と変わらない背丈なのに、俺の突撃槍とフレデリカの長剣を軽々と持って移動しているあたり、さすがサイクロプスだと思う。

俺はラフィスから受け取った槍を手に取り、先端の方を見た。
少しだけ気になっていた先端の歪みがしっかりと元通りになっている。

「おぉ……これ、オヤジさんの手を借りずに君1人でやってくれたのか?」
「はい!あの、まだどこか不具合でもありましたか?」
「ううん。全然!完璧な仕上がりだ……ありがとう!おかげでまたしばらくは戦えるよ。」

俺は槍からカウンターに置かれたフレデリカの剣をみる。
彼女が気にしていた刃毀れも完全に修繕されている。これならフレデリカも満足してくれるだろう。

「うふふ。喜んでいただけて、良かった。」
「ふぃ〜……ただいまっと。」

武器の受け渡しが終わった頃、この店のオヤジさんが裏口から帰って来た。

「店主!お帰りなさい。」
「おう。おっ!アレンさん、来てたのかい。」
「あぁ、ついさっきな。ラフィスさんの仕事ぶりに感心してたとこだ……あっ、これ代金。」
「はいよ。それじゃあ、後はラフィスちゃん次第か。」
「そうなるかな。」
「?御二人共、何のお話をされているのですか?」

昼間ずっと作業をしてくれていて、俺とオヤジさんの会話を訊いていなかったラフィスが疑問符を浮かべながら、首をかしげる。

「あぁ……実はな……」
「オヤジさん。俺から言わせてもらえないか?」
「ん?おう、そうだな。」
「ラフィス。君のこの腕前を見込んで頼みがある!俺達の仲間になって、拠点で鍛冶屋をやってくれないだろうか?」
「え?えっと……」
「もちろん、無理強いはしない。君がこのままオヤジさんの店で働きたいって言うなら、そうしてくれて構わない。」
「店主……?」
「いやぁ、アレンさんが鍛冶職人を探してるって話を聞いて、お前さんが自分の店を出したいって言っていたのを思い出してな!勝手とは思ったんだが、推薦させてもらったんだ。悪かったかな?」
「いえっ!ただ……アレンさん、でしたか?本当にアタシで良いのですか?その……ほら、アタシの目、こんなだし……」
「あぁ。サイクロプスなんだってな。」
「……怖くないんですか?」
「うん。ほら、見てみろよ。俺の鎧……自分の鎧に目のパーツが付いてるんだぜ?ラフィスに会う前から、見慣れたようなモンだからな。」
「それに、アレンさんの拠点にはお前さんみたいな異種族の方々しか居ないそうだからな。人間を相手するよりは気が楽なんじゃねえかな?」
「そうなんですか?……わかりました。アレンさん。先程のお誘い、喜んでお引き受けさせていただきます!」
「おぉ!本当に?ありがとう、ラフィス!」
「がっはっはっは!こいつはめでたいねえ。ホレ、ラフィスちゃん。」

オヤジさんはラフィスに何かが沢山入った皮袋を手渡す。

「店主……これは?」
「本当はウチで使おうと思っていたんだが、ラフィスちゃんの門出だ。給金と餞別といっちゃあ、何だが……上質な玉鋼だ。持って行きな。」
「良いんですか!?こんなに頂いてしまって……!」
「おうっ!ウチにはまだ在庫があるからな。気にしないで受け取ってくれ。」
「店主……ありがとうございます!」
「よぉし!今夜は飲むぞ!アレンさん、もちろん付き合ってくれるよな!?」
「酒はあんまり強くないけど……ぶっ倒れない程度に付き合うよ。」

◇◇◇

翌朝。

俺とラフィスは、鍛冶屋のオヤジさんに見送られて村を出立し、タドミール・テルミヌスへ向かった。

「へぇ……サイクロプスは鍛冶が得意なんだな。俺はてっきり、棍棒を持って暴れまわるような奴等ばっかりかと……」
「そんなことないですよ!アタシの御先祖様は、神様達の武器を作ったことだってあるんですから。それに、アレンさん知ってますか?」
「ん?何を?」
「鍛冶屋さんって、熱く熱した鉄を力強く叩くときに飛び散る火花が運悪く目に入り、隻眼になる人が多かったんです。サイクロプスが単眼なのは、その隻眼の鍛冶屋さん達を示している……みたいな話もあるんだすよ。」
「それは知らなかった……駄目だな。俺は種族名は聞いたことがあっても、そういう詳しいことは全然知らねえんだよな……」
「知らないなら覚えていけば良いんですよ。アタシもアタシが知っている知識に関してなら説明できますから。」
「あぁ、そうだな……頼むよ。」
「はい!」

