ダーク・ファンタジー小説

カラミティ・ハーツ 1 心の魔物
日時: 2017/08/19 13:26
名前: 流沢藍蓮

 目次(随時更新)

Ep1 心の魔物
Ep2 大召喚師の遺した少女 >>3
Ep3 天使と悪魔 >>4
Ep4 古城に立つ影 >>5
Ep5 醜いままで、悪魔のままで >>6
Ep6 悔恨の白い羽根 >>7
Ep7 ひとりのみちゆき >>8
Ep8 戦いの傷跡 >>9
Ep9 フェロウズ・リリース >>10
Ep10 英雄がいなくても…… >>11
Ep11 取り戻した絆 >>14
Ep12 迫る再会の時 >>15
Ep13 なカナいデほしいから >>16
Ep14 天魔物語 >>17
Ep15 覚醒せよ、銀色の「無」>>18 
Ep16 亡国の王女 >>19
Ep17 正義は変わる、人それぞれ >>20
Ep18 ひとつの不安 >>21
Ep19 照らせ「満月」皓々と >>22
Ep20 常闇の忌み子 >>23 (※長いです)
Ep21 信仰災厄 >>24
Ep22 明るいお別れ >>25
Ep23 際限なき狂気 >>26 (※長いです)
Ep24 赤と青の救い主 >>27
Ep25 極北の天使たち >>28
Ep26 ハーフエンジェル >>29
Ep27 存在しない町 >>30

 はじめまして、藍蓮と申します。ファンタジーしか書けない症候群です。よろしくお願いします。
 あるゲームのキャラクター紹介から想を得た、設定はそこそこ作ったとある物語の、プロローグを掲載しました。続く予定です。
 それではでは。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 ――人は、心を闇に食われたら、魔物になる――。

「魔導士部隊、位置に着け!」
 高らかに響くラッパの音。リュクシオンは隣を見た。
「ついに来ましたね、この時が」
「ついに来たな、総力戦が」
 彼の隣に立っているのは、この国の王。王は難しい顔をして、リュクシオンに言った。
「リューク、いけるな?」
「はい、あと少しで準備ができます。しばしお待ち下さい」
「頼りにしてる」

 この国、ウィンチェバル王国は、小さい割には資源が豊富だ。ゆえに、これまで多くの国々から狙われ、侵略されてきた。それをすべて退けられたのは、ひとえにこの国の魔導士部隊のおかげである。
 それなりの侵略ならこれまで何度かあったが、今回のは規模が違う。
 まだ肌寒い季節だ。リュクシオンはマフラーに顔をうずめながらも、考える。
 (よりによって、ローヴァンディア、あの大帝国だと? 桁が違う。だからこそ、僕は……!)
 願った。「力を」と。状況すべてを打破する力をと。何もできない自分が嫌で。国が侵略されていくのを、見ているだけしかできなくて。その思いは日増しに強くなり、内側から彼を苛み続けた。
 そして、その願いは、叶った。理由はわからない。ただ、ある時から急に、召喚術が使えるようになった。
 リュクシオンは神を信じない。信じても無駄。助けは来ない。そんな世界に生きてきたから。
 しかし、彼に起きた奇跡は。何もできなかった彼が、急に「力」を手に入れた理由は。神の御業というよりほかになかった。

 そして今、彼はここにいる。その力を見初められ、王の側近として、ここにいる。力がなければ、決して昇りえぬ地位に。望んでこそいなかったが、決して悪くは無い地位に。
 ――だから、利用させてもらうよ。
 この状況を打破できる、唯一無二の召喚術。国を守るために過去の文献をあさり、そして見つけた、とある天使の召喚呪文。
 それの発動には、長い長い準備が要った。リュクシオンは寝る間も惜しんで準備し続け、ついに、術の完成が迫る。
 ――国を守りたい。思いはただ、それだけなんだ。
 そして――。
 
 太陽が、月に食われた。

 日食だ。しかも、皆既日食だ。昼の雪原はあっという間に闇に閉ざされ、凍える寒さが人々を打つ。
「――今だ!」
 リュクシオンは声を上げた。突き出した手に、集まる魔力。
 皆の視線が、彼に集中する。
「現れよ――日食の熾天使、ヴヴェルテューレ!」
 神の域にさえ達したとされる究極の天使が今、リュクシオンの「仕掛け」に導かれ、彼の敵を滅ぼすため、外へと飛び出す――!
 が。

