ダーク・ファンタジー小説

Real-Game
日時: 2017/11/18 16:05
名前: オアシス

こんにちは、オアシスという者です。
Web小説はいくつか経験がありますので、精進していきます。
※一部流血描写や殺/人描写等が入ります。
それでもいいという方はどうぞ。
※異能力モノです。作者の痛い上に稚拙な文章にどうぞお付き合いください。
(感想・アドバイス等、どんどんお寄せ頂ければ幸いです。また、質問に関しましては答えられる範囲でお答えします)

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Re: Real-Game  ( No.12 )
日時: 2017/11/19 13:53
名前: オアシス

…ここはどこだ?
…俺は何者だ?
何も見えない。見渡す限りの暗闇に、1人。
誰かの声が聞こえる。
『…ん!』
『か…まさ…ん!』
『神山さん!』
神山?
…そうだ、俺は神山昂太。
俺は…どうなってる?
こんな場所に1人にしないでくれ。
糸が切れるように途切れた意識が戻るのは、湧水の如く緩やかだった。
何も見えない。瞼が重い。しかし耳だけは、最初から自分のものとして周囲の音を拾う。
「どう? 昂太の具合は」
「快方に向かってはいますが…まだ意識が…」
「こいつが一番重症だな。もう半日くらい経つぞ」
「無理もないだろう。あれだけ攻撃を浴びてしまえばな」
「昂太…頑張れよ…」
…情報量が多すぎる。
重症? 何のことだ?
何だっけ、あいつだ。あま…あま何とか…
そうだ、天田。
確か、電撃を喰らって…
ようやく飲み込めてきた。
どうやら何かの上に横になっているようだ。
そばに仲間たちがいるらしい。
「神山さん…どうか…」
手足はまだ痺れているが、瞼はどうにか動くようになってきた。
鉛が入っているように重い瞼を、思い切って上げる。
視界は焦点の合わないレンズのように判然としない。
艶やかな黒髪を備えた少女が顔を覗き込んでいる。
「あっ…かっ…神山さん…!?」
「うぅ…」
呻き声で返すことしかできない。
伊原の声を聞いて誰かが飛び付く。
「昂太!? 大丈夫か? 名前は言えるか? 体の痺れはないか? 頭が痛んだりはしないか?」
「新、程々にしろ」
軽くパニックを起こしている新を原田が宥める。
「ようやくお目覚めときたか。無茶しやがって」
氷川が冗談混じりに呟く。
「良かった…本当に…うっ、グスッ」
伊原が不意にしゃくり上げ始める。
神山が意識を取り戻したことで、緊張の糸が切れたのだろう。
その時、部屋の外から罵声や爆音が聞こえてくる。
「すまねえ、ちょっと出てくる」
氷川が言い残し、神山と伊原を除く全員が退室する。
ようやく手足の感覚が戻ってきた。力を入れて上半身を起こそうとする。
「あっ、まだ起き上がっちゃ駄目ですよ!」
伊原が慌てて神山を止める。
「熱傷がひどいです。それに、長い間目を覚まさなかったから…どうなることかと…」
「…あれから…どうなった」
ややかすれてはいるが、声が出せるようになってきた。
「他の方は意識を失ってなかったので、皆で神山さんを運んできました。もう半日程経過してます」
「…そうか」
「ひどい状態で…意識消失の上、体のあちこちに熱傷や打撲…一部出血もありました」
「ありがとう…」
「……心配、したんですよ。神山さん、死んじゃったらどうしようって…うぅっ、ひっく」
伊原は神山の袖を掴んで号泣し始める。
泣き顔は見慣れているが、これほど顔をくしゃくしゃにして泣いているのは初めて見た。
伊原には本当に心配をかけた。その上、おそらく介抱もしてくれたのだろう。
神山は腕と腹筋を総動員し無理やり体を起こすと、伊原の背中に手を回し抱き寄せた。
伊原が驚いたように大きく息を吸う音が聞こえる。
なぜこんな行動をしたのだろう。
「…すまない」
「い、いえ……もう少しだけ、このままでいていいですか…?」
「…ああ」
伊原は自分の腕も神山の背中に回すと、肩に顎をのせ一層激しく泣き始めた。
「はぁっ、うぅぅぅ…はっ…」
不規則に、伊原の熱を帯びた吐息が耳朶を揺らす。
伊原はしばらくそのまま泣きはらすと、神山に体を預けもたれかかった。
泣き疲れて眠ったようだ。
神山は痛みに顔をしかめつつ伊原を椅子に座らせてやると、自分は起き上がり体を確認する。
頬にはガーゼが貼ってある。殴られた跡だろう。
手足に、電撃が流れた際の熱傷が数ヶ所。
血も大分流れたようだ。頭がくらくらする。
耐えかねて頭を下げると、自分の左手首が目に入る。
血管の紋様がしっかりと手首に焼き付いていた。
いわゆる電紋と呼ばれるものだろう。
痛々しい模様に少しばかり嫌悪感を覚えつつ、神山は再び横になる。
見覚えのある天井。生徒会室だ。
ベッドなどはない。神山が寝ているのも、椅子を並べた即席の寝台だ。
相当疲れているようだ。すぐに眠気が襲ってくる。
本来なら不用意に寝るのは危険だが、どちらにせよ何かが起こっても自分にはどうしようもない。
防衛は新達に任せて、しっかりと休養をとることにする。
目を閉じると、すぐに意識が深淵に引きずり込まれていく。
目を覚ますと、既に西日が沈んでいた。
仲間も既に帰還しており、各々で休養をとっているようだ。
伊原は相変わらずうなだれて眠っている。頬にはまだ涙の跡が刻まれたままだ。
ふと思いつき、仲間を起こさないようにしつつ、ジャケットを羽織って部屋の外に出る。
まだ体の節々が痛むが、試したいことがあった。
腕を捲り、左腕の電紋を露出させる。
しばらくそれを見つめた後、左腕に気力を集中させる。
血行が良くなってくる。電紋が紅く染まってくる。
最大限に気合を高めると、左腕を高く掲げる。
すると、周囲の空気が一挙に帯電する。
天田の能力の一部が、神山に継承されたのだ。
こんなこともあるんだなと、更に色々と試してみようと能力を行使しようとしたが、さすがに体が限界を迎えた。
がっくりと片膝をつき、全力疾走をしたときのように息を切らす。
自分の能力ではないからか、体力の消耗が激しいようだ。
そこに、伊原が慌てた様子で出てくる。
「駄目じゃないですか…! また気を失ったりしたら…」
もはや力が入らない神山は、伊原にやや強引に部屋に連れ込まれる。
「もう、寝ててくださいよ…? 私が見てますから…」
「悪いことをした…」
「…私は、神山さんにいなくなってほしくないんです。…ずっと…神山さんといたいんです」
「ありがとう…俺も1人は嫌だ」
伊原は安心したように頷くと、頬を赤らめて聞いてくる。
「…そっ、その…神山さんは…その…彼女…とかは…いないん…ですか?」
「いない」
「そっ、そう…ですか」
伊原は何故かほっと胸をなでおろす。何が聞きたかったのだろう。
「…寒いですね」
季節は秋だが、冷え込みが早い。室内でも指先が白くかじかむのも珍しくない。
「人肌が結構暖かいのって…知ってますか?」
伊原はそう言うと神山の手をとって両手で優しく包み込む。
「はは…おい愛佳、まるでカップルだな」
「かっ、かかかかかカップル!?」
伊原は耳まで真っ赤にすると、
「でっ、でも…神山さんなら…私…」
そこまで続けて、
「…なんでもないです」
とぎこちない笑みを浮かべた。
「…じゃあ、神山さんは早く寝てくださいね。怪我人なんですから…」
「ああ、そうする」
神山が目を閉じると、伊原が耳元で「おやすみなさい」と囁く。
その声に言い表せない優しさを感じ、神山の意識は深く落ちて行くのだった。

