ダーク・ファンタジー小説

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蒼色の殺し屋
日時: 2012/04/23 23:28
名前: 牛鬼 ◆aw8Nm.9wrI (ID: wxv5y7Fd)
参照: 学校生活が多忙な為執筆は遅いです。

ー前書きー
この小説では、グロテスクな描写がある他、好ましく無い単語が含まれますので、小学生の方は、極力親子様に『○○って何?』と聞かない事をオススメします。
コメントを頂ければ、ボカしながらも説明しますので。

ーー

始めまして。
いや、昔から僕はいましたが、初心に帰ると決めたのでハンドルネームもトリップも全ていつかの物にしました。
だから始めましてなのです。
小学生に書いた時のそのまんまなタイトル、そのまんまなハンドル、そのまんまなレベルの描写力((おい

始めに断りますが、完全に遊びで執筆するので面白くないかもしれません。見苦しい描写(元からですが)になるかも知れません、いや、なります。
ですが、それで良いのです。僕が書いていて楽しめれば。

この小説は自分が楽しんで書き続ける為に書く物なので、楽しめるかはわかりませんが温かい目で見守ってください。


ーお知らせー
まだ始めたばかりですが、しばらく他所で小説を読むために、執筆を休止します。
ーお客様ー

ー目次ー

イメージソング >>5

序章 >>1(大幅に訂正しました 4/21)
壹章 >>2 (訂正しました4/21)
貮章 >>3 (訂正しました4/22)
參章 >>4 (訂正、加筆完了4/22)

Re: 蒼色の殺し屋 ( No.2 )
日時: 2012/04/22 13:51
名前: 牛鬼 ◆ZdPdHqmtMA (ID: wxv5y7Fd)

ー壹章ー

裏と表は決して交えない______


ふと椎也はクラスメイトの話に耳を傾けた。

「聞いたか?また蒼色の殺し屋が能力者を狩ったらしいぜ」
「ああ、俺能力者だし気をつけなきゃな」
「大丈夫だ、お前みたいな三流な能力者なんて殺しに来ない」


交えさせてはならない______


椎也は彼らの話に傾けていた耳をイヤホンで塞いで机に突っ伏した。

椎也は表では、ただの高校生その一として暮らしている。
しかし、裏では能力者として日夜能力者との死闘を繰り返していた。
表の人間を裏の世界に巻き込みたくない、絶対に巻き込んではならない。
そう考えた椎也は、自身が能力者であることを高校では秘密にしていた。


