ダーク・ファンタジー小説
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- 蒼き鬼兵
- 日時: 2012/07/22 22:10
- 名前: ファランクス (ID: 5f84h5.J)
初めまして。
小説を書くのはこれで三作品目になります、ファランクスと申します。
と言っても、どれも完結してない上に、駄文ですがそれでもよろしければどうぞ読んでみてください。
それでは〜。
【あらすじ】
武装警察ヴェンサー。
その対テロ特殊部隊に所属するディーン・ダグラスはとある盗難物の捜索を上司に極秘で頼まれる。
その盗難物が、巨大企業サイヴァース社のテロ計画を止める手掛かりである事も知らずに。
その片鱗を掴んだディーンは、盗難の実行者と共に巨大企業に戦いを挑む事となった……。
- Re: 蒼き鬼兵 ( No.6 )
- 日時: 2012/08/03 09:14
- 名前: 美璃夜 (ID: IAQru7qe)
ファーあああ!
見つけたでぇ!
なにこれめっちゃおもろいやん!
イリーナとスキッドが大好きすぐる…
頑張れ!
- Re: 蒼き鬼兵 ( No.7 )
- 日時: 2012/08/04 18:02
- 名前: ファランクス (ID: 5f84h5.J)
みーちゃん>
うおおおお見つかった!?
コメありがとう、まじテンション上がる!
いやせっかく書いたから、掲示板で宣伝しようかと思ってたんだけど、忙しくて最近行けない(汗
なりきりせっかくキャラ作ったのに全然行けなくてホントごめんな…。
おもしろいのか!?ありがとう!!^^ノ
やっぱ読んでくれる人がいるとテンション上がるな!
SF急に書きたくなって、即興で作ったから手抜き感あるかも知れないけど、その辺は勘弁ね^^;
多分今日の夜更新するから、またよろしくな!
- Re: 蒼き鬼兵 ( No.8 )
- 日時: 2012/08/05 03:39
- 名前: ファランクス (ID: 5f84h5.J)
広大な雪原の中に、半壊した輸送列車の先端が埋もれていた。
吹雪はとりあえず収まったのか、天候は穏やかだった。
太陽こそ顔を出していないので、気温は相変わらず氷点下だが、吹雪くよりはマシだろう。
天井部分が崩壊し、吹きっ晒しの車両の中で三人が生き延びれたのは、そのような天候に恵まれたからでもあった。
一番最初に気が付いたスキッドが、ふら付きながらディーンを起こす。
「おいディーン……、起きろって、まさか死んでんじゃないだろうな?」
冗談を言いながら、しゃがみこんでうつ伏せに倒れている蒼髪の青年を揺さぶる。
「う……、痛ってぇ……。なんだ、スキッドか? 何がどうなったんだ?」
ゆらゆらと起き上がり、頭を片手で押えながら言った。
「って。おいおい、事故りやがったのか? やべー事になってんじゃねーか」
ディーンが起き上がって真っ先に見えたのは、崩壊した壁の向こう側に見える、脱線して炎上する輸送列車だった。
「よっく俺ら生きてたぜィ。ディーンから悪運をあやかったみてェだな」
「言ってろ。それより、例の包帯女は?」
ディーンは辺りを見回して探す。
包帯女……黒衣の犯人は、床に丁寧に寝かせられていた。
「何度揺さぶっても起きねェんだよ。ま、息してるし死んではねェけど」
あそこに寝かせたのはスキッドだったらしい。
「相変わらず女には優しいな。つーか、意識ねーのを良い事に変な事やってねーだろーな。場合によってはお前が捕まるぞ」
スキッドは優しい。
優しいが、女好きで変態だ。
そんな不名誉な逮捕だけはやめてくれとディーンは心の中で呟く。
「さすがにねェ。だが、コイツならあったぜィ」
懐から取り出したディスクケースをディーンに投げる。
「こいつが例のデータディスクか。つーか、どこにあったんだ?」
「彼女の懐さ。大事な物ほど、肌に近い所に隠すってなァ」
ニヤニヤしながらスキッドは言った。
その様子を見て深いため息を吐くディーン。
「目が覚めた後殺されても知らねーぞ。この包帯結構強かったからな」
「包帯って……。そう言えば、珍しく苦戦してたみてェだったなァ」
「苦戦というか、意外だったんだよ。でもありゃあ、実戦の戦い方じゃなかったな。どっちかと言えば、武術や剣術に近い感じがした。強かったが、飽くまで試合的な意味で、だ」