Re: Real-Game  ( No.13 )
日時: 2017/11/19 16:09
名前: オアシス

「おっ、昂太。もう大丈夫なのか?」
「お陰様でな」
「無理しないでよ。死なない程度にね」
神山は起床した仲間の話に応じつつ、左手首の電紋を見る。
電撃の力は強力だが、いかんせん体力の消耗が激しい。
ここぞというときの切り札に使うべきだ。
「おう、ひでえ傷だな。痛みが残るようなら、言えよ」
氷川が気を遣う。
「そうだな。しばらくは、神山君に無理をさせてはいけない。彼が一番重症だったからな」
原田もそれに同調する。
昨日も神山抜きで戦い、撃退にとどめたようだが戦闘に勝利しているらしい。
戦闘能力に不足はないだろう。
「よし、それじゃあ行くぞ」
神山が号令をかけ、部屋を引き払う。
「そういえば、天田に殺されかけた時は『武装』が助けてくれたんだよな。意外と悪いやつじゃねえかもな」
「いや、俺に『本調子の時に殺り合おう』と言っていた。どこかでぶつかることは避けられない」
「…あっ、あの…あの時に能力を計測したんですけど…皆さんの身体能力をかなり上回っています。今後しばらくは避けた方が…」
「じゃあ、ひとまずは愛佳の言う通りにしとこう」
確かに、しばらくは『武装』を避けなければならない。
神山も今一つ本調子ではない。今戦うのは危険だ。
「昂太。それはいいんだが…ここら辺、やけに水浸しだな」
「…ああ」
こういう時は大抵何かある。経験則でわかっていた。
「全員、止まれ」
仲間に指示をした後、神山は挑発する。
「隠れているのは分かってる。出てこい!」
すると、不思議なことに床一面に広がっていた水が1か所に集まり、人の形を作り出す。
形が整ってくると、水が着色され人が姿を現す。
「見つけた所でなんだってんだ…俺に攻撃できるかな」
男だ。おそらく能力は液状化の類いか。
だとしたら…まあ…そうだろう。
無駄と分かりつつ刀剣無双を選択。相手との距離を詰め、躊躇なく刀を横薙ぎにする。
だがやはりというべきか、神山の斬撃は相手の体を綺麗にすり抜ける。
斬られた部分を液状化して、斬撃を無効化したのだ。
「神山君は無理をするな! 下がれ!」
原田が勇敢に向かって行くが、相手は原田に向かって水を噴射する。
ウォーターカッターだろう。だが原田は衝撃を吸収し、パンチで衝撃を返す。
しかし原田の攻撃もまた、相手にダメージを与えるには至らない。
多少水が弾けた程度で、また部位を再生し始める。
まともな物理攻撃は効きそうにない。
ここは電撃を使うしかないのだろうか。
そんな時、後ろで待機していた伊原の方から悲鳴が聞こえる。
はっと振り向くと、伊原がこれまではいなかった人間に首を絞められている。
女だ。完全に気配が感じ取れなかった。
どこから現れた!?
「が…くぅっ…」
伊原が苦しげに抵抗する。
水の生徒と女の生徒。どちらを相手取るか神山が迷っているうちに、新が伊原を拘束している女の頭を上段回し蹴りで蹴り飛ばす。
突然横から頭を蹴られた女はすぐに伊原を離し、風景に同化して見えなくなる。
なるほど、透明化か。
2人して厄介だな。どうするか…
「くそっ、速え! これじゃ凍らせられない!」
氷川が吐き捨てる。
どうやら水の生徒に苦戦しているようだ。
液状化した状態で床や壁を高速で這い回っている。
追随できない。
透明化の生徒も、位置が捕捉できない以上は攻撃できない。
その時、神山の後ろから首に手を回される気配がする。
「昂太!」
新に警告を飛ばされるより早く、神山は体を回転させ相手のこめかみに肘鉄を入れる。
相手はよろめくとまたも透明化して姿を消す。
「まずい…このままじゃ埒があかないよ!」
「愛佳…どうすれば!?」
「ケホッ…こっ、広範囲攻撃が有効…です…」
首を絞められたからなのか、咳き込みつつ弱点を分析する。
広範囲攻撃…やはり、使うべきか。
「全員、退け!」
「えっ…だが」
「いいから!!」
神山の剣幕に誰も異論を挟めず、神山の言う通りに離れる。
神山は左手首の電紋を露出させると、精神を集中させる。
瞬く間に、禍々しい紅色に染まる。
「…! 神山さん、それは!」
「これしかないだろ…!!」
パワーがみなぎってくるが、その代わりに神山の額には大量の玉汗が浮かぶ。
歯を食い縛ると、左手を高く掲げる。
途端に、周囲の空気が帯電し、すばしっこく逃げ回っていた水の生徒を灼く。
自分の体が水と化している時に電気を浴びたのだ。無事では済むまい。
さらに、居場所が分からなかった透明化の生徒も、電気が自動的に誘導して感電する。
おぞましい悲鳴をあげつつ、姿を現して倒れる。
「おい神山…いつの間にそんな力が…」
「天田に攻撃受けすぎたみたいでな…」
唖然としている仲間に簡単に事情を説明し、2枚カードを拾い上げる。
手札に加えようとして、ふと違和感に気づく。
「…数枚足りないな」
これまでは25枚持っていたが、20枚に減っている。
「どっかで落としたかな」
まあ、盗られたのだとしても取り返せばいい。
カードを懐にしまい込むと、途端に動悸が激しくなる。
能力の反動が来たのだ。手足は震え、力が入らない。
肺が破れそうなほどに痛む。頭の中に破鐘のような音が響き、耐えがたい頭痛が襲う。
体の中から湧き上がる痛みに、無意識で床をのたうち回る。
「神山さん!!」
伊原が駆け寄り介抱する。
酸素を充分に取り込めない。気管がひゅうひゅうと虚しい音を奏でる。
「神山さん…! しっかり…!」
「昂太!」
新と希も心配して走り寄る。
「神山さん! 落ち着いて…! そう…ゆっくり息を吸って…!」
手足の震えが治まってきた。
「はっ…はっ…悪い…」
「こんなもんだよな。そんな都合よく能力が手に入る訳ねえんだ…」
「神山君、その能力は反動が付き物だ。緊急時以外は使わない方がいい」
仲間から一斉に言葉を投げ掛けられる。
落ち着いてきた神山を伊原が助け起こす。
「…本当に…無理しないでくださいね…」
伊原にも諭される。
だが、この能力を無反動で扱えるようになれば強力無比な武器になる。
神山は自分の能力に新たな可能性を感じていた。
あと…128枚?