〜数時間後 〜

タドミール・テルミヌス・城門

「さてと……城壁に誰か居ないか!?俺だ、城門を開けてくれ!」
「主様!おかえり……むっ、女の子と一緒に朝帰りとは……私という者がありながら……!」

城壁の上でシルヴィアがこちらに向けて弓矢を構える。

「待て、シルヴィア!お前が思っているような、やましいことは何も無い!それに関しても説明したいから城門を開けてくれ。」
「むぅ……わかりました。少々お待ちください。」

しばらくして城門の跳ね橋が下ろされ、俺とラフィスは場内へと入った。

「では、アレン様。ただの朝帰りならともかく……そちらの方と一緒な理由をお聞かせ願いましょうか?」

出迎えてくれたシルヴィアが笑顔のまま、洋弓を教鞭のように振っては掌にパシッパシッと打ち付けている。

「えっとですね……こちらはラフィス。仲間になってくれた、鍛冶職人さんだ。村の鍛冶屋さんであのオヤジさんと一緒に働いてたんだけど、その腕を見込んで俺がスカウトした。」
「え?あっ、そうだったのですか!私ったらとんだ早とちりを……あっ、その目……なるほど、サイクロプスですか。」
「はっ、はい!よろしく、お願いします!」
「ラフィスは自分の店を持つのが夢だったそうで…………よし、この辺で良いかな。」

俺は城門から入って向かって左側、クラーケンの磯辺の近くで画面を開き、『拠点改造』を発動する。

「えっと、『建築』……鍛冶屋は『家』?いや、商業用施設なら『公共施設』になるのか?ふむ……検索できるみたいだし、『鍛冶屋』で検索してみるか。」

とりあえず、駄目元で『鍛冶屋』で検索してみると、俺の居た世界に実際にある鍛冶屋や、俺がプレイしたゲームに登場した鍛冶屋が、思っていたよりも多く表示された。

「できた。それじゃあ、ラフィス。此処から自分が気に入ったものを1つ選んでくれ。」
「え?良いんですか?」
「当たり前だろ。ラフィスの店なんだから。ちなみに、向こうに見える図書館はシルヴィアが選んだ物だ。」

俺はそう言って、先日反対側に移した図書館を指差す。

「わかりました。じゃあ、えっと……………あっ、この煉瓦の建物、鍛冶スペースと店舗のスペースがどちらも良い感じに広くて、活動しやすそうです。」
「よし、じゃあこの店で……『素材』はこのまま煉瓦で良いか?」
「はい!」

全ての項目を選択し終えると、目の前に立派な煙突付きの煉瓦の建物が出現した。

「す……凄い。一瞬にして建物が……はっ!アレンさん、店の中を確認しても構いませんか!?」
「あぁ、もちろん。」

ラフィスが店の中に入ったのに続くように、俺とシルヴィアも店の中に入った。

「…………確かに、今はまだ何もありませんが、此処に武器や防具が飾られたとしても、ゆっくりと余裕をもって商品を吟味できそうですね。」
「そうだな。ラフィス、奥はどんな感じだ?」
「はい!炭などの資源や材料はありませんが、窯などの仕事道具は必要最低限……いいえ、とても立派な物が備え付けられています!」
「つまり、さっき言ってた炭と、オヤジさんから貰った玉鋼以外の材料が集まれば、いつでも店をオープンできるってことだな?」
「はい!アレンさん。こんなに立派な店を用意していただき、ありがとうございます!アタシ、これから頑張って皆さんのお役に立ってみせますね!」
「あぁ。期待してるぜ、ラフィス。」
「えぇ。これから、宜しくお願いしますね。」

「オイオイ!また何か新しいのができてんじゃねェか!」
「此処は一体……」

「おっ、皆来たみたいだな。」

この後、続々と店を訪れた皆に此処が鍛冶屋であることと、職人のラフィスを紹介した。

「驚きました……本当に異種族の方々ばかりなんですね。」
「な?気が楽だろ?」
「うふふ。はい、そうですね。」
「あっ、そうだ……フレデリカ。与ってた剣を返すよ。」
「ありがとうございます、アレン様。」

フレデリカは俺から受け取った長剣を鞘から抜き、自分の目で確認する。

「美しいです。刃毀れも元に戻って……」
「ちなみに、その剣と俺の突撃槍を修繕してくれたのは、このラフィスだ。」
「まぁ!そうだったのですか。サイクロプス……古に神様達の武器を作ったといわれる種族。なるほど、確かな腕をお持ちの様ですね。」
「あっ、ありがとうございます!」
「ラフィス……お主、アレンやフレデリカの武器をあそこまで修繕できるのであれば、我の杖も見てもらえんかのぅ?」
「つ……杖ですか?」