平凡な暮らしを守る為にも、裏と表を交えさせない。
表の奴らを絶対に裏には引き込まない。
絶対にな。

でも、もしも巻き混んでしまったら……。

……いや、力尽くでも巻き混ませない!!______


「雨宮君っ」
突然背中に重たい衝撃が加わった。

椎也は何事かと振り向くが、無意識に殺気を放っていたらしい。

椎也よりも、冗談で椎也の背中を拳で殴った本人、天文部の仲間の桐原柑奈が驚いていた。

「ごっ、ごめんね、冗談のつもりだったの…」

戸惑う柑奈。
何処かホッとした椎也。

「いや、悪い、ちょっと考え事をしてて少し驚いただけだ」

柑奈は首を傾げた。

「少しって言うか、尋常じゃない驚き方だったけど…」

柑奈は少し考えると、真面目な顔で椎也に疑問をぶつけた。

「もしかしてイジメられて…」
「ない」
「即答…、でもそうだよね、雨宮君イジメられてる所想像できないもの」

笑いながら柑奈はそう言った。

「とりあえず向こう行ってろ」

シッシッと手で払う動作をして、再び椎也は突っ伏す。

「でりゃぁっ!!」
教室中に響く声と共に、再び椎也の背中に重たい衝撃が加わった。

「なんなんだよ桐原」
「天丼だよっ、お笑いの基本」

笑顔で話す柑奈に、椎也は呆れて要件を聞くことにした。

「…で、なんの用だ」
「今日の夜の約束忘れてないかな?」
「なんだったか?」
「どぼけてるでしょ、考えてすらないじゃん」

柑奈は一瞬ムッと顔を歪めた後、約束について語り始めた。

「天文部の天体観測、今晩だから。先週言ったよね?」
「………ああ、あったな」

椎也は億劫そうに肘をつき、窓辺を見る。

「もう三年だし、天体観測行けるのも限られてるんだよ?」

椎也の興味のなさそうな態度が不満だったのか、柑奈はまた顔を顰めた。

そうだった、気がつけばもう三年か______

「わかったよ、行くよ」

億劫そうな言い方に柑奈は再び顔を歪めた。

「わかりました、行かせてもらいます、行かせてください桐原さん」

その言葉は棒読みながらも、柑奈は満足気な顔をした。

「それでよし」

******

放課後、午後五時。

椎也は約束通りの時間に荷物を持って、待ち合わせ場所である裏山の麓にある神社の境内にたどり着いた。

蜩の鳴き声が境内中を響き、意味も無く空虚な気分にさせられる。

「雨宮君ちゃんと来たかー、偉い、よくできました」

小馬鹿にするような口調でやって来たのは柑奈だった。

柑奈は新入部員の一年生三人を引き連れやって来ると、辺りを見渡した。

「あれ?二年と馬博は?」
「まだ来てない」

椎也が億劫そうな表情を見せたら柑奈はまた顔を顰めた。

「そんな顔しないの、めっ」

一年生達はいつも通りの二人のやり取りを見てクスクスと笑った。


それから五分後。

石橋馬博と二年生が待ち合わせ場所に到着して、天文部一同は天体観測をするために裏山を登り始めた。

Re: 蒼色の殺し屋 ( No.3 )
日時: 2012/04/22 13:51
名前: 牛鬼 ◆ZdPdHqmtMA (ID: wxv5y7Fd)

ー貮章ー

雨宮椎也は産まれた時から能力者であることの運命を背負って生きてきた。


能力者は能力者を殺すことで力をより強力な物とすることができる。

つまり、能力者は能力者を殺す側であり能力者に殺される側にもなるのだ。

それは雨宮椎也にも言えることである。

中途半端な能力しか持たない能力者は殺しても何も変化は無いが、椎也の様な産まれた時から強力な能力を持っていた能力者は、能力者達の格好な標的になっていた。


ある日まだ椎也が幼かった頃、椎也の両親は椎也を手放した。

能力者に狙われ続ける日々に嫌気がさしたのだろう。

その後椎也は、能力者の子どもが集まる孤児院に引き取られ、中学を卒業するまで孤児院で育った。

孤児院で暮らしている間も、度々能力者と接触し、死闘を繰り返して来た。


中学を卒業する頃になると、椎也の能力は強化され、強力な物となり能力者との戦闘に苦戦することは少なくなると同時に、この頃から椎也は能力者達の間で、能力で水を操る姿から『蒼色の殺し屋』と呼ばれるようになった。


