二次創作小説(紙ほか)
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- RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー
- 日時: 2013/12/27 17:04
- 名前: 牙鬼 悠登 (ID: 3UNlfhyM)
こんにちは、牙鬼です。今回で3ツ目となります。
前回の「DOG DAYS」に続いて、今回のは私のお気に入りの作品です。なんせ、この作品好きですから。
ではどうぞ。
RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー
ー6、絶対兵器(アイエス)ー
やっぱり不思議な空間だ。無重力のように体が浮いていて、まっすぐに次の世界へと進
んでいた。
「おっ、出口が見えてきた!」
視線の先には白い光が見えてきて、俺たちは1目で次の世界の入口だとわかった。
「さて、次の異世界は何の世界なのかな?」
「真斗!突っ走らないで!」
「平気平気。問題ないよ」
そう言いながら真斗がスピードを上げてきた。
「それじゃサト兄、先行くから」
そう言いながら真斗は俺を追い越し次の世界へ一番乗りに入った。
「うわあああぁぁぁぁ・・・」
途端に真斗の悲鳴が聞こえた。
「真斗くん!?」
「なにかあったのか!?」
俺たちは急いでその世界に入ってみると、そこは・・・。
「「「・・・へっ!?」」」
そこは空の上で、下には1つの孤島と海が見えていた。
「「「うわああああああああ!?」」」
そこから俺たちは自由落下していった。
「おう、サト兄たちも落ちたか」
「何いつもどおりに振舞っているんだぁ!?」
「このままじゃ、あの島に頭ぶつけて死んじゃうよぉ!!」
「しょうがないなぁ。『天槍メリクリウス』!」
真斗が叫ぶと、いつ出したのか、真斗の武器「白虎」が光り、そこからあの空飛ぶ絨毯
が出現し、真斗はそれに乗り込んだ。
「姉貴、乗れ!」
麗さんはためらいなくその絨毯に乗り、俺とハルもそれに乗ろうとした。
「サト兄、パラディオンを出して、輝力武装を出すんだ!」
「輝力武装!?」
「いいから!パラディオンを出して空飛ぶ感じをイメージして!」
「わ、わかった!」
真斗に言われるがままに俺は「青龍」を出して、「『神剣パラディオン』!!」と叫ぶ
と、俺の体は光に包まれ、あの赤と白の勇者の姿に変身して、空を飛ぶ鳥のようなものを
イメージしてみた。すると足元に炎が舞い、2人くらいが乗りそうな巨大な白いボードが
現れた。
「これは!?」
俺がそれに立とうとすると、逆さになっていた体がひっくり返り、ボードに乗ることが
できた。
「ハル!!手を出して!」
俺が手を出しながら呼ぶとハルはすぐに手を伸ばしてきて、俺の手を握った。その時、
俺たちは既に上空10メートルにまで落ちていた。
「智志、このままじゃあまずいよ!」
「くそっ!掴まれハル!」
「へ?キャッ!?」
俺はすぐさまハルを抱えて足に力をかけた。するとボードは赤い炎をまとい、凄まじい
突風により俺たちの落ちる速度は一気に落ち、ゆっくりと着地した。
「よかった〜。あれ?ハルなんで顔赤いんだ?」
「さ、智志・・・、この格好、恥ずかしい・・・」
「へ?」
するとその横に、絨毯から真斗と麗さんが飛び降りてきた。
「いやぁ、見てて飽きないね、サト兄」
「お姫様抱っこで着地する。なんか2人がどっかの王子様と姫様に見えてくるわね」
「なっ!?お、王子様と姫様!?」
「ちょと待て!いきなりなんでそんなことになるんだよ!」
「いやぁ、お似合いでしたから、ノリで」
「ノリで、じゃねえ!」
そんなやり取りをしている場合ではなかった。俺はこの世界について理解し、この世界
のコア・ヒューマンを探さないといけないのになにしているんだ俺は!
