二次創作小説(紙ほか)
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- イナGO霧野くんと甘い休日【完結!】
- 日時: 2016/02/26 08:00
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
イナズマイレブンGOの霧野蘭丸くんと「私」が休日を過ごすだけのお話です。
- Re: イナGO霧野くんと甘い休日 ( No.9 )
- 日時: 2016/02/25 09:06
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
カラオケが終わり霧野と別れた後、アフロディに連れられて行きつけの食堂へ向かった。
二人用のテーブル席に向かい合って腰かける。
私と彼は同じ卵かけキムチご飯を注文してから、先ほどの会話の続きをする。
「さっき君は『大事な話がある』と言っていたが、どんな話なのかね」
「それは食事を食べ終わってからのお楽しみさ」
流石に食事中は邪魔になるのだろうか、サラサラのストレートヘアをヘアゴムで縛り、ポニーテールにしながら答えるアフロディ。
仕草のひとつとっても上品で、私の通う雑な女子達と比べても遥かに女子力が高いと思うのは私の錯覚なのだろうか。
彼は何も口を利かず薄い微笑みを浮かべてじっと私を見つめる。
その姿には無言の圧力が込められており冷たいものが私の頬を流れる。
その睫毛が長く赤い瞳には、人を惹きつける一種の催眠作用のようなものがあった。
彼の瞳を見てはいけないと目を逸らそうとするものの、そうすればするほど彼の顔は近づいてくる。いや、私が身を乗り出して顔を近づけているのだ。
無意識のうちに手が伸びていき、彼の両頬に触れていた。
雪のように白くキメ細かい肌は弾力に優れており、ふっくらとした感触が伝わってくる。
これをもち肌と言わずに何をもち肌と言えばいいのだろうか。
このまま二十四時間でも触っていたい。
自分では顔が見えないのでわからないが、きっと私はとても変態じみた表情をしているのだろう。しかし普通の人間ならば許可なく頬を抓ったら不快感を露わにするものなのだろうが、彼の場合はそれが全く表に出ない。優しすぎるのか、それとも痛覚が麻痺でもしているのだろうか。
「気持ちいいかい」
「最高の気分だよ」
「それはよかった。でも、ちょっとだけ周囲の目は気を付けた方がいいみたいだよ」
「へ!?」
彼の言葉に我を返した私は、周囲の男性たちから放たれる殺意を察知し、慌てて彼の頬から手を解放した。
背が高く非常に整った顔立ちの彼は、女装をしなくても美少女モデルと間違えられることがあるのだから、こんな美人と食堂で向かい合って食事をするとなると、たとえ彼の戸籍上の性別が男だったとしても、女子とは縁のないモテない男達の憎悪を一心に浴びる羽目になる。
かつては彼らと同類だったため、私も彼らの憎む気持ちが理解できる。
そして彼らにはいつか素敵な人に巡り合って欲しいと願ってやまないが、だからと言って私のアフロディを渡すつもりは一切ない。
- Re: イナGO霧野くんと甘い休日 ( No.10 )
- 日時: 2016/02/25 20:52
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
そうこうしているうちに卵かけご飯が運ばれてきた。
食べながら話したいのが本音だが、彼はそれを嫌う。
ここはぐっと我慢する他ない。
無言で料理を味わう私とアフロディ。
先に完食したので携帯で霧野にメールを打ち込み送信する。
その間に彼も食べ終わったのでいよいよ本題に入ることにした。
「大方は予想しているが、大事な話って何だね」
「別れようと思うんだ」
さらりと告げたその一言が、私の胸に深く突き刺さる。
まあ、浮気現場を目撃されてしまったのだから仕方ないか。
弁解の余地は何もない。悪いのは確実に私なのだからここはおとなしく自分の運命を受け入れるとしよう。短い付き合いだったけど本当に楽しい時間を過ごすことができてよかった。
きっと彼は私に愛想を尽かし、もう二度と会う気にはなれまい。
最後に別れのキスでもさせて貰えたら幸せなのだが、そうもいかないだろうな。
「会計は私が払うから気にしなくていいよ。さようならアフロディ、元気で」
この場から離れたいので椅子から立ち上がって中腰になると、彼が低音で言った。
「僕が別れたいのは浮気を知ったからじゃない。君が自分の気持ちに嘘を吐いているからだ」
「何が言いたい?」
「君が思っていることを口にしただけだよ」
どうやら神には嘘は通じないらしい。
再び腰を下ろして彼と向き合う。
彼に言われる以前から薄々己の気持ちは自覚していた。
愛するあの子から逃げるために美少女のような外見の少年達に恋心を移すことで、平静を保とうとしていると。だがそれだけは認めたくなかった。それを認めたらまたしても彼女への想いが再発してしまうだろうから。彼女のために私が身を引くことが正義だと信じ続けてきたが、それは間違いだったのか?
