シリアス・ダーク小説

(自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(祝!閲覧1000!)
日時: 2016/11/01 22:50
名前: ミヤビ

(紹介前に総合掲示板の雑談掲示板に「異世界ぐらしはじめます 雑談所」を設けました!お気軽にお聞き下さいませ♪Twitterにて基本活動しておりますので急ぎでしたらTwitterまで!)

はじめましてミヤビと言います。

異世界ぐらしでは中世チックなフィールドを好きなように駆け回り。
共闘するもよし自分で国をつくるもよし。
自分ならこうすると言ったことを書いちゃって下さい。

これはリレー小説形式で。
参加型の小説です。全てが正規ですべてが外伝であるこの世界にようこそ!

では下記に簡単な説明を乗せておこう。

また、【あくまで楽しむことを前提に】書いて下さい。
マナーを守り規則正しいもう一人の自分を小説で動かしましょう!

【異世界ぐらしはじめます】設定資料

世界観設定

【属性】

〔英雄〕基本人類のクラス、技術スキル高 基本値低
〔人外〕魔物相当のクラス、特殊スキル高 致命的な弱点有
〔自然〕精霊とかのクラス、保持スキル多 異常体勢低

【能力、職業】

能力

先天性、後天性のオリジナルスキル。

ストックは2まで。
強力な能力であればデメリットも付属させる。


能力(時を3秒止める)デメリット(次発動まで3時間チャージ)


職業(有利→不利)

〔英雄〕騎士→弓兵→魔術師→
〔人外〕死兵→呪士→死霊使→〔自然〕巨神→獣人→エルフ→

職業はオリジナルスキルの関係上でオリジナルの職業の作成可


能力(竜属性の召喚)職業(竜騎士『騎士』)

【武器】

武器や技術は中世17世紀ちょっと先程度、よくて蒸気機関までが好ましい。
(無論新型でボルトアクションのライフルから有線電気機材は可、
ただ量産する技術、発展途上の技術に留める)

【世界観】

世界が1度、人類文明が滅び再び現文明まで築き上げて17世紀。
過去の遺跡・遺産から可能な限り再現可能なものを生産しまた1から作り上げた物を使って
レンガ造りの建物や紙の作成。現歴史までなかった生命に宿る超能力『魔導力』によって可動する
乗り物や工具を作り。世界各地には『神殿』や『城都市』といった文化が確立されていった。

世界にはいくつかの大陸と無数の島があり、
上陸してすぐ山道を登ってはハルピュイアやマンドラゴラと遭遇する島もあれば
果てしない雪の平原で巨大な生物や奇妙な知的生命体に襲われる所も、

この世界で生き残ることは出来るか・・・


(参加者の視点)
あなたは普通の現実世界では人気ゲーム「ワールドレコード」をプレイしていたゲーマーで、
特殊ソフト(3DCG作成ソフト等)を使えば、自分好みの見た目をつくれたりする狩猟を目的にした
一大娯楽として確立されたゲームで早7年。
発信元の大企業『ノア』現社長『イズミ』はユーザーの期待に応えるべく。新技術の投入によって現ワールドレコードは
全く新しいゲームに生まれ変わると宣言。

同時刻、新デバイス『スフィア』と呼ばれる掌サイズのマウスの形のした機械(子機)を発売。
これと連動することで新感覚の体験ができるとのこと。

それを使うと一瞬白い閃光に包まれたと思ったら。
なんと自身が作成したキャラクターになっていた。

だが世界観は全くの別物。
土地勘無し、お金なし。ログアウト画面無し。
あるのは以前のステータスとスキル、アイテムのみ。

一応地理は現実世界の配備で問題なし

スタート地点は自由。
国を創るも奪うも自由。
この世界に入ったプレーヤーはここの住人となって元の世界に帰る方法を模索あるいは
世界征服を目論むことも自由。

* * * *

御用の方は下記まで御連絡下さい
(質問・感想お気軽に)

https://twitter.com/miyabi_virossa(ミヤビアドレス)

https://twitter.com/yawashigure(柔時雨)

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Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.57 )
日時: 2020/05/20 11:14
名前: 柔時雨

No.11 〜拠点に迫る軍勢 〜

大都市エルセア・領主の館 軍議の間

「……お前は儂に確かにこう言ったよなぁ?『バルザック』将軍。『シフルールを必ず陥落させ、わがエルセアを更なる発展させてみせましょう!』……と、それをどうじゃ?えぇ?シフルールを陥落させるどころか、その手前の関所すら突破できなかったとはのぅ。」

玉座に座った肥満体型の中年の男性が、先日シフルールの関を攻めた将軍に語り掛ける。

将軍は片膝をついて頭を下げたまま、一瞬歯を食いしばり……そのまま言葉を続ける。

「もっ……申し訳ありません、ロニキス様。ですが!あれは、とんだ邪魔者が入ったせいで、兵達が我先にと逃げてしまったからなのでございます!あの邪魔が無ければ、今頃は……」

戦場から真っ先に逃げ出したのは自分なのに、バルザックは事実を隠蔽し、兵士に罪を擦り付けた虚偽の報告を、領主であるロニキスに伝える。

「ほう?シフルールの田舎者共め……いつの間に、そのような連中を……それで?その邪魔をしてきた奴等は何者なのか、判っておらんのか?」
「はっ!各地に間者を派遣してはいるのですが、未だ有力な情報が……」

「失礼します!」

ロニキスとバルザックが会話を遮るようにエルセア兵が1人、軍議の間に入って来た。

「何事だ!?軍議中だぞ!」
「申しわけありません!ですが、件の一団の拠点の場所が判明しましたので、その報告をと……」
「なにっ!?それは本当か!?」
「はい!」

そう言いながらエルセア兵が地図を広げる。

「敵はこのエルセアから東へ少し行った場所にある山岳地帯に囲まれた、この古城を拠点としているそうです。」
「そのような場所に!?なるほど、それで我等の背後を取ることができたのか……しかし、シフルールの奴等は、どうやってコイツ等に援軍要請を……?」
「バルザック将軍!ただちに一群を率いて、その者共を始末して来るのじゃ!もし失敗すれば……どうなるか、解っておるな?」
「は……はっ!必ずや、成果を上げてみせましょう!!」


◇◇◇


タドミール・テルミヌス最上階・大広間。

「御館。この城の城外なのだが……溶岩を流している部分を、いっその事底の見えない大穴にしてしまっては、どうだろうか?」
「めっちゃ深い穴か……よし!じゃあその部分を深く掘り下げて、谷底に溶岩を流そう。あとは……」

ザインと拠点の城壁内の話ではなく、外に関しての話し合いをしながら拠点の地図を開く。

この間拡張する前……元々の城が所有していた領土を確認した。

すると、城を中心に半径2.5Km……直径5Kmの区域が青い円で表示される。

「今俺達の居るこの城で、直径5Kmの領土……以前のこの城の所有者は、そこそこ権力があったんだろうな。」
「確かに規模としては広いかもしれんが、周囲を見てみろ。殆どが岩山と荒野だ。天然の城塞と言えば聞こえは良いが、日常生活に関しては難があったのだろう。現に、御館がシルヴィアと最初に此処を訪れた際、この領土内に人間の姿はおろか、民家すら無かったはずだ。」
「なるほど……生活するためじゃなく、一時的な避暑地っつうか、別荘みたいな目的で建てられた城ってことか。」


とりあえず、城門となる跳ね橋の下は抉る様に大穴を開けて火葬に溶岩を流しておき、青い範囲内にある邪魔な岩壁を削って更地にする。

今回は事前にシルヴィアにもマウトにも伝えてあるから、地形を弄っても怒られない。

「これで今度拠点を拡げる時……いや、もう城壁で囲んでおくか。その方が楽できそうだし。」

俺は青い円の演習に沿うように城壁を拡張した。前方だけを残し、側面と後方の城壁は岩山の中へと自動的に減り込んで隠される。
同時に、城前方に開けた大穴も同じように広がった。

