二次創作小説(紙ほか)

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RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー
日時: 2013/12/27 17:06
名前: 牙鬼 悠登 (ID: 3UNlfhyM)

こんにちは、牙鬼です。前回の「とある」に引き続き、今回は誰でしょう?そして、智志たちの運命は?



RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー

ー4、戦と勇者(いくさとゆうしゃ)ー
 虹色の光が周りを照らしている。なんて幻想的なんだ。俺たちー海原智志とハル、真斗
と麗さんは、次の異世界へと今向かっていたところだった。
「それにしても、こんな綺麗なところ通って異世界に行くのか。なんかもうちょっとこの
景色楽しみたくなるなぁ」
「真斗、私たちは異世界を守るためにここを通っているのであり、そんなのん気なこと行
っている場合じゃあないのよ」
 まあ、麗さんの言うことは確かにそうだが、真斗の気持ちも分からなくない。なんせ、
この通路は無重力になっていて、俺たちの体は流されるように進んでいるんだ。こんな宇
宙飛行士にのみにしか与えられてなかった特権は、確かに楽しんでいたいものだ。
「智志、出口が見えてきたよ」
「あ、あぁ。あれが次の異世界か・・・」
 俺は我に返ったように前を向き、次の異世界のことを考え始めた。
 俺たちは、ある日にあの男ーハデスの襲撃を受け、俺はその時に左腕をやられた。その
後気がつくと、俺たちは何故か「学園都市」にいて、そこで再びハデスの襲撃を受けたの
だ。だがその時、俺たちは何者かにもらった武器でハデスに対抗、更にそれぞれ「幻想殺
し」、「禁書目録」、「超電磁砲」、「一方通行」の力を手に入れた。その中でも「幻想
殺し」はその世界の「主人公(コア・ヒューマン)」の力らしく、俺たちは、これ同様の
の「主人公」の力をあと残り5つ集め、ハデスを止めるべくこうして旅を始めているわけ
なのだ。
「よっと」
 俺たちは異世界をつなげる通路を出て地面に降りたってあたりを見渡してみると・・・
「って、なにこれ・・・」
 そこにあった景色は「学園都市」とはまるで違い、俺たちを驚かせた。
 あたりは森に覆われていて自然いっぱいの広々した世界なんだか、問題は島が空中に浮
いていることと、空の色が青紫色であることだった。
「なんか・・・、随分とファンタジーっぽい世界ね・・・」
「そ、そうだね・・・」
 俺たちは、その光景に絶句してしまった。しかし、その空気を取り去ったのは、真斗の
疲れたような一言だった。
「と、とりあえずもう日が暮れるし、家でも探してそこで寝ようよ」
「「「さ、さんせ〜い・・・」」」
 そうだった。俺たちが『学園都市』でハデスと戦ってから既に1時間は経過しているだ
ろう。体に疲れがどっとあふれてきた。そんな体で俺たちは休む場所を探し始めることに
した。

 休む場所を探してもう何時間かは歩いているようだが、4人はまだ休む場所は見つけれ
ないでいた。深い広葉樹の林の中、空はもう暗くなってきていて、多分今頃はいつもなら
晩御飯を食べている時間だろう。
「お、お腹がすいてもう歩けない〜」
 そう呟きながら真斗は地面に横になってしまった。
「頑張ってよ、その内ばったり誰かに会うかもしれないんだし」
「でも姉貴だって、俺が見るにウエストも2ミリほど凹んでいるところからして、もう疲
れが限界に来ているんじゃないの?」
「真斗・・・、後で覚えておきなさい・・・」
 そう言いながら、殴る力も残っていない麗さんは杖を付きながらまた歩き始めた。
 すると、智志の鼻がかすかに動いた。
「これは、和食独特のだしの匂い!」
 それを聞き、4人は一斉に走った。誰かがご飯を作っているのは間違いなく、少しでも
分けてもらおうとして匂いのする方に走って行った。
 突然4人の周りは広葉樹林から竹林になり、しっかりと人の通った道もあった。
「やったぁ!誰かが住んでいる家にたどり着ける!」
 智志はそう歓喜しながら道に沿って家を探していると、ついに民家にたどり着いた。藁
の屋根に障子といった、まるで江戸時代にあった和風建築のような家で、窓からは白い煙
が上がっていた。どうやら先ほどの匂いはこの家から来ていたようだ。
「あ・・・」
「よかったぁ〜・・・」
 4人は安心したのか、その場に疲れて倒れてしまった。その音を聞いてなのか、ふと家
の中から割烹着を着た灰色の髪をした女の人が出てきた。
「えっ、大丈夫ですか!?しっかりしてください!」
 女の人はすぐに4人の方に駆け寄って行き、顔色を確認し始めた。
「どうしたのだ?」
 するとまた1人女の人が家から出てきた。見た目は長身で、白い和服姿と茶色い髪とい
った人で、すぐさま割烹着の女の人の方に歩いて行った。
「あ、お館様。どうやら行き倒れのようです」
「では早く中に入れて、休ませるとしよう。すぐに布団の用意を」
「はい」
 そう言い、2人は智志たちを担いで、中に入っていった。

「・・・ん?」
 俺は気がつくと地面がふかふかしているのに気づき、目を開けた。体を起こすと、どう
やらあの和風建築の中らしく、下には布団が敷かれていた。右の方を見るとハル、真斗、
麗さんが、同じように布団を敷かれてその上で寝ていた。
「あ・・・、俺たちそういやあ、疲れて家の前で倒れて・・・」
 そう半開きの目でつぶやいていると、突然後ろの障子が開いた。
「おお、気がついたようだなぁ」
「でござるぅ」
 声のした方を向くと、そこにいたのは長身で茶髪の和服姿の女の人と、俺ぐらいの背丈
金髪の朝顔柄の服をした女の人だった。
「あ、こんにちは・・・」
 俺は少し寝ぼけながら挨拶をして、自分のさっきまでいた布団を片付けようとすると、
ようやく目が冴え、あることに気がついた。
「・・・へ?」
 もう一度彼女らに目を向けて確信した。
なんと2人の頭には動物の様な耳がはえていて、腰からは尻尾まで出ていたのだ。
「は、はあ!?」
「? どうしてのでござるか」
「あ、あのう、その尻尾と耳は・・・?」
 そう聞いても、女の人は首をかしげるだけだった。そんなところで、ハルたちが目を覚
ました。
「ん・・・ここは・・・?」
「ああ、この人たちが助けてくれたんだ」
「え・・・、あ・・・あれ?」
 どうやらハルも彼女たちについているソレに気がついたようで、何がなんだか分からな
いような顔をしていた。
「「・・・・・・」」
 麗さんたちも何がなんだか分からないらしい・・・。一体この世界はどうなっているん
だ!?

RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.6 )
日時: 2013/12/27 19:11
名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)

「で、そのサトシというやつはそんなに強い奴だったのか」
 同時刻、ガレット獅子団領では、戦士一同呑気そうに食事をしながら、明日の戦に向け
て疲れを癒していた。そんな中、領主であるレオ閣下ことレオンミシェリ・ガレット・デ
・ロワは今回の戦に旋風を起こしたというビスコッティの新入り(智志たち)のことをガ
ウルと七海から聞きながら作戦会議をしていた。
「強かったぜ。俺の闘争心が燃え上がったんだ。ありゃあ明日はシンクとは違う白熱した
戦になりそうだぜ」
「そうだね」
「なるほどな。まあ、我らの作った石橋をぶっ壊してくれたからには、相当の手練だろう
な」
 レオ閣下はそれを聞き、頬杖を付きながらおもむろに思想にふけった。
「あぁ、こーしちゃいられないぜ。俺もそろそろ飯にしてゆっくりするとするか。姉貴も
あまり焦るとまたおかしくなっちまうぞ」
「お前に心配されなくても、自分のことぐらいなんとかできる」
「そっか、じゃあ」
「レオ閣下も早くしないとご飯寝てしまいますよ」
 そう言い残し、ガウルと七海は食堂に向かうとそのあとに1人残ったレオ閣下は口元を
にやけさせた。
(2人がああいうし、石橋の破壊用から察するによほどの手練だな。明日は面白い戦にな
りそうだのぅ)
 レオ閣下がそんなことを考えていると不意に一声もかけずに、何者かがテントに入って
きた。その侵入者ー黒いマントに同じく黒い帽子といった見る感じではどんな奴かわから
ないような男はこっそりとではなく、堂々とレオ閣下の前に立った。
「貴様、何者じゃ?」
 レオ閣下が近くにあった剣を抜きながら聞くと、男が閣下の方を向いた。男の目は血の
ように赤かった。レオ閣下はその目を見た瞬間体中に恐怖を感じ、直感的に後退してして
いた。
「おやおや、あなたは私を恐れているのですか?」
「もう一度問う。貴様は一体何者なのだ?」
 レオ閣下が聞くと男、ハデスはフッと鼻であざ笑うだけだった。その行動にレオ閣下は
ハデスから出ている先も見えないようなどす黒いオーラを感じ、体がすくみ動けなくなっ
た。
「フフフ・・・。流石に『天下無双の獅子王』といえど、恐怖に駆られては猫のように臆
病になる者ですな」
 そう呟きながら、ハデスはゆっくりとレオ閣下に近づくと目の前にきたところで閣下の
額に右手を掲げた。するとそこに魔法陣が展開され、2人の姿が透け始めた。
「な・・・、何をする!?」
「いえ、少し私の趣味に手伝ってもらおうかと思いまして・・・」
 すると同時に景色は闇に覆われ、2人はその中に飲み込まれてしまった。闇が晴れると
そこにはレオ閣下1人そこに立っていた。しかしその肌は死人のように白く、棒立ちにな
ってまるで置物のようだった。
 そこになかなか食事に来ないレオ閣下を呼ぶために彼女の側近であるビオレ・アマレッ
トが来た。
「レオ閣下、お食事は」
「あぁ、今行きます」
「へ?『行きます』?」
 ビオレはレオ閣下の言葉遣いに不信感を持っていたその横をレオ閣下は食堂へ向かって
歩いた。
 その目は血に染まったように赤く闇の中で輝いていた。