 ――崩壊は、一瞬だった。

「あれ……うそだろ……」
 白い、白い光が視界を埋め尽くした。天使はこの世に顕現した。そこまでは構わない。
 だとしても。
 ――この、目の前に広がる無数の死体を。一体どう説明すればいい?
 見知った顔。あれは魔道師のアミーだ。あっちは友人のルーク。
 ――さっきまで隣にいた、リュクシオンの王様。
 みんなみんな、死んでいた。敵味方の区別なく。リュクシオン以外、皆殺しだった。死んだその目には恐怖の色があった。
 ――国が、滅んだ。守ろうと、あれほど力を尽くした国が。リュクシオンの王国が。守りたかった全てが。
 リュクシオンの、積み重ねてきたすべてが。
 存在意義が。
「……あ……嗚呼……ぁぁぁぁ嗚呼ああ嗚呼あ!」
 地にくずおれ、獣のように咆哮する。
 ――天使は、破壊神だった。
 確かに相手も全滅したが、彼が望んだのはこんなことじゃない。こんなことなんかじゃ、ない。
 平和を。愛する国に平和を。そう、心から思っていた。だからこそ、力を望んだ。愛するものを、国を、守る力を。
――コンナコトジャナカッタ。
 絶望に染まる召喚師の頬を、涙が伝った。赤い、紅い、赫い。血の色をした、絶望の涙が。
「ア……アア……ァァァアアアアアアアアアア!」
 壊れた機械のような声とともに、彼の世界は崩壊した。
「ァ……ァぁ……ァぁァぁァぁァぁァぁァ…………」
 その身体が、闇色の光とともに、変化していく。
「ァ……ぁ……」
 背はこぶのように盛り上がり、体中から毛を生やしたそれは。もはや人間ではなかった。
「……ァ……」
 幽鬼のようにのっそりと動き出したそれは、魔物そのものだった。
 その瞳に、意思は無い。理性もない。何もない。
 そのうつろな姿は、大召喚師のなれの果て……。

 ――人は、心を闇に食われたら、魔物になる――。

 王も貴族も召喚師も。なんびとたりとも例外は無い。
 ひとたび心が闇に落ちれば、一瞬にして、魔の手は伸びる。
 そして魔物となった者は、己の死以外ではその状態を解除できない。
 これまでもあった。そんな悲劇が。魔物となった大切な人を。自ら手に掛ける人たちが。
 悲劇でしかない。ただ悲劇でしかない、この世界の絶対法則。

 ――人は、心を闇に食われたら、魔物になる――。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 ……いきなり大変なことになっていますが、まだ続きます。次の舞台は移って、この国の外になります。魔物となったRも今後、深く関わっていきます。よろしくお願いします! 〈続く〉

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カラミティ・ハーツ 心の魔物 Ep23 際限なき狂気 ( No.26 )
日時: 2017/08/12 13:53
名前: 流沢藍蓮

 ※時がかなり過ぎます。

 過去最高傑作です。すさまじく長いです。「常闇の忌み子」越えました。
 時間のある時に読むことをお勧めします。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 ――北へ。
 北へ、北へ。一路、北へ。
 リクシア達は、進んでいく。
 目的地、花の都、フロイラインを。ただひたすらに目指して。
 季節は少しずつ移りゆく。夏の緑は落ち葉に代わって。

 気が付いたら、あのお別れから。もう三月が過ぎていた。
 その日。極北の地で。花の都を探している最中に。
 宿敵に、出会った。

「危ないッ!」
 最初に気付いたのはリクシアだった。迷わず魔法で撃退した。
「何事ッ!」
「どうしたのさ」
「リア!」
 駆け寄ってきた、仲間たち。
 声が、聞こえた。

「あららぁ。強ーくなっちゃって。もっと前に、潰しておくべきだったかしら」

 ――そこに。
 その、場所に。
 さんざん煮え湯を飲まされた、
 宿敵、
 半人半魔、
 『偽りの女神』ヴィーナが、立っていた。
「いい加減、死んでもらうわよ、ねぇ?」

  ◆

「ぐあッ……」
「アーヴェイ!」
「くぅ……ッ」
「フィオル!」
「…………ッ!」
「フェロン!」

 次から次へと。吹っ飛ばされていく仲間たち。ヴィーナがレイピアを一振りすれば。目で追えないほどの速さで受けるダメージ。
(強いッ!)
 反応速度、神経速度。その両者で劣るリクシアが、なぜ、いまだ立っていられるのか。

 ――それは、みんなが、かばってくれたから――。

 だから、用意ができた。
 必殺技の、用意が。
 初めてあれを使ったのは、いつのことだっけか。
 心を取り戻す前の「ゼロ」と遭遇し、フェロンを守って放った魔法。
 その名は。

「――フェロウズ・リ」
「甘い」

 ――レイピアが。
 
 細く、鋭く。
 尖ったレイピアが。
 熱い熱い感触とともに。
 その、腹を。
 貫いて
 いた。

「あ…………ッ」

 力を失い、くずおれる身体。
 回る視界はちかちかと。
 明滅する。

「う……そ………」

 そのまま大地に倒れ伏し。
 ちっとも動くことができない。

 偽りの女神は、笑った。嗤った。
 大きく、力強く。
 悪魔のような、笑みで。

「安心しなさい。私のレイピアには毒がある。あなたたち、三日以内に死ぬから」

 哀れなものよね、と嗤う。嘲笑う。
「あなたたちが、花の都を目指していなければ。見逃してあげたのに。どうして行こうとしたのかな? 叶わぬ夢を追うなんて馬鹿よ」
 絶望が、広がる。まただ、またしても。
 倒れた仲間は、動かない。動けないのだ、毒にやられて。
 立ち去ろうとする気配がする。私たちは、また負けたんだ。
 だけど、その時。

「うあ……ぐ……ガ……」
 壊れたような、声がして。
 その方向を見て、ぞっとした。

 ――悪魔が。

 アーヴェイが。

 全身から、漆黒と真紅の光を放っていた。

 その身体は、異形の悪魔。

 だが、いつもとは、違う。

 異常の悪魔。

「うガ……ガガガ……グガガガガガ……」
「! まずい……! 兄さん……を……!」
 おかしな声を発しながらも。ゆらりと立ち上がる紅の悪魔に。
 フィオルが焦ったような声を上げた。