「なるほどねェ」
言いつつ、スキッドは操縦室のある機器の近くへ行き、なにやら操作を始めた。
「なにやってんだ?」
まさか列車を修理する訳でもないし、とディーンは不思議そうに眺める。
「……ひとつ、気になる事があってな」
スキッドの声が真剣になる。
「これは単なる事故なのか? ってなァ。炎上してるコンテナを見て見ろ。あそこは第38番……中身は食品だぜィ。いくら激しく事故ったからって自然発火するとは考えにくい」
話しながらも手を休めない。
左手首に着いている小型コンソールを操作し、そこからコードを伸ばし、機器に接続する。
「お前みたいに目も記憶力も良くねーよ」
ディーンは目を凝らして炎上するコンテナを見たが、コンテナ番号や中身までは見えなかった。
ちなみにスキッドは眼鏡を掛けてるが、伊達だ。
理由は、「この方が女にウケがいい」かららしい。
ディーンが知った時は、あまりに下らない理由でそのまま転びそうになったという。
「んで? 結局お前は何をやってんだ?」
「ん……列車の管理システムにハッキングして、監視カメラの映像を探してんだよ。監視カメラはとっくにお釈迦だろうが、映像は記録で残るからなァ。ただこの映像は普通セキリュティコードを入力しねェと再生できねェ。だからそのコードを探してんだ。コードは四ケタ。チョロいが、まァ一般企業のセキリュティなんざこんなモンさァ。だいたいコンテナの中身と外を記録した映像なんて、そうそう欲しがる奴もいねェしなァ。ただ四ケタっつっても二ケタと二ケタにそれぞれ意味がある。普通は無意味な記号や数字の羅列だが、やっぱここァ温いなァ」
「……なるほど、分からん」
ディーンは途中から話を聞かず、外の様子を眺めていた。
正直、スキッドが何をやっているかはどうでもよかったのだ。
専門外のディーンには、どうせ分からない。
「…………出たぜィ、38番コンテナ、外部の映像だァ」
あっさりと、ハッキングを成功させ、映像を車内のモニタに流した。
「どれどれ……」
ディーンはようやくか、と言わんばかりに映像に目を向けた。
吹雪で視界は物凄く悪いが、確かにコンテナ外部の映像だ。
暫く待つと、映像にある飛行物体が映る。
まるで箱のような、無骨な外見。
二基のジェットエンジンを搭載し、機体下部に武装が施してある。
機体両脇には小さな安定翼と、ロゴが入っていた。
「HS-14、セブレイ。しかもあのロゴはァ……」
「ウルド傭兵団、か……」
スキッドの言葉にディーンが続いた。
映像は、セブレイが機体下部の60mm無誘導弾連射している所で途切れた
「決まりだな。これは事故じゃ無い、攻撃だ。しかも、攻撃したのはこの包帯女の雇った筈のウルド傭兵団。こりゃあマジでキナ臭くなってきやがったな。厄介事の臭いがプンプンするぜ」
ニヤリ、と笑ってディーンは黒衣の犯人を見る。
「こりゃあひょっとすると、この包帯もなんか訳アリかも知れねーな? しかし、いつまで寝てんだコイツは。ったくこの非常時に呑気な野郎だ」
ディーンは黒衣の犯人を足でちょいちょいっと蹴ってみる。
だが、相変わらず反応は無い。
「おいおい、彼女強いんじゃなかったのかァ? 目ェ覚ましてからまたバトり始めんのはさすがにゴメンだぜェ?」
やれやれといった具合でディーンを止める。
「つーか、課長に連絡入れねーとな。一応任務は達成したし」
任務とは、データディスクの回収だ。
犯人の確保は任務に含まれていないが、それも達成してしまった。
無線でサラン支部に繋ぎ、課長を呼び出し、これまでの概要を説明する。
『む。確かにキナ臭い話ではあるな。だがあの会社の事だ。下手に首を突っ込まない方が良い。また余計な仕事が増えるだけならいいが、命の保証はしかねる』
列車が砲撃された事は驚いていたが、それもある程度予想していたらしく、反応は極めて冷静だった。
『ま、気にはなりますが、我慢して置きますよ。それより、こっちは犯人もデータディスクも確保したんです。さっさと迎えを寄こしてくださいよ。吹雪で死にそうです』
実際にはまだ吹雪いていなかったが、こうでも言っておかないとすぐに迎えを寄こしそうに無かった。
『それなんだが……、実は、その場所に社長が直接向かう事になった』
……は?