Re: Real-Game  ( No.14 )
日時: 2017/11/21 16:12
名前: オアシス

「諸君。頑張っているようだね」
校内に久し振りに放送が響く。
開始の時と変わらない、厳粛な男の声が流れる。
「多数の勢力が展開し、なかなか面白くなってきた。そこで、君達に試練を与える」
男の声はそこで一旦途切れ、焦らすように間を置いてから続ける。
「試練とは、《兵士》の導入だ」
兵士の語に力を入れて口にする。
「君達と同じ数…つまり200体を投入する。この機械兵士には最新鋭の学習型AIが搭載されており、全機で情報を共有する」
淡々と男の話は続いて行く。
「聡明な諸君ならもう分かるだろう。即ち、1体が蓄積した戦闘データは全機体に送信される。そして、戦う度に強くなる」
そして男は話を締めくくる。
「この兵士達を倒し、君達が生き残ることが果たしてできるのか…楽しみにしている。では、健闘を祈る」
その後は特に何もなく、無機質に放送は終わった。

「…だってよ。面倒なことになったな」
「ていうか、黒幕は私達のことリアルタイムで監視してる感じなのかな?」
「おそらくそうだろう。しかし、俺達の戦いを見て楽しんでいるとは。断じて許せん」
「そうだな、猛の言う通りだ。…だが、あの声はどこかで聞いた事が…」
「…聞いたことはあるんですけど…思い出せませんよね…」
「何にせよ、降りかかる火の粉は払う。それだけだ」
神山の一行は各々の推測なり何なりを語り始める。
「神山。機械ってことは、案外戦闘ではちょろい感じなんじゃないか?」
「いや、そうとも言い切れない。機械だからこそ、感情がない。躊躇なくこちらを殺しにかかってくるはずだ」
神山は己の予想を披露する。
「さらに、学習機能も脅威だ。全機体で共有ということは、1体と戦えば200体がレベルアップするんだぞ。余計な情報を与えず、一撃で仕留めることが重要だと思う」
さらに神山は情報戦も仕掛ける。
「愛佳、できればその兵士達の情報も探ってほしい。できるか?」
「はい…やってみます…!」
「昂太も、なかなか策士だな」
「死因が機械に殺害なんて俺は御免だしな」
軽口を叩きつつ、話し合いを続ける。
「うちの学校は生徒数に見合わねえほどバカでかい…兵士で学校が溢れかえることは無いだろう」
そのおぞましい光景を想像してしまったのか、伊原がブルッと体を震わせる。
「あと考えたくはないが…機械操作の能力がいたら厄介だ。見つけ次第始末してくれ」
「オーケーだ。よし、じゃあ行こうか?」
「神山君。早速お出ましのようだぞ」
廊下の向こう側から、数人の集団が歩いてくるのが見える。
規則正しい歩幅とリズム。無機質に振られる腕。
機械の特徴そのものだ。
少し近づくと、装いもよく見える。
上半身は軍用のアーマーじみたものにプロテクトされている。
下半身はさっぱりとしているが、アンダースーツに膝、脛のアーマー。
頭は黒を基調としたつるりとしたメットに覆われており、中を伺い知ることはできない。
腰のホルスターには銃ともナイフともつかない武器が収まっている。
「よし、やってみよう。愛佳、頼むぞ」
「はい…!」
神山、希、氷川が走り出すと同時に、伊原が解析を開始する。
相手は5体。まだ学習記録がないからか、至近距離まで近付いても無反応だ。
神山は手始めに1体の首部分を刀で刺し貫くと、そのまま横に薙いで切り開く。
その横薙ぎで隣のもう1体の首を勢いのまま飛ばす。
神山の無駄の無い斬撃を受けた兵士は火花を散らして機能停止する。
希はカンガルーの足で飛び蹴りをお見舞いし、相手を横倒しにした後に、足を象の足に素早く変化させ頭を踏み潰す。
メットや回路の破片と共に、潤滑液のようなものが飛び散る。
その頃氷川も、2体の兵士の胸部を氷の槍で串刺しにしていた。
氷川の氷の槍が砕けると同時に、ヒビが入っていた兵士の胸部も一部崩壊する。
「やっぱ学習してねえと、大したこと無いな」
だがここから強化されていく。案の定、また向こう側から集団がやって来る。
「今のうちに解析結果を聞いておこう…愛佳、どうだった?」
「身体能力その他は全機体で共通だと思います…能力はありません…常人より少し強い程度、です」
「そうか、ありがとう」
伊原が照れつつ少し嬉しそうな顔をすると同時に、神山は兵士に意識を戻す。
今度は3体。他の所でも戦いが始まっているのだろう、学習速度も早いはずだ。
その証拠に、若干小走りで向かってくる。
間合いに入った所を居合い抜きで倒してやる。
神山は抜刀の姿勢で待機する他、希は上腕部から拳にかけてをゴリラに変化させ、氷川は腕に氷の鎧を形成する。