「兄さん……言ったじゃないか……! 心まで……悪魔には、絶対に……ならないって……! そんな……そんな、ことしたら……今度こそ、……戻れなくなるよ!」

 半人半魔。それはアーヴェイとて同じこと。
 しかし、その力を完全に出し切るには、
 理性を失った悪魔に。
 なるしか、ない。
 それは、つまり。
 仲間としてのアーヴェイを。
 失うこと。

「やめてぇぇぇぇぇええええええええええッッッ!」


「おレは……コれで……イい!」


 悪魔のままで。怪物のままで。醜いままで。異形のままで。
 これで、いい。いいんだ。大切な人を守れるのなら。

 侵食する闇に理性を失い。完全な悪魔になり果てて。
 立てないほどだったはずの彼は。今、しかと大地を踏みしめて。
 両の手を振れば。何もないところから、不意に現れた黒の双剣。

 奪われた『アバ=ドン』だった。

「な――っ?」

 驚き、動きの止まるヴィーナに。
 一閃。
 薙ぐように双のつるぎが動く。
「心を闇に売り渡したかッ!」
 叫び、舞うように避け、距離をとる、
 偽りの女神。

「ならば私も――魔物となる――ッ!」

 半人半魔。半分魔物。
 ヴィーナの姿が変わっていく。
 アーヴェイのそれに似た、異形の怪物に。

「死ヌモんカ……目的ヲ果たス前に、死ヌもンカ……!」

 すらりとした美しい腕。その右腕が、異形と化す。
 長く妖艶ななまめかしい脚。その両脚が、異形と化す。
 真珠のような色した半貌も。絹糸のような髪も。
 何もかもが異形と化して。それでも凄絶なまでに美しかった。

 半人半魔、アーヴェイと。半人半魔、ヴィーナ。
 人外同士の戦いが。決して避けえぬ争いが。

 始まった。

「死んじゃうよ……。二人とも、死んじゃうよ……!」
 理性をなくした四つの瞳。あるのはただ、執着と狂気。
「止めて! 誰か……誰か、止めてよッ!」
 アーヴェイを止められそうなフィオルは。ぐったりしたまま動かない。

 ぶつかった。両者が。異形の者同士が。人外たちが。

 血。血。飛び散る血。赤く黒く、赤黒く。

 悲鳴なんて、誰も上げない。ただ黙々とした殺戮が。
 互いを滅ぼす虐殺が。
 粛々と、行われるだけ。

「ガァッ!」
 アーヴェイの右腕が、吹っ飛んだ。
「キエェッ!」
 ヴィーナの両脚が、剣の一閃で千切れ飛んだ。
 それでもやめない。まだやめない。

 互 い の ど ち ら か が 完 全 に 死 ぬ ま で 。

「アーヴェイ、ごめん。私、こうするしか、あなたを救う手を知らないの……!」
 リクシアは、泣きながら、ある呪文を唱えだす。
「だって――私、あなたに死んでほしくない……!」
 両の眼から涙を流しながらも。血を吐くような思いで。傷の痛みも無視して。
 唱える。

「天の彼方なる不死鳥よ、我呼ぶもとへ、舞い来たれ! 互いの尾を噛む円環の蛇、続く輪廻を解き放て! 我に仇なす究極の敵! 我は呼ばん、我は呼ばん!」

 あふれかえる想いが渦を巻き、やがて――!

「すべて巻き込み千切り裂け! 次元の彼方へ放り出せ!」

 風もないのに揺れる髪。涙の宿ったその瞳。


「――フェロウズ・リリース!」


 唱えかけて、邪魔された呪文を。
 放てなかった、必殺技を。
 今、再び。
 大好きな友達のために。
 解き放つ。

 途端、天上より光が降ってきて、二人に勢いよく突き刺さった。
 動きの止まった二人に、もう一撃。
 漆黒の衝撃波が、二人を弾き飛ばし、勢いよく地面に打ち据えた。
 そして目に見えぬ風が、その肌を幾重にも切り裂いて。

「鎮まれ異状、元に戻れ異形!」

 動かなくなった二人の身体が、現れる闇に飲み込まれる。

 ――わけでは、なかった。

「半人反魔! 魔物よ、消えろ!」
 間に一言、挟むだけで。

 消えたのは、ヴィーナだけだった。
 呑み込む闇に、一瞬だけもがき。
 ヴィーナだけ、消えた。

 残ったのは、アーヴェイだ。

 しかし。

「リクシア……。どうして……そんなことするのかな……」
 泣きそうな顔で、フィオルがつぶやいた。
 動けない身体を、無理に動かして。
 現れたのは、輝く翼の。
 純白の天使。
 その手に握る、「シャングリ=ラ」。
 それは、アーヴェイのほうを向いていた。