アルフォンスが木製の杖をラフィスに見せて、何やら無茶振りを言ってるみたいだけど……たぶん、ラフィスなら何とかしちゃうんだろうな。

「皆。今、この店には道具はあるけど、炭みたいな燃料や材料が無い状態だ。ラフィスが何処かへそれらを採取しに行くことがあったら、手隙の者はできるだけ手伝ってあげてくれ。」

俺の呼びかけに、一同が快く承諾してくれた。

これで課題だった鍛冶屋も仲間に迎え入れることができて、ほっと一安心。

ラフィスもすぐに馴染んでくれたみたいだし、よかった、よかった。

Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.71 )
日時: 2020/07/31 19:06
名前: 柔時雨 (ID: lU2b9h8R)

No.18〜 戦告げる風の噂 〜

タドミール・テルミヌス・訓練場

図書館から大広間へ行く途中で立ち寄ってみると、シルヴィアが遠的をしていて、その光景をラフィスが眺めていた。

「ラフィス。シルヴィアの訓練を見ていたのか?」
「アレンさん!はい。シルヴィアさん、凄いですね。弓から放たれた矢の全てが、見事に的の真ん中を射抜いています。」
「あぁ。シルヴィアの弓の腕前は此処に居る全員が認めてる。ホントに……すげぇ奴だよ、あいつは。」
「ただ……シルヴィアさんの訓練を見ていて、少し……気になったことがあります。」
「気になったこと?」

真剣な表情をするラフィスと話していると、矢筒に入っていた矢を全て使い切ったシルヴィアが、俺達のところへ歩いて来た。

「あら?主様!いつから、そちらに?」
「あぁ、ついさっきな。それよりシルヴィア。ラフィスがお前に何か言いたいことがあるみたいだぞ?」
「ラフィスが……私に?」
「はい。シルヴィアさんの弓の腕前は本当に素晴らしかったです。それで……あのっ!少しその弓を見せていただけませんか?」
「弓を?えぇ、構いませんよ。」

シルヴィアは微笑みながらラフィスに弓を手渡した。

「…………やっぱり。」
「やっぱりって……シルヴィアの弓がどうしたんだ?ラフィス。」
「この弓、酷く老朽化してしまっています。おそらく、このまま使い続けると、近いうちに弓が真っ二つに折れてしまいますね。」
「確かに……最近、弦を引くときに、弓のしなりが悪くなったな……とは思っていましたが……」
「その弓、俺と初めて出会った時から使ってたもんな。そりゃ弓だって消耗費んだから、いつかは……とは思っていたけど、ホントに今まで頑張ってくれてたんだな。」
「最後まで使ってあげてこそ、武器も本望なのでしょうが……訓練ではなく、戦闘中に折れてしまうかもしれないという恐れを考えて……シルヴィアさん。新しい弓を作りませんか?」
「新しい弓を?そうですね……弦は自分で張り替えられますが、弓そのものとなると……お願いしても宜しいですか?ラフィスさん。」
「はい!お任せください!」
「まぁ、俺や他の皆の武器と違って、鉄を使うことはないだろうから納期は早そうだけど……材料はどうするんだ?その弓と同じ、木材を使うのか?」
「木材でも良いですけど、もっと適した素材……『竹(バンブー)』があれば、もっと性能が良くて、長期間使える弓を作れます。」
「あぁ!竹か!」
「主様は御存知なのですか?」
「俺の元居た世界じゃ、竹の弓の方が主流だったんだ。ただ、シルヴィアが普段使ってる弓の倍近いのデカさはあったけど……」
「私の弓の倍の大きさ……そんな物が戦闘の役に立つとは思えないのですが……?」

まぁ、現実世界の日本の戦争で弓が使われていたのは戦国時代の末期くらいまでだっけ?この頃から種子島が普及されるようになったんだよな?
坂本龍馬がどうこういう時代には、鉄砲になってたはず……
弓道も、『私達、弓で戦います!』というよりかは、美しい姿勢や作法、精神を鍛える武道みたいなもんだし……
強い武器では、あるんだけどな。

「弓のサイズはシルヴィアさんが使われている洋弓サイズにしますよ。ただ、問題は……竹がこの大陸に生えていないということです。」
「えっ!?じゃあ、このヴァイナーには竹製品が無いのか?」
「いえ、ありますよ。この大陸に自生していないというだけで、海の向こうの『ショウカ大陸』にはたくさん生えているそうです。なので、そちらから船を使って輸出してもらい、こちらの貿易都市・シフルールで取引された後、各地に出回るんです。」
「お詳しいのですね、ラフィス。」
「アレンさんと出会ったあの村の鍛冶屋の店主に雇ってもらうまで、各地を放浪してましたから。アレンさん、お願いがあるのですが……」
「竹を買いにシフルールへ行きたいんだろ?いいぜ。」
「ありがとうございます!」
「そうだな……せっかくだし、俺も行ってみようかな……シルヴィア、特に急ぎで何かあったっけ?」
「いえ、特に何も。私達の領土であるこの城は至って平和そのものです。他の皆には私から伝えておきますので、しっかりラフィスを守ってあげてください。」
「わかった。それじゃあ、シフルール近くの海岸まで、クラーケンに乗せていってもらおう。無事に買い物ができた後のことも考えてな。」
「そうですね。竹以外にも良さそうな物があれば購入しておきたいですし。」
「わかりました。あっ……主様。シフルールへ行くのでしたら、資金と一緒に地下にあるクラーケンの排泄物を幾つかお持ちになって行かれては?おそらく、あの町の港を出入りしている漁師達との交易材料になるかと。」
「そういや、エルネストも前に似たようなこと言ってたな。わかった、それじゃあ幾つか持って来る。ラフィス、ちょっと待っててくれ。」
「はい!」

