ダーク・ファンタジー小説
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- 紅薔薇ソナタ
- 日時: 2012/08/11 21:54
- 名前: 蝶歌 (ID: 4Pm8XsSm)
◆ご挨拶◆
初めましての方が多いでしょう、蝶歌です。
前は違う名前で書いていました。
今回の小説は『狂愛』をテーマに書いていきたいと思います。
では、始めましょう。
◆注意事項◆
Ⅰ:狂愛物が苦手な方はUターン願います。
Ⅱ:グロ描写が多少入ると思います。
Ⅲ:亀更新&駄文。
◆登場人物◆
・黒川 凪斗(Kurokawa Nagito)
静空の弾くピアノの音色が好き。静空を大事にしていた。
・雨宮 静空(Amamiya Shizuku)
凪斗の恋人。ある日突然失踪する。
・九条 霧華(Kujo Kirika)
凪斗の前に現れる不思議な人物。
◆目次◆
♯Prologue…>>1
♯1…>>2
- Re: 紅薔薇ソナタ ( No.1 )
- 日時: 2012/08/11 21:59
- 名前: 蝶歌 (ID: 4Pm8XsSm)
Prologue
古時計の針が午前零時を指し、部屋全体に低い鐘の音が鳴り響く。
黒川凪斗は閉じていた目をゆっくりと開いた。
「静空……」
その名を呼んでも返ってくる事はない。
分かっていても、毎晩呼んでしまうのだ。
それは、彼の愛する人だから。
愛しているからこそ、彼女が恋しい。
もう一度だけでいいから、会いたい。
凪斗は、溢れる感情を抑えながら、グランドピアノの前に腰をかける。
そっと鍵盤に手を置いて、静空の好きだったピアノソナタ『月光』を弾き始めた。
先程まで小ぶりだった雨が、次第に本降りになっていく。
まるで、凪斗の心の中を表しているかのよう。
『月光』という曲名から随分かけ離れた天気だ。
曲を弾き終わっても、雨は一向に止む気配がしない。
凪斗は鍵盤の上から手を離す様子もなく、虚ろな目で天井を見つめた。
「どうして、静空が……」
吐き出すようにそう言って、彼はまた目を閉じた。
- Re: 紅薔薇ソナタ ( No.2 )
- 日時: 2012/08/11 21:53
- 名前: 蝶歌 (ID: 4Pm8XsSm)
♯1
「あ、凪斗君! 演奏会に来てくれたのね」
静空は優しげな微笑を浮かべ、凪斗の方に駆け寄る。
小動物みたいに走る彼女を見て、こちらも自然と微笑が浮かんだ。
雨宮静空、16歳。
この年にして天才ピアニストと呼ばれるだけあって、実力は相当なものだ。
音楽界で彼女を知らない者はいないであろう。
ウェーブがかった漆黒の髪に、人形のような瑠璃色の目。
妖艶だが、まだあどけなさが残る……凪斗はそんな彼女が好きだった。
「有難う……私、一生懸命ピアノ弾くね」
やや上目遣いで凪斗を見つめるその瞳は、小さな子猫のようだ。
凪斗は少し目をそらして、照れくさそうに言う。
「うん、頑張れよ。応援してるから」
その言葉に静空は嬉しそうにうん、と頷く。
そして、腕時計を見て早口で凪斗に告げた。
「そろそろ私の番だ、じゃあまた後でね」
凪斗は静空の後ろ姿を見つめ、心の中で“頑張れ”と呟いた。
いよいよ演奏が始まる。
選曲は、ヴェートーヴェンのピアノソナタ『月光』第一楽章。
数々のピアノ曲の中で、静空が一番好きな曲だ。
「凪斗君、見ててね……」
静空は深呼吸をしてステージに上がった。
静寂に包まれたホールの中、ゆったりとしたピアノの音色が鳴り響く。
「さすが、静空だな」
凪斗は優美な演奏に息を飲んだ。
5歳からピアノを始めた凪斗でも、静空には敵わない。
天才ピアニストと言われるだけの価値はある。
滑らかな旋律を奏でるだけではなく、曲にのめり込んでいる。
凪斗にはとてもできない表現力だ。
幻想的なピアノソナタが終わり、ホールに大勢の拍手がこだました。
「素晴らしかったよ、静空」
凪斗がそう呟いた後、ステージから静空がこちらを見上げて微笑んだ気がした。
- Re: 紅薔薇ソナタ ( No.3 )
- 日時: 2013/01/27 18:39
- 名前: 蝶歌 (ID: gIDLNLr/)
♯2
静空の演奏も無事終了し、凪斗はロビーで彼女を待っていた。
それからしばらくしない内に裏口から静空が出てきた。
真紅のドレスを着た彼女は、舞台に咲く薔薇のように美しい。
凪斗が魅入っていると、後ろから静空の声がした。
「ねぇ、今日の演奏どうだった?」
キラキラと目を輝かせる静空を見て、凪斗は穏やかに微笑む。
「最高だよ」
保留
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