やがて高校生になると、孤児院を出て自立して一人暮らしを始め、高校では自身が能力者であることを隠して過ごした。

極力誰とも関わらないように。


「相変わらず退屈そうだな、雨宮は」

石橋馬博が皆から少し離れた場所で一人黄昏ている椎也に缶コーヒーを投げ渡した。

「皆ではしゃいだりするのはあまり好きじゃないんだ」

そう言うと椎也は缶コーヒーの蓋を開けコーヒーを一口飲んだ。

馬博は椎也の隣に座り、星空を見上げた。

「星ってさ、星によっては地球が産まれるずっと前の光を今俺たちは見てるんだぜ? 何かロマンがあるよな」

椎也はドヤ顔で語る馬博に呆れ顔で言った。

「それお前から何回も聞いた」

椎也はやれやれ、と言った顔でため息をつく。

「そ、そうだったか?悪いな。じゃ、じゃあ俺あいつらとダベって来るわ」

馬博は変に笑いながら足早に柑奈達の元へ戻って行った。


今見ている星の一つ一つにら名前が付けられている。

正直どれも同じにしか見えないがな。

先人は千とある星の一つ一つに名前をつけていった。

「よっぽど暇だったんだろうな」


そして——仰いだ星空から視線を暗い山道へと戻す、その瞬間。
鋭利に大気を切り裂く、風羽の音がして。

グサリと言う何かが刺さる重たい音がした刹那、椎也の肩に激痛が走った。

肩に手をやりながら確認すると、焔を帯びて赤く光るボウガンの短い鉄の矢が突き刺さっていた。


矢に炎を帯びさせるなんて荒技、常人では到底不可能、と言うことは能力者だ___


椎也は矢を抜き捨て、出る限りの大声で叫んだ。

「逃げろ!!能力者だ!!」

柑奈達は振り向いたものの、キョトンとしているだけ。

しかし次の瞬間、柑奈達は状況を把握した。

椎也の背中に赤く光る矢が突き刺さったのだ。

椎也はフラつきながらも鬼の形相で声を張り上げた。

「何モタモタしてやがる!!早く山を下って逃げろ!!」

柑奈達は戸惑いながらも椎也の剣幕に押され、走って山を降りて行く。

椎也はそれを確認すると、先ほどの表情からは考えられない程不気味にニヤけた。

「さて、お荷物も無くなったわけだし。反撃と行こうか?」

椎也は背中に突き刺さった矢を躊躇せず荒々しく引き抜き、能力で矢を氷結させ、ダーツのように飛んで来た方向へ投げるが、焔を帯びた矢に弾かれ地面に落ちた。

「隠れてないでさっさと出て来いよ、それとも俺から殺しに行くか?」
椎也が殺気を放つと、両手にボウガンを持った筋肉質な大男が暗闇から姿を表した。

「一人で俺を殺しに来たのは自殺か何かか?」
椎也の挑発に大男は両手のボウガンを構え、矢を放つ。
「その身体つきでショボいボウガン使ってるのか?」
馬鹿にするような口調で相手を挑発しながら、椎也はいとも簡単にボウガンの矢を避け、挑発を続ける。

大男は挑発に乗り、ボウガンを捨てて吠える様に大声で叫びながら拳に火を纏わせ椎也に殴りかかった。

椎也は柑奈とは比べものにならない重たいパンチを軽々と受け止めると、自分の体の倍ほどある大男を背負い投げで投げ飛ばし、無数の氷の刄を生み出して追い討ちをかける様に大男を斬り刻んだ。

立ち上がろうとする大男から距離を取り、再び無数の氷の刃を飛ばすが、今度は大男が吐いた炎で届く前に無くなってしまった。


「退屈だな、もう終わらせるとするか」



椎也は腕を刀の形に凍らせ、大男が懲りずに吠えながら殴りかかって来るのを、右腕の氷の刀で心臓を貫こうとした瞬間。

目の前で大男の巨大な体は頭から縦に真っ二つに割れ、真っ二つに割れ行く胴体の影からは、輪郭が筆で書かれた様な現実味の無い一振りの刀を右手に持つ黒い長髪のスーツを着た十八九歳ほどの女が現れた。


「全く使えない単細胞ね…。あんな挑発に乗って、作戦が台無しじゃないの……」

冷酷な言葉を大男の死体に吐きかける女は見惚れる美しかった。

腰まで伸びた艶の良い黒髪、吸い込まれてしまいそうな黒い瞳、スッキリとした首筋、ふくよかとは言えないが程よく膨らんだ胸、透き通る様に白い肌。

彼女の完璧と言っても良い美貌は恐らく世の男性を虜にするのでは、と思うほどである。


こんな状況で無ければな___


椎也は頬の男の血液を拭い取り、右腕の氷刀を彼女に向けた。

「乙女に刃を向けるの?貴方にはプライドとかそういう物は無いのかしら?」

女は向けられた氷刀には全く動揺せず、それどころか不気味な笑みを浮かべている。

「黙って殺されろ、と?」
「できればそうして欲しいけれど……そういう訳にもいかないんでしょう?」

女は溜息を吐くと、どこからともなく筆ペンとレポート用紙を取り出して何やら書き始めた。

「遺書でも書く気か?」

椎也の言葉に女は鼻で嗤い、大男に視点を落とす。

「私はこの単細胞みたいに挑発には乗らないわ」

「そうね、これは遺書ではなくて……」

女は書き上げたレポート用紙を破り取り、筆で書いた面を椎也に向けて見せた。

行書で書かれている為、読みづらいがレポート用紙には確かに『爆煙』と書かれている。

「じゃあね、蒼色の殺し屋さん」
女がそういうとレポート用紙から大量の煙が吹き出し、辺りは忽ち煙に包まれ、女の姿は煙の中へ消えた。

Re: 蒼色の殺し屋 ( No.4 )
日時: 2012/04/23 23:19
名前: 牛鬼 ◆ZdPdHqmtMA (ID: wxv5y7Fd)
参照: 一時保存

ー參章ー

受話器を片手に、Tシャツにジャージと言う姿でシャワールームから出て来た椎也は、電話の向こうの誰かと話しながら、散らかった床に落ちた物を器用に避け、9インチ程の小さいテレビの前に置かれた座椅子に腰掛ると、冷蔵庫から取り出したと思われる缶のコーラを開けて一口飲んだ。