〜 数分後 〜

タドミール・テルミヌス内・クラーケンの磯辺

ラフィスの店の隣にあるこの磯辺で、俺は水中で岩に張り付いていたクラーケンを呼んだ。

「クラーケン。悪いんだけどシフルール近くの海岸まで、俺とラフィスを連れて行ってくれないか?」
「ヽヽヽヽ(*゚∀゚)ゞノノノ」

了承を得たので、俺とラフィスが胴体の上に乗ると、クラーケンは勢い良く泳ぎ始めた。
その巨体からは想像もできない……速くて力強い泳ぎで、以前シルヴィアが言って作った水路内の水門を越えていく。

この感じ……昔、遊園地で乗った、迫力のある水上系ライドを思い出す。

「わぁっ!凄い、速いです!」
「これは楽しいな!クラーケン、気に入ったよ。」
「ヽヽヽヽ(*゚∀゚)ノノノノ<キュウソクセンコー」

気を良くしたのか、クラーケンの体が少しずつ水の中に沈み始める。

「ん?おいおいおいおい!潜行すんな!俺達、お前と違って水中で呼吸できないから!」
「今のままで、充分快適ですから!」

◇◇◇

数十分後……

俺とラフィスはたぶん、シフルールと思われる町が見える海岸までクラーケンに運んでもらった。

「ありがとう、クラーケン。他のプレイヤーや冒険者に見つかったら厄介だ。帰るまで、カプセルの中に入っててくれ。」
「ヽヽヽヽ(*゚∀゚)ゞノノノ」

俺は小型のカプセルを開き、クラーケンを中に収めた。

「凄い技術ですね、そのカプセル。何処で手に入れたんですか?」
「ん?あぁ、これは俺が異世界の友達んトコの仲間さんに教えてもらって、次作できるようになったんだよ。まぁ、その辺の話は今度改めてするとして……早速、シフルールの見学をしに行こうか。」
「はい!」


***


シフルールの町

関所の門番さんは、以前、俺がエルセア軍との戦いに助勢したことを覚えてくれていたらしく、ラフィスと買い物に来たことを伝えたら、俺とラフィスの通行書を発行してくれた。

「いやぁ……人助けってしておくモンだな。過去の自分を褒めてやりたい。とにかく!無事に町に入れたんだ。早速、買い物をしようか。」
「はい!メインはシルヴィアさんの弓の材料にしたい竹を幾つか……それと、他の皆さんの武器強化に使えそうな材料があれば良いのですが……」
「竹は俺も見たことがあるから、探すのに協力できるけど、他の材料に関してはラフィスに一任するよ。」
「ふふっ、了解しました。」

しばらく出店を見て廻り、商品が積み下ろしされている港に出向いて、立派な竹を今後のことも考えて複数本を購入し、同時に漁師達にクラーケンの排泄物を見せ、用途を説明して高値で売ることができた。

「竹を購入するのに使った金の数倍のお金を手に入れてしまった……」
「漁師さん達は魚介類を獲ることで生計を成り立たせている方々です。その収入源である魚がいっぱい集まってくるアイテム……クラーケンの排泄物は、喉から手が出るほど欲しい物なのでしょう。」
「なるほどな。とにかく、これで資金に少しだけ余裕ができた。他にも何か見ていくか。」
「そうですね……ん?」
「どうした?ラフィス。」

ラフィスの視線の先で、1人のガラの悪い男が兵士や冒険者に、武器を売っている光景があった。

「あれは……武器商人ってやつか。ラフィスも自分の店を構えている身として、やっぱりああいうのは気になるか。」
「……行きましょう、アレンさん。」

竹を抱えるラフィスが、ワザと視線を逸らすように違う路地へと足を進める。

「え?ラフィス?」

俺がラフィスの後を追って路地へ足を進めると、少し前を歩いていたラフィスが口を開いた。

「ごめんなさい。気分を悪くされましたか?」
「いや、全然。ただ、理由は教えて欲しいかな。」
「そうですね……アレンさん、アタシ達サイクロプスは、普通の人間より視力が良いです。」
「まぁ、そのデカい目だ。そうなんだろうな。」
「それで、あの距離から先程の男性が売っていた商品を見たのですが……売られていた武器、全てが粗悪品です。質の悪い鉄を使い、おそらく混ぜ物も……」
「マジで!?」
「はい。もちろん、混ぜ物をしないと安くならないというのも解ります。そして、売られていた物が鍬や鋤のような農具だったなら、アタシも特に何も言いません。ですが!あそこで売られていたのは、武器です。」

