ダーク・ファンタジー小説
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- 貴方と私が刻む夏 answer
- 日時: 2017/03/30 21:50
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
目が覚める...。
柊 拓徒。深野村の高校に通う普通の高校一年生。
携帯電話を見る。朝の七時半。
「....そろそろ起きないとな...」
その筈だった。普段ならば。
だが、それはこの日、砕かれた。
「おはよう...」
拓徒が寝室からリビングに降り、両親に挨拶をする。
すると
「おい拓徒、今日から学校行けないぞ...」
「...は...?」
父親の突然の言葉。全く取り合わずにスルーしてもいいのだが、万一のことを考えて一応、テレビを見る。
テレビでは、殺人事件について報道していた。
「...物騒だな...。で、これが学校で起きたとか言うんじゃないよな?」
字幕を見る。
その通りだった。
「...は?」
「な?」
「な?じゃないよ!何だそれ!」
「まあ、殺された人には悪いけど当分弁当作らなくていいのは有り難いわね」
この呑気なジジィとババァ...。取り敢えず心の中で両親を散々罵倒し、
そのあと、冷静に、ニュースを見た。
殺されたのは神谷 霧人と夏目 美夜子。先輩にそんな名前の人がいた気がする。
二人は霧人の部屋で発見された。両者共に首を吊って死んでいたようだ。そして部屋には、ズグの祟りに関する本などが散乱していたという。
ズグ...。
全てが謎に包まれた、守り神である。
かつて、深野の町を襲った宇宙からの侵略者を倒したという言い伝えがある。
いや、あれは隕石だったか。まあどのみち、深野を救ったのに変わりはないのだが。
......
そしてその日から、柊 拓徒は、ある世界と繋がる奇妙な体験をするのであった。
続く
- Re: 貴方と私が刻む夏 answer ( No.6 )
- 日時: 2017/05/20 21:52
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
グラグラと視界が揺らぐ。
機械のような何かの中にいる自分。
その自分が何故か急いでその中から出て行き、
何かに駆け寄る姿。客観的に見える。
自分が見える。
「............!」
何を言っているのかは自分でも分からない。でも。
緑色の長い髪を残して、顔がない何かを抱く自分。
そして、絶叫した。
そもそも何があった?何故絶叫している?
自分のことなのに自分だけが取り残されていて、拓徒は訳が分からなくなった。
そこから更に周りのものが目まぐるしく動きはじめ、止まる。
そこは、最初に見た、機械室のような場所。いや、これはコックピットか。
計器類。モニター。コード。座り心地が微妙な椅子。
そしてそこから降りる。
誰もいない。
そこは大きな倉庫のようだった。
赤いランプがところどころに点在し、拓徒と、横に聳える大きな塊...ロボットのような何かを照らす。
倉庫から出ると、倉庫の中にいたロボットとそっくりなモノが戦っていた。
亀のような大きな生き物の猛攻に耐え、
救世主のような姿をしたそのロボットは威光と共に亀を破壊した。
大地が揺れるような戦い。
風景は次々と移り変わっていった。
どこでも常に、自分が戦っていた。仲間?のような誰かと。
そして、それがようやく鮮明に見えるようになってきたところで、ついに拓徒は絶望的な事実を知らされた。
先程の、最初に見た、あの風景。
「......また、ここか......」
しかし、今回は違う。
全てがくっきりと見える。
空気の音まで聞こえてきそうなほど、自分の感覚が研ぎ澄まされていく。
そして
「......あ!あれ!」
視線の先には何と麗子がいた。
麗子はどうやら、拓徒を慰めているようだ。
しかし
「...!う、後ろッ...!?」
後ろ。には、地球のそれとは大きくかけ離れた外見の生物がいた。
そして、
バシャッ
消化液だろう。生物の口から液体が放出され、麗子の顔の皮膚が一瞬にして溶けた。
そして、
ガキュッ
ボリボリッ
バキャッ
顔を喰われた。
「う、わぁ...ぁぁあああああああああっ!?う、う、うわぁあああああああ!!」
二人の拓徒が同時に絶叫する。
どちらの「拓徒」にとっても、麗子はかけがえのない存在だから
続く
- Re: 貴方と私が刻む夏 answer ( No.7 )
- 日時: 2017/05/20 22:25
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
「............ね?」
はい?
「...............だ、....に.....」
だから...、何?