すぐさまハルを下ろして周りを見渡すと、そこには巨大な建物があった。どうやらスタ
ジアムらしい。さらにどこからか女子の姦しい声が微かに聞こえてくる。
「真斗、この世界はなんなんだ?」
「いきなり質問されても・・・。まずは情報収集が先決だ。行こっか」
「そうね。晴香ちゃん、そろそろ・・・」
「王子・・・姫・・・王子・・・姫!?あぁ・・・」
「ダメだこりゃ」
- RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー ( No.10 )
- 日時: 2013/12/27 17:24
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
「はあ・・・、はあ・・・」
俺は死に物狂いでハルを担ぎながら、セレン・テレブレイのいる場所からしばし退避し
ていた。
「さ、智志・・・」
「今は喋らないで。顔色悪いし」
そう言うと、俺は木にもたれかけさせるようにハルを背中から下ろした。そして、元来
た道を歩き始めようとしたところでハルに腕を掴まれた。
「ど、どこ行くの?」
「もう一回やつのところに行かないと・・・」
「そ、そんなの・・・ダメ・・・」
心配するような悲しげな顔で俺を止めようと腕を掴むハルのその姿は俺の胸に響いた。
「でもこのままだと、この世界が・・・」
俺は胸の痛みを振り払い、ハルの手を振り払った。
「智志!」
「絶対、生きて戻るから・・・」
「でも」
「それまで、ここで待っててくれ。俺はここで引き下がれないんだ。ハルも、真斗も麗さ
んも既に引き下がれないところまで来ちまったんだからな」
俺はそう言い残し、セレン・テレブレイのいる方に走りだした。
「!」
その時、俺の方に爆音と共に織斑くんが吹っ飛ばされてきた。既にエネルギーも底をつ
きそうになっているようで、雪片からは『零落白夜』の光は失われていた。
「織斑くん?」
「だ、大丈夫・・・」
そう言いながら、織斑くんはゆっくりと立ち上がり始めた。
「君も・・・、諦めが悪いようだね」
「あぁ。俺はみんなを、俺の仲間を守りたいんだ・・・」
「仲間・・・」
「智志君もそうだろ?誰かの為に戦い、守りたいがために諦めない、そんなところが俺に
似ているんだよ」
そうか、俺は「彼の剣」が「俺の剣」とは違っていることにその時はっきり気づいた。
俺の剣は、剣道で自分を強くある為の剣だった。父の剣を追い、強くいようとして、俺
は様々な人を武力で倒してきた。
だが織斑くんの剣は弱いが、誰かを守るための剣とするとその理念はどんな剣技よりも
固く、強いものなのだろう。そこに誰にも負けない1本の「信念」があるのだから。
そして、互いには今、共通点ができたのだ。「誰かの為に戦う」という鋼鉄の信念が。
「そうか・・・、君がこの世界の『主人公』だという理由はそれか・・・」
「え?」
「その心の強さだ。君ほどの『誰かを守る』という思いはどんな剣豪でも持っていなかっ
たからな。その心、絶対殺させないから」
「・・・・・・」
そう言い、俺は再び歩き始めた。
「智志君!」
「大丈夫だよ。それより、織斑くんは少し休んでいな。あとはこっちに任せて」
「なっ!?それこそ無茶だ!ISすら付けていないのに」
「俺がどうとかじゃない。君がみんなを守るために、俺が行くんだよ・・・」
「えっ?」
「君が死んだら、みんなは悲しくなるだろ。だからみんなを守る君を、俺が救ってやるか
ら!!」
そう最後に言い、俺はセレン・テレブレイめがけ、走っていった。
「サト兄1人で行かせるかよ!」
「地獄でもなんでも、私たちもついていくわよ!」
「智志!置いてかないで!」