「前方は谷底に溶岩が流れる大穴……後方は前回御館が少し抉ったとはいえ、未だ断崖が健在していて、周囲は岩山が連なっているか。城外の守りに関しては、概ね好条件になったのでは?」

ザインの言う通り、後方の断崖から源義経や弁慶がやった一ノ谷の鵯越みたいなことをされない限り、まぁ……大丈夫だろうとは思う。

「主様!失礼いたします!」

拠点周りの環境整備が一段落付いた頃、シルヴィアが慌てた様子で大広間に入って来た。

「どうした?シルヴィア。拠点周りを弄ることは事前に……」
「いえ、その件に関してではありません!申し上げます!現在、エルセアの1軍がこの城へ向けて接近しております!」
「なっ……敵襲だと!?」
「エルセアっつったら、シフルールの件で戦った連中か。シルヴィア、敵の具体的な数は判るか?」
「確か、エルセアの1軍の規模はだだいたい300人前後だったかと。申し訳ありません、主様。城壁の上から確認しただけですので、本来の人数は……もしかしたら、300人より多いかもしれません。」
「謝らなくてもいいよ、シルヴィア。むしろ、城壁の上からそれだけ判別できたのなら、大したもんだ。」
「主様……」

「よォ、大将。ちょっと良いか?」

シルヴィアの報告を聞いていると、マウトがゆっくりと大広間に入って来た。

「マウト。どうしたんだ?」
「いや、何か城門の向こう側でギャーギャーうるせェ連中が居てよォ。昼寝の邪魔だから殴って来ても良いか?っていうか……あいつ等、この間戦った、ヘタレのエルセア軍じゃねェのか?」
「くっ……!もう来てしまいましたか。」
「とりあえず、城壁に行ってみるか。城門は俺が判断するまで、絶対開けないように!」
「「「了解!!」」」

***


タドミール・テルミヌス 城壁。

俺達が城壁に到着した頃には既に、大穴を挟んだ向こう側、少し離れた荒野でエルセア軍が陣や天幕を展開していた。

「さてと……さっき、ザインと話し合って大穴を空けたけど……連中、どうやって此処を攻略するかな?」
「普通に考えて、櫓を作って弓で攻撃かと思いますが……前回、衝車を作ろうとしていた者達です。他の攻城兵器を用意していても不思議ではないでしょう。」
「なるほど……とりあえず、敵の出方を伺おうか。」

俺達が眺めている敵陣で、3台の櫓が建築されていく。

「あれは……シルヴィアの予想通り、櫓できたか。」
「けどよォ……あの櫓……遠くね?」

マウトの言う通り、敵が作った櫓は、奴等の陣営の内部に造られていて……俺達の居る城壁と、かなり距離が開いている。

「あの距離から此処まで矢を届かせる自信があるのでしょうか?仮にそうだとすると、敵には、よほど腕の良い射手が居るのですね。」
「ちなみにだけど……俺がシルヴィアに、あの櫓の上に居る敵を射抜け!と命令したとして、シルヴィアは射貫く自信がある?」
「いえ、申し訳ありませんが、主様の命令だとしても私が射貫く……いえ、届かせることができるのは、そうですね……現在、風が私達に対して追い風であることを考慮しても、敵陣の出入り口でたなびく軍旗まででしょうか。」

そう言いながらシルヴィアが、敵陣で風にたなびく軍旗を指さす。

「マジかよ。ザインはまだ見てねェから知らねェだろうけど、オレはよォ……シルヴィアの弓の腕前は純粋にスゲェって思ってる。なァ、大将!俺よりシルヴィアとの付き合いが長いアンタなら解るだろ?」
「おう!これまで、シルヴィアの弓にどれだけ助けられてきたことか!」
「ほう、それほどまでに。俺も早く見たいものだ。」
「マウト……主様、ザインも……ふふっ、ありがとうございます。」
「けど、そんなシルヴィアでも、あの櫓の上の敵は狙い撃ちできねェのか。」
「ということは、向かい風であるにも関わらず、此処まで矢を届かせることができたのなら……敵にはシルヴィアよりも凄い弓の使い手が居るってことか。」
「悔しいですが、そういうことになりますね。」
「……ん!?御館!敵の櫓だが……徐々にではあるが、こちらへ向けて迫って来ているぞ!!」
「なっ!?動くのかよ、アレ!」
「なるほど。私達の攻撃の届かない安全な陣内で車輪の付いた櫓を作り、完成したらこちらへ向けて進ませる……考えましたね。」

弓兵を乗せた車輪付きの櫓が敵陣から出てきて、こちらへゆっくりと迫って来る。

しかし、そこで敵側に問題が起こった。

移動式櫓が此処へ到着する前に、左右の岩壁に挟まれて身動きが取れなくなってしまったのだ。
しかもそれが先頭を走っていた櫓で、戦闘の櫓がいきなり立ち往生したために後続の櫓は急に止まることができずにそのまま接触。
そして更に後ろの第3台目も……

敵の移動式櫓は、その威力を発揮できずに勝手に事故って、勝手に倒壊した。

「ギャハハハハハハ!!連中、勝手に自滅しやがった!!ザマァねェなァ、おい!」
「あの移動式の櫓を考えたまでは良かったんだけどなぁ……」
「どう思う?俺は今日はもう、敵は攻めて来ることはないと思うのだが……」
「そうですね。私も……おそらく本日はあれを撤去と、次の手段を考えるための軍議をするのではないかと思います。」
「そうか、わかった。じゃあ、マウト……」
「ん?何だ?大将。」
「日が完全に落ちたら、悪いんだけど寝ずの番を任せてもいいか?」
「おう!任せなァ。連中が何か変な真似をしたら、アンタを叩き起こしてやるよ。」
「頼む。日が沈むまでは俺が見張ってるから、シルヴィアとザインは明日に備えて早めに休んでくれ。」
「そんな……宜しいのですか?主様。」
「おう。俺も日が沈んだらちゃんと休むから。それに……あれは失敗したけど、あの櫓みたいに敵がまた遠距離で攻めてきた場合は、シルヴィアの力が必須になるだろうし、一騎討ちを申し出てきた場合はザインに出てもらうつもりでいるからさ。」
「主様……承知致しました!」
「俺も承知した。仮にそうなった場合、御館の期待を裏切らんようにせねばな……」

そう言ってシルヴィアとザインは拠点の中へと戻って行った。

「なァ、大将。」
「何だ?マウト。」
「もし、この籠城戦があんまり長引くようなことになったら、異世界のライラプス達やレックス達に援軍を要請することも、考えておいたほうがいいんじゃねェか?」
「そうだな……でも、異世界であいつ等だっていろいろ忙しいだろうからさ、あんまり迷惑を掛けたくねえんだよ。だから、ギリギリまで俺達だけで粘ってみようぜ。」
「へへっ……了解。夜襲が必要なら言ってくれよ?ウチで夜、1番自由に動けるのは多分、オレだろうからな。」
「あぁ、そうだな……マウト。お前、跳ね橋を下ろさなくても向こう岸に行けるか?」
「おう!この城壁が埋まってる岩山に穴を掘っていけば可能だぜ。」
「そうか!じゃあ、夜襲じゃないんだけど、お前に頼みたいことがあるんだ。引き受けてくれるか?」

Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.58 )
日時: 2020/05/20 11:27
名前: 柔時雨

