ダーク・ファンタジー小説

天燐のセレマ
日時: 2020/01/10 18:08
名前: 祝福の仮面屋

【《魔法》】

【そう聞いて思い浮かぶものと言えば、何もない空間から炎や水といった物を出現させ自在に操ったりするものが多いだろう。確かに《魔法》は仮定上の神秘的な作用をし、不思議なわざを為す営み概括する用語である。】

【舞台は、世界樹と魔法が交錯する西洋の国アリーナ公国。】

【これは、ひょんな事から魔法の名門校・《レガリア魔法学院へ》入学する事になったとある部活のメンバー達の物語。】

【俺達は、極普通の人生を歩む《はず》だった。】



登場人物・世界観及び用語解説
>>3.>>4

序幕
>>5

第壱幕
>>6

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Re: 天燐のセレマ ( No.10 )
日時: 2020/01/12 14:37
名前: 祝福の仮面屋

代参話
【試験の始まり 前編】

〜レガリア魔法学院・受験受付窓口〜

「受験番号F・24番のジェニスタ様ですね、試験会場はあちらの闘技場となります」
「ん、それとさ」
「はい?」

番号の確認を終えたゲラッチは、魔族(魔獣種)の受付嬢に促され試験会場へと赴く。狐っ娘シスターズおよびその従者とはつい先程別れ、姉の方から「試験頑張ってね」と激励され、少しばかり赤面した自分を恥じた。
どうやら彼女達は推薦入学らしく、実力を国内外に認められている証明にもなる分正直羨ましかったが、ゲラッチは受付嬢に試験のルールを訪ねる。

「試験ってどんなの?」
「試験は実技と筆記に別れており、まず最初に実技試験をあちらの闘技場にて行います。勝敗は相手にギブアップ宣言をさせるか戦闘不能にするか、死亡させてしまった際は試験取消…つまり失格となりますので、そこは注意して試験にお望み下さい」
「なるほど、で?それが終わったら?」
「実技試験終了後には、あちらの教室にて筆記試験となります。筆記試験を全て終えると契約書にサインをしていただきます」
「何のサインだよ……」

本当に何の契約書にサインをするのだか。
あと、推薦入学の生徒達は実技試験は行わず最初に筆記試験を行い、筆記試験を終えたら面接になるらしい。ゲラッチは受付嬢に礼を述べると、改めて試験会場へ歩いて行った。



〜実技試験会場・第2闘技場〜

「広いな……」

試験会場を目にした際の感想は『広い』の一言に尽きた。
直径200mの特殊な魔石材にて形成されたリング、そしてそこを中心にすり鉢状に広がって行く観客席、昔父の書斎にて見た古代のコロッセオを彷彿とさせる豪勢な闘技場だった。
ゲラッチは周りをぐるりと見渡すと、先程まで一緒にいた狐っ娘姉妹の姉の方と目が合い、彼女はこちら目掛けて笑顔で手を振ってくる。正直可愛いと思うが、今は試験に集中すべくすぐに彼女から目を逸らし、反対側から入ってくる対戦相手に眼を向けた。
反対側の門から入って来た対戦相手に、ゲラッチは見覚えがあった。

「よう、また会ったなぁ」
「あ、お前は何時ぞやの男爵家(笑)!それと、腕大丈夫か?」
「魔男爵家【インドゥラ家】長男ゼペル・インドゥラだ!それに…腕は問題ない、どうやら幻覚だったみたいでな」

どうやら幻覚だったらしい。恐らく犯人はあの狐っ娘(妹)の方だろうが、少なくとも謝ってたのに許さなかった挙句煽りに煽って怒りを買ったアイツも悪いのだろうが、流石にあのオーバーキルは駄目だったか。
すると、魔男爵家(笑)もといゼペルは、一本の剣を鞘から抜き放つ。その剣は魔力を帯びており、刀身はあの時見せた黒い炎を纏っていた。

「【魔剣グラフィア】…我がインドゥラ家に代々、古の時代より受け継がれて来た魔王より授かった剣だ。」
「ほう」
「コイツは俺の魔力を数百倍にも増幅させる、ギブアップするなら今の内だが…どうする?」

つまり奴はこう言いたい訳だ、『降伏しろ』と。
あくまでも自身の方が優れていると思い込んでいるその精神力には関心を示すが、ゼペルのあまりにも間違いで場違いで自己陶酔も甚だしいその一言に、ゲラッチは告げる。

