二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- レッドレイヴン 〜Cat End〜
- 日時: 2012/03/29 16:53
- 名前: 黒簾香菜 (ID: xJuDA4mk)
初めまして!黒簾香菜と申します。
ちゃんと書けるかは分かりませんが、頑張ってみます。
注意
・荒らしはしないでください。
・キャラ崩壊するかもしれません。
・もしも気に入ってくれましたら、感想を貰えると有難いです
以上です!
この他にも、「小説家になろう」という所で小説を書いています。そちらも見ていただけると嬉しいです。
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- Re: レッドレイヴン 〜Cat End〜 ( No.202 )
- 日時: 2013/01/06 19:57
- 名前: 黒簾香菜 (ID: xJuDA4mk)
- 参照: http://www.nicovideo.jp/mylist/34802148
その後、部下達によってシグマは運ばれ、治療を受けた。
懸命な治療を受けた彼にあたしが会えたのは、次の日。ベッドで横になった彼は、スキャッグスに改造された体を晒していた。
「ただでさえ動くだけで大量にエネルギーを消耗してしまう体なのに、それで戦った挙句に致命傷を負ったんだ。・・・残念ながら、助けることはできない」
医者にはそう断言された。
体力ももうろくに残っていない彼は、今日には息を引き取ってしまうだろう。下手をすれば、会話すらままならないらしい。
痛々しい腹の傷は、今は包帯でふさがっている。手足にある古い傷からは、所々銃や刃物の鈍い輝きが見え隠れしていた。
「どれだけ武器や力を内蔵できるかが、俺の実験だったんだ」
苦々しい顔で傷跡を見ていたあたしに、穏やかな表情でシグマは言った。
あたしを追って、ティアラが部屋に入ってきたようだ。彼は優しい笑みを浮かべたまま、彼女に手を伸ばす。
「ぱぱ」
甘えるようにシグマの手を握り、微笑むティアラを抱きかかえてあたしはやっと彼と目を合わせた。
「今までずっと、君に嫌われたくなくて人工皮膚や特殊メイクで隠してたんだ・・・気持ち悪いだろう?」
その言葉に、何と言っていいか分からず黙って首を振る。
「無理、しなくていいよ。ただ、ちゃんと教えておきたかったから。俺のこと」
そう前置きして、彼は語った。自分とスキャッグスの関係を。
「俺は、生まれてすぐ両親に捨てられたんだ。スキャッグスはその頃、人体実験を行っていた。十八になるまで教会で育てられた俺は、大人になったということでそこを出て一人暮らしを始めたんだが、上手くいかなかったんだ。結果、金欲しさにスキャッグスの人体実験の検体になった」
そして、研究者達は驚愕したという。
あまりにも、シグマは力を体に取り込みやすい体質だったのだ。そこで、どれだけの力と武器を人体に入れることが可能かを試された。その時一緒に実験を受けていたのが、先程のヘヴンという男らしい。
様々な実験の結果これ以上は無理と判断され、彼は一生暮らせるほどの大金を手にスキャッグスのもとを出た。金には困らない。後は、体がボロボロにならない程度に働き、生活すればいい。そう思い、一人暮らしを再開し始めたところで、彼はあたしと出会ったのだ。
孤独に暮らしていたシグマはあたしと交流することで孤独に耐えようとしていた。あたしに気に入ってもらえれば、後は傷跡や体のことを悟られないようにするだけだ。
信用され、交流を重ねるうちにシグマはあたしが好きになっていた。
「幸せだったよ。君に会えてから。ティアラも生まれて、とてもとても幸せだった」
自分の死を直感していた彼は、無理に語り続けた。
体調をあたしは心配したが、まだ知らせなくてはいけないことがあるのだと言って。
- Re: レッドレイヴン 〜Cat End〜 ( No.203 )
- 日時: 2013/01/14 16:50
- 名前: 黒簾香菜 (ID: xJuDA4mk)
- 参照: http://www.nicovideo.jp/mylist/34802148
「俺の話はこれくらいにしよう。これから君に話しておくのは、未来の話だよ」
真面目な顔つきになって、シグマはティアラの頭を撫でた。嬉しそうに、無邪気にティアラが笑う。
「ねぇ、ヴィーナさん」
「・・・・何だ?」
「ティアラを、守ってね。・・・・守って、あげてね」
勿論だ、と言ってあたしは頷いた。
「スキャッグスがティアラを狙ってくるはずだから。もしも、ティアラが俺と同じ体質だった場合、彼らにとって最上の検体になるはずだからね」
「えっ・・・?」
「君がティアラを孕んでいた時、この子が欲しいって言われただろう?」
そこでやっと、思い出した。
確かに、奴らはティアラが欲しいといっていた。それは、シグマとティアラが同じ体質かどうかを調べるためだったのだ。そして、もしそうならティアラもシグマと同じように体を改造してしまうつもりなのだろう。
