ダーク・ファンタジー小説
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- ライトホラー・ショートショート(最終更新8月12日)
- 日時: 2015/08/12 16:54
- 名前: あるま (ID: Ba9T.ag9)
参照してくれて、ありがとうございます。
続き物じゃないので、お好きなところから読んでいただけます。
最近に更新したものはこちらです。
「隣町のカラオケ」>>167(2015年8月12日アップ)
「壁のこちら側」>>16
「ねたみ」>>21
「カギ」>>28
「X時Y分の電車」>>32
「ついてきてるぞ」>>33
「ヤンデレな彼女」>>37
「X号室の秘密」>>39
「スカイツリー」>>48
「帰省」>>49
「つめた過ぎた手」>>59
「生還」>>62
「花子さんの指」>>65
「消失」>>69
「サンタが家にやってきた?」>>72
「今年も会いに行くよ」>>79
「ALIVE」 >>84 >>87
「誰も住めなくなった階」>>90
「まっちゃのちゃろすけ」>>93
「河童の看板」>>99 解説>>101
「延命」>>104
「幸せの館」>>107
「泣き声が聞こえる」>>110
「ボクは二人目のターゲット?」>>113 あとがき>>115
「家飲みにて」>>116 あとがき>>118
「見えたまま」>>120
「クラスメイト」 >>123 >>124 >>125
「智也お兄ちゃん」 >>130 >>131 >>132
「年齢と顔だち」>>133
「奈落」>>134
「もう一人の自分」>>135
「鯉のぼり」 >>140 >>141
「帰り道〜あさみときむら〜」>>142
「モラトリアム」>>145 >>146 >>147 >>148 >>149
「夢に出てくる男」>>150
「胸に置かれた手」>>153
「これあげる」>>154
「胃の中に」>>155
「小エビ入り」>>163
「ノック」>>164
「出席」>>165
「部室のカーテン」>>166
「隣町のカラオケ>>167」
「操り人形」>>156 >>157
「日常はかけがえのないもの」>>158 >>159
あとがき・おまけ怪談>>162
一言でもなんでもいいので感想くれると嬉しいです!
- Re: ライトホラー・ショートショート(7月27日更新) ( No.163 )
- 日時: 2013/07/27 18:13
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
番外編1「小エビ入り」
高校生のケイコと由美は、その日も仲良く教室でランチを取っていた。
ケイコは最近料理にハマっていて、自分で作ってくる弁当のグレードが日に日に上がっていた。
「ねえ由美ちゃん、これ見て。小エビ入りのたまご焼き」
ケイコは得意気に、たまご焼きを箸でつまんで見せる。
形の良いたまご焼きに小エビのピンク色が混じって、見た目にも美味しそうだ。
「こってるなぁ。わたしなんかコンビニのおにぎりばっかりで、もう飽きちゃったよ」
「だったら、明日から由美ちゃんの分も作ってきてあげるよ、お弁当」
「うん。それはありがたいんだけどね……」
由美は言葉をにごして、コンビニのおにぎりを一口かじる。
ケイコがこう言ってくれても、やはり友達に弁当作りを頼むのは悪い気がした。
「あれ? わたしのおにぎり、小ユビ入りだ」
「うそー?」
「ほんとだって。ほら」
由美はおにぎりの中身をケイコに出して見せた。
「えー? 普通の『たらこおにぎり』でしょ?」
確かに、由美の手の平に乗っていたのは、真っ白なたらこだった。
火であぶったような、コリコリした真っ白なたらこ。
「これのどこが小エビ入り?」
ケイコは首をかしげる。
「違う違う。小ユビだよ。こ、ゆ、び」
ボト——。真っ白なそれが机の上に落ちた。
爪の付いた、男性と思われる小指。切り口からは骨がのぞいていた。