その日の夜。

エルセア軍・本陣天幕。

「くそっ!作戦自体は完璧だったはずなのに!まさか、地形に邪魔されてしまうとは……むぅ、一体どうすれば……」

机を強く叩きつけ、バルザックは頭を抱えて考え込んでしまう。

「将軍。まだ起きておられますか?」
「あぁ……入れ。」

天幕の入り口が開き、1人の兵士が入って来た。

「どうした?」
「はっ!実は……こういう物を考えてみたのですが……」

そう言いながら兵士は、バルザックに1枚の紙を見せる。

「…………ほぅ。これは……ふははははっ!これはいい。よし、制作に取り掛かれ!」
「はっ!ただちに!!」

一礼して、兵士は紙を持って天幕から出て行った。

「ふ……ふふ。奴等め、明日の朝、どのような反応をするか……楽しみだ。」

◇◇◇

同時刻

タドミール・テルミヌス 城壁。

「……ゆっくり休むと仰っていたのに、こちらで何をされているのですか?主様。」
「シルヴィア。あぁ……ちょっとな。」
「……マウトの姿が見当たりませんが……寝ずの番だったのではないのですか?」
「そのつもりだったんだけどな。俺からちょっと、頼み事をしたんだ。」
「頼み事ですか?」
「あぁ。内容は……無いと思うけど、どこに間者がいるか判らねえから、今は言えない。マウトが戻って来たら説明するから、シルヴィアは明日に備えて休んでいてくれ。」
「わかりました。そういうことでしたら、今は何も……主様も、なるべくちゃんとお休みくださいね。」
「あぁ。マウトが戻って来たら、ちゃんと休むよ。」


〜 数時間後 〜


「戻ったぜェ、アレン大将。」
「おう!無理を言って悪かったな、マウト。それで?収穫は?」
「ギャハハハ!おぅ、バッチリだ。とはいえ、オレの腐った脳みそじゃ明日まで覚えていられるか……」
「そうか。じゃあ、今とりあえず可能な限りでいいから教えてくれないか?」
「いいぜェ。まずはだな…………」


*****


翌朝

タドミール・テルミヌス 城壁。

「おはようございます、主様。マウトも戻っていたのですね。」
「おう、おはよう。シルヴィア、ザイン。2人共ゆっくり休めたか?」
「俺は御館の配慮のおかげでな。万全の状態で戦に挑めるぞ。」
「私もです!では、主様……そろそろ、昨晩マウトと何をしていたのか、御話していただけますか?」
「……そうだな。マウト、説明は俺からしておくから、お前は地下室でゆっくり休んでいてくれ。」
「いいや。オレも此処に居るぜ。まァ、戦闘に参加するのは、ちょっと待ってほしいけどな。」
「わかった。それじゃあ……2人共、まずはこれを見てくれ。」

俺はそう言いながら、シルヴィアとザインに1枚の紙を見せる。

「これは……?何かの地図のように見えるのだが……」
「こいつは、マウトが昨夜作ってくれた、敵陣の見取り図だ。」
「なっ!?昨晩、不在だったのはこれを作りに行っていたからですか……御1人で!?」
「おゥ。いやァ……面白かったぜ!敵に見つかりそうになったら、素早く地中に頭を隠したりなんかしてな。ひと暴れしてやろうかとも思ったんだが、そこでバラバラになって戻って来れなくなったんじゃ、大将との約束が果たせなくなっちまうからな。」
「マウト……本当にありがとう。今後も似たようなことを頼むかもしれないけど、その時はまた引き受けてくれるか?」
「おう!任せろ。できねェことはできねェが、できることなら何でもやってやるよ。」

城壁にもたれかかって座っているマウトが、右手をヒラヒラと動かす。

「走り描きではあるが、敵の要所は大まかだが見当がつく。この図の1番奥に描かれているのが、敵の大将が居るところだな?」
「あァ……悪い。多分そうなんだろうけど、中まで確認できなかったから、そこに敵のボスが居るかは判らねェ。けど、1つだけ確実に判った場所がある。」

マウトはゆっくりと立ち上がり、同じように紙を覗き込んで1ヶ所……四角の角を丸くしたような図形の上から、丸印を付けた場所を指差す。

「此処が敵の食糧庫だ。炊き出しの時間だったんだろうなァ……この天幕から食材を運び出す兵士の姿を見た。」
「それは本当ですか!?素晴らしい働きですよ、マウト!」
「兵糧は戦の要!敵の力の源を貯蔵している場所を突き止めたとなれば……」
「シルヴィア。その地図はお前が持っていてくれ。その時が来たら、追って指示を出すから。」
「はいっ!」
「ん?おいおい。見ろよ!敵さん、また何か持って来たぜェ!」

マウトが指差した方を見ると、エルセア兵がたくさんの荷車に何かを積んで大穴の前まで進んできた。

「あれは……何をするつもりだ?」

城壁で下の様子を見ていると、エルセア兵は荷車の積み荷を降ろし、何かを作り始めた。

「何だ?見た感じ、かなり大型のようだが……」
「大型……城……衝車は大穴があるから使えない。遠距離から此処を攻めるなら……まさか!!」
「どうされました!?主様!」
「シルヴィア!できる限りで良い!あそこに居る連中を射ることはできるか!?」
「もちろんです!この距離でしたら問題ありません!」

そう言ってシルヴィアは弦に5本の矢を番え、そのまま一斉に放って5人の敵の背中や肩に矢を命中させる。

「次!」

最初の5本の矢を放ち終えた後すぐ、矢筒から5本の矢を取り出して同じように番え、また違う5人の敵に矢を命中させていく。

「おぉ……見事な早技だ。御館やマウトが感心するのも頷ける。」

シルヴィアの矢を受ける度に、大穴の向こうの敵陣から悲鳴や『早く完成させろ!』など、作業を急かす声が聞こえてくる。

「大将は、アレが何だか知ってんのか?」
「多分……確証は持てないけど……」
「……っ!主様、申し訳ありません。どうやら敵は何かを完成させたようです。」

俺達が大穴の向こう側を見ると、エルセア兵がそこそこ大きな攻城兵器を完成させていた。

「やっぱり……連中、投石機を持ち出してきやがったか。」
「石を投げる兵器か……御館、あれの仕組みは?」
「石を積み込んでいる籠の反対側……俺達から見て手前側、数本のロープが見えるだろ。あれを数人の兵士が引っぱると同時に、石を積んだ後ろの部分も元の位置に戻る。その時の勢いに任せて、積んである岩を発射するんだ。」

あのタイプみたいに人の力を利用する投石機を、< 人材式投石器 >と呼ぶらしい。

「っつうことは、連中はロープを持ってこっち側に向かって走らなきゃならねェのか。」
「違う、逆だ。連中はロープをもって状態で、今岩を乗せている籠がある方に向かって走るんだよ。」
「なるほど……仕組みは解りました。私にお任せください!」

シルヴィアはそう言うと同時に1本の矢を弦に番えたまま引っ張る。

同時にロープを持ったエルセア兵達も、後退を始める。

「今です!」

シルヴィアが弦から手を離し、放たれた矢は闇を纏って太くなり、岩を発射する寸前のところまで持ち上がっていた投石機の
岩を積んだ籠と本体を繋ぐ……ある意味、投石機の要でもある細長い棒を貫いた。

真ん中からボッキリッ!とへし折れた投石機の籠の部分が、持ち上がっていた高い位置からエルセア兵の上に落ちてきた。

この時、籠に積んでいた岩も散らばり、周囲のエルセア兵に降り注いだ。

「あれ1つ作るのにも、それ相応の時間と労力が必要でしょう。昨日の今日で完成したのは、おそらくあの1機のみかと。」
「……だろうな。残ったエルセア兵達が負傷した仲間を荷車に乗せて、撤退していく。」
「さて……日はまだ高い位置にある。敵はこの後、どんな手を打ってくるか……」


◇◇◇


エルセア軍・本陣天幕。

「なっ……!?投石機すら、力を発揮する前に壊れただとぉ!?」
「バルザック様!正確にはその……『壊された』です……」
「どっちでもいいわ!!城壁の破壊に失敗したことには変わりないのだからな!!くそっ……忌々しい奴等めぇ……」

