ダーク・ファンタジー小説
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- ユメビト—一話更新中—
- 日時: 2012/08/20 10:38
- 名前: 幸村 深幸 (ID: tVNOFy45)
ユメビト
幸村 深幸
—目次—
- Re: ユメビト ( No.1 )
- 日時: 2012/08/20 10:31
- 名前: 幸村 深幸 (ID: tVNOFy45)
第一話 少女、ユメビト
お前は世界の人々を絶望に追いやり、また、世界の人々に希望を与える存在。さぁ、行け。旅に出ろ。三人の勇者を探せ。それがお前が此処に存在する意味となる。もう時間は無い。早く、早く——……。
「悠……」
***
現在、世界は荒れている。数年前はどんなに平和だったか。
数年前、世界を治めている王が死んだ。後継者は決まっていた。王の息子の長男、アシエルが次期王だった。しかし、次男のクニエルはそれに不満を持っていた。「何故、俺ではないんだ」と。クニエルは裏の仲間を率いりクーデターを起こした。
アシエルはクニエルに圧され、まともに政治が出来ない状態だ。結果がこの世界。それでも必死に保つ、王家。クニエルは最後の手段に出ようとしている。“始まり”を使うのだ。
“始まり”とは。普通の人々の目には見えない恐怖。見えないが為、倒しようもない生物。
しかし、クニエルには見えたのだ。その恐ろしい怪物が。そいつを利用すれば世界は一瞬にして破滅する。
それを止める為に立ち上がったのが“ユメビト”だった。
***
世界を旅する者なんて誰ひとりいない。旅に出ることは死にに行くのと同じことだった。しかし、そんな世界で旅する少女が一人。彼女の名は“ユメビト”。だが、これは本当の名ではない。本当の名は“ユメビト”と言う名を授かった時に捨てた。
ユメビトはある村に着いた。いや、正しく言えば“村であっただろう”場所に。家の形はほとんど無くなっていた。人の気配は無い。人の残骸はあった。
「臭ぇ。この死体、全部腐っていやがる」
ユメビトは口と鼻を手で覆い、眉間にシワを寄せた。
この暑さの中、死体が腐るのは当たり前だ。腐って、異臭を放っていた。骨になっている者もあったが、まだ肉がついている者もあった。異臭を放っているのはそれだ。ハエが集まったり、緑色の芋虫が湧いていた。
- Re: ユメビト ( No.2 )
- 日時: 2012/08/20 12:20
- 名前: 幸村 深幸 (ID: qiixeAEj)
ユメビトは足早に其処を去った。勇者は此処にはいないと確信したからだ。
ユメビトは金色の瞳を持っていた。それはユメビトの名と共に授かったものだ。普段は茶色の瞳だが能力を発揮する時に使う。人の気配を半径二キロ程の場所まで察知出来る。相手の目を見れば名前だって分かる。これが能力だ。これを使って、勇者の気配を探していた。
村を出てから何時間経ったか分からないが陽が沈みかけていた。
ユメビトは崖の上で立ち止まる。右耳の金色のピアスを取り外した。小さなピアスは本の様に開くようになっている。ユメビトは丁寧にピアスを開く。すると光が漏れだし、映像で女性が映し出された。通信機になっているのだ。
「ユメビト、今日は収穫があったかの?」
女性はまだ見た目は若いが喋り方はどうも年寄りくさい。実際は相当な歳だが人間ではない為見た目は若いのだ。
ユメビトは溜め息をついた。
「無いよ。全然無い。取り合えずリリアノに報告だけと思って」
女性はリリアノと呼ばれた。
リリアノは小さく笑った。
「まぁ、そう慌てるでない。落ち着いて気配を感じるんじゃ。しかし、急がねばならん。こうしているうちに悠は……」
リリアノが喋り終わる前にユメビトはピアスを閉じた。リリアノの姿は消え、声が途切れた。ユメビト以外に誰もいない崖には静寂が訪れた。虫の鳴き声さえしない。陽は沈み闇が辺りを包んだ。暗い空には輝く星がいっぱいに広がっている。そんな空を見上げてユメビトは呟いた。
「分かっているさ、そんなこと。……悠」
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