「お前、さては算数苦手だな?」
「何の事だ?」
「例え1を数百倍しようが100かそこらだろ」

刹那、ビキリとゼペルの額に青筋が浮かぶ音が聴こえる。もしかして図星だったのだろうか。
ゼペルは徐ろに右手を上げる。すると次の瞬間、入り口を中心に壁が黒い炎の壁へと変わって行く。物珍しげに辺りを見渡すゲラッチに、ゼペルは口角を上げ口を開いた。

「何だ?退路を塞がれたのがそんなに不安か?」
「……まさか真顔で冗談が言えるとはな」
「はっ!その澄まし顔…今に涙でグッチャグチャにしてやるよ」
「寝言は寝て言え、三下が」

そして試験開始の合図が鳴り響いた瞬間、ゼペルはゲラッチ目掛けて剣を振り被り、一足飛びで瞬く間に間合いを詰めた。



次回
【試験の始まり 後編】

Re: 天燐のセレマ ( No.11 )
日時: 2020/01/13 10:31
名前: 祝福の仮面屋

代弐.伍話

「旦那様、お客様です」
「分かった、すぐに行こう」

シェスタから来客の報せを受けたバールクスは、筋トレを終えた体を動かし玄関へ向かい扉を開ける。扉の向こうには、かつて殺し合った和服姿の旧知の仲が立っていた。

「烈火!久し振りだな!」
「ようゲラッチ、相変わらずだなお前も」
「烈火様、お茶を出しますのでお上がり下さい」
「やぁシェスタ、紅茶や珈琲は苦手でね、図々しいと思うが緑茶を頼むよ」

烈火はそう告げると、バールクスとシェスタにリビングへと案内され座るように促される。そして言われた通りに座ると、いつの間にか茶を淹れに行っていたシェスタが緑茶の入ったカップを差し出して来た。
烈火は一口啜り、目をゆっくりと閉じる。

「…美味いな」
「…ありがとうございます」
「それで聞いてくれよ烈火!今日な、ウチの息子がレガリアの入学試験に行ったんだ!凄くないか!?」
「バーロー、俺の娘達も行ってるよ。運が良けりゃ会えるかもな、舞姫小町なんて言われてるくらいには美人だぞ?」
「そりゃ楽しみだな」

そんな感じのやり取りを数分続けた後、烈火は唐突に立ち上がった。

「もう帰るのか?」
「あぁ、今回来た理由は憎っくき怨敵の面ァ拝む為だからな」
「そうかよ、お前の娘さんも入学出来るようにな」
「他人の心配するより手前の息子を心配しな」

烈火はそう告げると、まるで陽炎が揺めいて蜃気楼が掻き消えるように、リビングからフッと消えて行った。

「……問題ねぇよ、俺の息子は優秀だからな」

烈火に告げられた一言に、バールクスは1人不敵な笑みを浮かべた。





Re: 天燐のセレマ ( No.12 )
日時: 2020/01/13 18:09
名前: 祝福の仮面屋

代参話【後編】

「おおおおおお!」

試合開始の合図と共に、身の丈はあろう巨大な両手剣を担いだゼペルは一足飛びで間合いを詰め、ゲラッチの首を刎ねんと横薙ぎを放つ。
それをゲラッチはぼんやりした表情で見つめーーー

「……遅いな」

と呟き、軽く欠伸をした。
そして、彼の首筋にグラフィアの刀身が触れた瞬間ーーー

「(まずい!)」

身の危険を感じたのか、ゲラッチは後ろに仰け反った。

「器用に避けるじゃねぇか」
「(危ねぇ、少なくともあのまま首に当たってたら多分、あっちの剣の方が折れてたな…)」

そして手応えを感じたのか、ゼペルはグラフィアを天高く掲げーーー

「どうだ!これが魔剣!これがグラフィア!闇の炎で焼き、魔鉄を打って作られた古の時代の産物だ!」

と仰々しく叫ぶのだが、当のゲラッチはーーー

「(ゑゑゑ!?あれが魔剣かぁ……正直ウチの地下室にある父さんが趣味で集めてた骨董品コレクションの方がよっぽどあるな…魔力)」

程度の事しか思っていなかった。
無論、ゲラッチは身に感じたありのままの事を態度に出したのだが、その飄々とした態度が気に入らなかったのか、ゼペルは表情をより険しくしゲラッチを鋭く睨み付ける。

「上手く避けるのは結構だ。だが、その慢心で四肢が飛んでも知らねぇぞ!」

ゼペルは叫び、黒炎の爆発を利用して剣速に加速を付け元々軽々と扱っていた大剣を、より軽々と豪快に振り回す。対するゲラッチは回避と防御に専念しており反撃には移らないでいた。
そして今まで沈黙を保っていたゲラッチは、徐に口を開きーーー