『つまり、逃したと?』
「そうだ」


一時間ほど前に煙幕で逃した能力者の女が使用していた能力は『カリグラフィー』と呼ばれる。
カリグラフィーとは先ほどの煙幕のように筆で書かれた文字を具現化させたり、筆で描いた絵を具現化させたりする能力で、使用方法は攻撃に留まらず、治療などの様々な場面で凡庸できる。

『珍しいな、お前が逃したなんてよ』
「端から殺す気はなかったんだ、奴から殺気は感じられなかったしな」

先ほどから椎也が電話で話している相手は、椎也と同じ孤児院に暮らしていた同い年の能力者の黒崎姶良。
彼もまた両親に捨てられていた。

『厄介な奴が街に来たね…』
「カリグラフィーはこの街には少ないよな、それほど見た事がない」
『カリグラフィー自体珍しくは無いんだけどね、大体は幼少期に殺されるかするから見る機会は少ないね』
「餓鬼は字が書けないからな」

カリグラフィーは字を書けないと能力の意味を成さない。
つまり、字を書けない幼少期は能力を発揮できないので他の能力者に殺されやすい。

『生き延びる例が少ないだけに、できるならば敵であって欲しくないね』
「それは能力に関する興味か?それとも…」

受話器から爆音が流れることを悟った椎也は、耳から受話器を離した。

『違うわっ!!!!』

真面に聴いたら鼓膜を破る程の爆音が、受話器から四畳半の散らかった部屋に響いた。

「冗談だ」
『そうじゃなかったら今から殺しに行くよ』

姶良の殺意の込もった言葉。それに対し椎也は、おー怖い怖い、と言った顔で電話の向こうの姶良に作り笑いをする。

「とりあえず奴には警戒しておけ、何をしようとしているのかわからないからな。」
『了解』

最後に重要な事を伝え、椎也は電話を切る。
そして床に脱ぎ捨てられている血塗れのシャツをゴミ箱に突っ込んで、倒れる様にベットの上にダイブした。

明日はなんと説明するか…?

椎也はしばらく、天文部の部員にどうやって能力者から逃げ切ったか説明する口実を探す。
勿論、椎也自身、本当の事を言うつもりは毛頭無かった。
能力者である事を隠さなければならないのだから。
ふと時計を見ると、既に十時を回ろうとしていた。

「もう寝るか…」

散らかった部屋を見渡し、大きく深呼吸した後、そのまま目を瞑って眠りについた。


**********


霧で輪郭のハッキリしない、ぼやけた世界。

ただ真っ直ぐ延びる道。

ふと俺はある事に気がついた。

俺は何故かその道を歩み進めていたのだ。

建物も何も無いのに、粗末に舗装された道は、無意味に永遠と続いている。

道は霧でハッキリと見えないが、街頭の灯は曲がる事無くただ真っ直ぐ続いている。

「…………?」

気配を感じた俺は、立ち止まり後ろを振り返った。

「…………!?」

目を疑った。

後ろには、俺が今までに殺して来た能力者達が立っていた。

俺は混乱しながらただひたすら、永遠と続く道をただひたすら走った。

何故其処に居るのか。

何故生きている。

何故。

何故。

何故……

「君の魂の中で僕達は生きている」

目の前には小学生程の男の子が立っていた、そして、気がつけば既に後ろには奴等の姿は無かった。

「君が強い能力を使っていられるのも、僕達が君の魂の中で生きているから」
「僕達をどうか忘れないでよね、椎也」

その少年は満面の笑みでそう言うと、霧の中に消えて行った。

「まさか、お前…」

再び走り出した。

霧の中に消えた少年を追いかける為に。

おかしいな、いくら走っても追いつかない。


「ちょっと」


突然聞こえた声と共に、目の前に有った筈の道は消え、世界は漆黒に包まれた。

先ほど聞こえて来た声。
直接的に聞こえて来たあの声……、何処かで聞いた覚えがある。

「ちょっと、起きてくれないかしら?」


目を開いて先ず最初に見えた物は、見慣れた天井だった。
まだ視界がハッキリせず、ぼんやりとしているが確かに家の天井だ。
ここは俺の家だ。
そして今、俺は今までの出来事がなんだったのか、漸く全てを覚った。

そして一つ疑問が浮かんだーー

「何でお前が俺の家に居るんだよ」

目の前に居たのは、あの大男を真っ二つに斬った『カリグラフィー』の女だった。
一体どういうつもりなのか、女は、寝ている椎也の横に腰掛け、唇に触れるのでは無いか、と言うくらいに椎也の顔に極限まで顔を近づけている。
散らかった部屋を見渡し、先ほどまであった筈の刀を探すが見当たらない。