「フィオル――!?」

「こんなこと、したくなかったよ」
 彼が見つめるアーヴェイは、未だ狂気を宿していた。
 アーヴェイは、うつろな赤い瞳で、こちらを見た。
 そして。

 ――襲いかかる。

 リクシアに、フィオルに。倒れたままのフェロンに。
 まるで、見境なく。

「どうしてッ! アーヴェイ、私たちは仲間――」
「無駄だ! 聞こえない。アーヴェイは完全な悪魔になったんだから!」
 「シャングリ=ラ」を構えるフィオルの腕は、小刻みに震えていた。
「だから、終わらせなくちゃ。僕が――弟たる僕がッ!」
 その美しい青い眼から、滂沱と涙があふれ出る。
「だって――仕方ないじゃないか! このままじゃ僕ら、殺されるッ!」
 仲間だった、アーヴェイに。
 友達だった、アーヴェイに。
 悪魔になって、魔性となって。
 理性を失ったアーヴェイに。
 アーヴェイの剣が、襲いかかる。失った右腕。左だけで。フィオルは「シャングリ=ラ」でそれをいなす。
 流れるような動きで。アーヴェイ=デヴィルに反撃した。

 兄弟なのに。血はつながってはいないけど、兄弟なのに!
 戦わなければならないなんて。殺し合わなければならないなんて。

「おかしいよ、こんなのおかしいッ!」

 理不尽だ。ああ、兄さんの時と同じだ!
 国のために戦って、戦って、戦って。
 その果てに、自ら国を滅ぼして、魔物となった兄さん。
 仲間のために戦って、戦って、戦って。
 その果てに、自ら仲間を傷つけて、悪魔となったアーヴェイ。
 守りたいのに。守りたいのに。大切なものを傷つけて。
 フィオルをアーヴェイは攻撃し、フィオルは容赦なく反撃する。
 
 と。

 アーヴェイの剣がフィオルを斬った。散る純白の羽根、紅い血飛沫。
「あ…………」
 崩れ落ちるフィオル。血に染まった細い身体。
 何もかもがスローモーションで、リクシアは状況を理解できなかった。
 赤黒く染まった闇の刃が。リクシアの首元へ――。


 刺さらなかった。


 不意に紅の悪魔が手を止めた。

 一瞬宿った理性の光。

 ひび割れた声で。壊れた声で。
 呆然とフィオルを見下ろして。
 
 つぶやいた。


「…………オれハ、イま、なニを、シた…………?」


 血を流し、動かないフィオル。
 恐怖に震えたリクシアの瞳。

「オれハ、イま、なニを、シた!」

 ガタガタと、震えだした身体。
 悪魔の身が、己の犯した、
 大きすぎる罪に気づいて。
 さらなる異形へ変化する。戻れぬ異常へ変化する。





 ――アーヴェイが、魔物になる。





「アーヴェイ! だめ、あなたはだめ! 戻って!」
 リクシアは叫ぶが。
 狂った瞳は。リクシアを映さない。
「グ……ア……グアア……グアアアアアアアアッ!」
「だめ!」
 叫ぶリクシア。

 すると。声がしたんだ。

 血を流して動かない。死んだと思っていた、あの天使の声が。

「兄さ……ん!」

「……フィオ……ル?」

 その声に、理性が戻る。
 血まみれの白い天使は、地面を這いずって兄のもとにたどり着き。

 その足を、つかんでいた。

「約束……したじゃないか。心までは……完全な悪魔にならないって!」

 傷ついても、揺るがない。どこまでも碧い聖なる瞳が、悪魔を静かに見つめていた。

「兄さんは……僕を残して、行ってしまうの……?」
「……フィオル」

 次の瞬間。異形が解けた。

 悪魔から。人間に戻ったアーヴェイが、その場に倒れていた。
 右腕は、ない。
 吹っ飛んで、しまったから。
 でも、そこにいる彼は。
 悪魔みたいな見た目の彼は。
 確かに、アーヴェイだった。
 リクシアのよく知る、格好良くてちょっとクールな。

 ――アーヴェイだった。

「兄さん……置いて……行かないで……」
「……フィオル」
「僕は……兄さんを……殺すところだったんだから。……二度と、あんな真似は……させないで……」
「…………」
 震える指で、兄にしがみつき。フィオルは珍しく弱音を吐いた。
「……独りは……嫌だよ……」
「……すまなかった」
 疲弊しきった顔で、でも、悪魔じゃない、いつもの顔で。
 アーヴェイは、神妙にうなずいた。
「でも……オレももう、疲れた……」
「そうだね……眠ろう」
 そっと閉じて行く二人の瞼。
 リクシアは悲鳴を上げた。
「ちょっと、そんなところで眠ったら死――!」
「なら、誰か助けを呼んでくれ……」
 アーヴェイは、いつもみたいに。
 不敵に、笑ったのだった。
「今なら……悪魔のオレを見ても……尻込み、しないだろう……?」
 いつかの雪辱、果たしに行け。
「悔恨の白い羽根を……覚えているのなら」
 彼は、そう言って、目を閉じた。

 ――ああ、覚えているとも。
 あの日。アーヴェイたちと、訣別した。
 フィオルが餞別代りに渡した羽根は。悔恨の気持ちを示す羽根。
 リクシアは、服の中にあるそれを、強く握り込んだ。

「……待っていて、フィオル、アーヴェイ。私、助けるから……」
 今度こそ、間違えない。

 決意とともに、その場を後にした。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

     疲れた〜〜〜!