アフロディは薔薇色の唇で言葉を続ける。
「意外かもしれないけれど、これまでに僕に告白してきたのは君だけなんだよ」
彼は極めて美しくサッカーの腕も超一流だ。
女子だけでなく男子にも愛されるのは当たり前だと思っていたが、そうではないのか。
「友人としてはね。けれど僕は恋愛対象になることは絶対にない。何故なら、皆が僕の美しさの前に躊躇いを覚えてしまうから」
自惚れでもなんでもないのだろうが、少し痛い台詞に聞こえるのは私だけではないはずだ。
「美しい僕は常にひとりだ。友達はいたけれど恋人と呼べる人物はひとりもいなかった。皆が異性と付き合い始める中、ひとりだけ取り残されるのではないかと不安だった。そんな時、君が現れて僕に想いを告げた。嬉しかったよ、何の飾りもないストレートな愛の告白は、新鮮で光に満ち溢れていた。このとき僕は誓ったんだ。君を幸せにして見せるって」
「……」
「でもこの半年間で君には僕以上に愛している人がいるとわかったんだ」
すると彼はズボンのポケットから一枚の写真を取り出し、私に差し出した。
「この写真、三か月前に一緒に公園に行った時に君が落としたものだ。君は落としたことにに気づいていなかったけど、君が彼女を愛しているのは裏に書き綴られた恋文を読んですぐに分かった」
写真に写っていた少女の名前は黄瀬やよい。
幼稚園からの幼馴染で初恋の相手。
彼女も私と同じ14歳になる。
絵を描くのとスーパーヒーローが大好きで、彼女といる時間は毎日が幸せだった。
けれど中学一年の頃、私は父親の都合で引っ越すことになった。
当時は携帯もなかったため、連絡先を交換することも叶わない。
ずっと愛していたけれど叶わない恋と知った私は彼女に別れを告げ、夢にまで現れるやよいへの未練を断ち切ろうとアフロディや霧野にやよいへの未練を向けた。
私は最低の人間だ。自分の我儘で彼らを傷つけてしまった。
- Re: イナGO霧野くんと甘い休日 ( No.11 )
- 日時: 2016/02/26 07:58
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
塞ぎ込んでいるとアフロディが静かに語りかけた。
「今まで返そうと思っていたけれど、君が彼女の元へ去るかと思うと怖くて渡せなかった。でも分かったんだ、君を真に幸せにできるのは小さい頃から君を知っている彼女だけだって」
彼が己を犠牲にして私の気持ちを優先してくれるのは嬉しい。
けれど私は二股をかけてしまった身。
それに今更彼女に会ったところで別のボーイフレンドが出来ているのがオチだ。家は知っているが電話番号を聞いていないのだから、連絡が取りたくても取れない。
いきなり行っても迷惑するだけだ。
それを伝えると、彼は口を押えてにっこり。
「二股じゃないよ。君は僕としか付き合っていないし、霧野とやよいには告白していないんだろう? だったら友人のままだ」
「それはそうだけど……」
「電話番号なら案ずるなかれだよ」
彼が私の掌に載せたのは一枚の紙きれ。
開いてみると電話番号が綺麗な字で書かれてあった。
これはまさか——
「そのまさかだよ。やよいの携帯電話番号」
どうして見ず知らずの他人である彼女の電話電話番号を知っているんだろうか。
「君の恋文を読むまではそうだったけど、文の中に街の名前が書いてあった。偶然にも僕の友人が住んでいるところで、もしかするとと思ってかけてみたら、その子はやよいと同じ学校、同じ学年、同じクラスで大の仲良しであることが分かってね。訳を伝えたら教えてくれたんだよ。もちろんやよいの許可は取ってあるし、君の恋心は伝えていないから安心しておくれ」
目の前が急に明るく開けたように感じられる。
やはり彼は私にとっての神様だったらしい。
「ありがとう、心の友よ!!」
「君の幸せのためなんだからそれぐらいするさ」
嬉しさのあまり彼にハグをして、慌てて我に返る。
幸いなことに今の光景を目撃した客はひとりもいなかったらしい。
「じゃあ、そろそろ出ようか。時間も遅いからね」
時計を見てみると七時を回っていた。
帰宅が平均四時の私にとっては遅い時間帯に入る。
会計を済ませて外に出ると、暗い夜空に美しい星が瞬いている。
「君との恋仲を解消する前に、ひとつだけプレゼントしたいものがあるから、ちょっとだけ顔を貸して」
彼を見上げた刹那、頬に柔らかいものが触れた。
これはつまり——キス!?
気づくよりも早く、私の元恋人は耳まで真っ赤になって暗闇の中を駆け抜けて行った。
こうして私の長い一日は終わった。
そしてまた明日から新しい一日が始まるのだ。
おわり。
- Re: イナGO霧野くんと甘い休日【完結!】 ( No.12 )
- 日時: 2016/02/28 07:31
- 名前: 彩都 (ID: 8topAA5d)
来ました。
そして、『私』の年齢が分かってスッキリしました。
そしてアフロディに会ってからの『私』の心情がとても良く分かりました。
さて、『私』がどうなるか、分かりませんが、やよいとのその後が知りたいですね。
後日談として書かれては如何でしょうか?
やよいとの後日談を書かれたら、それはそれで良いエンドになるかと思います!
次回作も待ってますよ!
彩都でしたっ!
- Re: イナGO霧野くんと甘い休日【完結!】 ( No.13 )
- 日時: 2016/02/28 08:07
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
彩都さんへ
その後は想像に任せます!次回作もがんばります!