「失礼します!」

天幕の入り口が開き、1人の兵士が入って来た。

「何だ!?」
「バルザック様。少し来ていただけませんか?」
「?」

バルザックは兵士に、食料を纏めて貯蔵している天幕の裏へ案内された。

「こんな場所に連れ出して、一体何の真似だ!?」
「あの、こちらの穴なのですが……」
「穴?」

バルザックは視線を落とし、天幕のすぐ後ろに空いた人間1人が通れそうな、そこそこ大きな穴を見つける。

「何だこれは?此処に来た時、こんな穴なんて空いていない更地だったはずだが……」
「おそらくなのですが……敵が此処に来たのではないでしょうか?」
「何!?そんな馬鹿な!」
「いえ、実は私、以前シフルールの関所で、穴の中から飛び出したり、体の部位をバラバラにして暴れまわるゾンビを見かけたのです。もし、あのゾンビがシフルールではなく、あの古城に居る者の仲間だとしたら……」
「この穴は敵の城のどこかに繋がっている!?」
「はい!おそらくですが……」
「ふははっ!これはいい!そうだな……よしっ!3人の兵を選んで、この穴の中を進ませろ!どこに続いているのか、確認させるんだ!」
「はっ!」
「仮にこの穴を空けたのが、そのゾンビなのだとしたら……ふふふっ!本当に、脳まで腐っているようだな。証拠隠滅の仕方も知らんようだ!!」

***

タドミール・テルミヌス 城壁。

「…………」

俺は城壁に残り、マウトが昨日移動する際に岩山の側面に作った穴の方を見る。

「もし、あの穴の繋がっている先から敵が侵入して来たら……おそらく、敵陣にはマウトが顔を出した穴が幾つかあるハズだ。」

俺は岩山に出来た穴に、突撃槍の先端を突っ込む。

「………………『 エクリクシス・ フィンスターニス 』!!」

突撃槍から溢れ出した邪悪なオーラが、多分今、マウトが作った通路全体に張り巡らされているだろう。

そして……俺が突撃槍を突っ込んでから数分後

敵陣から5本の闇の極太の柱が噴出した。5ヶ所も穴が開いていたのか……


◇◇◇


エルセア軍・本陣天幕。

「なっ……!?件の穴から邪悪なオーラが噴出しただとぉ!?」
「それも5ヶ所……選抜した3名も穴の中で攻撃をうけたようで……押し戻された現在、医療天幕で集中治療を受けております。」
「えぇい!あれも駄目、これも駄目!…………そうか。」
「バルザック様?」
「小細工をするからいけなかったのだ。馬を引け!俺が敵の大将を挑発して、一騎討ちに持ち込んでやるわ!!」
「それは少しお待ちを!敵の実力は未知数です!幸い、兵糧はまだあるのです。もう少し様子見をしても……その間に、何か別の方法が……」
「小細工はもういらん!俺は武人だ!武力で全てを解決する!俺との一騎討ちに応じないのであれば、敵の大将を盛大に罵ってやるだけだ!!」

バルザックはそう言うと、馬に跨り陣営を飛び出した。

「バルザック様!?くっ……手の空いている者は、私に続け!バルザックを追いかけるぞ!!」

***

タドミール・テルミヌス 城壁。

「ん?」
「どうした?ザイン。」
「御館。敵陣から何やら単騎でこちらへ来る者が……」
「え?……本当だ。投降者かな?」

そう思っていると、馬に跨っている男が右手で大剣を高々と掲げて、大声で名乗りを上げた。

「俺はエルセア軍・大将軍!バルザック!!貴様等、よくも……今まで散々好き勝手してくれたな!!城門を開けて出てこい!!俺のバスターソードの錆にしてくれる!!それとも、貴様等は城に籠っていなければ戦うことのできない臆病者なのかぁ!?」

「おうおう、随分言ってくれるじゃねえか。」
「大将軍……彼のどの辺りが『 大 』なのでしょうか?」
「さァな?ひょっとして、『 バカ 』とか『 無能 』の前に付く言葉が『 大 』なんじゃね?現に今までの城攻め、全部失敗してるみてェだし?ギャハハハハハ!!」
「ぷっ……言うねえ、マウト。」
「御館。あの者との一騎討ち……俺が行っても構わんか?」
「ザイン?あぁ、良いぜ。任せた!」
「大将首、期待してるぜェ、ザイン!」
「ふっ……期待に応えられるよう、尽力してみよう。」
「シルヴィア!ザインの出陣だ!城門を開けてやってくれ!」
「はいっ!」

今まで固く閉ざられていた跳ね橋が下り、ザインが敵の将軍・バルザックと対峙する。

「貴様が此処の主か!?」
「まさか。御館の手を煩わせるつもりが無いのでな……貴様はこの俺、ザインが相手してやろう。まさか……大将以下の三下が相手ではやる気が出ないなどと言い訳をして、逃げるつもりではないだろうな?」
「このっ……!!良いだろう……お前を斬り倒して、城の中の連中も纏めて斬り倒してやる!!」

バルザックが馬を駆り、突進の勢いに任せて振り下ろした大剣を、ザインは斬馬刀で受け流す。

「初撃は流されたか……だが!!」

バルザックは馬をザインの傍まで走らせ、そこで足を止めて馬上から大剣を振り下ろす。
ザインはバルザックの攻撃を斬馬刀で受け止めては押し返し、そのまま流れるように勢いを付けて斬馬刀を振り下ろす。

「うおっ……!?」

バルザックも慌ててザインの攻撃を受け止め、何とか押し返す。

しばらく2人の剣が交わる度に火花が散り、重く濁った金属同士がぶつかり合う音が周囲に響き渡る。

「こいつ……!何て重い1撃を……これで此処の大将ではないだと……!?」
「ふむ。こうしていても埒が明かんな。」

ザインは力を込めてバルザックの大剣を押し返す。
反動でバルザックと、バルザックを乗せていた馬が大きく仰け反った。

「これで終わりだ……消えろ。『 ウンターガング・ネーティング 』!!」

ザインが振り下ろした斬馬刀はバルザックに直接当たらず、地面を力いっぱい叩きつけた。
しかし、その時発生した衝撃波が地面を抉りながらバルザックまで伸び、そのまま貫通していった。

しばらく無音の時間が過ぎ……そして、バルザックと馬が左右真っ二つに分かれ、先に左側が倒れ、続いて右側が倒れた。

「『 騎兵ごと『 馬 』を『 斬 』る『 刀 』』で、『 斬馬刀 』だ。覚えておけ……」

「「「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!バルザック様がやられたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

ようやく事態を把握したのだろう。バルザックを追いかけてきたエルセアの兵士達がパニック状態に陥った。

「貴様等!こいつの配下の者か?このまま此処に死体を放置されては敵わん。ちゃんと責任をもって自国まで持ち帰れ!!」

ザインに斬馬刀を突き付けられ、エルセア兵達が無言のまま首を縦に振る。

そして、ザインが城内に戻るのを見届けた後、エルセア兵達も慌ててバルザックの死体を回収して陣営へと戻って行った。

Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.59 )
日時: 2020/05/20 11:30
名前: 柔時雨

タドミール・テルミヌス 城壁。

「御館。只今戻った。すまない……大将首はその……持って帰って来れなかった。」
「おかえり、ザイン!見てたぜ、お前の勇姿!本当によくやってくれた!」
「素晴らしい働きです!お疲れ様でした、ザイン!」
「おっ!戻ったか、ザイン!ギャハハハハ!やっぱり、スゲェなお前!ほら、地下から酒を持って来てやったぜ!飲め!!」
「あぁ、有難く頂こう。」
「連中もこれで撤退するかな?」
「でしょうね。自分達を指揮する将が敗れたのですから。」
「マウト、すまねえ。せっかく見取り図を作ってくれたのに、活用することなかったな。」
「んァ?あぁ、良いって。気にすんなよ、大将!シルヴィアを無理して敵陣に行かせるデメリットが無くなったって考えりゃ、得したモンだろォ?」
「そっか……そうだな。それじゃあ、皆……本当にありがとう!」