ー5、炎の神剣(パラディオン)ー
 空は昨日よりも晴れ渡り、体も元気いっぱいで、いつでも戦に出られる状態だった。
「それじゃあ、今日は昨日から少し変えて、智志くんと晴香さんがガレットの方、麗さん
と真斗くんにパスティヤージュをたのもうかな」
「オッケー、シンクくん。俺はいつでも行けるから」
「う〜ん、いい感じになってきたね」
 俺と真斗は戦い燃えていると、その横でハルが顔を赤くしながら右往左往していた。
「智志と2人で・・・!?もうドキドキしてきた・・・」
「?」
 なんだろう?なにかブツブツ言っているようだが・・・。まっ、そんなことはいいか。
俺の今日の目的は、レオ閣下との勝負。あぁ、もうワクワクしてきた。
 そんな中、突然部屋に1人の兵士が入ってきた。
「勇者様みなさん、ガウル殿下が急用で話をしたいと・・・」
「?ガウルが?」
 戦前だというのに、ガウルは何を考えているんだ?
 俺たちは走ってセルクルに股がり、約束された場所に向かい始めた。そんな中、シンク
に真斗、麗さんは1羽に1人ずつ乗り込んだが、ハルは俺の乗っていたセルクルに乗りこ
んだ。
「あれ?ハル、どうしたんだ?」
「あぁ、気にしないで。私、ゴーカートとか乗馬とか操縦するの下手なの」
「あれ、そうだっけ?」
 すると俺は周りから視線を感じたので辺りを見渡すと、真斗と麗さんがニヤニヤしなが
ら、シンクはキョトンとした感じの視線で俺たちを見つめていた。
 一体何なんだ?
 ・・・・・・まあ、いいか。
「じゃあ、行こっか」
 シンクの合図でみんなが出発すると、ハルが振り落とされないようにするためか、優し
く抱きついてきたので、俺はとにかく背中の感触のことは頭から離すことにした。
「は、ハル?その、具合でも悪いのか?」
「だ、大丈夫よ!唐変木・・・」
「へっ?」
 後半がよく聞こえなかったが、俺は気にしないことにしてセルクルを走らせていった。
 約束された場所に行くと、ガウルとジェノワーズ、そして七海の5人がヒソヒソ声で顔
を合わせて話し込んでいた。
「おーいガウル、どうしたんだい?戦がもうすぐ始まるよ」
「おう、シンク。実は姉貴がまた変になっちゃったんだよ」
 俺はシンクがセルクルから降りながらガウルの言った「また」という言葉に違和感を覚
え、少し首を突っ込んでみた。
「『また変になった』って?」
「うん。実は、前にもレオ閣下は姫様に敵対していた時期があってね、僕はその時初めて
勇者としてきたんだ」
「その敵対していた理由っていうのが、星詠みによる予言だって聞くと、あほらしいんだ
けどな」
「星詠み?なんだそりゃ?」
「多分占いみたいなものじゃないの?」
「あぁ、そういうことか」
 やっぱり女子のことは女子に聞くのが一番だな。
 でも、前が占いなら、今度は何なんだ?
「で、今日の姉貴が逆戻りしたような感じでさ。兵士みんなに向かって、『犬姫と勇者た
ちの息の根を止めてやれ!』とか言っててさ」
「昨日、私たちがあったときはしっかりしていたんだけど、今日はすっごく暗いオーラが
出ていて、近づくのもためらっちゃうほどなのよ」
 と七海。
「それにうちら昨日変な光景見ちゃったんや」
 と虎耳。
「変な光景?」麗さんはキョトンとした感じで聞いてみた。
 それに答えたのはあの昨日助けてくれたノアだった。
「閣下がなにか呟いたら、突然地面に大きな赤い円みたいなものが出現して、そこから黒
い何かが地面に流れ込んでいったの」
「!? 赤い円・・・」
 真斗が呟いたその声は、何か恐怖を感じているようにこわばっていた。
「他に変わってたこととかは?」
「ほかに変わっていたことと言えば・・・、レオ閣下の目が赤くなっていたこととか?」
「「「!?」」」
 そのうさ耳の子の言葉に俺たちは1つの結論を見出した。
((((ハデスが動き出した!))))
 俺たちは顔を合わせ、全員が理解したことを確認し、セルクルを走らせた。
「シンク、ガウル!今回の戦は危険だ!」
「え?」
「おいおい、どうしたんだ、急に?」
「説明は後で!急いでなんとかしないと、大変なことになる!」
 俺たちはガウルの問いに答えるのを後にし、急いでガレット本陣に向かった。
 砂埃を立てながら、俺たちはセルクルに股がって敵陣ーガレットに向けて猛ダッシュで
進んでいた。
「急げ!!!ハデスが動く前に方をつけないと!」
「でも、なんでレオ閣下の目が赤くなっているの?」
「簡単なことだよ、ハル姉。たぶんハデスはレオ閣下の体に今乗り移っているんだよ」
「それはわかるけど、問題は地面に流れ込んでいったっていう黒いものね」
「それがなんにせよ、行ってみないと分からないな」

RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.7 )
日時: 2013/12/27 19:18
名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)

 そう言いながら4人がセルクルを進めていると、森が開けたところにガレットの兵士が
隊列を組んで待ち構えていた。
「げっ!?この隊列は・・・」
 前に槍隊、その後ろには移動式砲台に弓隊といった隊列はつまり、相手を近づけないよ
うにし、そこに遠距離系の攻撃という基礎戦略しか考えられない。
「弓隊、よーい・・・」
 予想通り、攻撃開始の合図が響こうとした。だが、それよりも早く動くものがあった。
「フンッ!」
 麗さんが足踏み1つすると地割れが起き、敵の隊列が一気に総崩れになった。
 しかし、ここで俺たちは思い出されることになった。この世界での戦とはどんなものか
を。
 兵士たちは地割れの中懸命に脱出しようと動き、その体はボロボロになり、中には額か
ら血が・・・。
「!? おかしいぞ、あいつら獣玉になっていない!」
「真斗、確かこの地にはフロニャ力加護が働いているんだったよな?」
「じゃあ、ハデスはあの時にフロニャ力を奪ったってこと!?」
「いや、多分加護を何らかの方法で封印しているんだと思う。だとしてもこれは本気でや
ばいぞ!!」
 2人の発言に智志と晴香に動揺がはしった。
「真斗、急いでハデスを探すんだ!」
「おう、言われなくてもやるに決まっているぜ!!!」
 真斗がハデスを探しに飛び立つと、智志たちはそれぞれの武器をもって、真斗の後を追
った。
「いたっ!ビスコッティ本陣に向かって猛ダッシュで向かっている!」
「先を越されたか!このままだとみんなの命に関わる、急ごう!」
 そう言い放ち、俺たちはビスコッティ本陣向かって一直線に向かった。