間合いに入った。
その事を認識すると、神山は1歩踏み込み刀を高速で抜くと、兵士の胴体を逆袈裟に斬ろうと試みる。
しかし兵士は、神山の刃が届く直前で停止する。
「何っ!?」
まさか、こんなにも学習が早いのか?
斬撃が空振りし、体勢を崩した神山に、斬撃をかわした兵士が組み付く。
機械故に、人間では出せない力が出ている。このままだと関節が壊される。
神山は素早く決断し、左手首に力を込めると、一瞬だけごく小さく放電する。
神山の電気に駆動系を狂わされたのだろう、兵士はしばらく死の舞踊を踏むと、関節がちぎれ自壊した。
念の為パンチングファイターで頭を砕いておく。
若干息は苦しいが、反動は行った攻撃に相応らしい。
希は神山とは逆に、兵士に一方的に組み付くと、首を無理やり回して捻り引きちぎる。
首部分はアーマーに覆われていない繊維の束なので、攻撃が容易に通るらしい。
それを見てとった氷川は、氷の刃で神山のように相手の首を飛ばす。
これまでで8体。連戦の上、段々と強くなっていく相手だ。さすがに少し疲れを感じる。
さらに神山は僅かながら電撃を使った反動が残っている。
これ以上は厳しいか…?
「神山君、下がれ。後は俺がやろう」
神山を押し退け、原田が進み出る。
その目には自信が満ち溢れている。
「ああ…じゃあ頼んだ…」
神山は胸を押さえつつ下がる。
後ろで待機していた伊原に抱き止められる。
「大丈夫ですか…?」
「ああ、平気だ…」
「でも、顔色が少し…」
平気だとは言いつつ、息が苦しいのは事実だ。神山は何も言えない。
原田達は第三陣の兵士と戦い始めた。
兵士の動きはキレが増してきたようだ。希や氷川は攻撃をかわされることが増えてきた。
息を整えつつ成り行きを見守っていると、もう1つの廊下から数体の兵士が出現する。
神山ははっと息を呑むと、対抗すべく立ち上がるが、やはりまだふらついてしまう。
「昂太、無理するな。俺がやる」
とは言うものの、新の能力では限界がある。
しかも強さを増してきた兵士達。猛攻に耐えられるとは思えない。
案の定、新は必死に戦うがどうしても取りこぼしが出てしまう。
さらに戦っている3人は手を離せない。
新が取りこぼした兵士は、神山と伊原に向かってくる。
どうやら非戦闘員を狙う思考ルーチンもあるようだ。
「昂太!」
神山は刀で抵抗するが、動きにキレの無い神山と無傷の兵士達。
差は明白だった。
神山の斬撃はガードされる。
もうガードを覚えたのか!?
驚愕しつつ体勢を崩す神山を尻目に、兵士は伊原へ向かう。
「チッ!」
神山は舌打ちして刀を槍投げの要領で兵士に投げつける。
刀は綺麗に胴体を貫通し、兵士の機能を停止させる。
しかしもう3体ほどが迫ってくる。
「くそっ!」
神山は懐に入られた場合の振り払う手段を電撃しか持たない。
しかしその電撃も連発はできない。
第一、こんな所で撃ったら伊原に被害が及ぶ。
打つ手なし。
しかしこのままでは伊原が危ない。
とっさに伊原に覆い被さる。
「…!? 神山さん!? 何やってるんですか…!?」
盾にしている自らの背中に殴られる痛みが広がる。
兵士が群がっているようだ。
くそっ、無駄な戦略覚えやがって。
神山は胸中で毒づくと、パンチングファイターで思い切り裏拳を放つ。
ごしゃっという音をさせて1体の兵士が機能停止する。
しかし仲間の死にも構わず兵士達は神山を攻撃し続ける。
「神山さん…! そんな…!」
涙を流しながら自分のことはいいと懇願する伊原。
しかし伊原を失えばそれは作戦中枢を失うのと同義だ。
さらに、伊原とは深く語り合った仲だ。失うのは何となく、惜しい気がした。
そろそろ痛みが我慢できなくなってきた。
神山の苦悶の表情に、伊原は神山の袖を固く握り締める。
その時、兵士の1人が蹴り飛ばされた。
「何やってんだよ…ったく、昔っからお前は…」
新だ。
あらかた片付け終わったのだろう、神山の援護に回るようだ。
神山からもう1人引き剥がすと、床に倒して頭部に踵落としを決める。
モーターが空回りする虚しい音を奏でながら兵士は機能停止する。
戦っていた3人もとどめを刺したようだ。
「案外手こずるね…こいつら」
「面倒になってきたな…くそっ」
「ほら昂太、立てよ」
新が手を差し伸べる。神山はその手をしっかりと取ると体を起こす。
「お前は昔っからそんな性格だよな…論理的に見えて意外に直情径行なんだよ」
「生きてるし結果オーライだろ」
「あっ…ありがとうございました…! 怪我とかは…無いですか…?」
「大丈夫だ」
「毎度のことだが、無理をするなよ、神山君」
原田に応じつつ、痛む背中をさする神山だった。