「製造元に聞いてみようか」
由美はおにぎりに貼られたラベルを頼りに、お客様サポートへ電話をかける。
「確認いたしますので、少々お待ちください」
電話の声が言った。『エリーゼのために』がエンドレスで流れ、通話口に当てた耳が熱くなった頃、係のひとが電話に出た。
「確認が取れました」
向こうの説明によれば、例の小指は、おにぎり工場の従業員のものらしい。
その従業員は誤って機械に指を挟み、小指を切断されてしまったのだそうだ。
切断された小指はおにぎりに混入し、具のたらこと一緒にビニールでパッケージされ、由美がいつも通っているコンビニに出荷されていた。
「それでは、これからも弊社の商品をお引き立てくださいますよう、よろしくお願い申し上げます」
電話の声が言った。また『エリーゼのために』がエンドレスで流れ、二分くらいすると電話もプツリと切れた。
翌日から由美はケイコの作った弁当を食べるようになったという。
- Re: ライトホラー・ショートショート(140718) ( No.164 )
- 日時: 2014/07/18 17:27
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
「ノック」
——ジュースを買ってきた子視点——
わたしの友達が、原付で転んで骨を折った。
その入院した友だちのもとへ、仲間数人で見舞いに行った時のことだ。
「わたし、飲物でも買ってくるよ。自販機あったっけ?」
「ああ、それなら、下へおりてね、それから……」
教えてもらったとおりの場所で、わたしは人数分の飲物を買った。
ところが、紙コップに注がれたジュースは、とても一人では持ち切れない。
誰か一緒に来てもらえばよかった。
そこに運よく通りがかった看護士さんが「これ使ってください」と、トレーを貸してくれた。
トレーの上に飲物を乗せ、階段をのぼり、もと居た病室を目指す。
思ったより重い。
両手でしっかり持たないと、落としてしまいそうだ。
「えーっと、203号室だから……あった。ここだ」
わたしが見つけると同時に——。
スーッと、勝手にドアが開いた。
……というわけではもちろんなくて、タイミングよく友達がドアを開けてくれたのだった。
「ただいま」
「ごめんね。ひとりで持つの大変だったよね?」
ドアを開けてくれた友達が心配してくれる。
「いいの、大丈夫。トレー貸してもらったから」
「あ、そうなんだ」
友達は言うと、ドアレバーをにぎったまま病室から顔だけ出して、左右を見渡した。
なんだか不思議そうな顔をして、
「廊下、誰もいないじゃん」
わたしに聞く。
「そうだけど? なんで?」
わたしは階段をのぼってから、この病室へ来るまで、誰にも会っていない。
「いや……なんでもないんだけど……」
友達は、トレーを持つわたしの手つきが不慣れで危なっかしいのを見て、何かに気づいてしまったような顔をした。
しかし何も言わずに黙っていた。
——ドアを開けた子視点——
「わたし、飲物でも買ってくるよ。自販機あったっけ?」
「ああ、それなら、下へおりてね、それから……」
友達は、怪我をした方の友達に自販機の場所を教わると、部屋を出ていった。
「……で、脚の具合はどうなのよ」
わたしが聞くと、怪我をした友達は「全治一か月だって」と答えた。
それから、事故の時の状況や、病院の生活が退屈なことや、学校は今頃どうなっているかとか、そんな話をした。
すると——。
コンコン。
ドアを叩く音が聞こえた。
「あ、帰ってきたみたいね」
わたしは速足でドアの方へ向かい、レバーを引いた。
「ただいま」
友達のニッコリした顔がそこにあった。
「ごめんね。ひとりで持つの大変だったよね?」
「いいの、大丈夫。トレー貸してもらったから」
「あ、そうなんだ」
わたしは友達を中に入れると、顔だけを廊下の方へ出して左右を見渡す。
真っ白で無機質な廊下に、ひとの影はなかった。
「廊下、誰もいないじゃん」
わたしが聞くと、
「そうだけど? なんで?」