竹を担いでいるラフィスが立ち止まり……振り返って、真剣な表情で俺の顔を見て、言葉を続ける。

「アレンさんとエルネストさんの突撃槍も、ザインさんの斬馬刀も、フレデリカさんの長剣も盾も、あそこで売られていた武器も他の鉄製品と同じく消耗品です。使い続ければ歪むし、凹むし、刃毀れだってします。皆さんはそれらを持って冒険をして、戦って……命のやり取りをされています。」
「まぁ……そうだな。」
「そんな生きるか死ぬかのやり取りの最中に、あの方が売っていた鈍らな武器を使ったばかりに、途中で武器が壊れ……最悪死んでしまうのは、粗悪な武器を使用したその人達です。」
「確かに……防御や鍔迫り合いの最中に、信用・愛用してた武器が目の前で壊れたら、たまったもんじゃねえよな。」
「確かに武器は高価です。駆け出しの冒険者さんや新兵さんにはなかなか手が出せない品だということも承知しています。でも……自分の命を預ける大切な武器を値段だけで決めるのは、少し考え直していただきたい。同時に、そこまで考えずに粗悪な武器を高額で売りつけるあぁいう武器商人はアタシは嫌いです。」

そこまで言って、ラフィスは少し顔を赤くして再び正面へ向き直る。

「す……すいません!言い過ぎました!」
「いや、ラフィスの言うことは尤もだと思う。説得力があったよ。」
「あそこに居た冒険者さんや兵士さん達には、良い武器と粗悪品を見極める目を養い、使用したときに感覚で違うと解る腕を身に着けて欲しいですね。」

「あの……お嬢さん、少し宜しいですか?」

俺達の背後から呼び止める声がしたので振り返ると、このシフルールの軍隊で決められた鎧を纏った兵士が立っていた。

「先程のあなた方の話を、偶然ですが少し聴かせていただきました。どうやら、そちらのサイクロプスのお嬢さんは鍛冶のことにお詳しいようで。」
「えっ……あっ……」
「そうなんだ。俺の仲間で、拠点で武器屋を営んでくれている。」
「そうでしたか!では……少しお願いしたいことが……」

そう言って兵士は腰に携えていた剣を、鞘ごとラフィスに渡した。

「……中を見させていただいても?」
「どうぞ。」

ラフィスが鞘から剣を抜き取ると、剣は刃の部分でポッキリ折れてしまっていた。

「見事に折れちまってるな。」
「はい……家宝の剣なんですが、先日行軍した先で発生した野党との戦闘で折れてしまいまして……この町の鍛冶屋さんに修繕をお願いして回ったのですが、どこの店も先約の注文が入っていて、引き受けてもらえませんでした。」
「それで、アタシに修繕を……?」
「いえ、家宝というだけあって、その剣も長い間戦ってくれていました……折れてしまったのは、おそらく寿命だったのでしょう。」

ラフィスから変革された剣を寂しそうに見つめながら、兵士は呟く。

「修繕でもないとなると……ラフィスに武器を作って欲しいとか?」
「はい!……此処では人が多いですね。すこし、場所を変えても宜しいですか?」
「お……おう。」

兵士の先導で、俺とラフィスは路地裏を進み……人気の無い広い場所へ案内された。

「此処なら大丈夫でしょう。実は……まだ、世間では大きな話題にはなっていないのですが、近々都市同盟に加盟している4都市のうち、3都市が将兵を持ち寄って集まり、総力を挙げて大都市・エルセアへ戦を仕掛ける話があるのです。」
「何ですって!?」
「ラフィス。貿易都市・シフルールと大都市・エルセアは知ってるけど……残り2つって?」
「ヴァイナー北部に大々的に展開している『武装都市・ビルドス』と、南部に本拠地を置き、各地へ神様に関する布教活動をしている『聖都・ハルシエト』ですね。」
「つまり、このシフルールと……そのビルドスとハルシエトの3つの都市が所有している全軍で、大都市エルセアに戦を仕掛けるってことか。」
「はい。おそらく、この3つの都市だけではなく、近隣の諸侯にも檄文が届くはずですので、おそらくもっと人が集まるでしょう。」
「マジか……」
「いつ始まるのか……それは判りませんが、その戦いが実現するのは確かです。もちろん!私もシフルールの兵士として、この戦に参加するつもりでいます。なので、サイクロプスのお嬢さん!私に、新しい武器を作っていただけませんか?」
「……わかりました。おそらく戦が始まるにしても数ヶ月は先……1週間、御時間を頂けますか?期限内には必ず剣を作って御持ち致しますので。」
「おぉっ!ありがとうございます!」
「ラフィス。仕事を引き受けるのは良いけど……完成した剣はどうするつもりだ?あの人だかりの中から、この人を探し出すのか?」
「あ……そうですね。これから忙しくなりそうなのに、アタシ達の拠点まで来ていただくわけにも……」
「でしたら…………こちらが私の名前になります。剣を納品に来ていただいた際、その紙を門番に見せてください。」
「わかりました!使い手である貴方に満足していただける剣を、頑張って作らせていただきますね。」
「よろしくお願いします!」