と、ディーンは一瞬言葉の意味が理解できなかった。
『だから、サイバース連合企業社長の、ウラジミール・ソル・セヴァス氏が直接、お前達が今いる場所まで迎えに行くんだ、今すぐに』
『はあぁ!? 社長自ら!? この辺境の雪原に!? 今すぐ!?』 これにはディーンも思わず無線に大声で叫んでしまった。
世界一巨大な企業、サイバース。
その社長が今、目の前に現れると言うのだ。
『今ちょうど、お前達の居場所を転送した。五分後には到着予定だ。機嫌を取れとは言わないが、あまりイメージを悪くするような事はするなよ?』
——五分後!?
あまりに急な来訪に、ディーンはまたも驚きを隠せなかった。
- Re: 蒼き鬼兵 ( No.9 )
- 日時: 2012/08/06 20:16
- 名前: ファランクス (ID: 5f84h5.J)
外で少しだけ待っていると、小型の輸送機が、ゆっくりと下降してきた。
下部にジェットエンジンが付いている、垂直着陸が可能なタイプだ。
見た目は高級車を思わせる黒。
というか、それ自体が完全に高級機だ。
少し雪と風が出てきたが、機体には雪一つ付かない。
どうなっているのかディーンには理解出来なかった。
ただ、二人が疑問だったのは、その社長機の他に護衛機が一機も見えなかった事だ。
近くに待機しているだけで、ちゃんといるのだろうか。
着陸すると、機体後部のハッチが開き、中から社長……セヴァス氏と二名の黒服が現れた。
「ご苦労だったね。私が、サイバース連合企業、社長を務めるウラジミール・ソル・セヴァスだ」
この寒い中、防寒着も着ずスーツのみで涼しい顔をして自己紹介する。
二人がセヴァス氏を人間かと疑った瞬間だった。
二人は自己紹介をしようと思ったが、セヴァス氏は構わず続ける。
どうやら、二人に興味は無いらしい。
「君たちの仕事の速さには感動するよ。ウチの人員では、こうもスマートで迅速な真似は出来ないからね」
どうだか……。
ディーンは思った。
わざわざヴェンサーを頼った理由は、とてもこれだけとは思えないのだ。
二人が口を開く前に、次の言葉をつづけた。
「では、さっそく例の物を」
ディーンは、懐からディスクケースを取りだした。
黒服が無言でディスクを受け取り、中身をもう一人が持っていたノートパソコンで読みとる。
黒服は、手でOK、と合図を送ると、社長は満足そうにほほ笑む。
「そうか、よろしい、ご苦労だったね。それでは、御機嫌よう」
それだけ言うと、社長は踵を返し、すぐに機内へ戻ってしまった。
すぐに機体は離陸して、高度を徐々に上げて行く。
「……俺ら、一言もしゃべれなかったよなァ? イメージ悪くするような事、言ってねェよなァ」
スキッドは何気に気にしていた。
「さあ? まー少なくとも何も言ってないんだから失礼な事も言ってねーだろーな」
そう言って、室内に戻ろうとする。
そろそろ黒衣も起きる頃だろう、そう思っていた。
だが。
「おいディーン……、あれ……ッ!」
スキッドが震えた声で言った。
ディーンは振り返る。
見えたのは社長機。
なんだまだいたのかと思った矢先、機体下部から覗かせる物に血の気が引いた。
——180mm対地レールガン。
それを、ディーンとスキッドに向けていた。
一瞬思考が停止した後、まるで電流が全身を駆け巡ったように動き出す。
「伏せろッ!!」
ディーンが叫んだ瞬間、地面は周囲の雪を撒き散らして爆ぜた。
砲撃の衝撃を背中に受け、雪の中を転がる二人。
すぐに起き上がり、背後の社長機を振り返る。
「この野郎ォ!」
スキッドはすぐに二挺マグナム“セルコート”を抜き、射撃する——が、弾丸は簡単に弾かれる。
「防弾仕様!? クソッ、歯が立たねェ!」