ジュースを運んできた友達が、不思議そうな顔をした。
「いや……なんでもないんだけど……」
飲物を片手に、みんなはお喋りを始める。
楽しい雰囲気を壊したくないから、わたしはこれ以上は何も言わなかった。
でも本当は一つ、聞きたいことがあった。
友達はトレーを両手でしっかり持ってここまで来たのに。
「いったい、どうやってノックしたの?」って。
- Re: ライトホラー・ショートショート(7月25日更新) ( No.165 )
- 日時: 2014/07/25 19:39
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
「出席」
高校一年の最後の日——。
四月にはクラス替えがあって離れてしまう子も居る。
だから最後に、クラスのみんなでパーティーをすることにした。
教室の机をくっつけて、お菓子やジュースを並べるだけのもの。
あーだこーだ、笑い声をまじえながらさんざん喋りまくった後で。
高橋さん、という女子がこんな話をした。
入学して間もない頃の、朝だった。
まだ先生も教室に来る前で、クラスのみんなは思い思いに雑談していた。
高橋さんの席は窓辺の後ろで、特に話し相手も居ないから、ぼけーっと教室全体を見渡していた。
そのうちに始業のベルが鳴った。生徒たちもぞろぞろと自分の席に戻っていく。
先生が教室に入ってきた。
出席を取り始めた。
「相原」
「はい」
「石橋」
「はい」
「内山……」
五十音順に生徒の名前が呼ばれ、その度に「はい」と返事が聞こえる。
四月の初めのことで、高橋さんもまだクラス全員の顔と名前を覚えていなかった。
「……渡辺」
「はい」
全員の出席が取り終わった。
その直後、誰かは分からないが女子の声が聞こえてきた。
「せんせー、中山さん来てません」
「来てない? そんなバカな」
おかしい、と思って先生は教室内を見渡した。
確かに、廊下側の席がぽっかり一つ、空いていた。
「んー、誰か代わりに返事したな? 誰だ、中山さんに頼まれたのは」
先生がギロッとした目つきで、生徒たちの顔をにらみつける。
もちろん、自分から名乗り出るひとなど居なかった。
「……まあいい。もうしないように」
先生は溜息をついて、出席簿を閉じた。
そして授業が始まった。何事もなかったかのように。
だが高橋さんは、窓辺の席から見ていた。
さっき先生が出席を取っていた時には、席は全部うまっていたのである。
「ちょっと、それおかしいよ」
「高橋さん、記憶違いじゃないの?」
話を終えた直後、そばに居た子たちは「信じられない」という顔をした。
「だって、中山さんなんて子、うちのクラスに居ないじゃないの。初めから」
次の日には空いている席もなくなっていた。
それから高橋さんはクラス全員の顔と名前を覚えていったが、「中山さん」という子はこのクラスに居なかった。
やがて、そんなことがあったことさえ忘れ、一年が経過した。
今から考えると、あれは一体なんだったんだろう。
- ライトホラー・ショートショート(8月2日更新) ( No.166 )
- 日時: 2014/08/02 19:24
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
「部室のカーテン」
木村リエという。高校生である。
リエは内気な性格でクラスに友達は居なかったが、他のクラスに一人、リエが友達と呼べる子が居た。
その子は浅見さんといって、入学式の日に下駄箱のところで声をかけてもらったのが出会いだった。
たまに一緒に帰ってくれることもあったが浅見さんは部活に出る日が多かった。
だったら、リエも浅見さんと同じ部活に入ればいいと思った。
「私がやってる部活ってね、『心霊研究会』っていうんだ。えへへ、ちょっとオタクっぽいでしょ」
浅見さんは恥ずかしそうに舌を出したあと、「でもね」と続けて、