***

タドミール・テルミヌス内・クラーケンの磯辺

兵士と別れ、クラーケンに乗って戻って来た俺達は、とりあえずラフィスの店に入った。

「では、アレンさん。アタシはシルヴィアさんの弓作りと、あの兵士さんの剣作りに取り掛からせていただきますね!」
「おう!無理しないで頑張れよ。」
「はいっ!」

ラフィスは微笑みながら竹や他の材料を持って、店の奥の作業場へと歩いて行った。

俺は踵を返して店の外に出ると、ちょうど図書館からでてきたシルヴィアと鉢合わせになった。

「主様!御戻りになられていたのですね。」
「あぁ、ついさっきな。…………シルヴィア、他の皆にも改めて伝えるけど、とにかくまずはお前に話しておきたいことがある。」
「……真面目な話の様ですね。大広間へ行きましょうか。」


タドミール・テルミヌス最上階・大広間

「…………なるほど、そのようなことが……」
「その兵士さんが言うには、いつ始まるかは判らないけど、勃発することは確かなんだそうだ。」
「その都市以外にも近隣の村などからも人が集まるかもしれない……もし、それが本当なのでしたら、本当に大規模な戦になるでしょうね。」
「ウチにもその檄文が来るかは判らねえけど、もし来たら……その時は参加するつもりだ。誰かに留守を頼むんじゃなく、この拠点に居る全員で義勇軍って形でな。」
「承知致しました。しかし……そうなると、もう少し味方が居ても良い気がしますね。」
「そうだな……まぁ、呼ばれなかったとしても、仲間は多い方が良いだろうからな……また、時間を見つけて勧誘活動してみるよ。」
「はい。そちらはお任せしますね。主様が不在の間、私達がこの拠点を御守り致しますから。」
「あぁ、頼りにしてるぜ。ただ……この間のラフィスの時みたいに、勘違いで弓を構えるのは、勘弁な。」
「あっ……あれは!もぅっ!そのことは忘れてください!」

この日の夜、武器作りを頑張るラフィス以外のメンバーに、シルヴィアに話した事を伝えた。

皆、承諾して俺不在の間は鍛錬に勤しんだり、情報を集めてくれたりと……本当に協力的で、純粋に嬉しかった。

戦がいつ始まるかは、3都市のお偉いさん達次第なんだろうけど……それまでの間に、できる限りのことをやるとするか。

Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.72 )
日時: 2020/08/09 12:09
名前: 柔時雨 (ID: lU2b9h8R)

No.19〜 手練れの長鱗身 〜

タドミール・テルミヌス・最上階

玉座に座りながら、図書館から持って来た本をパタンと閉じると、玉座に寄り掛かるように座っていたシルヴィアが顔を上げた。

「主様……今日はもうお休みになられますか?」
「そうだな……うん。キリの良いところまで読んだし、そうすっか……」
「承知致しました。それでは、明日の朝、朝食の準備ができましたら、お部屋へお伺いしますね。」
「気持ちは嬉しいけど、シルヴィアもしっかり休めよ。1回くらい朝食抜きでも、誰も死にはしないんだから。」
「うふふ、わかりました。では、明日はゆっくり休ませていただきますね。」

◇◇◇

シルヴィアが大広間を出て行ったのを確認して、俺も大広間から出て、以前作ったもう1つの城の方の最上階に用意した自分の部屋へ入る。

「ふぅ……さてと、寝る……ん?」

俺以外誰も居ないハズの部屋で、背筋が凍るような冷たい視線を向けられているのが分かる。
ウチのメンバーの中で扉をすり抜けられるのは、リッチであるアルフォンスだけ……しかし、これはあの爺さんが俺に向ける視線とは違う。
明らかに、敵意のある視線だ。