「やめろスキッド! そんなとこでつっ立てたら的になるぞ!」
ディーンはスキッドを引っ張って走り出した。
だが、射撃は来ない。
振り返ると、空中に滞空している社長機の後部ハッチが開き、その中から見たことも無い人型のATが降りてきた。
目立つ赤いフレームに、細部が灰色。
黄色に光るカメラアイが二つ、手にレーザーライフル、腰にレーザーブレードがそれぞれ一つ。
明らかに警備では無い、戦闘用の武装だった。
「あのクソ社長、理由は知らねーが、どうあっても俺達を亡き者にしたいらしいな?」
社長機は、人型AT四機を置くと、颯爽と飛び去っていった。
その様子を見ながら、ディーンは腰のレアブレードを抜刀する。
「あのAT、新型か? 見た事がねェ」
スキッドもセルコートをリロードして臨戦態勢に入る。
そして、ATが動き出した。
まず、二機がレーザーライフルを二人に射撃。
二人はそれを左右に避ける。
それから、ディーンはライフルを持った一機に急接近し、レアブレードを横に一閃。
——が、レアブレードは、脇腹の装甲にあっさりと受け止められてしまう。
「なっ!?」
ディーンの手元に衝撃だけが伝わる。
「チッ! コイツら……なんなんだこの堅さはァァ!! 戦車か!?」
スキッドもセルコートを連射しながら叫ぶ。
弾丸は全て装甲の隙間を縫うように脚関節を狙っていたが、全て火花を散らす程度で、全く効いていなかった。
ディーンが攻撃したATは、銃床を利用して殴りかかる。
頭を狙った打撃をかわして、一旦距離を置く。
今度はカメラアイを狙い、体重を掛け渾身の付きを放つ。
狙いは正確だった、だが——外れた。
とてもATとは思えない俊敏な動きで、体を右に流すと、レーザーブレードを抜き、同時に下から上へ斬り上げる。
レアブレード水平にする事で何とか防御し、鍔ずり合いの状態を造る。
そこに、もう一機の斬撃が背後から迫る。
「ちッ!」
斜めに振り下ろされたレーザーブレードをかわす為、鍔ずり合いを中止し、横に流れつつ二機の攻撃を回避した。
「おいおいおいおい、なんだよこの馬鹿みたいな高性能機は! こんなの四機も相手にしてられねーぞ!!」
再び二本のレーザー射撃。
一つはかわし、もうひとつはレアブレードで受け止める。
表面から火花が激しく散る。
「全くだァ! 今の装備じゃ、多分一機も殺れねェぜ! どォするディーン!!」
距離を取りつつ、頭部にマグナムの連続射撃。
四発中二発命中、だが頭部には傷一つついてはいない。
ディーンは戦闘の最中発見した、投げ出されたコンテナを思い出す。
「あっちにコンテナがある! 中に確か雪上車があった筈だ! それ使って逃げるぞ!」
斬撃をかわし、肩部装甲の隙間を狙ってレアブレードを振り上げる。
だが火花が散るのみで、何の打撃も与えられていなかった。
「ロックを解くまで、最低でも三分は掛る! その間どォすんだァ!? ——ぐッ!!」
三本のレーザー弾がスキッドに迫る。
宙返りで二本かわしたが、一本が左手のセルコートに直撃してしまう。
「纏めて面倒見てやるよッ! 潰せはしないが、時間ぐらいは稼いでやるさ! お前は包帯女連れて雪上車を頼む!」
怯むスキッドに、一機のATが縦に斬撃を繰り出す。
その間にディーンが割って入り、腕部にカウンターの斬撃を掛ける。
ATはバランスを崩し、追撃でスキッドがセルコートを三発叩きこむ。
「助かったぜディーン! まァ雪上車に燃料が入ってる事を祈っててくれィ! んじゃあ、ここァ任せたぜ! 死ぬんじゃねェぞ!!」
そう言って、スキッドはコンテナの方に走り出す。
「誰に言ってんだ!? 俺は最期は安らかに老衰って決めてんだよッ!!」