「だから、スキャッグスが・・・?そんな企みがあって」
「死に物狂いで彼らはティアラに手を出そうとするよ。気を付けて」
「・・・・だが、お前とティアラが同じ体質だという確証はないぞ。確率は恐らく二分の一だ」
そこで、悲しそうにシグマは顔を伏せた。言いにくそうに、彼はあたしの顔色をうかがう。
「否、多分百%だよ。これは俺の推測だけどね、ヴィーナも多分俺と同じだ。下手をすれば、ティアラは俺の何倍もの力を体に取り込みやすい体質になっているだろうね」
シグマは今まで、話を誤魔化すことはあっても嘘をついたことはない。
あたしはシグマと同じ体質であり、その二人の子供であるティアラならばその体質が強くなる。
「この子に、苦労はさせたくないんだ。だから・・・・頼・・・だ」
だんだんと、彼の意識が薄れていく。眠りにつくように、ゆっくりと瞳を閉じた。
終わっていく命を見ることしかできない自分自信の無力さが嫌になる。
「馬鹿が————っ」
気づけばあたしは、叫んでいた。
- Re: レッドレイヴン 〜Cat End〜 ( No.204 )
- 日時: 2013/01/18 04:35
- 名前: 黒簾香菜 (ID: xJuDA4mk)
- 参照: http://www.nicovideo.jp/mylist/34802148
「馬鹿者!生にしがみつくことを忘れて死に行くなんて、絶対に許さないからな!」
気づけば、大声で叫んでいた。ティアラが驚いて目を見開いたのがわかる。シグマも、あたしの大声で眠気が吹き飛んだのか驚いた表情であたしを見つめている。
「ぁ・・・・れ?ヴィーナって、そんなに我が儘・・・・」
「お前のためなら、いくらでも我が儘になってやるさ!生きろ!シグマ!命令だぞ!死んだら絶交してやる!」
二人だけになるのは、嫌だった。
まだまだシグマといたい。それに、ティアラにも父親がいないという苦痛を味あわせたくない。
何よりもあたしは今まで一度も・・・・
シグマに甘えたことだってなかった。
「ははっ・・・絶交は、嫌だなぁ。でも、もっと生きていたいなんてさ・・・・贅沢な事だよね」
あたし達は互いに孤独だった。だから、惹かれたのかもしれない。好きになったのかもしれない。
初めて、本気で運命を感じたのだ。
「嫌だ・・・・シグマ」
あたしの不安が移ったのか、ティアラも一緒に泣き出す。
子供のように泣くあたし達を寂しそうに見て、シグマは励ますように言った。
「ごめんね、ヴィーナさん。・・・・もしあの世があるなら、ずっと待ってるから。ずっとずっと、一緒に・・・ね?」
再び、彼は眠りに落ちていく。完全に意識を失う前に。
「だからさ、絶交だけは・・・・取り消してよ」
シグマはあの美しい、純粋な笑みを見せた。
- Re: レッドレイヴン 〜Cat End〜 ( No.205 )
- 日時: 2013/01/22 06:25
- 名前: 黒簾香菜 (ID: xJuDA4mk)
- 参照: http://www.nicovideo.jp/mylist/34802148
そこから記憶は急速に動き出す。
シグマの予想通りティアラを狙ってきたスキャッグスを倒した。経済的に行き詰まりを感じ、人体実験に体を差し出し、右目まで失った。それでも、無邪気にティアラは成長して行く。
そしてとうとう、クレギターファミリーの経済が行き詰った。
今日、スキャッグスの奴らはティアラを連れて行く。
シグマが植えた花々は美しく咲き誇り、それらの中心に植えられたあの薔薇の花はまるであたし達家族の絆を表しているかのように互いに絡まり合い、赤と白と黒色の花を咲かせていた。
風が吹き、ティアラの髪が乱れる。あたしはそれを整え、そのまま頬を撫でる。彼女と会えるのは、もしかしたらこれで最後かもしれない。ぐっすり眠っているティアラの頬は温かくて柔らかい。
胸の奥では怒りや憎しみ、悲しさが煮詰まり立っているのもやっとなのに頭の中はひどく冷静だ。
「ボス!」
背後から、部下の一人が近づいてくる。ティアラを渡すことを拒んでいた者達が来たことは、容易に想像できた。
「やはり、止めましょう・・・・・俺達は、これで構いません。金なんか無くても、ボスと共にいられればそれで・・・」
彼らの言いたいことは理解できる。出来れば、あたしだってそうしたい。
立場も現状も顧みず、ティアラと逃げることができればどれだけいいだろうか。しかし、家族のように思っていた部下や仲間を捨てることなど、あたしにはできなかった。
「・・・・“一話一話を演じながら、生きる事こそ人生だ”・・・そう、何度も言っているだろう?」
「ボス。だからって、嬢さんを渡すなんて・・・」
「これでファミリーの者達は生き延びられる。・・・それなのにお前たちは、これ以上何を望む?」
「俺達は・・・・」
彼の声は、風によって掻き消された。
シグマが語っていた、ティアラを示す白薔薇を手で千切り、腕の中の彼女の髪にそっと挿す。棘で切れてしまった掌から、真紅の血が流れた。
「俺達は、ボスがいればいい。ファミリーも、住民も関係ない。ただ、ボスに笑っていて欲しいんです」