 どーも、藍蓮です。5000文字行ってしまった……!
 過去最高傑作ですねハイ。(と言うのは二回目)
 何となく書いていたら、すごいことになってしまいました。

 フェロンの活躍がほぼゼロという、かわいそうな結果になりましたが。天使と悪魔が大活躍しているし。これでお許しください。(フェロン「おい、作者」「ごめん」(茶番済みません))
 これでまた、大きな見せ場ですね。次は一体どうなることやら。
 
 作者だってわかりません(笑)
 
 いずれ、他の天使や悪魔も出したいなぁ。そうするとますますフェロンの活躍減る可能性が……。コホン。

 まあ、動乱の23話でしたが。
 次も楽しんでいただけると、嬉しいです。

 では、また次回。

カラミティ・ハーツ 心の魔物 Ep24 赤と青の救い主 ( No.27 )
日時: 2017/08/13 01:11
名前: 流沢藍蓮

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「誰か……助けて」
 ヴィーナにやられた傷を押さえ。リクシアは懸命に歩いていた。
 疲労と痛みにゆがむ視界。でも記憶に鮮やかな、仲間の姿。
(死なせない)
 その思いが。今のリクシアを動かす唯一の原動力。
「た……す……け……て……」
 しかし、耐えきれず、もつれた足。
 そのまま地面に倒れ込む。
「立たなきゃ……みんな、死んじゃうよぅ」
 言ってはみたが、無理だった。
 限界になった身体は。もう口ばかりしか動かない。
 そこへ。
 訪れる、足音が、あった。
 ゆっくりとした足取り。
「……やぁ、お嬢さん。こんなところで、どうしたんだい?」
 そこに、いたのは――

 背に群青の翼をもつ、蒼い髪に水色の瞳をした、

 天使だった。

  ◆

「私のことはいいから。仲間が……死にそうなの」
 リクシアは、言葉少なに状況を説明した。
「そっちに……いるから。お願い、助けて……!」
 必死で頼み込むと。その天使は、とても困ったような顔をした。
「でもねぇ……」
「お願い、死んじゃう!」

「ここまで歩いてきた時点で、へとへとだから」

「…………え?」
 この人が来たのは、そんなに遠いところからだったのだろうか。
 そう、思いを巡らせると。
「違う、違う。割と近くからだよ。でも、私にとってはすごく遠いんだ」
 大慌てで否定した。
「何を言って――」
 だから、と彼は言葉を遮った。

「私はね、生まれつき、そんなに長く歩けないのさ」

「!」
 そう、だったのか。
 だから、あんなに困った顔をしたんだ。
「ちなみに天使だけど飛べない。歩けないし飛べないんじゃぁ、移動には難儀してるよまったく」
 その天使は、そうつぶやいた。
「でも、どうしようねぇ。僕じゃぁ君の友達を――」
 と。

「アルフ! 一体どこ行ってたの! 探すの大変だったんだから!」

 その言葉を、女の子の声が遮った。
 そこには、赤い髪にピンクの瞳、紅蓮の翼の。
 天使が。もう一人、腰に手を当てて立っていた。

  ◆

「ふぅうーん。状況は理解したわ。で、あたしにそれを助けに行けって?」
 天使の女の子は、リクシアから話を聞いて、そう問うた。
「そうよ……。急がなきゃ……死んじゃう……!」
「りょーかい。じゃ、アルフはそこで待っててよ? あたしが直接現場に向かうわ」
 言って女の子は、その背の翼をはばたかせた。
「とりあえず、様子見てくる! 動くんじゃないわよ。探すの大変なんだから!」
 そうして、その女の子はいなくなった。
 リクシアは、残った天使に訊いた。
「聞いてなかったけど……あなたは?」
 おや失礼、と飛べない天使は笑った。
「私の名はアルフェリオ。で、あの子の名がリルフェリア。全然似てない双子なのさ」
「双子!?」
 言われれば、顔つきが似てなくもないか。
「ところで、君は? 君もまだ、名乗っていないよ」
 その問いに。
 リクシアは、微笑んで答えるのだった。
「リクシア……。リクシア・エルフェゴールよ……」
 そこまで言うと、落ちてきた瞼。
 疲労が身体を支配する。
 さっきまでは、眠ってはならない状況だったけれど。
 今は。助けてくれる、人がいるから。
(任せても……平気よね……?)
 誘う眠気に身を任せた。
「ありゃりゃ、寝ちゃったよ。ひどい怪我だったし、疲れたんだろうなぁ」
 青色の天使が、小さくつぶやいた。

  ◆

「……なによ、これ……」

 はばたいた先。赤い天使は愕然とした。

 悪魔みたいな少年と、天使みたいな少年。片手剣を握った、普通の少年。

 みんながみんな、ほとんど息をしていなかった。

 そして、みられる戦闘の傷跡。
 凄絶な戦いの跡。

「……面倒事に首突っ込んだ気分。あとであの子にみっちり訊いてやるんだから」

 赤い天使はため息をつき。
「あれは……毒……? とりあえず、手当てをしとこう」
 その右手を天に掲げ。小さく呪文を唱えた。
「天光!」
 暖かな光が天から降り注ぎ。皆をいやした。
 とりあえず、なんとかなったかな。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 短いです。で、駄文です。
 どーも、前回の話を長く書きすぎて(軽く三話に分けられる)精気をなくした藍蓮です。
 今回は新しい章(別に章とか決めちゃいないけど)に突入です。
 くたびれきったリクシアのもと。出会った赤色と青色の天使。
 彼らは一体誰なのか? そもそもここはどこなのか?
 またまたやってきた動乱の予感!?
 次の話に、請うご期待!