 ビスコッティ本陣まであと数キロだがレオ閣下、いやハデスは顔にどす黒い笑みを浮か
べながら前進していた。そのスピードはそこまで速くはないが、周りにまとい付いたオー
ラがまるで残像のようにも見える。
「・・・ん?」
 ハデスが石橋に差し掛かると、前から手裏剣のような刃が飛んできた。しかしハデスは
魔法陣1つですべて受けとめ、振り払ってしまった。
「レオ閣下、ここからはわれらがお相手するでござる!」
「お覚悟!」
 前からの突攻をしてきたのはユキカゼとエクレールだった。2人はそれぞれの武器であ
る短剣を振り落としたが、ハデスは全て右手だけで払ってしまった。
「甘いな、そのような攻撃では私は倒せませんよ」
「それなら、これならどうですか!」
 そう言いながらエクレールは剣を前に構え、力を込めた。しかし・・・、
「!? 紋章砲が出ない!」
 その隙を逃さず、ハデスは出現させた巨大な戦斧『魔戦斧グランベール』を片手だけで
振り回し、エクレールの横っ腹にぶつけた。
「グハッ!!」
 そのままふっ飛ばされたエクレールの体は宙に舞い、橋の上から落ちてしまった。
「エクレール!」
「意外と軽かったようですねぇ」
 ハデスの言い方に腹を立てたユキカゼは短剣1つで向かっていった。
「そんな攻撃ぐらい、どうとでも・・・」
 ハデスはグランベールと横に振ったが、当たる直前、ユキカゼはさらに跳躍し、後ろを
取った。そして、ハデスの首に剣を構えた。
「どうしました?トドメを刺さないんですか?」
「レオ閣下は国民だけでなく、戦の相手の命をも大切にする優しいお方のはずでござる。
されど、今のあなたはまるでただ破壊するだけの魔物のように残酷で冷淡な目をしていま
す。一体今のあなたは誰ですか!?」
「どうやらトドメは刺さないのですか。仕方がないですねぇ。ではこちらがトドメを刺し
て差し上げましょう」
「!?」
 ハデスの目が少し変わったのに気づいたユキカゼは後ろに飛んだがそこには既に魔法陣
が展開されていて、そこから無数の鎖がでてきた。その鎖にユキカゼはぐるぐる巻きにさ
れてしまい、身動きが取れなくなってしまった。
「し、しまったでござる!」
「その身軽さは上々でしたが、チャンスは1回だけでしたのに残念でしたねぇ。しかしそ
の戦績に褒美をあげなくてはなりませんね。では真実を言いましょう。私の名はハデス、
この世界全てを破壊し、すべてを消し去るものです」
「なん、ですと・・・」
「では少しの間ですが、寝ててください」
 そこまででユキカゼの記憶は一旦途絶えることになった。
 ハデスはユキカゼが気絶したのを確認した後、先を進もうとすると突然大きな水柱が立
ち上がった。
「きぃさまあ!よくも・・・、よくもー!!」
 水柱から飛び出したエクレールはすぐさま双剣による連続攻撃を繰り出したが、ハデス
は全て交わした上で一瞬の隙にエクレール顔を鷲掴みにし、石橋に叩きつけた。周りに地
響きがなり、激しい砂煙が立った。
「グハッ!!」
「全く、私を倒すことなどできないことになぜ分からないのでしょうかねぇ。まぁ、あな
たも後にしておきましょう」
 そうつぶやきながら、ハデスはさらに先に進んだ。
 ハデスが本陣に着くと周りの堀や塀の上からたくさんの兵士が顔を出し、ハデスに狙い
を定め、弓を引いていた。
「狙え!放て!」
 合図とともに矢の雨が降ってきたが、ハデスは謎の笑みを浮かべると、グランベールを
振り回し、高く振り上げると、地面に振り落とし・・・
「『獅子王暗黒爆炎斬』!!」
 突如、周りに黒い炎が出現し一瞬にして巨大な炎の渦と化すと、兵士たちに襲い掛かっ
た。
 悲鳴とともにとてつもない爆発が起こり、数キロ先の木々までもが揺れた。

「あの煙は!?」
 俺たちが爆音を聞き、音の方角を見てみると、ビスコッティ本陣の方角に巨大なきのこ
雲が発生していた。
「まさか、ハデスのやつ本陣に着いちゃったのか!?」
「急げ!!奴の狙いはシンクたちだ!!」
「「「おう!!」」」
 俺たちがセルクルに乗って本陣に向かっていると、石橋に差し掛かった。そこには石橋
に叩きつけられたエクレールと、鎖でぐるぐる巻きになっているユキカゼが気を失ってい
た。
「エクレールさんにユキガゼさん!」
「2人とも大丈夫!?」
 真っ先に俺たちは2人の容態を見ると、ユキカゼは見たほどの怪我ではないが、問題は
エクレールだった。体中傷だらけになり、愛用の短剣は刀身の真ん中から折れて、その破
片が周りに散らばっていた。いくつかは彼女の体に刺さっていて、見るからに痛そうだ。
「これはひどい・・・。早く医者に診せてあげないと」
「どもどうやって?ビスコッティ本陣は今襲撃に合っているのよ」
「ガレット本陣に戻っていれば、シンクたちの命に関わるし・・・」
 4人が万策尽きていると、上空から助け舟が来た。
「お前たちー、無事かー!?」
 その声は昨日真斗と春香が相まみえたパスティヤージュのクーベルとレベッカだった。
「クーベルさん!」
「みんな大丈夫のようね」
 箒から降りたレベッカは、目の前の光景に息を呑んだ。
「エクレちゃん!?ひどい怪我じゃない・・・。ここは私たちに任せて!」
「お前たちはレオ姉の方を頼む!今ビスコッティ本陣でひどい暴れようをしているらしい
のじゃぁ!」
「わかりました。では2人をお願いします」
「うむ」
 そう言い、2人はクーベルの空飛ぶ絨毯にエクレールさんとユキカゼさんを乗せ、すぐ
さまパスティヤージュ本陣へと向かった。
「俺たちも、急がないと!!」
 俺はセルクルに急いで乗り込み、本陣に向けて一心不乱に走っていった。
「私たちも行くわよ!」
「はい!」
「オッケー!!」
 俺たちは再び本陣めがけてセルクルを走らせた。

RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.8 )
日時: 2013/12/27 19:25
名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)