「消えろ」

と呟く。
刹那、グラフィアの刀身を渦巻いていた炎が突如凍りついた。

「な……!何ィ!?」
「すげぇ…アイツグラフィアの炎を凍らせたぞ!」
「魔法陣展開の瞬間すら見えなかった…なんて使い手だ…」

観客席から歓声が沸くのに対し、目の前で目を白黒させ困惑に言葉を詰まらせるゼペル。実力差は、誰がどう見ても歴然だった。

「さっさと降参しろ」

ゲラッチはギブアップする様に勧めるが、ゼペルは己のプライドに賭けたのか再び剣を構え直す。

「ふ……ふざけんな!お、俺は【インドゥラ家】の御曹司だぞ!手前ェみてぇな雑魚に…負けられねえんだよぉぉぉ!」
「馬鹿が……」

大剣を振り被り、我武者羅に突撃を仕掛けて来るゼペル。それを見たゲラッチは深々と溜息をつきーーー

「【倒れろ】」

とだけ呟く。
すると次の瞬間、ゼペルはまるで糸が切れた人形のように、まともに受け身も取れず地面へ倒れ込んだ。

「俺の…勝ちだな」

とゲラッチが質問すると、試験終了の合図が鳴り響く。
白目を剥き、口から泡を吹きながら倒れているゼペルを他所に、無傷かつ手を出さずに勝利を収めたゲラッチは会場を後にした。





「あ"〜〜〜、疲れた〜〜〜」

意外と散々だった。
筆記試験では問題が特段難しかったと言う訳ではなく、めちゃくちゃ簡単だった挙句他の者達は結構手こずっていた為、ストレス溜まるわ時間余って暇になるわ本当に散々だった。
疲れを引きずり歩いていると、不意に「おつかれ」と声を掛けられた。声の方へと振り向くと、既に試験を終わらせていた狐っ娘姉妹と会った。姉の方もとい雪那は笑顔で話しかけて来る。

「試験…お疲れ様やったね」
「妾は知っておったぞ、お主なら勝てると」
「流石だな、魔皇族」
「見てたのか、もう帰ったのかと思ったよ」

そんな微笑ましいやりとりを続けていると、唐突に「そこの君」と声を掛けられる。目を向けると、振り袖に身を包み黒い外套を羽織った2人の男女が向こう側から歩いて来た。

「私はこの学院の生徒会長、東雲・梓だ。そしてこっちのノッポはザクロ、ジェニスタ・ゲラッチアス・コルベット君だね?我々レガリア生徒会は君を歓迎しよう」

現時刻を以って、魔皇族ジェニスタ・ゲラッチアス・コルベットのレガリア魔法学院への入学が許可された。





次回 代肆話
【友との再会 前編】

Re: 天燐のセレマ ( No.13 )
日時: 2020/01/14 20:34
名前: 祝福の仮面屋

代肆話
【友との再会】

よくある安っぽい学園モノでは、名の売れた者を倒せば廊下を歩くだけで噂が飛び交い、一躍人気者となる。大体のラノベではこんなのが主流だろうが、無論このレガリア魔法学院でも事は進みーーー

「アイツが例の…?」
「あぁ、何でも傍若無人なゼペルが手も足も出なかったらしい」
「マジかよ!アイツ一体何もんなんだ…!?」

的な感じで、学院内の廊下では此間魔男爵家の御曹司…ゼペル・インドゥラを下したゲラッチの噂で溢れていた。
無論、ゲラッチはチュートリアルの雑魚キャラを倒した感覚でいた為、対して高揚感などは感じていなかったが。とは言え、名家の御曹司をチュートリアル感覚で下すのもどうかと思うが。

「どいつもこいつも好きだねぇ、人の噂すんの」
「せやろねぇ、何せゲラッチはんが下したのって名家の子なんでしょ?」
「名もない一般家庭かと思ってたよ」
「歯に衣着せへん言い方やなぁ」

ため息混じりに吐かれたゲラッチの呟きに、振袖の少女・雪那は苦笑いを浮かべる。しかし、ゲラッチはある事が気になっていた。

「ところで雪那」
「うん?」
「お前は妹と従者連れてなかったか?…まさか逸れたんじゃ!?」

ゲラッチは心配しながら狼狽え始めるが、雪那は意に介した様子も見せず微笑みーーー

「何なら呼ぼか?夜くん」

と従者の名を呼び、手を二回叩く。
するとーーー

「お呼びですかな?お嬢」
「アイェェェ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」
「夜くんは御庭番衆の頭目やからね、御庭番衆ならこの位は余裕のよっちゃんやで?」
「マジかよ…」
「妹様なら問題ない、つい先程教室へ送り届けた所存」