俺は突撃槍を構えて、視線を感じる方を向いたが……誰も居ない。

しかし、確かに何かが這うような音がしたので、そちらに視線を向けると……『ウチのメンバーではない』モンスターが天井に張り付いていた。

真紅の長い髪に、豊満な胸を金色の鱗のような装飾が施されたビキニで隠し、両手には……確か、マチェーテとかいうナイフがしっかり握られている。
さらに驚いたのが、天井に張り付いている女性の下半身との結合部は紫色のパレオで隠されているが、さらにその下を追うと……物凄く長い蛇の体が部屋の柱に5重ほど巻き付いていた。

つまり……女性は天井に背中で張り付いていたんじゃない。長い尻尾を柱に絡ませ、上半身を鎌首のようにもたげていたのだ。

「貴様が此処の主だな?同胞の仇……その命で償え!」
「同胞?」

マチェーテを持った上半身が迫って来たので、俺は突撃槍を構え……そのまま横一閃に薙いで、弾き返す。

「くっ……!初撃は止められたか。」
「襲われる理由も判らないまま、死にたくねえからな。」
「あれだけのことをしておいて、よくもそんなことが言えたものだな!」

女性がマチェーテを構え直し、再び俺の方へ迫ってくる。
俺は突撃槍の柄を両手で持ち、ザインが斬馬刀を振り下ろすのと同じ動きで女性を叩きつけようとしたが、女性は突撃槍の先端を回避し、俺の足の間を潜り抜けて、背後を取った。

「死ね。」
「させるか!」

俺は突撃槍の柄から咄嗟に右手を離し、そのまま背後に居る女性へ向けて裏拳を繰り出す。

「うぐっ!?」
「ぐあぁっ……!」

俺の右手に確かな感触があったので、おそらく女性の顔面か頬を捉えたのだろう。
代わりに、女性が持っていた2本のマチェーテのうち、1本が俺の鎧と肩当ての隙間を掻い潜って、左肩に刺さったが……痛み分けってトコだろう。

「うぅ……まさか、顔に1撃を受けてしまうとは思わなかった。」
「悪いな。咄嗟に防衛本能が働いちまってね。とりあえず、一旦落ち着いて話を…………ん?」

蛇身の女性に話しかけた時、俺は自分の体の異変に気付く。
槍の柄を握っている左手がプルプルと震え、両足の裏もジンジン痺れて、全体的に動きが鈍くなっている。

「何だ?体が痺れる……」
「どうやら効いてきたみたいだな。アタシの武器にはいろんな植物から抽出して合成した即効性の高い麻痺毒を塗り付けてあるのさ。」
「麻痺毒……くそっ!」

俺は左肩に突き刺さっていたマチェーテを引き抜き、部屋の隅に向かって投げ捨てる。

「おそらく、アタシの武器は貴様の鎧を貫通して、その心臓を貫くことはできない……だから!残り1本で、貴様の咽を掻っ切ってやる!」

女性は蛇の体の部分を蜷局状態にして、そのままバネの要領で大きく跳躍して俺の上を取って来た。

「安心しな!一思いに楽にしてやる!」
「うぉぉぉ!やられてたまるか!」

俺は痺れに耐えながら、右手に持ち替えた突撃槍を再び横一閃に薙いだ。
女性のマチェーテと俺の突撃槍がぶつかり合い……勢いに負けたマチェーテが、女性の手から弾け飛んだ。

「あっ……!」
「よし……これで、お前の武器は……」
「ふふっ。」

女性は武器を失っても尚、そのまま降下し……俺の前に下りるとそのまま俺の足の間を潜り抜け、背後から蛇の体を俺に巻き付けてきた。
武器を握った右手は隙間から外に出ているが、彼女の人間の部位は俺の背後にあるし、蛇の体はこれでもか!と俺の体に密着しているため、うまく扱えないし……そもそも当てることができない。

「ぐあああぁぁぁっ!」
「確かに刃物は無いけど、貴様を始末する方法はまだまだあるぞ。例えば、このまま背骨や関節を粉々にしたりとか……な!」

そう言いながら、女性は蛇の体に力を込め、俺の体を締め上げる力を強くする。

「後はこのまま貴様の首筋に噛みつき、アタシの牙から猛毒を注入すれば……貴様を殺すことができる。」
「ぐっ……おぉぉ……!」

横目で女性の顔が俺の顔付近まで確認し……にやりと笑みを浮かべた彼女の口から見えた牙が首筋に刺さるのかと、身動きが取れない状況で思っていると
部屋の扉が勢い良く開き、シルヴィアが入って来た。

「主様!何の騒ぎ……っ!?」
「くっ!邪魔が入ったか……」
「貴様っ!主様から離れなさいっ!!」

シルヴィアが放った5本の矢を、女性は回避すると同時に、俺を締め付けていた蛇の体が離れた。

「主様!大丈夫ですか!?」
「げほっ!げほっ!た……助かったよ、シルヴィア。」
「2対1か……不利な状況ではあるが、まだまだアタシは戦え……!」
「ちょっと待った!」