 ビスコッティ本陣のあった場所は既に焼け野原と化していた。黒い炭と化した木の柱に
焼け焦げた国旗。そして火傷に苦しむ兵士たちのうめき声の中、ハデスは何事なかったよ
うな目でその中を歩いていた。すると、背後に気配を感じ、その場に足を止めた。
「こんにちは、ミルヒオーレ・F・ビスコッティさん」
 ミルヒオーレの顔には驚愕と恐怖が映し出されていた。
「レオ様・・・、これは貴方がなされたのですか・・・」
「はい、そうですよ。しかし、今の私の中にある魂はレオ閣下のものではありません」
「では、あなたは何者ですか」
 ミルヒオーレ姫は右手に持っている小さな短剣、「聖剣エクセリード」をレオ閣下に向
けながら、そう問いてみた。するとハデスはいつものように狂った様に笑い始めた。
「アハハハハ!!やはり何にも知らないのですねぇ。だから面白いのですよ、そんな何も
知らない人を殺すことで気付かさせるのが!」
 言葉を終えた瞬間、ハデスは一瞬でミルヒオーレ姫に接近し、左手の鋭く尖った指先を
彼女の首筋に・・・。
 そして周りに響いたのは、金属音だった。
「姫様に手を出すな!!」
「シンク!」
 2人の間に入ったのは、シンクだった。しかしその体は先ほどの爆発によるものと思わ
れる傷が何個もあり、無傷と言えなかった。ハデスはフッと軽くにやけながら素早く後ろ
に飛んだ。
「やはり来ましたか。『主人公』、イズミ・シンク!」
「なんだよ、そのコア・ヒューマンって!?」
 しかし、ハデスはその問いに答えないで、いきなりグランベールを左手で持って攻撃を
かけてきた。シンクはそれを紙一重でかわしたがハデスはそれを分かっていたのか、右手
に出現させた魔法陣による爆裂で、シンクは直撃により吹っ飛ばされてしまった。
「グハッ!!」
「ハハハ!!脆いですなぁ」
「シンク!」
 ミルヒオーレ姫はシンクのもとに走ったが、ハデスによって拒まれた。
「レオ閣下、もうやめてください!本当のあなたはここまで残酷ではないはずです!」
「だから言いましたではありませんか。今この体の中にある魂はレオ閣下のものではない
と」
 ハデスはそう言いながら、狂った様な笑みを浮かべながらグランベールを振り上げた。
しかし、振り落とされる前に背後から襲撃をうけ、ハデスはよろけ、グランベールも狙い
をそらして地面に振り下ろされた。
「!?」
「大丈夫ですか、姫様!!」
「晴香さん、それにみなさん!!」
 攻撃は真斗によるものだった。4人はギリギリ間に合ったのだ。
「ハデス・・・、貴様・・・」
「おやおや、あなたたちですか。ここにまで追ってくるとはたいしたものですな。」
 その言葉を聞いた瞬間、智志は剣をさらに握り締め、走り始めた。
「うおぉおお!!」
「ハハハハッ!」
 ハデスはすぐさま走り始め、智志の剣の攻撃を全てさばいた。
「『幻想殺し』!!」
 智志の声に反応し、剣から出現した青い光の龍の首はすぐさまハデスの胴に食らいつい
たが、ハデスの顔は狂喜にあふれた。
「ハハハ!気づかないのですか?この体はレオ閣下のものであり、もしこのまま一方的に
すればレオ閣下の命はどうなってしまうのでしょうね?」
「!?」 
 ハデスの言葉を聞き、智志は剣を戻したが、噛み付いたところからは噛み跡が赤く残っ
ていて、血が滴っていた。
「くそっ、あれもハデスの計算のうちか!」
「これじゃあ、私たちも迂闊に手が出せないじゃない!」
「来ないのなら、私が全員殺してしまいますよ?」
 そう言い放ち、ハデスが右手を前に掲げるとそこに魔法陣と巨大な青い炎が出現し、そ
れらはまるで意思があるかのように全員に襲いかかった。
「な、なんだこりゃ!?」
「きゃあ!あっち行って!」
 全員炎を払おうとしても、炎はまるで蚊のようにかわしてしまい、きりがなかった。
「クソッ!」
 智志が気が少し抜けているところを炎は彼の左腕につくと、いきなり爆発した。
「「「智志!!」」」
 砂煙が晴れると、そこにいたのは剣を片手でなんとか持って体を支えている智志の姿だ
った。
「ハデス・・・、お前もを忘れているようだな」
「?」
「俺の左腕はお前が切り落としたことを!!」
 智志が左腕を前に出すと、左腕の義肢が光だし、壊れていた部分が完全に修復されてし
まった。
「あれって修復可能なの!?」
「無茶苦茶な義肢だなぁ・・・」
 真斗たちが呆れていると、炎はさらに増えていき、流星のようにそこにいた全員に降り
注いできた。
「「「!?」」」
 しかし、その炎の流星群は突然出現した赤い炎によって全て吹っ飛ばされた。それは、
シンクが渾身の力を振り絞って放った紋章砲だった。
「シンク!そのような体で無茶しないでください!」
「姫様・・・このくらいのことをしなかったら、みんなの命に関わることになったのです
よ。僕はそんなことほおっては置けません!みんなの笑顔を消させたくないんです!!」
「シンク・・・」
 姫様の目には、シンクの言葉を聴いて共感したのだろうか、うっすら涙がでていた。
「そうだな、シンクくんの言う通りだ。俺たちが人を救うことはその人たちの思いや未来、
全てを守ることと同じだもんな」
「智志・・・」
 更に剣を握り締めた智志はハデスの方に視線を戻し、再び構えると一直線に突っ込んで
いった。
「智志!!!」
「馬鹿めがァ!」
 ハデスは右手を前に出し、再び魔法陣を出現させた。しかし、智志は迷うことなく青龍
を前に出しながら、頭の中に聞こえて来る声に耳を傾けていた。
『炎の勇者、その行いは世界に旋風を巻き起こし、皆に笑顔をあたえた。そして彼に勇者
としての力を与える剣の名は・・・』
「『神剣パラディオン』!!!」
 智志の声とハデスの攻撃はほぼ同時だった。「ジャバウォック」は智志に直撃するかと
思いきや、青龍で切り裂かれてしまった。
 しかも、青龍は刀身がオレンジ色に染まっていき、サトシの服装は剣を持つ右手から徐
々に白い光に包まれていった。光が弾け、そこに出現したのは白いマントと赤い服、そし
て輝く黄金色の髪をした智志だった。
「「「「「!?」」」」」
「あの姿って・・・僕!?」
「覚悟しろよ、ハデス!!」
 智志が掛け声1つ出すと、一迅の風が吹き、一瞬にして智志はハデスの目の前に接近し
ていた。
「ちっ!」
「遅いぞ」
 そこからは智志の猛攻の始まりであった。ハデスがかわそうとするとその裏をかいてい
るのか、素早く青龍が動き、別の方向から青龍がたたきこまれた。ハデスがよろけると、
その後ろから斬撃、キックといった攻撃を仕掛けることで、ハデスは反撃できずに追い込
まれていった。
「ちっ!このままでは埒が開きませんね・・・」
「ハル、真斗、麗さん!」
「まかせて!」
「よっしゃ、出番だ!」
「行くわよ!」
 3人はそれぞれの武器を手にし、智志と同じように頭の中の声を聞き、ほぼ同時に叫ん
だ。
『疾風の如く唸る2つの剣。その牙は自らを鍛え、また戦いの場へと降り立つ・・・』
『天をも穿つ魔弾は大空を舞い、必ず敵を討つ。逃れるものはなし・・・』
『魔を切り裂く巨大な剣は、呪われた剣を贄とし、光へと浄化する力を持つ。その力は・
・・』
「『光輪剣双牙』!!」
「『天槍クルマルス』!!」
「『神狼滅牙』!!」
 その瞬間、晴香は輝力のベールに包まれ、そこには1.2メートルほどの剣を持った2
つの手のような浮遊物体が構成され、晴香の服は白とミントの戦闘服に変わった。
 真斗は光に体が包まれ、光が弾けるとリスのような耳と黄色を主体とした燕尾服が出現
し、光は真斗の武器である「白虎」を包み、長めの古式銃のようなスタイルとなった。
 麗さんは巨大な魔法陣に包まれ、魔法陣が消えると、白と紫の戦闘服と茶色い小さな耳
が出現していて、手には2メートルはあると思われる大太刀を掴んでいた。
「エクレールさんによくも大怪我させましたね!」
 まずは晴香が飛び出し、輝力の二刀流を繰り出した。ハデスがかわそうとしても斬撃は
晴香に答えるように刃が伸縮自在に変わり、ハデスは防戦一方となってしまった。
「なんと、ここまでやりますか・・・」
「よそ見禁物だぜ!」
 その声は空から奇襲をかけてきた真斗のものだった。空飛ぶ絨毯に乗りながら集中砲火
をかけられ、ハデスはそれをもろに喰らうと、吹っ飛んでしまった。
「うっ!」
 吹っ飛んだハデスだったがすぐ立ち上がると、視線の先には麗さんが立っていた。その
大太刀は紫色の輝力によって覆われていた。すると麗さんが大太刀を天に掲げると、巨大
な刀身が出現した。その大きさはざっと見繕って10メートルはあるようだ。すると麗さ
んは足に力をかけ天高く空に飛び上がった。
「覚悟しなさい。『神狼滅牙』・・・、封魔断滅!!」
 麗さんが巨大な大太刀を振り落とすと、物凄い砂埃がおきた。

RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.9 )
日時: 2013/12/27 19:34
名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)

 砂埃が晴れるとそこから出てきたのはハデス本体であった。どうやら今の攻撃で出てき
てしまったのだろう。
「やりますね、私をここまで追いやるとは・・・」
「これで決めるわよ!『獅子王双牙』!!」
「『神剣メリクリウス』!!」
 麗さんと真斗が叫ぶと、2人の姿は青が主流の軽装備、青い紳士服に早変わりした。麗
さんはすぐさま両手の輝力爪による攻撃を仕掛けに走った。
「はぁっ!」
 だがハデスはそれを魔法陣1つで防いでしまい、振り払ってしまった。
「なんとまぁ、これだけですか?」
「これからが本番よ。真斗!」
「!?」
「メルクリウス、ウィッチキャノンモード!」
 ハデスが真斗の方を向くと、真斗の武器からは光の銃身が伸びていて、銃口には魔法陣
が展開されたいた。
「ファイヤー!!」
 真斗が引き金を引くと黄金色の光が放出され、その反動で体が後ろに吹っ飛んだが光は
ハデスを直撃した。
「グハッ!!ここまでやってくるとは・・・。でもまあいい、ここで全員殺せば」
「そうは行くか!!」
「!?」
 智志は剣を構えながらハデスの通路を遮った。ハデスはすぐさま魔法陣を展開し、智志
を排除しようとしたが、智志は天高く飛び上がり交わした。
「ハル、合体必殺技いくぞ!」
「わかったわ!『聖剣エクセリード』!!」
 晴香が叫ぶと、彼女の体と朱雀が桃色の光に包まれ、そこから出てきたのは桃色のドレ
スと髪をした桃色の光に包まれた剣を持った晴香の姿であった。
「いくぞ!!」
「「はあああああ・・・」」
 2人が力を溜めると剣の光が強くなり、力強き光の剣身へと変わった。そして2人は剣
を高く振り上げた。
「「ホーリー・・・、セイバー!!!」」
 剣が振り落とされると、桃色の光と炎のような紅の光、2つの光がハデスの向かった。
「フンッ!」
 ハデスは魔法陣を2つ展開すると、なんと光をそれぞれ片手1つずつで防いだ。
「はああああぁぁ・・・、うらぁ!!!」
「「!?」」
 その光景に2人は唖然とした。ハデスはなんと必殺の光を展開した魔法陣ごと渾身の力
握りつぶしてしまったのだ。
「はぁ・・・はぁ・・・。慣れない事をするからやりすぎてしまいましたよ・・・」
 今の防御の代償なのか、ハデスの右手は赤黒い血が滴っている。
「さすがにここまでやられますと、こちらとしても立場がありません。ですので・・・、
さっさと死んでください」
「「!?」」
 智志がその言葉を聞き終えた瞬間、ハデスは智志の目の前にまで迫っていた。死を悟っ
た瞬間、何故かハデスの体は横へと吹っ飛んだ。
「サト兄、大丈夫か?」
「サンキュー、真斗」
「ちっ、余計なことをしてくれましたね・・・」
 ハデスの目には怒りを感じる何かが揺らめいていた。
「おっと、そろそろ決めるぜ。俺と『白虎』の超必殺技でね」
 その言葉に反応するように、真斗の銃身から、奇妙な風が吹き荒れた。ほかの人が立つ
のが精一杯の中、ハデスと真斗だけが立っているのだ。
「行くぜ・・・、『白虎』!」
 瞬時に銃身が展開し、風でできた虎のような獣の形ができた。風の虎は唸りながら解き
放たれるのを待っているように地面を引っ掻いた。
「『咆哮牙』!!!」
 真斗が叫ぶと同時に引き金を引くと、虎は音速の速さでハデスに襲いかかった。
「こ、これは・・・」
 ハデスは魔法陣を作るが両手で抑えるのが限界らしく、徐々に体が後退していき、ハデ
スの体が見えなくなった瞬間、辺りに激しい突風が吹いた。
 風が晴れると、そこには瓦礫などが跡形もなく消え去り、そこはただの平原と化してい
た。
「ふう・・・。あれ、みんなは?」
 真斗が周りを見渡していると、上空から何か振って来ると・・・・・・。
「「「「「うわあぁぁあぁあああ!!」」」」」
 なんとみんなそれに吹き飛ばされていたようで、重力に従ったまま隕石のように落ちて
くると・・・地面に人型の穴が6つ空いた。
 すると穴の1つから智志は這い出てくると、荒い息のまま空を向いた。
「ったく真斗のやつ・・・やりやがって・・・。後で覚えていろよ・・・」