俺は頑張ってくれた3人に対し、深々と頭を下げる。

「これからも今回と似たような事態があるかもしれねえけど……今はそんなこと考えなくていい!今はとにかく、この勝利を祝おう!!今日は宴会だ!!」

俺の宣言に、3人が同調してくれる。


それからシルヴィアが作ってくれた料理と大量の酒で、夜遅くまで互いの武功を労い合った。


***


タドミール・テルミヌス最上階・大広間。

「ふぅ……飲んだ、食った、騒いだぁ……」

玉座にだらしなく座り、今日の籠城戦のことを思い出す。

「まったく……皆、本当にスゲエよ。俺にはもったいねえくらいだ。」
「そう言ってもらえるのは、配下としてとても誇りに思います。」

いつの間にか大広間の扉が開いており、シルヴィアが入って来ていた。

「シルヴィア……悪かったな。戦の後だってのに、飯まで作らせて……」
「お気になさらないでください。私も、皆さんに頼っていただけて嬉しいのですから。」

そう言いながら、シルヴィアが玉座の隣に腰を下ろす。

「それにしても……ザインは本当に強かったですね。」
「あぁ。流石、ドラゴンを1人で討伐していただけのことはあるな……」
「それに、マウトも……今回は襲撃することはなかったですが、敵の陣営の見取り図を作ってくれました。あれには本当に驚き、純粋に凄いと思いました。」
「ははっ、変わったな。シルヴィア。」
「うふふっ、そうですね。えぇ、私もそう思います。自分でもこんなに素直に他者を称賛できるようになるとは……そして、それをこうして自分で認められるようになるとは思いませんでした。」
「良い事じゃねえか。そんなお前も、敵の攻城兵器である投石機を見事に破壊してくれた。ありがとう。」

俺は改めて頭を下げる。

「そうですね。確かに私も、マウトも、ザインも頑張りました。ですが……私はやはり、主様が1番頑張っていたと思います。」
「え?そうか?今回、俺……マジで何もしていないぞ。」
「そんなことはありません。だって……主様、ずっと城壁に居たではありませんか。」
「もしかして、部屋じゃなくて城壁で休んでしまったこと、怒ってる?」
「確かに主様にはちゃんとした場所で休んでもらいたいですが……今はその話とは関係ありません。」

シルヴィアが微笑みながら、玉座の手摺に置いている俺の右手に、そっと左手を重ねて来る。

「私とマウトが此処へ、エルセア兵が攻めてきたことを報告しに来た際……主様は話を聞いて、城壁へ向かいましたね。」
「あぁ……悪い。皆の報告に嘘は無いとは思ってるんだけど、自分の目でも把握しておきたくって、つい……」
「謝らないでください。主様の性分は理解している……つもりです。主様。」
「はい。」

シルヴィアが真剣な表情で俺を見上げて来るので、俺も真剣な表情を意識してシルヴィアの話に耳を傾ける。

「籠城戦の際、城壁は1番最初に戦場になる場所です。そして、敵は何としても城門・城壁を突破しようと苛烈に攻撃を仕掛けてくるため、矢や礫が大量に飛んで来る最も危険な場所です。」
「はい。」
「まぁ、今回の敵はことごとく失敗していましたが……そんな危険な場所に主様は私達と一緒に立ち、私達に指示を出してくださいました。戦況報告を聞き、指示を出すのであれば、この大広間でも出来たというのに……」
「それは……何か嫌だな。うん。シルヴィアには怒られるだろうけど、俺は自分だけこういう安全な場所に居て、皆に戦闘を任せるんじゃなくて、皆と同じように戦場で一緒に戦いたいんだよ。」
「えぇ。私も主様には戦場で傍に居てもらいたいです。つまり……そういうことです。」
「……ごめん、どういうこと?」
「主様は危険な戦場でも常に逃げずに、共に戦い、指示を出したり、味方を鼓舞して、勝利した際には共に喜んでくださる。主様は『そんなことは仲間として当然!』と仰ってくださるのでしょう。」
「ははっ……読まれてる。」
「主様はそう仰ってくださいますが、実行できている権力者が一体この世界に何人居ることか……」

シルヴィアが言うこの世界の権力者っつうのは多分、このサーバーの、LVの高いNPCのことなんだろうなぁと思う。

「マウトもザインも言っていました。『 主様と一緒に居ると楽しい。戦闘の際も、自分達と同じ戦場に立って戦ってくれるから、心から信頼することができる。』と。」
「ザインは言ってくれそうだけど、マウトも言葉は違ってもそんな風に思って言ってくれるのは、嬉しいな。」
「ですから!今回、最も危険な戦場で最後まで一緒に戦ってくれた主様も頑張ったのです!うふふ……お疲れ様でした。」

シルヴィアはそう言いながら再び微笑み、重ねていた左手を離して、その手で俺の頭を撫でてくれる。

「そうか……うん、そう言ってくれて、やっと理解できた。ありがとうな、シルヴィア。皆に愛想尽かされないように、これからも俺なりにいろいろとやってみるよ。」
「はい。私も……いえ、私達も全力で貴方様を御支えします。共に楽しく歩みましょう。我等が主様。」

月の光が差し込む大広間で、俺とシルヴィアは互いの顔を見て笑い合った。

Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.60 )
日時: 2020/05/21 09:57
名前: 柔時雨

No.12 〜墓地に現れる忠誠心 〜

タドミール・テルミヌス最上階・大広間。

「……え?墓地で亡霊を見た?」

近隣の村で食料調達と情報を収集してきたシルヴィアから、そのような報告を受けた。

ちなみに、『 墓地 』とは以前、マウトと出会ったあの墓地である。

「いや、あそこには以前マウト……ゾンビが出たんだぜ?今更亡霊が出たところでなぁ……むしろ、墓地なんだから、亡霊くらいそりゃ出るだろ。」
「そうですね。ですが、この話を聞いて驚かないのは私達のように戦う力を持ち、更にそういう環境に慣れた者。または、とても勇敢な冒険者くだいでしょう。戦う力の無い人間達にとっては、やはり恐怖を感じるのだと思います。」
「なるほど……それで、また様子を見て来てほしいと。」
「はい。どういう経緯なのか『 墓地での騒動は、アレンさん達に任せれば安心 』『 墓地に厄介なモンスターが出ても、アレンさんの仲間になれば大丈夫 』といった感じの話が、いつもお世話になっている村の中で広まっているようで……」
「いや、そんなに絶対的な信頼を寄せられても、毎回上手くいくとは……けどまぁ……様子くらいは見に行くか。シルヴィア、共を頼む。」
「はい!喜んで。」


◇◇◇


拠点の留守をマウトとザインに頼み、俺とシルヴィアは自分の馬を駆って、久しぶりに墓地を訪れた。

「此処に来るのも久しぶりだな。まぁ……あんまり変わってねえけど。」
「墓地ですからね。変わる物といえば墓石の数と、身元不明の遺棄され放置された死体の数くらいですよ。」

そう言いながら、シルヴィアは積み上げられた死体の方へ視線を向ける。

「相変わらず酷いな……ん?」
「どうされました?主様。」
「何かが近づいて来る。」

少し離れた霧の中から、パッカ……パッカ……と馬の蹄の音と、微かに金属同士が擦れる音が聞こえてくる。

音はどんどん近くなり……そして、それが霧の中から出てきて、俺達の前で止まった。

俺の鎧と同じように黒く禍々しい鎧を身に纏った『 首無しの 』騎士が、同じように頭部の無い馬の上で
こちらに向かって突撃槍の先端を突き付けてくる。

突撃槍を持つ右手とは反対……左腕と脇で、たぶんコイツのものと思われる男性の頭部を抱えている。

「まさか、こんな所でデュラハンと遭遇するとはな……」
「主様もデュラハンは御存知でしたか。」

「我が名は『 エルネスト 』!これより先には我が主『 ソフィア 』様がおられる!緊急の用が無ければ、お引き取り願おうか!」

「俺はアレン。種族は【 英雄 】、クラスは【 暗黒騎士 】だ。今回はお前の主ではなく、エルネスト……お前に用があって来た。」
「私に?どのような用件か?」
「用件っていようり、会話……うん、会話だな。俺達はお前と話がしたくて此処に来た。」
「私と話を?…………敵意は感じられない。良いでしょう。」