鍔ずり合いを押し返し、バランスを崩した所に渾身の横凪ぎ一閃。
ATは衝撃で吹っ飛び、その様子を見て評価を改めたのか、他の三機はすぐに飛びかからず様子を見ている。
ディーンは、その様子が堪らなく楽しい様で、口元を吊り上げ、レアブレードをまっすぐATに向けて良い放つ。
「来いよ新型。遊んでやるぜ!!」
- Re: 蒼き鬼兵 ( No.10 )
- 日時: 2012/08/12 22:13
- 名前: ファランクス (ID: 5f84h5.J)
雪氷で覆われた広大な白銀の大地を、地平線間近の太陽が赤く照らす。
年中吹雪が吹き荒れるここツェルホーク雪原では珍しく、粉雪がチラつく程度の穏やかな天候だった。
そこに夕日が差し込むと、まるで宝石のようにキラキラと粉雪が輝き出す。
絶好の景色。
しかしその大地の傍らには、無残に脱線した大型輸送列車が未だ炎上を続け、すぐそばでは一人の蒼髪の青年が四機のAT相手に戦闘を続けていた。
「くっ、そぉぉッ!」
受け止められたレアブレードを振りぬき、レーザーブレードを弾き返す。
同時にそのATは力を抜き、ディーンは前のめりに倒れる。
「(——やべッ!)」
そこに一筋のレーザーが迫った。
受け身を無視し、右側から放たれたそのレーザーを受け止める。
火花を散らし、レーザーの直撃は防いだが、ディーンは仰向けに倒れた。
起き上がる間もなく、二機が追い打ちのように光の刃を付きたてる。
「ッだぁぁ!」
レアブレードを両手持ちで横凪ぎし、二本の刃を同時に弾く。
それを読んでいたのか、二機は両脇にバックステップでかわし、その間から二機がレーザーを放った。
予想外の行動に驚いたが、体を左に転がして回避する。
「ぐッ!」
だが、一本はディーンの左腕を貫いた。
痛がっている暇は無い、ブレードを雪原に付きたて、起き上がる。
「(こいつら……AIまで超高性能かよ。学習能力がハンパねーな)」
戦いの最中、ディーンはそう思っていた。
今まで戦って、最初は通じた攻撃方法や回避が、今ではほとんど通じなくなっていた。
お陰で今は、ディーンでも攻撃を防ぐ事が精いっぱいだった。
「(二分は経ったか? 残り一分、ははっ、ギリギリだな)」
小声で呟きながら、しかしその状況を楽しむように、ディーンは
笑みを作っていた。
対して、新型ATもディーンを脅威と判断したようで、じりじりと間合いを詰めてくる。
最初に動いたのは、ATだった。
前の二機がレーザーブレードを抜き、突進すると同時に後ろの二機がレーザー弾を放つ。
左ステップでレーザーをかわし、左側から二機のATを攻める。
右から左への軽い横凪ぎ。
ATは身を引いて回避する。
そして、その後ろからレーザーブレードを構え、一機が迫る。
「読めてんだよッ!」
ATが攻撃する瞬間、ディーンはレアブレードでカウンターを仕掛け、見事頭部に一撃を当てた。
が、その瞬間に一本のレーザーがディーンの右足を貫いた。
痛みに顔を歪め、倒れる間もなく二方からレーザーブレードの攻撃が迫る。
「くッ!」
苦い声を口から漏らしながら、片一方の攻撃を弾く。
しかし、踏ん張りが利かなかった為もう一方の攻撃は防げず、右わき腹を突き刺される。
「ぐッ、ああぁ!」
そのまま、雪に赤い染みを造って地面に倒れた。
無意識に傷を確認する。
「(大丈夫だ、致命傷じゃない)」
その瞬間、雪の大地を猛スピードで走る雪上車が見えた。
それは一瞬で目の前まで辿り着き、左手を差し伸べるスキッドの姿がハッキリ見えた。
ディーンはレアブレードを突き立て再び立ち上がるが、その時同時にATもライフルを構える。
ディーンは咄嗟に痛む左腕で使っていなかったヴェンサー正式採用突撃銃“アーヴェル”を背中から取り出し、射撃。
