ダーク・ファンタジー小説

異世界ホームシック
日時: 2018/07/09 14:58
名前: Salasha

異世界ホームシック。

先日、依星(ヨセイ)という地球から遠く離れた、とある世界の健康機関で発表された病名だ。

異世界学者、マトリッパ・オールシャテティによると、依星を何らかの理由で訪れ、戻れない事情のある者(勇者、時空の歪みによる被害者など)の8割がこの症状に陥っている状況だそう。

旅行先ならまだしも、世界単位での移住は異世界人の精神に負担となり、結果的に住居に閉じ籠る者が多いのだ。

これは、そんな異世界ホームシックに掛かったある男性の話。

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拐われた主人公 ( No.1 )
日時: 2018/07/09 15:21
名前: Salasha

30××年、1月24日、午後10時前。
43歳の冴えないエンジニア、隅田律多郎(すみだ りったろう)は丁度帰宅する所だった。

彼は今時珍しくもないプログラマーで、最近勤め先の会社で商業用ドローンの開発班から外された。少しの不満と諦めを抱きながらも、平凡な毎日を送っている。

出社した後、近くのスーパーで安売りされた野菜を購入、家に帰れば朝食の準備の後寝るだけ。いつも通りさっさと静まり返った住宅街を進む。

不意に彼は妙な胸騒ぎを感じた。何か重要な会議を忘れていたかの様な不安に駆られながらも黙々と歩く。

何となく廃れた神社を見た瞬間、彼は突風に巻き込まれたかのような感覚を覚えた。

目の前の鳥居がぐにゃりと歪み、身体が回転し、弄ばれる。突風が吹き荒れているのならばそれらしい音でもしそうな物だが、律多郎の耳は何の音も捉えなかった。

何の抵抗も出来ないまま、9時58分42秒、隅田律多郎は時空の歪みにどこか遠くの彼方へと連れ去られたのだった。

ウィーヴトーキーの森 ( No.2 )
日時: 2018/07/20 13:43
名前: Salasha

ふと、寒気がして律多朗は目を覚ました。

「…はぁあ?」

彼は磨り減った大理石の床に倒れていた。あの意味不明な突風モドキでバランスを崩したのだろうか。って、そんな事じゃない。真面目に意味が分からない。

確かに平均で見ると律多朗は痩せている方だ。しかし、それでも先程の突風程度でこんな神社とは全く別の、離れた場所まで飛ばされる様な華奢な訳でも無いのだ。

「あぁ、成る程。ここは教会か。廃れてるっていう点では、確かにあの神社と一緒だ。はは。」

寂しさを紛らわせようと一人で話し、乾いた笑い声を上げる律多朗。現実から少しの間だけ目を背けていた彼は、朽ちた長椅子に腰掛けた。

辺りは不自然な程静かで、夜中に誰かがバイクで爆走している音も、さっきまで頭の中に残ってメロディを奏で続けていた、廃品回収ドローンの調子外れなBGMも聞こえない。

時たま、正にお化けの吐息とでも言うような、ヒューヒューという冷たい風の音がするだけだ。

「えーっと、スマートグラスはどこだっけ?」
おおよそ1000年前の遺物、「スマホ」もとい、「スマートフォン」や「ウェアラブル端末」に似た、国民の所持が義務づけられている端末。それが、スマートグラスだ。

名前通りメガネで、メガネの肌に触れている部分にある超小型センサーから脳波を読み取り、他の端末と同期してレンズに情報を…とかどうたらこうたら。

律多朗は確かにプログラマーだが、地球上の何処かにいる天才達が作った、このスマートグラスの仕組みはさっぱり分からなかったし、同じプログラムを組もうとも思わなかった。

彼は出来ない事はきっぱり諦めるし、結構な面倒くさがり屋なのだ。

まあ、それはいいとして。その「ありとあらゆる情報に通じる」とかいう天下のスマートグラス様でも、圏外になれば鬱陶しいメガネだ。律多朗はすぐにスーパーのエコバッグにメガネを放り込んだ。

「あーお腹空いたー。」
気の無い声でそう呟いた律多朗は、エコバッグから食パンを取り出し、齧り始めた。

『異世界人の存在を確認中。ウィーヴトーキーの森へようこそ、異世界人。』

律多朗は異世界人異世界人うるさいな、と思ったが黙っていた。どうやらウィーヴトーキーなどという場所に居るらしい、とも思ったが黙っていた。文句を言うよりも驚愕が上回った事もある。

何もない虚空にいきなり生首が出現し、機械的な声で話始めたのだ。驚かない訳がない。

生首の妖怪 ( No.3 )
日時: 2018/08/09 13:12
名前: Salasha

「アー…どちら様で?」
律多朗はとりあえずといった風に生首に話し掛けた。

生首は40代程の女性の顔をしていたが、額には絶えずきょろきょろと動いている目がついていた。妖怪の仮装か何かだろうか。その目は暫くした後、ぴたりと律多朗に視線を合わせる。

『依星第53番生命体、スペクトル・Wのイルウィーン098接待員といいます。只今、地球の世界共通語、エスペラント語でお話ししておりますが、別の言語をご希望ですか?』

何を言っているんだ、この生首は。律多朗は生首から目を逸らし、食べ掛けの食パンをエコバッグに放り入れて考える。とりあえずは返事をしておこう。

「いや、あー、出来れば日本語が良い…です?」

まずなんちゃら生命体とかいうのはパスだ。
スペクトルとは、幽霊や妖怪という意味がある。成る程、だから目が3つか。幽霊というのなら生首だけ浮かんでいても可笑しくは無い…筈。異世界ならこういうのが居てもいいものか。

良くわからない納得をした律多朗は、再び生首に目を向ける。

『了解しました。これより日本語でお話しします。まず、貴方は現在、運悪く時空の歪みに迷い混み、依星(ヨセイ)と呼ばれる別世界に転移されました。』

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