そのあとを追ってきたのはハル、真斗、麗さんだった。1人で行くはずだったんだがな
・・・。俺はちょっと苦笑してしまった。
「じゃあ行くぜ、セレン・テレブレイ!」
あたりは火の海と化し、寮にまで火の手が上がっていた。俺はその中を顔色変えずに浮
遊しているそのIS、セレン・テレブレイにだんだん腹が立ってきた。
「覚悟しろよ、みんなの分まで俺たち4人がぶっ飛ばしてやるからな」
「・・・、面白い・・・」
(ん?今の声・・・)
俺はそんな疑問符を振り払い、すぐさま青龍をまた握り締めた。
すると、その頭にあの声が響いてきた。
『諸刃の剣は強くも脆い。だが、その心は決して折れない。それはまるで氷のように。そ
の力は、仲間を守るため。呼べ、その名を・・・』
『白と対する色。雪片に対し力を増幅させる。互いを強め、互いを破壊する抑止力として
あり、まさに最高の相棒。呼べ、その名を・・・』
『蒼き光は光に緩和され、幻想曲は終わらない、その鼓動終わるまで。呼べ、その名を・
・・』
『不可視の衝撃は龍の咆哮のように強力。切り裂く刃は嵐のように激しい。呼べ、その名
を・・・』
「ハル!真斗!麗さん!」
「聞こえたよ!」
「よっしゃ!いつものやつ行くぜ!」
「本気で行くわよ!」
「?」
「よし、行くぜ!『白式』!」
「『紅椿』!」
「『蒼い雫』!」
「『甲龍(シェイロン)』!」
俺たちの言葉と共に光に包まれた俺たちの体に粒子が集まり、巨大な金属の腕に足、そ
して翼が作り出された。そう、これは間違いなくISだった。しかも、驚くところはもう
1つあった。
「!?」
「あ、あれは・・・」
「私たちの・・・IS!?」
そう、俺たちは織斑くんたちと同じISをつけているのだ。
「なるほどな・・・。だが、貴様らにそれを使いこなす力などあるはずが」
ドカアアアン!
謎の操縦者のあざ笑うような言葉を途中で打ち切ったのは、麗さんの衝撃砲だった。し
かもその不可視の砲弾は、ミサイルポッドを一度で3つも破壊してしまった。
「あんらぁ、ごめんなさい。話途中でしたようですけど、ムカついたのでぶっぱなしちゃ
った」
うわぁ・・・。麗さんが豹変しているし(しかもドSver)・・・。
「その腐った感覚に、俺が喝入れてやる!」
真斗も本気で殺る気だぞ、これ。
まあ、いいか。そんな俺も、今本気で滾っているんだ!
「行くよ、ハル!」
「ええ!」
俺の一声でハルたちはスラスターを全開にし、セレン・テレブレイへと飛び込んでいっ
た。
「「「「おおおおおっ!」」」」
「無駄なことを・・・」
そう言い、謎の操縦者はレーザーを連射してきた。
だが、今の俺たちにはは聞かなかった。俺は雪片だけででレーザーを無力化し、ハルは
朱雀から放つエネルギー刃で相殺、真斗は白虎とビット、合計5つの砲口から放つレーザ
ーで確実に打ち抜き、麗さんは神速のような軽動きで全て交わしてしまった。
「意外と簡単だなぁ」
「そうだね」
「ちっ!」
謎の操縦者は俺たちにイラついたのか、舌打ちして上昇を始めた。
「逃がすか!このまま無力化させる!」
そう言い真斗が飛び立つと、謎の操縦者はいくつかの小さな何かを投げてきた。よく見
るとその物体は丸く、赤いランプが付いていた。
「まずい、爆弾だ!」
「真斗、逃げなさい!」
だが、真斗は止まらなかった。それどころかどんどん加速していった。
「それでいいんだぜ、『疾風の再誕(ラファール・リヴァイブ・カスタム2)』!!」
その言葉と共に、真斗の蒼色の機体が光に変わり、その輪郭を変えた。
作り出されたのはオレンジ色の4枚羽のIS、つまりシャルロットさんのISに身を包
んだ真斗の姿だった。
「シールド展開!」