「5枚か…案外盗れなかったか」
男がカードを眺めつつ歩いている。
「あー…あいつ、磨けば強いな。次会うときは…」
男はそこで言葉を切り、両の拳を打ち付ける。
そこに、兵士の集団が現れる。
「あ? 何だお前ら」
男の問いには答えず、兵士は問答無用で攻撃を仕掛ける。
数はざっと10体。
「めんどくせえなオイ…さっさと逝けや」
男は長めのドスを召喚すると、一挙に3体の胸部を串刺しにする。
その隙に迫ってくる1体の頭部にハイキック。
さらにハンドガンを召喚し、馬賊撃ちの要領で流れるように3体の頭部を確実に貫く。
そして再びドスを召喚。1体の首を飛ばし、足を引っ掴むと体を乱暴に振り回す。
それでもう2体を巻き添えにして、一気に勝負を決めた。
「ったく、迷惑だなぁ……そういや俺って、『武装』って呼ばれてんだよな。なかなかイカすな」
男はニヤニヤと笑みを浮かべると、余韻もそのままにその場を立ち去った。

Re: Real-Game  ( No.15 )
日時: 2017/11/21 22:26
名前: オアシス

「ふう…キリがないな」
「200体もいるんだ、しゃあねえだろ?」
兵士を倒して回っている神山達。
どうやら強くなっていく兵士達は他の者にとっても脅威のようで、いくつか共同戦線を張ることもある。
皆が兵士の殲滅に躍起になっている所で、闇討ちする手もあるのだが…
「非効率的だな。そんなことをしてるうちに兵士に殺されるぞ」
原田に一蹴される。
それもそうだ。まずは兵士の殲滅を目指すべきだろう。
だが兵士はもはや神山達やその他の強者と互角に戦うまでに成長している。
実際、兵士による犠牲者も増えているようだ。
「あっ、あれ?」
「どうした、愛佳」
戦闘中のデータを解析していた伊原が困惑の声をあげる。
「私の能力って、出会った相手には好きなように個体識別番号を振れるんですけど…さっきの兵士、前も戦ったような気がして…」
そんなまさか。
「つまり、昂太が危惧していた機械操作系がいるってことか?」
「それは分かりませんが…でも、この現象を説明するにはそれしかないですよね…」
「わざわざ俺達にけしかけてるのか、それともランダムに狙ってるのか…どちらにせよ、脅威だ。今のうちに消そう」
満場一致で合意。
後はどこにいるかだが…
「操るってことは、素体が必要でしょ? 兵士がたくさんいるところの付近とかにいるかもよ」
「希は相変わらず鋭いですね…どうしますか、神山さん?」
「まあ、そんなような箇所をしらみ潰しに当たるしかないな」
危険が伴うやり方だが、これしかないだろう。
そう決めて能力元を探し出す。
途中、いくらかハズレの群れに当たってしまい、戦ったことで疲労が溜まってきた。
そんな時に、怪しい影を見つけた。
前方数m先。物陰のこちらには気付いていない。
周囲に兵士を侍らせている。
兵士の残骸に手を添えると、機械的に兵士が立ち上がり、まるで従者のように恭しく付き従う。
こいつで間違い無さそうだ。
(俺が先手を取る)
仲間に身振り手振りで合図し、神山は刀を手に飛び出す。
目標はもちろん親玉の能力者。
元を落とせば、下も瓦解する。ゲームの鉄則だ。
足音をたてないようにして走りつつ、後ろから相手の脳天を狙って大上段に振りかぶる。
と、振り下ろすと同時に、付き従っていた兵士に素早く刀身を捕まれる。
くそっ。
兵士は刀身を掴んだまま無理に格闘しようとする。
機械故の過ちだが、今回は神山に不利に働いた。無理な力がかかったため、甲高い音をさせて刀身が中程からすっぱりと折れてしまう。
「折れた!?」
思わず声に出して驚愕する。
それでようやくこちらに気付いたかのように、兵士達の王がわざとらしく振り向く。
いや、王などではない。ネクロマンサーだ。
「やっぱり、僕を殺しに来るか。お前達、行け」
最後の言葉は兵士に向けての指示だ。
それを合図に、兵士が一斉に神山に群がる。
「新! 希! 原田! 氷川!」
神山も負けじと仲間達の名を呼ぶ。
打てば響くような良い返事が聞こえ、神山に群がる兵士を食い止める。
神山は折れた刀を捨てパンチングファイターに切り替える。
1体の首根っこを掴むと、胸部に3発の打撃を叩き込む。
内部部品が破損したのか、抵抗の構えをしたまま兵士は動かなくなる。
その兵士の体を他の兵士に向かって投げつけ、体勢を崩させる。
氷川は全方位に対応できるように、全身に神々しい氷の鎧を纏い戦っている。
その姿はさながら中世の騎士だ。
氷の盾で打撃を受け止め、これまた氷の槍で相手を刺し貫く。
組み付かれた時は鎧から氷の棘を生やし、相手を寄せ付けない。
一方希はというと、善戦してはいるものの苦しいようだ。
それもそのはず、兵士が腰のホルスターから武器を抜いている。
形状からして、銃剣のようだ。ハンドガンの銃床に小ぶりの刃が付いている。
兵士が素早く銃剣を振り抜くと、希の肩に血が滲む。
「痛ッ!」
一瞬苦悶の表情を浮かべた後、歯を食い縛り兵士の頭をもぐ。
殆どの繊維を引きちぎられ、数本の繊維で首がぶら下がったまま倒れ伏す。
原田は防御などせず攻撃を全て受け止め、兵士を一撃で的確に停止させる。
しかし倒しても倒しても能力者は新たな兵士を召喚し、倒れた兵士を蘇らせる。