未だ好戦的な姿勢を示す女性に、俺は声を張り上げて待ったをかける。

「な……何だ?」
「お前、同胞の仇がどうこう言っていたけど……俺は本当に心当たりが無いんだ!何が遭ったのか、話してくれないか?」
「しらじらしいぞ!洞窟暮らしをしていたアタシ達『ラミア』族を根絶やしにしたのは、他でもない貴様だろうが!」
「俺がラミア族を大量虐殺!?そんなことした覚えは無いぞ!?」
「失礼ですが、それはいつの話ですか?」
「5日前だ……アタシが狩りから戻ってきたら、洞窟内に居た他の仲間達が全員殺されていたんだよ!それで、愕然としていたアタシに、たまたまその光景を見ていたという人間が、『仲間を殺したのは、ヴァイナー東部にある古城の暗黒騎士だ』って言ったから……」
「5日前……じゃあ、やっぱり無理だな。」
「そうですね。」
「なっ!?何故そう言い切れる!?」
「だって、その時……俺、サイクロプスの女性と貿易都市・シフルールへ買い物に出かけていたからな。」
「主様とその女性が一緒に此処を出て行く姿は私が確認しています。」
「シフルールでも別行動をしてなかったからな……ラフィスの目を盗んで、お前達の住処で大乱闘するとか無理だ。そもそも、ラミアってどこに住んでたんだ?」
「…………本当に、知らないのか?」
「あぁ。何だったら、そのサイクロプスの女性を此処へ呼んで来て証言させようか?」

俺の言葉に、ラミアは力なく項垂れる。

「そうか……どうやら私は騙されていたのかもしれないな……」
「貴女も主様と戦って解ったでしょう?主様の武器は突撃槍……刺突が主な戦闘スタイルです。貴女の御仲間の傷に、それらしいものがありましたか?」
「そういえば……矢が刺さっていた者も居たが、殆どが剣による斬り傷だった……重ね重ねすまない!貴様……いや、アンタには迷惑をかけてしまって……」
「いや、誤解が解けたなら良かった……でも、その誤情報を流した奴が気になるな。そいつ、名乗りとかしなかったか?」
「確か……『自分はエルセア兵で、近くで野外訓練をしていた際に惨劇を見た』と……」
「エルセア……また連中か!」
「おそらく、貴女の御仲間の命を奪ったのはエルセアの軍でしょう。そして、その罪を敵対している主様に擦り付けたという訳ですか……許しがたい。えぇ!実に許しがたいです!!」
「そうか……あいつ等が同胞を……アタシはこのままエルセアに行く。謝って済む話ではないけど……ごめんなさい。」
「まぁ、待てよ。」

部屋に散っていた武器を回収し、出て行こうとするラミアを呼び止める。

「実は……もしかしたら、近いうちに大規模なエルセアとの戦闘があるかもしれないんだ。そして、俺達もそれに……エルセアへ侵攻する側へ参加しようと思ってる。そこで、もし良かったら俺達の仲間として一緒に参加しないか?」
「アタシを……仲間に誘ってくれるのか?」
「あぁ。もちろん、その戦闘の後もずっと此処に居てくれて構わない。その……元々の仲間達ほどではないけど、味方にはなってやれるからさ。」
「…………そうか。」

ラミアは俺とシルヴィアの方へ向き直り、武器を床の上に置いて頭を下げる。

「我が名は『ナターシャ』。姿は見ての通り、種族は【 人外 】でクラスは【ラミア】だ。アタシを受け入れてくれたこと、感謝する。これから……末永く此処に厄介になると思うが、よ……宜しく頼む。」
「おう!これから、よろしくな。ナターシャ。」

俺が差し出した手を、ナターシャが目尻に涙を浮かべて微笑みながら握り返してくれた。

◇◇◇

翌朝……

他の皆に昨日の夜の出来事と、そうなった過程、そして……ナターシャが仲間になってくれたことを伝えた。
皆、エルセア軍の手口に怒りながら、ナターシャの加入を快く受け入れてくれた。

ザインやエルネストからは『アレンをかなりヤバいところまで追い詰めた凄腕の戦士』として認識され、『良い手合わせの相手が増えた』と、特に喜ばれていた。

「最初は『なぜ、人間がアタシ達のような異種族を束ねて長になっているのか?』と不思議に思っていたが、今ならそれが解ったような気がする……」

俺の隣でそう呟いたナターシャは、微笑みながら他の皆との会話の輪に加わっていった。
基本的に素直で良い子……なんだと思う。まぁ……怒らせて締め付けられない様に気をつけようと、昨日の一戦を思い出して胸に誓った。

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