爆発する瞬間、真斗の目の前に物理シールドが3枚出現し、爆弾の炎から真斗を守りる
と再び粒子になり消えていった。
「今度はこっちから行くぜ!」
真斗はすぐさま白虎を片手で持つと、連射を始めた。だがセレン・テレブレイにはこの
ぐらいは痛くも痒くもないようにシールドを展開し、真斗の実弾を防いだしまった。
「ありゃあ、やっぱダメか」
そう言いながら、レーザーをかわしながら真斗は俺たちの方に退却を始めた。
「どうすんだ、真斗。あんなの、倒そうにも俺もシールドエネルギー使い切りそうなんだ
けど」
「何やってるんだよ、サト兄!少しは効率よくだなぁ」
すまん・・・。
そのとき、後ろから誰かが俺に背中をつついてきた。
「ん、ハル?」
「まかせて。今回復させるから」
「へ?」
その言葉と共に、紅椿が黄金色に輝き始め、俺のシールドエネルギーを満タンにした。
「こ、これって!?」
「紅椿のワン・オフ・アビリティー、『絢爛舞踏(けんらんぶとう)』だよ。これでいけ
るでしょ?」
「あぁ。ありがとう、ハル」
「それじゃまあ、サト兄を援護するぜ!」
「まかせて!」
「さぁ、こっから先は全て私達のターンよ!!」
そう言い放ち、俺達は再びセレン・テレブレイに突っ込んでいった。
謎の操縦者も負けじと、ミサイルを一気に全方向から発射させた。
「みんな、私の後ろに下がっていなさい!」
「れ、麗さん何を?」
「『黒い雨(シュヴァルッツェア・レーゲン)』!!」
麗さんの言葉と共に、真斗の時同様に機体が光と化し、右肩にあの大型のレールカノン
が出現した。
「止まりなさい、埃ども!!」
麗さんが右手を前に出すと、そこから見えない壁が出現したかのようにミサイルがその
前で爆発した。
「おぉ!AIC!」
「このまま行くわよ!」
「「「おおっ!」」」
俺達がまた近づいてきたのでセレン・テレブレイも恐れをなしたのか、ビットを手元の
方に戻し、逃げ始めた。
「逃がすかっ!」
俺達はセレン・テレブレイを追った。すると、再びビットが俺達の方に飛んできた。
「打ってくる、みんな気をつけろ!」
「いや、違うようだぜ、サト兄!」
俺は真斗に言われ、ビットをよく見るとその上に赤く光る物体が・・・。
「なっ!?ビットに爆弾!?」
「ビットは操縦者の意思で動かすこともできるんだ。こりゃまるで『誘導爆弾』だな!」
「ここはまかせなさい!」
そう言い、麗さんが突っ込んでいった。
「姉貴!」
「大丈夫よ。このくらいでへばるほどメス豚じゃないわ、とっとと失せなさい!」
「ありがとうございます!!」
そうお礼を言い、俺とハル、それに真斗はセレン・テレブレイ本体の方に一直線に飛ん
でいった。
「お先!」
そう言うと、さっきまでの速さの数十倍の速さで突っ込んでいき、その距離を0にまで
縮めた。
「くっ・・・」
「逃がすかよ!これは俺からのプレゼントだ。受け取ってくれよ!」
そう言いながら真斗が左手の盾から飛び出させたのは69口径パイルバンカー、その異
名は「盾殺し(シールド・ピアース)」。
「吹っ飛べ!!」
バン!
真斗が突き出した左手のシールド・ピアースは謎の操縦者の胸倉に当たり、そんな炸裂
音を出した。
それとともに、セレン・テレブレイの巨大な機体が大きく倒れると、地面へと落ちてい
った。そのあとを追うのは・・・
「行っけえ、サト兄!」
「うおおおおおおおおおおっ!!!」
白式の最大の必殺技である「零落白夜」は俺の怒号と共にその漆黒の機体に深々と突き
刺さった。
「グハッ!!」
あまりの反動に絶対防御も耐え切れなかったようで、謎の操縦者は吐血した。だが俺と
操縦者の体はそのまま地面へと落ちていき・・・。
ドゴオオオン!