「大抵の物事は、なんでそうなってるとか、その正体は一体なんなのかとか、説明が付くじゃない。でも私、心霊現象は説明が付かないからこそ面白いと思うんだ。不思議なもの、現実以外の世界のもの……。そういうのがあるって、素朴に信じたい気持ちがあるんだよ。もしこの世界に存在するもののすべてを人間の知恵で説明することができて、私たち子供はその説明を聞いてすべて納得して片付けられるんであれば、私たちが住んでるこの世界ってすごくつまらない世界だと思うから」
いつになく、熱く語っているようだった。
部室があるのは別の建物だ。校舎から渡り廊下をつたって歩いたところに、部室を集めた部室棟がある。
「ここが部室だよ」
心霊研究会の部室は六畳ほどの狭い部屋を二つ連ねたような作りになっていた。
「まだ誰も居ないね。私、部長呼んでくるから、木村さんここで待ってて」
浅見さんが部室を出て行くと中は静まりかえった。
閉め切った部室内は空気が埃っぽく、耳鳴りがするほど静かだった。
リエは五分ほど待ったが、浅見さんはまだ来ない。
ふと風が吹いてリエの頬を撫でた。
見てみると、部屋の奥の窓が開いて黄色いカーテンがひらひら揺れている。
ここは四階だ。眺めはどうだろうと思い、リエは窓辺に近づいた。
窓からは、校舎へとつながる渡り廊下が見えた。屋根がなく、上を見れば空という、屋上のような作りだ。
外側を胸の高さくらいの柵で囲ってある。
その柵のところに一人の女が立っていた。
渡り廊下も部室も四階なので、ちょうど同じくらいの高さだ。
視力1.0の木村さんには、女の顔までは見えない。
この学校の制服を着ているみたいだが、微妙にデザインが違って見え、スカートは長めだった。
その女がジーッとこちらを見ている。
空は晴れているのに女の全身だけは暗く見え、なんだか背景との色が一致していなかった。
そして等身大のパネルでも置いてあるかのように、ピクリとも動かない。
ガチャリと音がし、部室のドアが開いた。
「木村さん、部長を連れて来たよ」
浅見さんの隣に、酷い癖っ毛で陰気な感じの女生徒が立っている。
「こんばんは。部長の島津です」
部長さんはなぜか夜でもないのに「こんばんは」と言った。
リエはあたふたと頭を下げ、とちりながらもあいさつをした。
「だいじょーぶ。部長も木村さんに負けないくらい人見知りだから!」
この中では浅見さんがいちばん明るい性格みたいだった。
三人は長机を囲んで座り、部活動の内容について話した。
リエは島津部長の雰囲気に安心を覚え、入部を決意した。
「入部してくれるんだ。ありがとう。じゃあこの入部届にね、名前をまず書いて、それから……」
部長が一枚の用紙を出し、説明を始めた。
が、その用紙が風でめくれるのに気付くと、
「カーテン、開いてるよ」
小声で言った。
さっきから部屋の奥の窓が開いて、カーテンが揺れていた。
「あ、気が付きませんでした」
浅見さんは立ち上がると、窓辺まで歩いていく。
「ダメよ木村さん。あそこのカーテンをめくっちゃ」
蒼白な顔をして、部長が無表情のまま、ぼそぼそ喋った。
「早速だけど、怖い話を一つするわ。そこの窓から、向こうの渡り廊下が見えるでしょ。私の前の部長がね、渡り廊下の鉄柵のところから女がずっとこっちを見てるから。生きてる感じのしない女がずっとこっちを見てるから、カーテンは閉めとけって言ってたのよ」
部長は口元に笑みを浮かべ、そんなことを話した。
リエは思った。さっきの女がそうだったのかと。
みんなもあれを見たくないから、カーテンは閉めたままにしてあるんだ。
今度は窓辺のカーテンに手をかけた浅見さんが喋りだした。
「うふふ。前の部長は、そのまた前の部長から聞いたらしいよ。つまり、この部に代々語り継がれてる伝説みたいなものかな?」
ニコニコしながら、浅見さんはカーテンを閉めようとする。
ベランダに女が居る。さっき渡り廊下に立っていた女だった。
その女が、今度はこちら側の校舎のベランダに立っていた。
浅見さんは笑顔のまま、
「正直なところ、私も島津部長も、前の部長も、そのまた前の部長も、渡り廊下に立つ女なんて見たことないんだよ」