そう言うとレオナルドは馬から下り、俺達の前に立った。

「話をする前に……彼女はシルヴィア。種族は【 自然 】、クラスは【 ダークエルフ 】だ。」

俺の紹介の後、シルヴィアが丁寧にお辞儀をする。

「これは御丁寧に。では、私も改めまして……名はエルネスト。種族は【 自然 】、クラスは【 暗黒騎士 】です。」
「……え?【 自然 】?」

確か【 自然 】って、妖精や精霊が多いってゲームの説明画面かどこかに書いてあったような気が……

「主様。デュラハンが【 自然 】なのは当然です。彼等はアンデッドモンスターではないのですから。」
「えっ!?そうなのか?」
「私の場合、デュラハンになった経緯は、アンデッドのようなものですが……」
「デュラハンは、人の死を告げる妖精の1種です。デュラハンに家の戸をノックをされて外に出ると、大量の血を頭から浴びせられます。最近ではノックをせずに強引に入って来て……大量の血を頭から浴びせられます。」
「何だ?その嫌がらせ……しかも、不法侵入とまできたか。」
「しかも、他の妖精は死ぬ相手の目の前に現れて直接死を告げるのですが、デュラハンの場合は血を浴びせられた本人が死ぬのではなく、浴びせられた相手の身内・近しい人が近いうちに亡くなるので、対象の相手が誰なのかはその瞬間になるまで判らないのです。」
「ほう……シルヴィア殿、御詳しいですね。」
「本当に……俺ももう少し、いろいろ勉強します。」
「それで、本題なのですが……アレン殿。私に話というのは?」
「え?あぁ、うん。これはたぶん、エルネストに悪意は無いのだろうけど……実は、この墓地であんたを見かけた、近隣の村の人間が怖がっているそうでな。」
「……!そうでしたか。それは……知らぬこととはいえ、村の方々に申し訳ないことをしてしまいました。」
「エルネスト殿。先程の口上で、貴方の背後には仕えている主が居ると仰っていましたね。差支えが無ければ、何故此処へ来たのか……御話していただけますか?」
「はい。我々はヴァイナー大陸の東方にある『 アスティア 』という都市に居ました。ソフィア様はその地の領主の娘で、私は領主である『 レオナルド 』様より、彼女の護衛を申し付けられていました。」
「東か……そっちの方にはまだ、あんまり行ったことないな。あっ、話の腰を折って悪い。続けてくれ。」
「続けろと申されましても、それからの展開はよくある話です。アスティアも領土拡大を目論む北方領土の者達に攻め込まれてしまいまして……私も戦場の最前線で奮闘していたのですが、レオナルド様に呼ばれ、ソフィア様と亡命するように命じられ……」
「この地を目指したという訳ですね。」
「具体的な目的地があったわけではありません。それよりもとにかく、ソフィア様を一刻でも早く危険な地から遠ざけようと必死でした。しかし……」
「敵に見つかっちまったんだな。」
「はい。敵に取り囲まれ、私と愛馬は首を斬り落とされました。胴から離れた首が……瞳が最期に捉えた光景は、ソフィア様の胸に敵の凶剣が突き刺さる瞬間でした。」
「「…………」」

エルネストの話に、俺もシルヴィアも黙ってしまう。

「そして……何故、私と愛馬がこのような形で蘇ったのかは判りませんが、再び動けるようになったこの体で、ソフィア様をこの地までお連れしたのです。」
「そうだったのか……けど、エルネスト……」
「アレン殿の申されたいことは、わかっています。この様な行為に意味が無いという事は……しかし……!」

鎧に抱えられている彼の顔が、悔しそうな表情を浮かべる。

「運命という言葉で片付けてしまうことは簡単です。ですが……それでもやはり、私は自分が情けない……許せない!主の命令は最後まで守れない、護衛対象であったお嬢様を守れない!それなのに、自分だけこうして再びの生を受けてしまって……」
「……エルネスト殿の気持ち、少しだけ解るような気がします。」
「解って……いただけますか?シルヴィア殿!」
「はい。現に私も、こちらのアレン様にお仕えする身ですから。仮にもし、私の力不足でアレン様の身に何か遭った場合は、私も自責の念に苦しむことになるのでしょうね。」
「話はわかった。けど……エルネストみたいな忠臣を、こんな場所で腐らせておくのは惜しいな……なぁ、エルネスト。俺達の仲間になってくれねえかな?」
「私が……貴殿の配下に!?」
「騎士であるあんたに主を変えろって言ってるんだから、酷い事を言ってるっていう自覚はある。ただ、こう見えて俺にも一応の領地はある。俺の仲間になってくれるんだったら、ソフィアさんの墓を領内に造ることを許可しても構わない。」
「…………御話は解りました。この様な姿になってしまいましたが、私にはソフィア様を御守りするという義務があります。ソフィア様が安らかに眠れるのでしたら……私のプライドなど捨て、主を違えて貴方の御言葉に甘えるべきなのでしょう。ですが!」

エルネストは頭部の無い馬に跨り、突撃槍を構える。

「私は実力の無い者に仕えるつもりはありません!アレン殿……どうやら貴殿も突撃槍を持ち、愛馬が居る御様子。どうです?私とジョストで勝負しませんか?」
「ジョストで?」

ジョストって確か……騎兵同士が突撃槍を使って正面から突きあう……一騎討ちをするスポーツ(?)だったよな?
 
「はい。アレン殿が勝利した場合、私は貴殿に忠誠を誓うことを約束しましょう。しかし、私が勝利した場合は……このままお引き取りください。そして、私とソフィア様を此処でそっとしておいてほしいのです。」
「主様……」
「わかった。いいぜ……その勝負、受けてやる。そんで、絶対勝ってお前を仲間として迎え入れる!」

俺はそう宣言し、自分の黒馬に跨って突撃槍を構える。

「アレン殿はジョストの経験は御有りですか?」
「やったことはねえけど、ルールなら解ってるつもりだ。馬を走らせて、すれ違い様に槍で相手の体を突く。それだけだろ?」
「はい。行為そのものは簡単ですが、そこには『 想い 』があります。」
「想い?」
「はい。アレン殿が私を仲間に向かえ入れたいという想いは確かに受け取りました。しかし!私も、ソフィア様の御身体にこれ以上負担を掛けないようにするため、この地を安住の地として、不滅となったこの身体で彼女を守り続けるという決意をしたのです!」

エルネストが抱えている頭部の髪の毛が見える……後方に居るソフィアさんの方へ向けているんだろう。

「私の想いと、アレン殿の想い……どちらが勝るか、気持ちの勝負です!」
「なるほど……望むところだ!」
「シルヴィア殿、貴方には審判をしていただきたい。」
「え?それは構いませんが……私、そのジョストとやらのルールが判らなくて……」
「簡単だ。俺達の手の甲を槍が掠めたら1点、肩や胴に当たったら2点。相手を落馬させたら、無条件で落馬させた方の勝利。このルールで先に3点先取した方の勝ち。本来ならこれを3セットして、最終的に2セット取った方勝ちになるんだ。」
「なるほど……わかりました。」
「本当は兜の羽飾りを打ち抜くフェザーズフライっていう決着の方法もあるんだけど……俺は兜を装着してないし、エルネストに至っては頭がそうなっちまってるからな。互いに頭部への攻撃は無しにしようぜ。」
「承知しました。では、頭部への攻撃は無し!今回は1セットで勝敗を決めましょう。」
「あぁ。わかった。」

ルール確認を終え、少し離れて……馬達が充分速度をつけられそうな位置で、俺とエルネストが馬上で突撃槍を構える。

「「…………」」

「それでは……始めっ!」

シルヴィアの合図で、俺とエルネストが同時に馬を走らせた。

馬はあっという間にスピードに乗り、俺も槍を構えて神経を研ぎ澄ましながら、前方から迫って来る首無し騎士の姿を捉える。


「いきますよ!アレン殿!」
「来い!エルネスト!」

シルヴィアが立っている場所を交差地点に定め、俺とエルネストで馬上で突撃槍を突き出す。

「「くっ!」」

槍と槍は重くぶつかり合ったが交差するだけ……互いに駆け抜ける瞬間、降り抜く勢いで落馬しそうになったが、何とか堪えて馬の走る速度を落とす。

「えっと……只今、突撃槍が主様、エルネスト殿の身体に触れませんでしたが……この場合は?」
「この場合は仕切り直しになるけど、どちらにも1ポイント入る。次の1戦で俺かエルネストのどちらかの槍が手の甲以外の場所に当たるか、落馬したら決着だ。引き続き、公正なジャッジを頼む!」
「承知しました!」

「……………」

俺の前方で、エルネストが槍を持つ右手をジッと眺めている……ような素振りをしている。頭が無いから、何処を見てるのかが判らない。

ただ……それでも、実際に槍を交えて判ったこともある。

エルネストは強い!