セレン・テレブレイの巨体はそのまま地面へと倒れると、その動きを完全停止させた。
- RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー ( No.11 )
- 日時: 2013/12/27 17:24
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
俺はセレン・テレブレイの停止を確認した上で、やっと地面に足をつけた。
「ふう、やっと終わった・・・」
一息ついたところを出迎えてくれたのは織斑君達計6人だった。
「智志君、君は一体・・・」
「だから、ただの異世界から来た人なんだってば」
「それは聞いたが・・・、なぜ私たちのISをお前らが使っていたんだ!」
「それはえと・・・、俺にも分からないや。アハハハ・・・」
「サト兄、無事か?」
俺が笑ってごまかしていると、ハルたちが降りてきた。
「ふう、また暴れちゃったわね」
そう言いながら肩を回す麗さんはどうやらISから降りることで正気に戻ったようだ。
「智志、これでやっと」
「あぁ。やっと半分だ。あと3人で、異世界全てを救える」
誰もが安心していたその時だった。
バアン!
俺たちの後ろでそんな破裂音と共に、漆黒の機体が爆ぜ、何者かが出てきた。しかもそ
の人物はまたみんなと違うISに乗っていることが、俺達を驚かせた。
「まさか、あいつがセレン・テレブレイを動かしていたのか!?」
「お、お前は・・・!」
織斑くんたちは驚愕していた。そのISの色はブルー・ティアーズよりも濃い青、6個
のビットにライフルのような銃剣を持っていた。
「織斑くん、あいつを知っているのか!?」
「サイレント・ゼフィルス・・・」
刹那、サイレント・ゼフィルスの姿が消えたと思った瞬間、一瞬で俺たち4人はその腕
で払いのけられてしまった。
「「「「グハッ!」」」」
「智志君、みんなぁ!」
「貴様らに用はない」
謎の操縦者は俺らを横目でそう言いながら織斑くんに近づいていった。
「私は貴様に用があるのだ、織斑一夏。分かっているな」
「俺を、殺しにか」
「「「「「!!?」」」」」
その言葉に、そこにいた誰もが驚愕を隠せないでいた。まさか操縦者自身が織斑くんを
狙っていたのだ。
「分かっているのなら、ここで死んでもらう。私が私であるために・・・」
そう言いながら、謎の操縦者は織斑くんの額向けて銃剣を突きつけた。
だが・・・
「悪いが断る」
織斑くんははっきりそう言った。
「貴様、そのような戯言を今言える立場だと思うか?」
「確かに、もしお前がこのまま引き金を引けば俺は即死だ。でも、俺は俺自身に仲間を守
ると誓ったんだ。だから俺は生きて、仲間を守るんだ!」
「「「一夏・・・」」」
「一夏さん・・・」
「さすが私の嫁だ・・・」
織斑くんの目の輝きは本気だ。俺の本能がそう言っている。そんな織斑くんを見守る篠
ノ之さんたちの頬は仄かに赤かった。
「貴様・・・」
だが、そんな発言をいいと思わず、苦虫を噛み潰したように立ちつくす謎の操縦者は、
引き金を引こうと指に力を込めようとした。
「残念ですが、あなたには失望しましたよ、Mさん」
「「「「「!?」」」」」
俺たち全員が声が聞こえた方を見ると、そこにはハデスが宙に浮いて立っていた。
「ハデス、どういう事だ・・・」
「あなたには、織斑一夏を殺すよう言いましたが、どうやら遅かったようですね」
「遅かっただと・・・、くそっ」
そう言いながら、謎の操縦者、Mは織斑くんから銃を下ろした。
「それはそうと、なぜ私の邪魔をする?貴様にも私同様、この男には消えて欲しい理由が
あるのだろ?」
「そうですね。でも、今その目的は果たせなくなってしまいましたから」
「何?それはど」
刹那、Mの言葉が止まった。
その体には・・・・・・ハデスの左腕が貫通していたのだ。
「「「「「!!?」」」」」
「グボォッ!」
Mの体を貫いたハデスの左腕には鼓動を打つ赤黒いものが掴まれていて、それを見た瞬
間、俺は強烈な吐き気に侵された。
「私の言った事を分かってないようですね。出来なければ『死』あるのみですよ」
「き・・・、貴様・・・」
ハデスはさらに口角を上げた瞬間、左腕にあるそれを握りつぶした。
「ぐああああああああ!!!」
刹那、Mは悲鳴を上げた途端動かなくなり、その体を包むようにドス黒い魔法陣が包み
込んだ瞬間、Mと呼ばれていた人物の体は青白い炎と共に消えてしまった。
「あ・・・あぁ・・・」
「「「「「ギャーーーッ!!!」」」」」
ハルたちの悲鳴、俺と真斗、織斑さんの驚愕に満ちた顔。ハデスの混乱した頭、そして
血にまみれたやつの狂ったような笑みがそこにあった。
(コイツは・・・本当に狂った殺人鬼、いやそれ以上だ!!!)