神山は襲い来る兵士の群れを捌きつつ、1体だけ微妙に胸部アーマーが凹んだ個体を発見する。
先程神山が倒した兵士だ。
「くそっ!」
神山は毒づきつつ、その個体に全力のアッパーカットを喰らわす。
胸部が凹んだ次は顎部が砕けるが、それでも諦めず向かってくる。
他の奴らは…?
ふと希を見ると、膝をついて伊原に介抱されている。
至るところに血が滲んでいる。中にはそれに留まらず、血が流れている傷もあった。
攻撃を受けすぎたようだ。傷口を押さえつつ、肩で息をしている。
そんな希と、それを手当てする伊原を守るように新が戦う。
初期こそ戦闘能力が無い新だったが、最近は足技にキレが出てきた。
ローキックで相手の足をすくうと、体勢を崩した相手に、空中で独楽のように回転しつつ回し蹴りを喰らわす。
「やるな、新!」
「気を付けろ、昂太! まだ来るぞ!」
お互いに激励と注意を飛ばし、戦いに戻る。
もはや兵士の数は神山達の数倍だ。その中心にはあの能力者。
このままじゃ競り負ける。仕留めに行くか…。
群がる兵士を殴り飛ばし、振り払いつつ、神山は能力者に迫る。
神山は新しい刀を召喚し、相手の喉元に刃を突きつけようとするが、やはり兵士に邪魔される。
だがかなり近くまできた。隙を狙うしかない。
「名を聞こう!」
「僕は鳴戸遊助だ」
「書きづらそうな名前だな! 同情するぞ!」
「負け惜しみかい?」
言葉の応酬を繰り広げつつ、神山は兵士との大立ち回りを演じる。
機械故に、無駄が無い。隙が生まれない。
狙えない!
思い切って刀を隙間から突き入れるが、鳴戸に届く前に兵士に腕を掴まれる。
振りほどこうとするが、力が強く離れない。
そうこうしている内に、兵士に肩も掴まれる。
まずい。そう思った時にはもう遅く、肩に激痛が走っていた。
肩関節を外されたのだ。
手に力が入らず、刀を取り落とす。肩を押さえつつ後退すると、原田が駆け寄る。
「脱臼などラグビーは茶飯事だぞ! 任せろ!」
そう言うやいなや、原田は神山の外れた肩を掴み、無理やり元の関節に戻す。
これまた激痛が走り抜けるが、今度は肩が自由に動くようになる。
「ありがとう!」
「困った時はお互い様だ!」
だが状況はちっとも好転していない。
隣で長槍を操りながら氷川が話しかける。
「このままじゃジリ貧だ。その内全滅しちまう。…ひとつだけ、俺に考えがある」
「考え? …この状況を切り抜けられるなら、やってみろ」
「…ああ」
氷川の目を見ると、その目には悲壮な決意が満ちていた。
「氷川…まさか…」
「俺も丸くなったもんだなあ」
「おい…やめろ…」
「俺が囮になる。その隙にお前達は逃げろ」
「受け入れられるかそんなの!」
「このままじゃ全滅だぞ!?」
神山は押し黙る。
「そもそも俺がここまで生き残れたのも、奇跡みたいなもんだ。誰かの為に自分を犠牲にたぁ、初めてだぜ」
氷川は1人語り続ける。
「俺がお前を群れから弾き飛ばす。そしたら皆を連れて逃げるんだ」
「…クソッ!」
「…ここは俺に任せろ」
その言葉を最後に、氷川は全力で神山を兵士の群れから弾き飛ばす。
他の者は氷で弾き飛ばされたようだ。
「氷川ぁぁぁぁぁぁ!!!」
「行けぇぇぇぇ、お前らぁぁぁぁ!!!」
他の者も恐らく察したのだろう、一瞬の迷いと躊躇の後に走り出す。
神山も胸中で毒づきつつ走り出す。
「うぉぉぉぉぉッッ!!!」
氷川の声が追いかける。
その後、音が聞こえてこなくなった。
そんな、まさか。
氷川。
神山はくるりと引き返す。
移動したのは短い距離のはずだが、氷川のもとへたどり着くのにとてつもない時間がかかったように思えた。
「氷川!!」
叫ぶと同時に目に入ったのは、兵士の群がった山。
その中から伸びている極めて長い鋭利な氷の槍。
それに腹を貫かれている鳴戸。
「か、か…」
鳴戸はそこら中に鮮血を撒き散らしつつ倒れると、吹き込む微風に体をさらわれカードへ変わる。
それと同時に、兵士の山も崩壊する。
中から現れたのは、槍を構えたまま全身から血を迸らせている氷川。
「大丈夫か!!」
すぐさま神山が駆け寄る。他の者も一緒だ。
伊原も隣で氷川の様子を伺うと、
「出血が多すぎます…これでは…」
と涙混じりに訴える。
どうやら銃剣で滅多刺しにされたようだ。致命傷は避けているが、受けた傷が多すぎた。
「神山…か…」
氷川はもはや焦点の合っていない目で神山を見つめる。
肺からの血が混じった咳をすると、震える手で神山の肩を掴む。
「生き延びろ…神山…絶対にだ…!!」
それを言い終えると、役目を終えたとでも言うかのように氷川の手から力が抜ける。
かと思えば、氷川の体は散り散りになりカードへと変わった。
「おい…氷川…嘘だよな…おい…冗談だよな…はは、ははははははは…」
寂しい笑いを浮かべつつ周りを見渡すと、唖然として氷川の残したカードを見ている。
伊原などはもう目の辺りを拭っているが、隠し切れない涙が頬を伝う。
それでようやく認識した。
仲間を失ったのだ。
もう、帰ってこない。
「氷川ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
神山の虚しい叫びがこだました。
あと、126枚…。