「......目え、覚めたんかいね」
目を開ける
そこにいたのは、冷めた表情の老人。
村の派出所にいた。
「うちらんとこで預かっとれるのは暫くの間じゃけんの、本庁ば偉ぁ方々が来るまで待っとりや」
独特の癖の強い訛り。
は?本庁?
ああ、そうか。俺は犯罪者として一旦連行されるのか。だが、すぐ身の潔白を証明する。
だが、そこで
『時間切れだ』
......あぁ?
『時間切れだよ、何度も言わせないで』
何の時間が、だよ。
『君が此方の世界にいられるタイムリミット......迫ってきてる』
................................................
何だって!!?
続く
- Re: 貴方と私が刻む夏 answer ( No.8 )
- 日時: 2017/05/21 00:43
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
時間が迫っている?
『うん。だから本庁なんかに行くのを待ってちゃダメだ』
くそ、じゃあどうすりゃいいんだよ。
『とりあえず、僕が何とか時間を引き伸ばす。けど、ずっとは無理だ。流石に時間に干渉し過ぎると正史にも影響が出てくるかもしれない』
何か知らないけど、その間に、その...セラフィムとかいうやつに関する情報を探せばいいんだな。
『あぁ。............多分、この村で最も偉い...そうだね、神谷家にあるのかもしれない』
あぁ、神谷家?
『そうだ。あそこはこの深野の御三家の中で唯一生き残ってる名家だ。君がやってきた世界では、軍の元帥をやってたような...』
......とにかく、そいつの家に行く。
『ああ。お巡りは僕が気を引いておくから』
そう言うと、
バリーン
外で大きな音がした。
「おん?何ぞね今ん音ち」
そう言ってお巡りは外に出た。
よし、今だ。
お巡りが裏口に行ったのを確認し、そそくさと脱走する。
どうせもうすぐその別世界とやらへ強制連行されるんだ、ここで捕まってでも、
何としてでもその『情報』とやらを掴んでやる。
いつの間にかそう決心している自分がいた。
無のまま走る。ただひたすら。
そして、神谷家に辿り着く。
そこには、完全に誰もいなかった。
獣のように階段をかけのぼる。
不法侵入?それがどうした。俺は異界の住人だ。何をしても、もうじきこの世界からいなくなるんだ。
好き勝手やらせてもらう、何か知らんが世界のために!
続く
- Re: 貴方と私が刻む夏 answer ( No.9 )
- 日時: 2017/05/21 22:38
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=514.jpg
神谷霧人。その父親の書斎。
「どこだ。どこにある、クソ」
机を漁る。
如何にも権力者らしい机の中身だ。
契約書、土地売買書等、色々
そして
「......暗号か、これ?」
訳の分からない文字の羅列が書かれた紙。
『あ、それだ』
「?これでいいのか?でもこれ、......」
『読めなくてもいい、早く』
「......よし」
資料をごっそりと取って行く。
しかしそこで
ガチャ
悪魔の音。
「...!な、何をしてる!!」
見つかった。
いつかテレビ番組で聞いたことのあるようなナレーションが頭の中に流れた。
しかしそんなことどうでもいい。
強面の髭面が勢いよく向かってくる。
続く
- Re: 貴方と私が刻む夏 answer ( No.10 )
- 日時: 2017/05/22 11:53
- 名前: 狂yuki (ID: lQjP23yG)
『僕の方も時間伸ばしの限界が来た。その紙を絶対に離すな』
「あぁ!死んでも離すもんか!」
「何を独り言を!」
男は思い切り杖を振ってきた。
避ける。スポーツは得意な方だ。反射神経もいいと自負している。
「悪いけどアンタにこれは返せねえ!ちょっと借りてくぞ!まぁここには二度と来れないかもしれないけどな!」
「ふざけるな!私の資料を返さないか!」
それにしてもこの男、速い。
振りほどいても振りほどいてもまたかかってくる。
同時に、体がすぅっと軽くなってゆく。
「......もうすぐか...」
しかし、そこで紙を掴まれた。
「ふん、さっさと返しなさい!」
くそ!
こんなところでこんな髭男に世界を滅ぼされるかもしれないなんて!
思わず拓徒は
「うぉあああああっあああ!」
髭男を殴った。
「がぅあぇぇ!」
「悪いけど本当に返せない!じゃあな!」
「くそ!今度見つけたら殺してやる!」
ふん。世界が滅びたらそんなこと出来ないけどな。
最後に勝ち誇って、拓徒は「その世界」から消えた。
「......!?」
当然、何も知らない村の権力者でしかない髭男は、大いに狼狽えた。
目の前から人が消えたということに。
続く
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