「安心して、私は彼方を殺しに来た訳じゃない」

彼女の言う事は本当らしく、彼女は無垢な目映い笑顔を椎也に向けて見せる。

「とりあえず顔を離してくれ」

そう言い、椎也は退いてくれ、と彼女の肩を押し退ける様な身振りをする。
彼女は顔を離して、真面目な顔で口を開いた。

「私は彼方の敵じゃない、寧ろ感謝しているわ」

Re: 蒼色の殺し屋 ( No.5 )
日時: 2012/04/22 12:08
名前: 牛鬼 ◆ZdPdHqmtMA (ID: wxv5y7Fd)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=QuIIO6k5PdY

イメージソングみたいなの探してみました。

Re: 蒼色の殺し屋 ( No.6 )
日時: 2012/05/01 00:02
名前: 牛鬼 ◆ZdPdHqmtMA (ID: wxv5y7Fd)

ー肆章ー

網戸から部屋に入って来る月光と虫の声。

『感謝』

初対面の彼女が口にした、この言葉は、彼女の過去が絡む、一方的な物だった。
名を『夢島 縡』と名乗る彼女は、椎也に対し、改めて感謝の意を表すと自身の過去を語り始めた。
「私は貴方と同じ様に、幼い頃親に捨てられ、孤児院に引き取られたわ」
縡は、親近感を得ようと、貴方と同じ様に、と言う言葉を選んだ。
「貴方と違うのは、それから一年ほど後に、養子として、一般の夫婦に引き取られたと言う事かしら」
「そこには同じ能力者の、歳が二つ離れた息子が居て、私はその義理の兄を守る仕事を任せられたわ」
縡は懐かしむ様な表情をして微笑んで見せる。
「恰好良い事言ってるけど、要するに助け会うって事よ、兄弟で」
「そうして、兄と助け合って生きてきて、高校に上がった頃かしら、ある日突然私は養父に身体を要求されたわ」
急に縡の表情は曇り、椎也のベッドのシーツを握りしめた。
「つまり、私は養父に犯されたわ」
「正しくは犯されそうになった。
家に二人きりになった時、養父は私の部屋に来て、私をベッドに押し倒した。
何か書ける様な物は全て遠くに払って、私が能力を使えないのをいいことにね。
それから、何とか暴れて束縛から抜け出して、私は家から飛び出した。」
「隣町の公園に逃げ込んで、私はその出来事を忘れてようとした。
冷静になろうと私は。」
辛い思い出を思い出し、縡の頬に一筋の雫が流れる。
「そうして、日が沈んで辺りが真っ暗になった頃、私を捜しに義理の兄が公園に来たの」
「養母も私を探そうとしなかったのに、兄さんはたった一人で、義理の妹の私の為にたった一人で探しに来てくれたわ」
「兄さんは私が家出した理由を聞いて、何も躊躇せず、怯える私の手を引いて家に帰らず街を出た」
「実の親よりも、義理の妹である私を選んでくれた、私は凄く嬉しかったわ」
「その日から私と兄さんの暮らしは始まった」
縡の顔は笑顔に変わり、愛しい兄について語り始める。
「兄さんは能力者を殺して財布を奪い、私の生活を支えてくれた。
何度も手伝うと言ったけれど、その度断られた。
『妹にそんなことさせられない』
ってね」
「私はそんな優しい兄さんに恋をしていた。
四畳程のアパートでも、兄さんと一緒に暮らす事が
とても幸せだった」
再び縡は表情を曇らせた。

「そんな時間は永くは続かなかった」

「ある日私が家に帰ると、家の前に兄さんが横たわっていた」
「無惨な姿でね」
「私が大好きだった兄さんは、頭を潰され地べたに……」
縡は言葉を詰まらせ、鼻を啜る。
「復讐を誓った、兄さんを殺した奴を殺すと」
憎しみ、震える声。
「私は復讐する為に、兄さんを殺した奴について調べ、一人の能力者の存在を知った」
「『鋼の腕の鬼神』と呼ばれる能力者」
「二年と言う歳月をかけ、調べて行くうちに奴の姿が見えて来た。
名前、能力、年齢、成り立ちまで」
「しかし一昨日、私が殺す前に奴は殺された」

「貴方にね」


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