Re: Real-Game  ( No.16 )
日時: 2017/11/23 19:55
名前: オアシス

無力だなあ、お前は。
やめろ。
人1人救えないなんて、弱いんじゃないのか?
違う。やめろ。
力が欲しくないのか?
……
大切なものを失わずに済む、強い力が。
…欲しい。
力には…代償が伴う…
地獄の底まで…悪魔と寄り添えるかな…?

「…!」
ふと我に返る。
手には氷川の遺したカード。
腕には、氷川を抱き起こした感覚がまだ残っている。
誰もが茫然自失としている。
まるでそこだけ時間が止まってしまったかのように。
「氷…川…」
神山がぼそりと呟く。
どこで間違ったのか。
何が駄目だったのか。
考えても、答えはいつまでも出ない。
ただ一つ、仲間を失ったという残酷な事実だけがその場にはあった。
守れなかった。
氷川は自分達を命がけで守ったというのに。
「昂太…いつまでもいると危険だ。一旦離れよう」
「……ああ」
やや間を置いてから、神山は同意する。
氷川は全滅を恐れていた。ここで襲われることは、彼の望みを断つことに繋がる。
まだ冷静な判断ができる自分の頭を恨みつつ、一行は生徒会室まで後退した。
泣きじゃくる伊原の背中を希がゆっくりとさする。そんな希の唇も、微かに震えているように見える。
原田は腕を組んで下を向いたまま動かない。
新は顔を覆って天井を見つめている。
神山はもう何も考えられない。
黙りこくる仲間を尻目に神山は1人退室した。
誰も追ってはこなかった。
「くそっ!!」
思い切り壁を殴り付ける。
力さえあれば、氷川を死なせることはなかったかもしれない。
俺が弱かったからなのか…?
「悩んでいるね」
ふと男の声がして、伏せていた顔を上げる。
見たことのある顔だ。
「狭山…!?」
「久しぶりだね。可哀想に、1人殺されたな」
身構える神山を、狭山は落ち着いて制止する。
「まあまあ、僕は戦わないからさ。僕はね」
そう言われたものの、神山の体には早くも戦意がみなぎっている。
そんな神山に溜め息をつきつつ、狭山は話を続ける。
「だけど僕もね…君を倒せないと立場が危ういんだ」
立場? 何の事だ?
神山はそう聞こうとするが、狭山に機先を制されてしまう。
「君が力に飢えてる弱者である内に…死んでもらうよ」
狭山が話を終えた途端に、神山をとてつもない痛みが襲う。
体内に手を入れられて、心臓を握り潰される感覚。
失神しそうな自分を叱咤しつつ目を開けると、そこには自分がいた。
全く同じ顔。全く同じ服装。
幻覚を疑う神山に、狭山は嘲るように投げ掛ける。
「君だけじゃない。僕の能力も、日々進化する…こいつは君の中の闇をちょっと引きずり出してやったのさ」
そして死刑を宣告する。
「あいつの為にも死んでもらう。さあ、やれ」
神山の影はしっかりとしない足取りで迫ってくる。
その死んだ魚のような虚ろな視線に睨まれ、神山の背中に戦慄が走る。
その手にはいつの間にか刀が握られている。
「力量は君と全く同じ。勝てるかな」
影は情け容赦無く刀を振り下ろす。
神山は横っ飛びにかわすと、応戦すべく自らも刀を取る。
柄の感触を確かめつつ、影に向かっていく。
充分に間合いを詰め、袈裟懸けに振り抜いた。
が、その刃はいとも容易く弾かれる。
「心を読めば分かる。今の君には気合いが無い。…あーあ、そんなんじゃ君の仲間、殺しちゃおっかな」
「…何を!」
神山は激昂し、体勢を立て直すと再び大上段に振りかぶり、脳天をめがけて振り下ろす。
しかし影はその斬撃をスウェーでかわし、体を戻す反動を利用して縦斬りを放つ。
動揺で僅かに反応が遅れ、肩口に刃先を受けてしまう。
「…ッ!」
床に血の滴が滴り紅い花を咲かせる。
「昂太!!」
そこに事態を察知した新達が駆けつける。
「いやー…君の仲間ってホント面倒だよね」
狭山はそう言い放つと、走り寄る新達の足を固定する。
「何っ、くそ…あっ、お前は狭山…!!」
「えっ!?」
各々が驚愕の表情を見せる。
「バカな、あの時確かに神山君が…」
「ああ、あれ偽者だよ」
狭山がさらりと驚きの事実を口にする。
「仲間にそういう奴がいてね」
狭山が話をしている間にも、神山は影と斬撃の応酬を続ける。
「神山くぅん、もう仲間の所に行っていいんじゃない?」
狭山が茶々を入れる。
神山はいつものような集中力を発揮できていない。
既に幾つか斬撃を受けてしまっている。
まだだ…負けるわけには…