「本当にひどい目にあったよ・・・あいてっ」
「智志、動いちゃダメ。フロニャ力の加護が聴いていたとしても今日は安静にしときまし
ょ」
「もう、真斗のバカ。みんな吹っ飛ばすような必殺技なんて使うんじゃありません!」
「ごめんごめん・・・」
 幸いにも死者は出なかったので良かったが、エクレールさんとレオ閣下の他にも重傷を
負ってしまった兵士が出てしまい、城の外では今回の大事故について知ろうと人々が押し
寄せていた。この後の会見はとんでもない騒ぎになるだろうと予想されるな。
「すまなかった。わしのせいで民や勇者だけなく、お前たちにまでにまで迷惑をかけてし
まった」
「いえいえ。そもそもこの騒ぎの黒幕はハデスなんですから、レオ閣下が自分を責めなく
ても・・・」
「ハデスって、あの黒服の人?」
「そう。あいつは異世界を渡り歩いてその世界のコア、つまり『主人公』の存在を殺すこ
とでその世界の全てを破壊してきたらしいんだ」
「ちなみに俺たちの世界もあいつに襲撃され、サト兄は左腕を失ったんだ」
「そういうことでしたのですか。皆さん大変でしたようですね」
「では、そのことも含め、国民にそのことを知らせなければ」
 レオ閣下は真斗たちのことを聞き、すぐさま会見に向かおうとすると、真斗が言葉でレ
オ閣下の行く手を遮った。
「このことはあまり世間には話さなくてもいいです。レオ閣下は魔物にでも操られていた
とでも言っといてください」
「何!?そのようなことは」
「それがいいんですよ、閣下。俺たちもこれ以上、この世界の人を巻き込みたくないんで
ね」
 真斗に言葉を遮られ、レオ閣下は口を紡ぎながら苦い顔をしながらその包帯だらけの体
で進もうとしたが、傷がひどいためにすぐ倒れそうになったが、麗さんと晴香がそこに手
を貸してくれたおかげで強く床に打ち付けないで済んだ。
 すると、すぐに猫耳のメイドが数人駆けつけてきてくれた。
「あとはこちらが・・・」
「お願いします」
「何度も済まないな」
 晴香と麗さんは手をどかすと、メイド2人に肩を借りてレオ閣下は傷だらけの体で会見
に向かっていった。
「まさか、レオ閣下が操られていたとは」
「そうだね。そういえばエクレの方は大丈夫?傷と言っても閣下よりは軽そうだけど」
「昨日も言ったが、これでも騎士なんだ。これくらい」
ツンツン
 エクレが喋っていると真斗がベットにこっそり近づいてきて、指でエクレールの足を軽
く突いた。
「痛っ!!」
 意外と痛いらしい。
「こらっ、真斗!」
「エクレ、大丈夫?」
「あぁ大丈、夫・・・」
 その時、シンクの顔が覗き込んできたた途端、エクレの顔は真っ赤になった。
「ち、近いぞバカぁ!!」
「あがぁっ!?」
 すると、エクレが咄嗟に繰り出したパンチはシンクの顎に直撃してしまい、シンクはそ
のままベットの上で気絶してしまった。
「お、おい!勇者起きろ!ここで気絶するな!」
「まあ、こんだけくらえば明日の朝には起きると思うよ」
「なっ!?それはダメだ、早くこいつを運んでやってくれ!」
「いいんじゃないんですか?意外と絵になる光景だし」
「良くない!あ痛っ・・・。」
 強く体を動かしたせいで、エクレの傷口が少し痛んだようだ。
「もう、あまり動いちゃダメよ」
「そ、それなら麗さん、早くどかしてくれ!足の上にいて傷が開いてしまう!」
「それはダメだ!早くどかしとかないと」
「サト兄、いっつも空気読まないんだよなぁ」
「ホントね」
「何言ってるんだ!ハル、ちょっと手伝ってくれ!」
「うん、分かった!」
 こうして2人はシンクを担ぎながら足早にその場を去っていった。

RNW (Right Novel World)2−紅の勇者ー ( No.10 )
日時: 2013/12/27 20:55
名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)