カラミティ・ハーツ 心の魔物 Ep25 極北の天使たち ( No.28 )
日時: 2017/08/14 00:11
名前: 流沢藍蓮

 どーも、藍蓮です。
 帰省するので、14日昼〜17日夕まで更新できません。
 すみません、よろしくお願いいたします。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「おーい!」
 声がした。アルフェリオは声のした方に首を向ける。
「リル。何とかなったのかい?」
 赤い天使が、青い天使の前にふわりと着地した。
 うん、と彼女は言う。
「でも、なんか、さぁ。なんか、変だったのよねぇ」
「言いよどむなんてリルらしくないね。何かあったのかい?」
「……凄絶な、戦いの痕跡が、あったの」
「……そうかい」
 アルフェリオは、少し考え込むような顔をした。
「ねぇ、リル。私をそこに、連れて行ってくれないかい?」
「今はだめ。怪我人の収容が先でしょ。……って、アル、その子の治療は?」
 リルフェリアは、眠ったリクシアを指し示した。アルフェリオはうなずいた。
「私がやっておいたよ。で、怪我人の収容? どうだかなぁ。みんな、許してくれるかなぁ」
 彼は、知っている。
 自分がこれから帰るところが。余所者に厳しいことを。
「というか、そもそも怪我人は何人だい?」
 問えば。
「三人よ。でも、そこのお譲ちゃんとあんたを含めれば五人」
「私は怪我人じゃないよ?」
「まともに歩けない人は怪我人なの。飛ぶことだってできないくせに」
「これは生まれつきなんだからつべこべ言わない。でも、リルだけじゃみんなを運べないね」
 どうしよっか、と言いかけたら。

「呼ばれて飛び出てズドドドドーン! 緑の天使をご用命かい?」
「……用があるならそう言え」
「お困りですかー? お助けしますー!」

「……なんでそんなにタイミングよく出てくるの君たち」
 双子の天使仲間が。緑のラーヴェル、黒のヴァンツァー、黄のリリエルが、そろって現れた。

  ◆

 で、必然的に。遅いが動けるアルフェリオが、残されることになった。リルフェリアは心配げな顔をしていたが。アルフェリオだって戦える。
 動かない足を必死に動かし。「里」の方へと歩いていく。
 運ばれてきた「リクシアの仲間」は、どこか、魔物の匂いがした。
(魔物にやられたんだろうねぇ)
 それも、かなり強めの奴に。
 記憶を呼び起こしながらも。小さな森の中を歩いた。

  ◆

「状況はよくわからねぇけどさ」
 話を聞いて。空を飛びながらも、緑のラーヴェルは首をかしげた。
「ま、とりあえずは。余所者が入れるように取り計らえってことかい?怪我人収容するために」
 でしょうねー、とリリエル。
「みんなが目覚めてくれなきゃ、わかるものもわかりませんけどー」
 そもそもアルが、リクシアちゃんを助けたのが悪い、とリルフェリアが愚痴をこぼす。
「なんか、大事に巻き込まれたよーな気分なんですけどー」
 ヴァンツァーはどう思うわけ? と黒い天使に話題を振ってみると。
「俺は知らん」
 あっさりと返された。
 リルフェリアは口をとがらせる。
「はいはい別にいーですよーだ。ヴァンに聞いても意味ないし!」
「……それをわかって訊いたのならば、お前は天性の馬鹿だぞ」
「はいはいはい! 聞こえなーい!」
 耳をふさごうとするが、リクシアを背負っていたことを思い出してやめる。

 やがて見えた、小さな里。極北の地の、小さな里。
「さ、降下準備!」
「わかってるての!」
「行きますよーぅ」
「……落下」
 そこへ。ゆっくりと翼をたたみつつ、四人の天使が舞い降りる。
「で、待っているのも癪だから」
 リルフェリアはリクシアを下ろすと。
 再びその翼を広げた。
「リル? 抜け駆けすんのかこら!」
「しないってば! アルを迎えに行くんだよ!」
 ラーヴェルの憤慨した言葉に答えて。
「ってことで、待っててね!」
 再び、飛び立った。

  ◆

 アルフェリオは、短剣を構えていた。
「これ以上近づくなら……実力行使もいとわないけど」
 そんなことを言っている割には。
 つうっと流れおちた汗。
 対峙するは、異形の女。異形の足で、身体を支えて。
 片手にレイピアを携えて。狂ったように、一歩、また一歩。
(困ったなぁ)

 戦いが、起きようとしていた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 天使たちの話その2。主人公勢が意識不明なので、メインメンバーはお留守です。赤青天使の旧知らしい、緑、黄、黒の天使まで出てきてにぎやかに。
 次こそはみんなを目覚めさせたいです。
 帰省のために更新ペースは遅くなりますが、これからもよろしくお願いいたします。

カラミティ・ハーツ 心の魔物 Ep26 ハーフエンジェル ( No.29 )
日時: 2017/08/17 18:41
名前: 流沢藍蓮

 お久しぶりです藍蓮です。
 帰ってきたので再開しまーす!