額から流れた血が目に入る。反射的に目を拭った瞬間、影に飛びかかられる。
しまった。
そう思った時には手遅れだった。下に組み敷かれ、全力で首を絞められる。
「昂太!!」
新の声が聞こえる。
視界が白いもやに覆われ霞んで来る。
数秒後、神山の視界は完全に閉ざされた。
…気づくと、見知らぬ場所にいた。
一面真っ白な花が咲く花畑。
空は無い。真っ白な空間に覆われている。
「ここは…」
「ったぁく、何やってんだか…」
振り向くと、そこに氷川がいた。
「あんまり引きずるんじゃねえよ。俺何か悪いことしたみたいだろ」
氷川の周りの花はそれだけ紅く染まっている。
「お前は、まだやることがあるだろ。ほら、見てみろ」
そう言われて振り返ると、そこには仲間がいた。
「昂太」
「昂太」
「神山君」
「神山さん」
そして、
「神山」
氷川は優しげな笑みを浮かべている。
始めて見る表情だ。
「お前にはまだ仲間がいるだろ。お前は悲劇の主人公じゃねえ。負けんじゃねえぞ」
氷川はそう言うと背を向け歩き始める。
「おい…どこ行くんだよ…」
神山は咄嗟に手を伸ばす。
「さあ、これで俺のやれることは終わりだ。後は自分で何とかしやがれ、神山」
そう言って氷川は消失した。
その代わりに、神山の影が現れる。
先程まで戦っていた、自分の影がいた。
影はぼそりと呟く。
「力には…代償が伴う…お前は…受け入れるか…?」
神山は影をしっかりと見据えて返す。
「もう誰かを失いたくない。その為なら、この命、喜んで捧げてやる」
「いいだろう…契約成立だ」
影も消失する。
その瞬間、足元の全ての花が真っ赤に染まる。
血の紅だ。
「さあ…行くぞ」
そして花は燃え上がる。
次の瞬間、現実に引き戻される。
状況は変わっていない。
神山は自分の首を絞めている手を掴むと、逆に捻り上げ首を脱出させる。
あの世界にいたのは一瞬のようだ。
だが確実に神山は変わっている。
その証拠に、立ち上がって見た眼前のゲームディスプレイの中には、新しいゲームが入っている。
「デビルクライシス…」
思わず呟く。
全てを失った男が「自分」を貫く為に戦うゲーム。
神山は迷わずタッチする。
すぐに、両手に双剣が召喚される。
やけに体も軽い。今なら何でも出来そうだ。
不気味な煌めきを放つ双剣の刃を打ち付けると、神山は一瞬で影との距離を詰める。
そして双剣を同時に突き入れる。
一方は弾かれるが、もう一方は影に深々と突き刺さる。
腕を掴まれる前に剣を引き抜くと、両腕を広げ独楽のように回転し斬り払う。
その斬撃で、影は片方の腕を落とされる。
「これで終わりだ」
神山は後ろに回り込むと、左右の双剣を別々に舞わせ影を斬りつける。
そして斬撃の締めに、2本を首筋に突き入れ、背骨に沿って一気に斬り下ろした。
「すごい…身体能力が大幅に上がってます…!」
伊原が感嘆の声を漏らす。
影が完全に倒され消え去るのを見ると、神山は狭山へ視線を移す。
「ちっ、これじゃ興醒め…」
神山はそう言う狭山に構わず距離を詰め、容赦無く腹に双剣を突き入れようとする。
直前で狭山が避けようとする。そのため、傷は脇腹の肉を多少抉るに留まった。
「くそっ、あの人に何て報告すれば…」
狭山は脇腹を押さえそう毒づくと、一目散に駆けて行った。
神山は深追いせず能力を解除する。
狭山の能力が及ばなくなった仲間も駆け寄ってくる。
「神山君…あの力は一体…」
原田が驚愕しつつも賞賛してくる。
だが伊原は不安そうな表情を浮かべて投げ掛ける。
「でも神山さん…その能力って…」
「ああ…代償だろ?」
伊原は依然として不安そうにしたままこくりと頷く。
「こいつの代償…『命を削る』代償だ。愛佳は分かってたんだろ?」
仲間が、正確には神山と伊原を除いた全員が驚愕する。
「電撃とは違う、突発的な発作じゃなく…継続的に体を蝕む力だ」
「その力は危険です…できる限り、使わないで下さい…」
「そうだ。いつ、どこで昂太の体にリミットが来るか分からない。だから…」
「分かってる。ただ申し訳ないが、これは俺の能力で、これは俺の体だ。我儘ですまないが、使うときは使わせて欲しい」
全員が黙り込む。
「大丈夫だ。必ず生き延びてみせる。あいつのためにも」
新が無言で背中を叩いてくる。
「…そうだな」
それだけ言って、新は後は何も言わなかった。
神山は自分の体で、何かが目覚めるのを感じていた。

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