「さすがだな、エルネスト。俺の槍を持つ手がプルプル震えてるぜ。」
「アレン殿こそ、お見事な腕前!久しぶりに自分でも高揚しているのが分かります……このような好敵手と出会えたのは、本当に久々だ!」

互いを称え合いつつ、俺とエルネストは再び槍を構える。

「さぁ……勝負の続きと参りましょう!」
「おう。次で……決着をつける!」

「両者、構え!…………始めっ!」

シルヴィアの合図で、俺達は再び馬を走らせる。

「この1撃で……アレン殿には、地面を舐めていただく!」
「生憎、地面とキスする趣味は無いんだ!すまねえけど、お前の鎧に風穴空けるつもりでいくぞ!」

シルヴィアが立っている交差予測地点が迫る。

俺は槍の柄をしっかりと握りしめ、エルネストが迫って来るギリギリを待ち構える。

「うおぉぉっ!」
「はぁぁぁっ!」

俺とエルネストが槍を突き出したのはほぼ同時……しかし、先程と違ったのは……交差する直前に
エルネストの槍が伸びてきたこと。

「……!くっ!」

俺は馬上で体を可能な限り左へ反らしたがエルネストの槍は俺のガントレットの手の甲を掠めた。
しかし……俺も元の姿勢に戻る際に反動をつけて……エルネストの脇腹に突撃槍を当てた。

「ぐっ……!?見事……」

擦れ違い様にエルネストが呟き……俺の後方で、ドサッという音が聞こえた。

「エルネスト殿1ポイント!しかし、エルネスト殿が落馬してしまったため、この勝負!主様の勝利です!」

シルヴィアの宣言に、俺はようやく一息吐くことができた。
同時に俺は、仰向けで大の字になって地面の上に倒れているエルネストに歩み寄る。

「大丈夫か!?エルネスト。」
「アレン殿……ふふ、ははははっ!お見事です。見事に打ち負かされてしまいました。」
「結果だけ見れば俺の勝ちだけど、技術はお前の方が上だと思うぜ。手の内で槍の柄を滑らせて急激にリーチを伸ばして来た時は、本当に焦ったよ。」
「確かに……私もエルネスト殿の槍が伸びたように見えたのですが……あれは、そのような事をしていたのですね。」
「まぁ、言うだけなら簡単だけどな。実際にやってみろって言われると……アレを完成させるのに、相当努力したんだな。」

俺は倒れているエルネストに手を差し伸べる。
エルネストが手を握り返して来たので、俺は彼を引っ張り起こした。

「アレン殿……私も騎士の端くれ。1度交わした約束は守ることを信条にしております。」

そう言いながらエルネストが俺とシルヴィアの前で片膝をついた。

「前の主であるレオナルド様との思い出をそのままに、今!この時より、アレン殿の陣営に加わること……お許しいただけますか?」
「レオナルド……!あぁ、もちろんだ!俺達はお前の仲間入りを歓迎するぜ!」
「はい!これから宜しくお願いしますね、エルネスト!」
「ありがとうございます!では、私はその……ソフィア様の身体を持って参りますので、しばし、こちらで待っていてください。」
「あぁ。わかった。」

こうして、俺達の陣営に新しくデュラハンが加わった。
同時に……拠点の人気の無い所に、ソフィアさんが眠る小さなお墓も作られた。

エルネストが仲間になった翌日、マウトが……

『そのお嬢さんと領主なら、あの世の川の渡し守が覚えてたぜ!事情を話したら、向こう岸から戻って来た時に色々教えてくれた。2人共、無事に天国へ行けたそうだ。』

……みたいな報告を聞いた、本体に抱えられているエルネストの顔は微笑み、嬉し涙を流していたという。

Re: (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(レックス視) ( No.61 )
日時: 2020/05/22 07:38
名前: ka☆zu

act10 魔怪魚と機械魚


「にしても、マジで快適になったなこの拠点ハ」
「冒険の合間にのんびり出来て、士気も上がるわね!」
「離れる時も、僕のスキルで小さくすれば持ち運べるしね」
僕達は改築した移動式拠点【T-Rex2号】に乗って、草原を気ままに移動していた。
気分の切り替えも済んだので、いざ探索でもしようと会議室に集まっていたんだ。
「ポロニアーナ領はもう粗方潜っちまったよナ?そろそろ探索範囲を広げるカ?」
広げた地図を見ながらボルトが言う。
「うーん…北の方にまだ未開拓の地域があったと思うけど…」
ハーミアが答える。
「おや、北端に山がありますね。ここはまだ未探索のようですが」
バトラーが見つけた山を、今回は探索する事にした。

件の山に着いてみると、手付かずの横穴が空いているようだった。
スパークとバトラーに留守番を頼み、僕らはそこに入っていく。
「あたし、洞窟って初めて!ちょっとワクワクするなー!」
「はしゃぎ回るナ。洞窟ってのは足場が悪イ、転んじまうゼ」
初めての洞窟探検に浮き足立つハーミアを、ボルトが窘める。
なんだかんだ良いコンビになってきた気がするよ。
…と僕がしみじみしていると、
「キャー!!!」
「言わんこっちゃねエ!」
ハーミアの悲鳴が聞こえ、僕らはその場所に急いだ。

「おいハーミア!何があっタ!」
「あ…あっ…あれっ…!」
腰を抜かしたハーミアが指差した先には、無残にも猛獣の爪にやられたらしき巨大な引っ掻き傷を残し、絶命した人の遺体が横たわっていた。
「これは…洞窟内の魔物にやられたと見ていいかな」
「この傷から推測するに、ウチの拠点くらいはありそうなデカイ猛獣にやられたナ」
「ちょっと!なんで冷静に分析してるのよ!」
「落ち着ケ!大体毎日俺見てんだロ!今更死体くらいでわめくナ!」
「そりゃまあそうだけど。でもほら、ボルトはこの人と違って元気に動いてるじゃないか」
「まあそれもそうカ…ほら立てヨ。さっさと行こうゼ」
ボルトはハーミアの手を取る。
それを掴んで、ハーミアはやっと立ち上がった。
「…ん?こりゃ何ダ?」
ハーミアの腕を肩にかけながら、ボルトが言う。
僕がそれを拾ってみると、この人が生前使ってたであろう鉤爪だった。
「鉤爪だね。この人は武闘家か盗賊だったのかな」
「仏さんになっちまったもんは仕方ねエ、折角だし貰ってこうゼ」
僕らはその鉤爪を拝借し、先に進んだ。

時々水の音が聴こえる。
天井を流れたであろう地下水が、地面の岩に落ちていき、広がる音は洞窟にこだます。
僕らは変わらず先に進んでいる。
さっきのアレからハーミアは、ずっとボルトにくっついて離れない。
「ああじれってエ!少し離れロ!」
「だってぇ…」
「まあまあ、アレ程すごいのもそうそうないと思うし、そんなに怖がらなくても良いんじゃないかな」
賑やかに進んでいくと、少し広い所に出た。
周りの岩壁から、何かが大量に突き出ている。
それをよくよく見てみると、様々な鉱石や宝石が埋まっていた。
「おお…こりゃ凄えナ…!未開の鉱山ってとこカ」
「拾うしか出来ない僕らだからアレだけど、採掘できる人達が見つけたら大喜びだね…」
「あっ、じゃあ後でここをパパに教えましょ!きっと大喜びするわ!」
また和気藹々と喋りだした僕達は、先に進んでいく。