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 狂ったような異形の女。アルフェリオは、彼女の正体を知っていた。
 策略にて、人を魔物にする。権謀術数の魔性の女。
「『偽りの女神』が……。落ちぶれたものだよね」
 構えた短剣の先は、細かく震えていた。
 余裕がないのは確かだけど。戦わなければ死んでしまうから。
「キエエエェェェッ」
 飛びかかってきた異形の女を。腕の剣で、なんとかいなす。
「手加減なんて……してくれないよねっ」
 呟き、剣に特殊な呪文を乗せて、異形の女に放とうと身構えた。
(これをやったら……正直、身体が保つかどうか。でも、仕方ないよね。戦えない僕にとっては。これしか生き残るすべがない……)
 
 アルフェリオは、ただの天使ではないのだ。

 リルフェリアの、双子の兄。水に愛されし青き天使。
 それは、表の顔にしかすぎなくて。

 その裏には。闇に愛された、暗く黒い悪夢の申し子の姿が、あった。
 普段、戦えないのは。闇の力の代償で。
 ひとたび本気を出せば、百の軍勢でさえ一人で倒せるほど強いけど。
 一度、そうなったら。彼の身体は深い深い闇に侵され。天使でいられなくなる可能性すらあった。
「でも……仕方な……」


「――仕方なくない!」
 

 と。

 天から舞い降りた赤い稲妻が。
 異形の女を、手にした剣で。
 刺し貫いた。

「……リル」
「来て大正解! もう、アルったら! 勝手に死んだりしないでよぅ!」
「……死んじゃあいないけど」
「死にそうだったくせに何言ってんのよアンタは! とりあえず、あたしにつかまって! みんなの待ってるところまで飛ぶわよ!」
 叫び。倒した異形の女には見向きもせずに。
 リルフェリアは、アルフェリオに背中を差し出した。
「乗って!」
「……いつもごめんねぇ」
「そんなの気にしない! さあ!」
 赤い翼が、大きくはばたく。
「みんなが待ってる! いくわよ、さぁ!」
 どこまでも前を見据える真っ直ぐな瞳は。
 仲間の待つ、村の前を目指した。

  ◆

「……う……」
 フィオルは、明るい光で、目を覚ました。
 知らない所だ。あの戦場ではない。リクシアが助けてくれたのだろうか?
 身を起こそうとするが、どうも力が入らない。
 ちなみに、今寝ている場所は。どこかの土の上らしい。
 どうしようか、と思った。これでは状況がわからない……。
 と。
「あら、目覚めましたかー?」
 ふわふわとした、声がして。
「おっ? 誰よ誰よ? って、天使さん?」
「……外見で人を判断するな。まだ、天使と決まったわけじゃない」
 他の声が、そのあとからやってきた。
 フィオルの眼に映るのは。色とりどりの天使たち。

 ――天使、たち。

 出会っては、いけない人たち。
 フィオルと、アーヴェイにとっては。
 フィオルの生まれにまつわることで。

(まずい……よりによって、天使だって? シア、相手を選んでくれる?)
 事情を説明しなかった、こちらも悪いか。
 どうしよう。

「あのー。お名前、伺ってもいいですかー? あと、天使みたいな見た目ですけど、あなたは天使なんですかー?」
「知りたい知りたい」
「……俺は知らん」
 天使たちが、名前を訊いてくる。僕の名は一部の人の間では有名なんだ。だから偽名を名乗ろう。と、言ったって……
(事情を知らないシア達は、僕のことを本名で呼ぶだろうし)
 ならば、真実を明かした方が、下手に疑われないで済むか。
 どうせ、今は動けないんだ。もう、どうにでもなれ。

 フィオルは軽く身じろぎをした。
 すると。
 現れる、純白の翼。
 天使の血を引く者の証。

「あなたは……」
 驚いたような、黄色天使の声に。
「ハーフエンジェルのフィオル。……聞いたことない? 僕の本当の父親……大罪人ウォルクのことを」
 書物で知った、自分の生まれ。父親は、天使族の仲間を金で売った、ある大罪人。
「僕はその息子だよ……」
 だから、だからこそ。他の天使には会いたくなかった。大罪人の息子だから。ひどい目にあわされると、思いこんでいた。

 しかし、現実は違ったのだった。

「あららぁ。そんなことを気にしてらっしゃったのですかー? 他の天使さんたちは違うかもしれませんが、私たちは例外なので! 異常種なのでー」
「自分でそれを言うかリリエル……。ま、おれたちゃ他の天使みたいにお堅くねーもんで。そんなに気張らなくたっていーんだぜ? ちなみにおれの名はラーヴェル。ハーフエンジェルかぁ……。よろしくな!」
「気にしすぎだ。……俺はヴァンツァー。大罪人なんて知ったことか。言い方は悪いが、関係ない俺達には対岸の火事だ」

 すべて、フィオルの思い込みだった。
 ここの天使たちは、こんなにも親切で。
(あーあ、いつもの警戒心なんていらなかったんだね)