威力は無いが、一瞬の隙は造れた。
そのすきに、丁度走ってディーンのすぐ横を通り過ぎるスキッドに、右手をのばして捕まり、雪上車へ飛び乗った。
「いてて。おい、遅せーぞ。後ちょっとで死ぬ所だった」
一番傷が深い右わき腹に応急キット(装備の中に入っている常備品)の包帯を巻きながら言った。
「時間にゃあ着いたぜィ。にしても、ディーンがそんな深手負うなんて珍しいぜィ」
片手でハンドルを握りながら、スキッドは言った。
まるで、軽くその辺をドライブしているような気軽さだった。
そして後部座席には、犯人の黒衣の女性が横たわっていた。
相変わらず意識は無いらしい。
「うるせえ。だいたいアイツら——っておいスキッド! スピード上げろ! あの新型、まだ追って来てやがる!!」
ディーンはなんとなく後ろを振り返ると、そこには背部の小さな安定翼を展開し、ジェットエンジンを吹かし低空高速飛行で接近する四機のATの姿があった。
「何ィ!? チッ! ここまで追っかけが来るとは! モテる男は辛いぜィ! なァディーン!」
「知るかッ! モテる男はレーザーライフルの銃口を向けられたりしねーんだよ!! 殺意もな!!」
言いながら、ディーンは仕方なく後部座席に陣取り、アーヴェルを連射する。
「なら嫉妬かもな! どうせ追っかけられるなら、美人の殺し屋とかが良かったぜィ!」
しかし、スキッドのセルコート・マグナムを弾き返す機体の装甲に通用する筈も無く、対して足止めにすらなっていなかった。
「んなことよりもっとスピード出ないのか!? 追いつかれるぞ!!」
その間、新型ATはスピードを上げ、更に距離は縮まっていく。
「これが精いっぱいだってばよォ! こっちは輸送用の雪上車、向こうサンは戦闘用の最新鋭機! どっちが早いかは分かんだろってィ!」
言いながら、スキッドはメーターをチラチラと見る。
どうやら、燃料もあまり残っていないようだった。
「ぅ……ん、? ここは……?」
そんな中、黒衣の女性が目を覚ました。
覚ましたが、二人に最早気にしている余裕などなかった。
「ちッ! このポンコツ銃じゃ効かねー! スキッド、運転変われ! お前のセルコートの方がマシだ!」
ディーンは撃ち尽くして弾切れになったアーヴェルを放り投げる。
アーヴェルは先頭を走るATにぶつかるが、当然何の障害にもならない。
「あれ……バンドレアス!? 嘘!? もう完成していたの!?」
目を覚ました黒衣の女性は、赤と灰の新型機を見て驚いていた。
「はあ? お前、アレ知ってんのか!? うおッ!」
「きゃっ!!」
スキッドがハンドルを急に切った為、車内が激しく揺れる。
「悪いねィ! いくら女性が乗っていようと乗り心地を気にしてる暇はねェんでね! 燃料もそろそろやべェが、その前に追い付かれそうだぜ!」
AT——バンドレアスは、もう目と鼻の先まで来ていた。
射撃しないのは、命中率が落ちるからだろうとディーンは思っていた。
「いたた……、それより、状況は知らないけど、あの機体は簡単に破壊できないわ! 確かこれを使って!」
黒衣の女性が渡してきたのは、縦長で、変わった形の手榴弾のようなものだった。
「これで倒せんのか? 知らねーけど喰らいやがれ!!」
ディーンはピンを抜いて、四機の中心を狙い手榴弾を投げた。
瞬間、確かに手榴弾は爆発して、四機を爆炎に巻き込んだ。
だが、その爆風はあまりに強大過ぎて——
「ちょ、やべえ!!」
——ディーン達の乗る雪上車をも衝撃波の中に飲み込んでしまった。
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