言ってから、カシャっとカーテンを閉める。
姿が隠される瞬間まで、女はリエのことをまっすぐにらんでいた。
「でも心霊研究会だからさ、部室にまつわる怪談の一つも欲しいじゃん。ほんと、誰が最初に言い出したんだろうね」
浅見さんは「でも本当だったら面白いじゃん」と笑った。
彼女は、幽霊は居ると信じたいひとなのだ。
ちなみにリエが部室に入ってきた時は風など吹いていなかった。
- Re: ライトホラー・ショートショート(最終更新8月12日) ( No.167 )
- 日時: 2015/08/12 16:52
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
「隣町のカラオケ」
隣町に、安くて穴場っぽいカラオケボックスがある。
まねきとか、そういう有名なチェーン店ではない。「なんとか若丸」とかいう、変な名前の店だ。
もう何年も前から「持ち込み自由」で、最初の一時間が10円。
今でこそ、このシステムの店は増えてきているが、「なんとか若丸」は昔からこの安さだった。
しかし店の中は古い汚い。
部屋のドアはガタガタで綺麗に閉まらないし、壁紙ははがれかけたままになっている。
トイレは全体がタイル貼りで、不快な臭いがしみついている。ゴキブリ用のトラップが、目に入る位置に堂々と置いてあった。
でも料金の安さに加え、「持ち込み自由」は大きかった。
私は数年前の夏、友達と夜中にここへ行った。もちろん、食べ物や飲み物はコンビニで買って持ち込んだ。
都会でもないので部屋数は多いのだが、ほとんどが空き室になっていた。
私たち以外の客といえば、たまに集まった仲の良い友達どうしか、あるいは、仕事もない暇な若者ぐらいだったろう。
私と友達は夜が明けるまで歌って、一人1500円もかからなかった。
こんなんで、やっていけてるのか。店の経営状態が気になるほどだった。
それは何年も前のことであったが、つい最近、この時に一緒だった友達に会った。
お盆休みなんかに、またカラオケでも行こうかと。
その時は、またあの店でいいんじゃないかと。そんな話しをした。
しかし友達は、できれば他の店にしたいと言う。
以前は確かにあの店が飛び抜けて安かったが、今は他にも、同じくらい安い店がある。
地元のまねきでさえ、数ヶ月前にリニューアルしてからは持ち込み自由になっていた。
友達が言うなら、私はそれでいい。
でも、なぜあの店をそんなに嫌がるのか。
私は他にも理由がある気がして、友達に聞いてみた。
すると友達は、こんな話をしてきた。
数年前の夏に私と一緒にあの店へ行った時のことである。
深夜のフリータイムは22時から始まっていて、私たちはそれを見計らい、時間ちょうどくらいに入室した。
店がボロボロなのに最初は驚いたが、だんだんと慣れてきて、歌ったり飲んだりしているうちに夜中になっていった。
ところが突然、友達は変なことに気付いた。
物が焦げるような臭いがするのだ。
タバコでもないし、何かが燃える臭いであるにしても、あまり嗅いだことのない臭いだ。
言葉で表すなら、それは「火事の臭い」だったという。
そして今度は、ゾクゾクっと嫌な感じがしてきた。
ここには居たくない! そう思えるほどの、不快な感じだった。
一緒に居る私といえば、なんにも気づいていないようだ。
本当に火事が起こったとか、そういうわけではないらしい。
友達はトイレへ行くことにした。
廊下に出てから、またあることに気付いた。
さっきの「嫌な感じ」が、どこから来ているのか、分かったのだ。
それは非常口の方からしていた。
非常口のドアの前には、なぜか大きな観葉植物がドンと置かれていて、通れないようになっていたという。
本当のことは分からないが、できればあの店は行きたくない。
友達がそんなことを言っていた。
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