この男、世の中全ての男の夢を体現した出来る奴だ。
ゲラッチは神妙なものを見る目で忍者こと夜斗を見ていると、不意に夜斗の姿が視界から消え去った。

「おお!?テレポートか!?」
「せやけど…大まかには違うものやね。それにしても、何で夜くんいきなり消えたんやろか…」
「分からないのか?」
「偶にフッと消える時はあるよ?」

前言撤回、これは有能だけど扱いにくい奴だ。
とまぁ、そんな感じの他愛もない話とやり取りをして行く内に、2人は教室の扉の前へとやって来ていた。
そして、扉を開けると中にはとんでもない光景が広がっていた。

「おら!もっと股開けよ!」
「んー!」
「っははは!見ろよ!こいつマジで泣いてらぁ!ひゃははは!」

あまりにも突然の状況に、ゲラッチは慌てて目を逸らす。
中では竜人族の少女が数人の男に囲まれており、下半身を露出した姿を映写魔法で撮られていた。無論、本来なら誰かが止めに入るはずなのだが男達に恐怖を抱いているのか、誰1人として止めようとする者はいなかった。
少女の瞳は涙で濡れており、ゲラッチは見かねて助に入ろうとした刹那、隣から「待て!」と怒号が教室中に鳴り響いた。

「せ、雪那?」
「貴様ら…寄ってたかって男数人で女子1人を裸に剥こうだと…!?我が居るのを知っての蛮行か?」
「せ、雪那さん!?」
「ゲラッチ、貴様は下がっていろ。あの馬鹿どもは我1人で十分だ」

なんか、雪那のキャラがすっごい変わっている気も無きにしも非ずだが、下手に口出しすると怖いのでスッと言われた通り後ろに下がる。立ち上がった男達は雪那を囲み、その中で雪那は噴火寸前の火山の如き怒りを宿していた。

「おいアマ、テメェ俺らの楽しみの邪魔した落とし前は…付けてくれんだよな」
「あまり吠えるものじゃない、弱く見えるぞ?」

ブチッと男の額に青筋が浮かんだのは言うまでもないだろう。

「うっせぇんだよコラぁぁぁぁぁ!」

激昂した男は、勿論拳を振り被り雪那を殴り付けようとするが直前で避けられ、カウンターの裏拳を喰らい昏倒する。それを見た他の男達が狼狽える中、悠然と着地した雪那は手を振って挑発する。

「何だ?我程度の女子1人抑えられんとは…よもや貴様ら、群れねば強くなれぬ獅子公と同じだな?虎の威を借る狐とはよく言うものよ」
「くっ…!や、やっちまぇぇぇぇぇ!」

坊主の男の掛け声により、再び雪那を落とさんと多数の男が殴りに掛かるが、雪那はその悉くを回避し的確なカウンターを撃ち込んでいく。1人、また1人と男が吹き飛んで行き、残るは坊主の男だけだった。

「覚悟は出来たかぁ?」
「く、くそぉぉぉぉぉ!」

男は苦し紛れに炎を放つ、それを雪那は難なく消し去りーーー

「この軟弱者がぁ!」
「ぶほっ!?」

殴る。

「軟弱者は消え失せろ!」
「ぎゃばっ!」

再び殴る。

「死ぬかぁ!」

三度殴る。

「消えるかぁ!」

雪那は横たわった坊主の体を容赦無く蹴り上げーーー

「土下座してでも生き延びるのかぁぁぁ!」

胸ぐらをガッチリと掴み、豪快に背負い投げをブチかました。
雪那は、地面に投げ落とされた男を見下しーーー

「……今日の我は紳士的だ、運が良かったな」

と、呟く。
すると、地面に叩き付けられた男が気を失うと同時に、教室から拍手喝采の嵐が巻き起こる。
一件落着……なのだが

「俺…めちゃくちゃ空気だった…」

何か釈然としなかった。





次回
【代肆話 後編】

Re: 天燐のセレマ ( No.14 )
日時: 2020/01/18 21:10
名前: 祝福の仮面屋

代肆話
【後編】

「あ、ありがとう…ござい…ます…!」

教室入って初日から早々に起こった虐め、虐められていた竜人族の少女の目尻は薄っすらと紅く染まっており、おそらく上流階級の者だろう。少なくとも上流階級に手を出す命知らずはいた訳だ。
少女は泣きながら、キャラ崩壊寸前まで憤っていた雪那に礼を述べるがー

「そんな気にせんでええよぉ。私はしたい事しただけやから」
「でも、お礼だけでも…」
「だって、助けて欲しいって目ぇされたら助けるのは当たり前…「姉上!遅いのじゃあ!」」