「やれやれ、さっきのエクレさん、何かおかしかったね」
 俺はシンクを運ぶと、一息つきながらハルとテラスから夕暮れを眺めていた。
「智志、何も分かっていないの?わざとなのそれ?」
 は?どういう事だ?意味分からん。
「それはいいとして、みんなわかってくれたようだね」
「・・・、そうだね・・・」
 窓からは人々の楽しそうな笑い声と露店を準備する音が聞こえてくる。それらはさっき
までの怯えた声とは裏腹で、こっちまで楽しくなってきた。
 すると、突然ハルが俺の左腕に体を寄せてきた。
「智志・・・」
「ん?」
「この戦いが終わったら、元の世界に帰れるんだよね?」
 そう聞かれ、俺は少し答えに戸惑ってしまった。何者かは俺達に異世界を救って欲しい
とは言っていたが、返してくれるとは一言も言ってなかったな。このまま分からずじまい
だったら帰れるかどうかは定かじゃないな。
「・・・・・・」
「も、もし帰れなかったら・・・智志はどうするの?」
 そう聞かれ、俺は頭の中で奮闘し始めた。
 帰れなかったらか・・・。そうなると俺の中では困る。父さんや母さんを残したまま俺
は親孝行せずに生涯を過ごすなんて・・・
「わ、私はね、その・・・」
 ここはまず、帰れるように最善を尽くすかな?前回俺達は異世界を超えるとき、青龍を
使って入口を開いていたよな?それを使えばいいのか?
「私は、智志と一緒に!」
「なんだ、簡単なことじゃん!!」
「え?」
「帰れないことなんてないんだ。青龍は今、俺の物扱いだ。壊れることも奪われることも
あるわけないし、だったら戦いが終わっても同じようにやれば帰れるんじゃないかっ!」
「〜〜〜〜〜」
 あ、あれ?ハルどうしたんだ、突然俯いたと思ったら怒ったような顔して?
「智志の・・・馬鹿あっ!!!」
「うげっ!?」
 い、いきなり脳天チョップされた・・・。
「ふんっ!」
 ハルはそのまま足早にその場を立ち去り、俺はその場に取り残されてしまった。
「一体何だったんだ?」
 女の子のことはよくわからん・・・。

(バカバカ!なんであんな時にあんなこと言っちゃったの、私!)
 晴香は智志といたテラスから去ったあと、後悔していた。
(もうちょっと勇気を出していれば本当の気持ちを伝えられていたのにィ。)
「なにしているの、晴香ちゃん?」
「わああぁ!?」
 不意に声をかけてきたのは麗さんであった。
「ななな、なんでもありません!」
「あらそう、てっきり智志くんに告白しようとして智志くんのいつもの唐変木にムカつい
ちゃって立ち去っちゃったことを後悔しているかのような顔だったから」
「うグッ!?」
 麗さんにまるで見透かしているかのように言われ、晴香は顔に同様が出てしまった。
「どうやら当たり、かしら?」
「・・・・・・なんで智志はいつもずれたことばかり思うのかしら?」
 観念したのか、晴香は今は心許している麗さんに先ほどあったことを打ち明けた。
「そうね・・・。智志くん、あれで本当に鈍感なところあるからね。意外と恋の駆け引き
とこの戦いだったら、ハデスよりも強敵よ」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
 麗さんの軽いジョークの混ざった話し方は、晴香の顔を、心を明るくさせた。
「そういう時は、さっきみたいにいつもどおりに話しながら、さらりと言っちゃえばいい
かもしれないわよ」
「そ、そんなことできませんよぉ〜」
「晴香ちゃん、もう少し自信持ちなさい。きっと智志くんだって思いっきりぶつかれば振
り向いてくれるわよ」
「そうですか・・・」
 麗さんのアトバイスは確実なのだ。委員長をしているからこそ人の感情を理解し、尚且
つその対処法をマスターしているのだ。麗さんが恋愛相談所を作れば、たちまち成功間違
い無しだろう。
「あと、少し色気使ってもいいかもね。さっきと同様にド直球にいくと、智志くんみたい
な子はすぐに意識すると思うわ」
「あ、ありがとうございます。麗さん」
 晴香はアトバイスされた途端に恥ずかしくなり、足早にその場を立ち去ろうとした。
「うふふ。もし付き合い始めたら、すぐに私にも連絡してね」
「そ、そう言われましても・・・」
 晴香はいきなり「付き合う」と言われ、また顔を赤くしながら去っていった。
「これ、エクレちゃんやミルヒオーレ姫様たちにも伝えたら、面白いかも」
 その笑みは、みんなの幸せを願っている、ちょっと大人びた笑みであった。

 日が昇り、俺たちは服のほころびなどを城の方に直してもらった後、ビスコッティを出
ようとしていた。見送りとしてシンク、ミルヒオーレ姫にエクレさん。ユキカゼやダルキ
アン卿、レオ閣下にガウル殿下とジェノワーズ、七海さんまでも来てくれた。
「少しの間でしたが、ありがとうございました」
「お礼なら、こちらから言いたい。なにせわしはお前たちのおかげで今ここに生きていら
れるのじゃからな」
「いえいえ、それほどでも」
「真斗、あんたが照れるところじゃないわよ」
「はいはい」
 真斗のボケが混ざったことによってみんな高らかに笑い飛ばした。
「みんな、これからどこにいくの?」
「もちろん、ハデスを追う。これ以上被害が出る前に倒さないと」
「それなら、絶対勝って来てね」
「おお」
 そう言いながら、俺とシンクは握手を交わした。
「おう、間に合ったようじゃなぁ」
 そんな言葉と共に飛んできたのはクーベルさんとレベッカさんだった。そのうちクーベ
ルさんは後ろ何か荷物を持っていた。
「クーベルさん、どうされたのですか?」
「お前たちが去ってしまうと聞いてな、お礼を持ってきたのじゃぁ」
「お礼?」
「それっ!」
 そう言いながら、クーベルが投げてきたのは小さな指輪のようなものだった。
「これは?」
「ちょっとうちらのほうにあった霊石で作った指輪じゃ。お守りとしてくれ」
「ありがとうございます。このお礼はいつか」
「お礼なんていらないよ」
 とレベッカさん。
「そうそう。君たちにはこの世界を救ってもらったのだからね」
 と七海さん。
「またこの世界にも寄ってね」
 とシンク。
「あぁ、約束な」
「みなさん元気でね」
「ばあ〜い」
 そう言いながら俺は道の方を向くと、青龍を構えた。
「ふんっ!」
 剣から放たれた光は空間にぶつかると、そこに次の世界への入口ができた。
「行くよ!」
「ええ!」
「さてと、行くか!」
「ハデスには絶対に負けないわよ!」
 そうそれぞれ言いながら俺たちは入口に飛び込むと、入口は縮んで、跡形もなく消えて
しまった。
 後には、爽やかな風に吹かれながら別れを惜しむシンクたちの姿が残された。
「行ってしまいましたね」
「また戻ってくるよ。きっと・・・」
 空の向こうで1羽の鳩が大空を舞っていた。
                              〜To Be Continued〜


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