「……ところで、ここって?」
 気になることを訊いてみたら。
 ヴァンツァーが冷静に返す。
「存在しない町だ」
 その次に彼の言った言葉は。フィオルの想像と理解を超えていた。







「花の都フロイライン、と呼ぶ者もいる」







◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 最近スランプ中の藍蓮です。内容浮かばんわ。
 というわけで、前から考えていた急展開をぶち込みました。しっちゃかめっちゃかな駄文ですね今回の話は。
 正直、この低クオリティで投稿していいのか不安になりますが、ブランクがあったので一気に投稿。駄作ですみません次はちゃんとやります。

 明かされた町の名前。その正体は――
 続きます。次こそは主人公を目覚めさせたいです。

カラミティ・ハーツ 心の魔物 Ep27 存在しない町 ( No.30 )
日時: 2017/08/19 13:24
名前: 流沢藍蓮

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「――フロイラインだって!?」
 
 フィオルは思わず叫んでいた。それにヴァンツァーが答えようとする。と。
「みんな……無事……?」
「……生きてたな」
「……リア……は……?」
 これまで眠っていた三人が、目を覚ました。
 そして。
「ただいまーっ!」
「やぁ、みんな」
 赤と青の天使も、戻ってきた。
「……天使? これは、なんだ?」
 アーヴェイの疑問ももっともなことで。
 ため息をつき、フィオルは。これまであったことを語ったのだった。

  ◆

「花の都フロイラインが、あの町なの……」
 先に広がる町を見て。呆然とした顔で、リクシアが問うた。
「そうさ。あそこが花の都。君たちはそこを目指していたのかい?」
 アルフェリオの言葉に。リクシアは力なくうなずいた。
「兄さんが魔物になって。で、それを戻そうとして」
「無理だね」
 にべもなく返された、非情な言葉。
「あそこは『存在しない町』なんだから。何の記録も残っていないさ」
「……訊いてもいい?」
 フェロンが会話に割り込んできた。
「あなたたちは、あの町を『存在しない町』と呼んでいるけれど。どういう意味?」
「そのままの意味ですよー」
 のんきそうに、リリエルが言った。
「あの町は、『存在しない町』なんです。地図にもないし、人目にも触れない。そしてそこに住むのはそもそも、人間じゃない――」
「天使の町なんだぜ? ゆえに、人間にとっちゃあ存在しない町、なんだってワケ」
 ならば、とアーヴェイが口を挟んだ。
「あそこが存在しない町だってのはわかったが、ならばどうして。魔物が元に戻らないんだ?」
「簡単だよ」
 だって僕らは――と、アルフェリオは皆を見た。

「天使だもの。あの時。魔物になったのは、天使だもの。だから僕らは、天使以外の戻し方なんて、知らないんだよ」

 ……リクシアは、驚愕した。
 人間だけではなく、天使だって。魔物になるということに。
 そして。
 ずっと追い求めていた花の都は、天使たちの町だったことに。
 ――これじゃあ。
 これじゃあ。
 兄さんを戻す方法は、見つからないの……?
 また。
 振り出しに、
 戻るのか。
 何もわからなかった、
 手探りの暗闇に……。

 襲ってきた絶望に、リクシアは両手で顔を覆った。
 私たちの長い旅は。無駄だったのだろうか。
 私たちの負った傷は、無駄だったのだろうか。
 振り出しに戻って。何もわからなくて。
 今こうしている間に。グラエキア達に、兄さんが殺されそうになっているのかもしれないのに。
 ――私は、私たちは。
「……これから、どうすれば、いいの……?」
「良かったら、来てみるかい?」
 アルフェリオが、優しく笑いかけた。
「私たちじゃあ君の助けにはならないかもしれないけれどさ。町に来たら、案外、あるかもしれないよ? 魔物を元に戻すためのヒントが」
 天使の町。存在しない町。
 しかし、魔物が元に戻った話のある、唯一の町。
「……行って、いいの……?」
「もちろんさ」
「待て、アルフ」
 ヴァンツァーが、片手で彼を制した。
「あの町は余所者に厳しい。彼女らを収容するのに、言い訳がいるが、考えたのか?」
「ああ、そうだねぇ。ヴァンに投げてもいい?」
「……俺は便利屋じゃないんだぞまったく……。フン。ならば、こんなのでどうだ? 『偽りの女神』ヴィーナが現れたと聞くが、それを利用しよう。彼女にアルフが襲われていたのを偶然、満身創痍のあなたたちが見つけ、アルフを助ける。だから俺たちは、その恩返しとしてあなたたちを助ける……。こんなシナリオなら、あるいは」
「いけるかもねぇ。これからも頼るねぇ」
「……たまには自分で考えろ」
 とにかく。話がまとまったようである。
「……じゃあ、行くの?」
 目の前の町。存在しない町。花の都フロイラインへ。
 期待はすんなよ、とラーヴェルが言った。
「天使ったって、そこまで御大層なものじゃねぇーんだ。生まれが特別ってだけで。実際その中身は、あなたら人間とそう変わらねぇーんだぜ?」
 リクシアはうなずいた。
 前を見据える。
 極北の地。花の都フロイライン。
 旅の最終目的地が、存在しない町が。
 あらゆるものを拒否するかのように、そびえていた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 

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