「どうしました?」
「お前・・・、何をしたのか分かっているのか!?」
「えぇ、分かっていますよ。私は異世界を破壊するものであり、そして今君たちの前で人
を殺した。ただそれだけですよ」
「本当にためらいがないんだな・・・。お前は・・・」
俺はそのハデスの恐れながらやつから少しづつ距離を取ろうとした。
「フフフ・・・アハハハ・・・!!」
途端、ハデスがまた狂った様に笑い出した。しかし、その笑い声はいつもより人として
壊れているようであった。
「・・・・・・・・・」
「あぁ智志くん、あなたに言っときましょうか?」
「な、何を・・・」
俺が聞こうとすると、ハデスは笑みを消し、その目を見るように話し始めた。
「私はあなたに2回も邪魔をされた。そこで、君たちが消えてからコア・ヒューマンを狙
おうとしたのです。しかし君たちが去り、物陰から出て行動しようとした途端、コアの波
動を感じなくなったのです。それだけでなく、私までその世界を追い出されたのですが、
この現象は一体どういうことなのでしょうねぇ?」
「率直に言え」
「フフッ、私はこう考えました。コアは消えたのではない、消えたとしたらこの世界は私
が現れただけで崩壊を起こす。このことから、1つの答えが出ました。今4つの世界のコ
ア、この世界と君たちの世界、学園都市、フロニャルドのコアは海原智志、君の中にある
のですよ!」
「「「「!?」」」」
俺は驚愕した。
「4つのコアが俺の中に!?そんなことが・・・」
「ありえるんだ、その証拠が君の剣の力ですよ」
「青龍が?」
俺はすぐさま視線を青龍に向けた。
「コアにはその世界のデータが刻み込まれています。君がその力を使える理由としては、
その武器はコアに入っているその人の力を再現するに等しい、同様にその世界に私の力を
打ち消す力を作ることも可能、そう考えるが妥当だと思えるのですよ」
コアにある力を再現する・・・それがこの武器の力か・・・。
「しかし、その力は君を強くすると同時に、君が死ねば一気に複数の異世界を破壊するこ
ともできてしまうことになるんですよ」
「まさか、昨日の言葉は!」
「フフッ、そういうことです」
俺が死ねば、あの世界が破壊されてしまう!それで俺を殺しに来るということだったの
か!
「さて、これからが本当の戦いですよ。私はこれからも異世界に降り立ち、破壊活動をし
ていきます。智志くんたちは止めに来ればいい。その代わり、君たちの命の危険性はどん
どん上がっていきますけどね。ではごきげんよう」
そう言い、ハデスはまた笑いながらその姿を煙のように消していった。
- RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー ( No.12 )
- 日時: 2013/12/27 17:25
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
「サト兄・・・」
「智志くん・・・」
「智志・・・」
今ここは俺達に用意されていた特別室だ。俺はぐったりしながらベットに腰をかけてい
た。
「気をしっかり持てよ、サト兄。確かにあんなの見れば誰だって自分を見失うけどさ、あ
と3人なんだ。ここで諦められたら・・・」
「あのMっていう人のように死ぬ人を二度と出さないように、私たちが戦わないといけな
いんでしょ?」
「でも、今の俺には未来が見えないんだ。もう怖くて怖くて・・・」
「智志!」
べしっ!