「・・・・そうか」
あたしは、どんな顔をしているのだろう。
「お前達がそう言ったところで、あたしの意見は変わらんよ。・・・手は尽くした。それでもこの結果になってしまったのだから、元からこの子をあいつらに渡さねばならない運命だったのだろうよ」
「良いんですか?それでボスは、幸せなんですか?」
先程の男とは別の者がそう言う。心の内を押さえ込んだまま、あたしは微笑んだ。
「あたしはこれで構わない。それに、あいつらだってこの子が欲しいとずっと前から言っていただろう?」
庭の入り口に車が止まった。そこから数人の男達が出てきて何も言わずにあたしの腕からティアラを奪い、彼女を抱いたまま車に乗り込む。
「あの子は、アレの娘だ。元からこうなる生まれだったのだ」
口ではそう言うが、あたしだって納得できていない。
何故、あたし達なんだ?ただ、三人一緒に家族として暮らせていければそれでよかったのに。
車窓から、微かにティアラが見える。彼女は、うっすらと目を開けた。
その口が動く。何と言ったのか聞こえないが、あたしにははっきりと分かった。
「ティアラ!」
車が遠ざかっていく。思わず走って、あたしはそれを追いかけた。
「ティアラっ!!絶対・・・絶対に奪い返すから!だから・・・」
・・・・どうかあたしとシグマの事を、忘れないでくれ
その言葉は、声に出せなかった。部下達が倒れかけたあたしを抱きとめる。
「ボス・・・・無理、しないでください」
涙で濡れた視界に、心配そうな彼らの顔がはっきりと写った。
- Re: レッドレイヴン 〜Cat End〜 ( No.206 )
- 日時: 2013/01/26 15:55
- 名前: 黒簾香菜 (ID: xJuDA4mk)
- 参照: http://www.nicovideo.jp/mylist/34802148
あたしに母親としての資格などない。
けれど、再開できたことは純粋に嬉しかった。
思わず、耳につけたピアスに意識を向ける。それは、シグマが死んだ後彼の髪を切り取って作ったものだ。あたしの髪と、ティアラの髪。三人の髪を集め、三つのピアスを作ったのだ。
その中のひとつは今、ここにある。残る片方は、シグマの体と共に棺桶の中に収まっている。最後の一つは、再開した時に彼女があたしを覚えていた時渡せるようにデスクにしまってあった。
残念ながら、ティアラはあたしのことを覚えてはいないようだった。
それも当たり前かもしれない。対外的に見れば、あたしはスキャッグスに彼女を売った冷酷な母親なのだから。
あたしと会話をしながらも、冷たい態度を貫く彼女に本当は教えたかった。
どれだけ大事に思っていたか。どれだけ愛していたか。彼女を手放した後、何日も泣き続けた事。実験台になると言って、スキャッグスの研究室に潜り込んだことさえあった。どれだけ時がたっても、忘れることは一秒たりともなかった。
ティアラの笑顔、幼い言葉遣いに、柔らかな頬と温かい体温。いくら言ったって足りない。ずっとずっと、会いたかったのだと。
それでも、彼女はレッドレイヴンになっていた。
スキャッグスの恩恵を受けながら何とか保っているこんな弱いマフィアでは、政府である彼らに勝つことなどできない。それに何より、その方がティアラにとって幸せなのだ。このまま、怒らせて感情的にさせて、あたしの首を討ち取らせてしまえば・・・・
「金が無かったからな。お前は、丁度良い“売り物”になったよ。おかげで、スキャッグスから安く良い武器を売ってもらえたし、金に困ることは無くなったし。————感謝はしているよ」
冷たい言葉を吐き続ける。まるで、あたしの体がロボットにでもなってしまったようだ。
「お前の体が切り開かれようと、あたしの体は痛まない。本当に、実に良い取引だった。スキャッグスにも、感謝すべきだな」
思った通り、彼女の瞳が怒りに燃えてくる。
それでいいのだと、安心した。そして同時に、不安が襲ってくる。
「シグマ・・・・お前の実の父親にも、感謝しなければいけないな。スキャッグスとの取引を始めたのは、あいつがあたしと知り合ってからだったし」
シグマと同じところに、あたしは行けるのだろうか?
ずっと待っていると、彼は言った。その言葉は信じているけれど、死後に彼と同じ場所にあたしが行けるかどうかはわからない。
もうすぐ答えが出る。
スローモーションのように、ティアラが武器を取り出すのが見えた。
あたしに向けられた刃は、あたしの腹部を狙っていた。
それでいい、それで・・・・
腹が彼女の武器で切り裂かれる。血飛沫が舞い、ティアラの白い肌にまだらの模様がつく。
眠りにつくように、意識が遠のいていく。その寸前に、死後で待っているといったシグマの笑顔が浮かんだ。その笑顔に、きっと追いつくと頷き返す。
そし・・結局最・まで口には出せなか・・け—————ど——————
愛してるよ、ティアラ———————
《番外編・完》
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