雪那がなんかかっこいい事を言おうとした刹那、妹の瑠々が2人の間の空間から飛び出す。瑠々は自慢の狐の尻尾をブンブン振っており、多少なりともご立腹のようだった。

「何じゃ何じゃ!妾は前回全く出て来なかったのじゃぞ!そのくせ姉上は暴れおって…姉上は加減下手なんじゃから、少しは我慢する事を覚えんか!」
「まぁまぁ妹様、姉君は虐めを鎮めただけですよ」
「知らぬわ!姉上が一度暴れれば近くが焦土と化すんじゃぞ!」

マジかよ、何かさらっと凄い事実を教えられたんだけど。
しかし、先程まで激怒していた雪那が妹によって小さく縮こまり、しかも説教を長々と聞いてる光景を見るのはかなり新鮮である。て言うか、雪那の本気って一体どん感じなんだろうか。
そして瑠々が「それにじゃな…!」といい掛けた瞬間、教室の奥の方から手を叩く音が聞こえて来た。

「へぇ、また弱い者いじめか?」
「あら、ノワールはん。さっきのは虐めやなくて正当防衛ちゃう?」

するとノワールは「どうだか」、と首を振る。

「それに…私が行かなくても、貴方が行けば済む事だったんちゃうの?」
「冗談はよしてくれ、俺はお前らみたいにお人好しじゃねぇんだよ」
「貴様…今のその言葉、宣戦布告と見るぞ?」

ノワールの発言に不信感を抱いたのか、腰に提げた刀に手を添えながら夜斗が歩み出て牽制する。ノワールは笑いながら立ち上がり

「何だ?魔術が全てのこの世界で、体術だけで勝てると思うか?」
「無論、所詮俺はBランク程度の実力しかない。だが、体術ではこの学院でトップを取れる自信がある」
「なら…試してみるか?」

刹那、ノワールの足元から突き出した黒い荊の悉くを夜斗は切り払っていく。そして一瞬にして夜斗の姿が掻き消え、ノワールの首筋を彼の刃が斬りかかるが、闇の防壁を展開してそれを防ぐ。
数手打ち合った後、ノワールは徐ろに両手を挙げーーー

「あーやめだやめ!疲れた!」

と言い放つ。

「逃げる気か?」
「いや?俺はジェニスタとの決着にしか興味はねぇんだ、お前みたいな弱くねえ奴をいたぶってもつまらねぇんだよ。じゃあな」

そうノワールは言い渡し、試験の時と同様に『トプン』と消える。

「……いつか殺す」

と夜斗は呟き、彼も一瞬にして消える。
正直どうやってるのか気になるが、おそらく固有術式によるものだろう。この世界では二つの魔法術式が存在しており、一つは魔導士になる為の前提であり基礎的な魔法である汎用術式。そして二つ目は、汎用術式を鍛え上げた一部の者のみに開花する固有術式であり、その効果は例に漏れず強力なものが多い。2人が使っていたのは後者だろう。

「今年は豊作ってのはそういう意味だったか」

今日は新しい発見の多い日だな、とゲラッチは感じた。





よくある学園モノでは、初日だか二日目には親しき友人と再会するものなのだろうか。ゲラッチは廊下を歩いていると、見覚えのある顔に声をかけられた。

「ようゲラッチ!久しぶりだなぁ!」
「久しぶり、ゲラッチさん。元気だった?」
「マロン!それにキーまで!お前らも入学してたのか!?」

今ゲラッチと話している2人は、バールクスと共に様々なイベントへ出向く際に出来た友人達だ。どうやら父は息子がいる前提で話していたらしく、最終的に息子を得たのだから、その用意周到ぶりには感心する。
だがマロン達にとってはそんな事関係なく、ただ単純に古き友との再会を喜んでいた。

「お前の親父さんの言った通りだったな!」
「あの親父…そんな事言ってたのか…」
「ゲラッチさんも…良かったね!入学出来て!」
「あぁ、そうだな…てかお前r」

ゲラッチが何かを言いかけた刹那、放課後を知らせる鐘が鳴る。その音を聴いたゲラッチは顔を蒼白させ…

「やべぇ、次入寮式だぁぁぁぁぁ!」

走り出す。それを聴いたマロン達も

「やべぇじゃん!行くぞキー!」
「う、うん!」

走り出す。
その後彼らは入寮式に大遅刻し、ついこないだまで入学を祝ってくれた生徒会長の冷たい瞳に睨まれたのは言うまでも無いだろう。



次回 代伍話
【ユグドラシア教の刺客】

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