俺が弱音を吐いていたところをハルがチョップしてきた。今の俺には少し痛く感じた。
「しっかりしてよ智志!いつもの智志に戻って!」
「・・・・・・」
今の俺にはそんな勇気はなかった。
死への恐怖がまだ残っていることから、どうにも体すら動けないでいたのだ。
そんな俺を見ていたハルは、ふとあることを思い出した。
「智志、昨日の花覚えてる?」
「・・・あぁ。ショウジョウハカマか」
俺はあの花のことを思い出した。
そういえば綺麗だったな・・・。今の俺には関係ないが。
「あの花・・・、花言葉は『希望』っていうんだよ」
「希望・・・」
俺の言葉は弱々しく、その単語をしっかり言えていなかった。
「あの花、さっきみたら火の粉1つかぶってなかったよ。これも智志のおかげなんだって
ば。そう、智志が守ったのよ!」
「俺が・・・守った?」
俺の弱々しい問いに、ハルは力強く首を縦に振った。
「・・・が・・・、希望を救った、か・・・。そうか・・・」
俺は、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、その言葉を繰り返し言った。
その様子が嫌だったのか、ハルは俺を自分の胸にうずくめるように抱いてきた。
「泣かないで。智志が泣いちゃダメなんだってば・・・」
「すまん・・・。ありがとう、ハル」
その温もりは、少しづつ胸の奥底にあった氷を溶かしていった。
- RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー ( No.13 )
- 日時: 2013/12/27 17:26
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
「フンフフ〜ン」
その時、山田先生は鼻歌を鳴らしながら足が軽いかのような足取りで廊下をスキップを
していた。
「あれ?山田先生、どうされたんですか?」
「あぁ、織斑君。実はぁ、なんと智志君たちの入学が許可させたのですよ!」
「へえ、海原くんたちもこの学校の生徒か・・・でも大丈夫かなぁ。さっきひどく暗い表
情で部屋に戻って言っていたのですが」
そういう一夏の顔は浮かなそうな顔であった。
「大丈夫ですよ、きっと織斑君みたいにすぐ慣れてくれるはずですから」
「でも、智志君はそれを承諾してくれるんでしょうか?俺もここに入らされた立場ですか
ら、その気持ちが分かるんですよ」
「大丈夫です。海原君ならきっと楽しい学校生活を送ると思いますから」
「はあ」
そう話しながら、2人は特別室まで来てしまった。
コンコン
「海原く〜ん。山田先生ですよ〜」
だが返事は返ってこなかった。
「寝ているのかなぁ?」
「おかしいですねぇ」
「どうかしたのか?」
その時、2人が来た方向の反対側から箒が歩いてきた。
「あぁ、箒。実は智志君たちが出てこないんだ」
「居留守か?教師相手に度胸のあるやつらだなぁ」
そう言いながら、篠ノ之はドアの方に歩いてきた。
「どいていろ。ここは私がやろう」
「お、おう・・・」
「・・・はあっ!」
そう言い、篠ノ之は木刀を持って構えると、ドアに向かって思いっきり突きを放った。
もの見事にドアは真っ二つになり、部屋へと倒れた。
3人が中を覗くと、既に電気が消されており中には誰もいなかった。
「いない・・・」
「え、ええっ!?あの子達一体どこへ!?みなさぁん、どこですかぁ!」
そう言いながら部屋を後にした山田先生を後ろ目に、織斑は机の上にあった1切れの紙
に目を移した。
そこには『また会おうね』『あの花、大事に育ててください』『ごっつぁんです!』『
楽しい学校生活を』と4人の寄せ書きが書かれていた。
「一夏、海原たちは?」
「・・・もう、次の世界に行ったようだよ」
一夏は苦笑と共にそう呟いた。
「そうか・・・」
箒も同じように苦笑した。
その日の月はかけることなく、美しい輪郭を持って輝いていた。
〜To Be Continued〜
- RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー ( No.14 )
- 日時: 2013/12/27 21:01
- 名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)
2013 12 27 再編集