洞窟の最奥部は、まるで大広間のように開けていて、周辺にはやはり煌びやかな宝石や鉱石が見え隠れしていた。
隅の方には水場があり、どうやら外海と繋がっているらしい。
僕らがそこに近づくと、すーっと何かが現れた。
それは僕らより少し背の高い、人のような…
「あっ…あれ…あの人の顔…」
ハーミアが涙目になってふるえる。
その半透明な人物は、さっきの遺体と瓜二つだった。

「気を付けろ…気を付けろ…」
掠れるような声で亡霊は繰り返す。
その声に反応するかのように、水場から何かが飛び出してきた。
「ギュルルルルアァァァァァァァァッ!!!」
「来るゼ!構えロ!」
それは青い鱗に全身を覆われて、大きな爪を持った大型の半魚人のようなモンスターだった。
左の爪には、どこかで引きちぎってきたであろう金属のワイヤーが絡まり、右の爪にはべっとりと血痕がこびり付いている。
「あの爪の大きさ…まさか!」
「あの人をやったのは、こいつって事なの!?」
「気を付けろ…」の声がこだます中、半魚人はこちらを一瞥し、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
「ギュルオォォォォォォ!!!」
そしてこちらに襲いかかってきた。

「ちッ!」
爪の一撃を、スパナで防ぐボルト。
「ミラーズウォール!」
魔法で前方に鏡の壁を生み出し、敵の放った水のブレスを遮断するハーミア。
「灼熱鋼鉄拳!」
そして、放たれた氷の魔法を、トンファーから放った熱気で押し返す僕。
防戦一方の展開が続いていた。
転機が訪れたのは、しばらくの攻防の後。
半魚人は大技を放とうと、意識を頭上に集中させた。
その首元に欠けた鱗があるのを見つけ、僕は咄嗟にボウガンを放った。
見事に鱗のヒビに矢が当たり、その鱗が剥がれて柔らかい首が露見した。
「ミラーズバレット!」
ハーミアがそこに魔法を放ち、無数の鏡が敵を襲う。
鱗はさらに剥がれていき、もう弱点は簡単に捉えられそうだ。
「おまけにこれを食らいなさい!ミラーズフラッシュ!」
ハーミアが叫ぶと、撃たれた鏡の欠片が激しく光った。
目が眩んだ半魚人は怯む。
そこにボルトが、スパナから電気の球を発射した。
「これで終わりダ!プラズマショット!」
もともと水に濡れた身体だ。
怪物は思いっきり感電し、その場で爆散した。
大量の麻袋と共にログに映ったのは、「魔怪魚マブカダール撃破」の文章だった。

「…ありがとう…」
突然幽霊がこちらに語りかける。
「私は探検家アンペア。いつものように冒険をしようとここに潜ったら、ヤツに後ろから襲われてしまって…仇を討ってくれてありがとう」
「やっぱり道中に転がってたの、アンタだったのカ」
「…そのー…ごめんなさい、まだ意思が残ってると気づかず、装備をもらって行ってしまって…」
僕が謝るも、
「構わないさ。どうせもう死んだ身だ。あそこにあっても朽ちるだけだからね。カバンに砥石もあったはずだから、持っていくと良い」
「ありがとうございます」

「…そうダ」
ボルトが何か思いついたようで、倒したマブカダールのドロップアイテムをまじまじと見つめた。
「なあアンペアさん、アンタ、あの死体に乗り移ってここまで来れるカ?」
「あ、ああ。この位の距離なら行けると思うが…」
「ならちょっと乗り移ってこっちに来てくレ。思いついた事があル」
アンペアさんが身体を取りに行く間に、ボルトが鉄鉱石やらワイヤーやらをもって何かかちゃかちゃ作り始めた。
「レックス、お前のボウガングローブも貸セ。少し手を加えル」
僕が言う通りにすると、アンペアさんがやってきた。
「自分の身体なのに、取り憑いて動くとこんなにも辛いとは…」
「有難いゼ。もう離れて平気ダ」
アンペアさんが離れると、ボルトは突然その頭を開き、アンペアさんの脳を調べだした。
そして何かの回路に数値をコピーすると、こう言った。
「アンタの脳の中身…まあ思考回路や記憶なんかは、全部この回路にコピーできたゼ。あとはアンタにひとつ頼みがあるんだガ…」

「頼みとはなんだい…?」
「俺達の水上用ガジェットの思考回路として、一緒に来ないカ?」
「ガジェットの…思考回路?」
「あア。さっきぶっ倒せたマブカダールのパーツを使ってガワは出来たんだガ、それを動かすための自立型思考回路が無くてナ…自分の命を奪ったモノの姿になっちまうって事になるが、その思考回路として生きねえカ?」
アンペアさんはしばらく考えた後、はっきりと言った。
「…行こう。私の二度目の人生を、恩人である君達のそばに置いてくれ」
「有り難エ!じゃあ早速くっ付けるゼ!少し痺れるが、堪えてくれヨ!」
ボルトは霊体のアンペアさんにスパナを当て、電流を流した。
そこには彼の姿はもうなく、スパークの時のような魂のナットに変わっていた。
それを先程の思考回路にセットし、さっきから組み立てていた何かにセットする。

目を開いたそれは、機械で再現されたマブカダールそのものだった。
但し背中に座席のようなものがある。
「驚くのはまだ早えゼ!アンペアさん、アンタの思考回路にインプットした、文書Aの通りに動いてみてくレ!」
「…ああ。こうだな」
アンペアさんの声がそう言うとジャンプし、一瞬で変形した。
着水したその姿は、巨大な魚だった。
よく見ると、横腹に扉らしきものがある。
開けてみると、人が5人ほど入れそうなハッチになっていた。
「アンタの視界が、ハッチ内のモニターにも見えるゼ。有事にはここから操作も可能ダ」
自慢げに話すボルトの後ろで、アンペアさんが笑った。
「…ふふっ。何だか楽しくなってきたよ。これからよろしく頼む」
「こちらこそ!これからよろしくお願いしますね!僕は義賊のレックスです!」
「あたしはハーミアよ!鏡の魔法が使えるわ!」
「俺はボルト。武器職人をしてるゼ」
「宜しく、ハーミアにボルト、そしてレックス。もう仲間なんだ。私の事もさん付けではなく、名前で呼んでくれ」
「ええ…よろしく!アンペア!」
かくして僕らは、新たなサポーターの「機械魚アンペア」を仲間にした。
そのまま意気揚々と拠点に戻り、バトラーとスパークにも紹介した。
更にアンペア用の充電台を部屋に新設し、シャワーで疲れを癒したんだ。
ちなみに例の洞窟はオーベロン様に報告して、すぐに王国の採掘施設が整えられたよ。
掘り当てた資源がすぐにいくつか僕らにも送られてきたりした。

「そうダ。おいレックス、これ返しとくゼ」
お風呂上がりに僕は、ボルトに預けたボウガングローブを返された。
「ちょっと装備して、そこの新しいダイヤルを回してみナ」
持ち手のグリップに付けられたダイヤルを回すと、カチッと音がした。
その状態で外に向けて撃ってみると、発射されたのは矢では無かった。
ワイヤーに付けられた鉤爪が飛んでいき、木の枝を掴んだ。
「おお…!これは便利だね。ありがとうボルト」
「名付けて、フックショットモードとでも言うカ?マブカダールの奴が絡めてたワイヤーに、滑車みたいなパーツがくっ付いててナ。アンペアに仕込んでも一つ余ったんで、お前のグローブの強化をしたゼ」
新たにフックショットを使えるようになり、僕らの活動範囲が上がりそうな予感がした。

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