二次創作小説(紙ほか)
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- キュアソードの憂鬱
- 日時: 2016/04/07 22:42
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
「ドキドキ!プリキュア」の剣崎真琴ことキュアソードとオリキャラの森田影人の物語です。笑いあり涙ありバトルあり感動ありの物語を目指します。
- Re: キュアソードの憂鬱 ( No.2 )
- 日時: 2016/04/07 22:40
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
転校してから1カ月、同じクラスに通うショートヘアが特徴の美少女、剣崎真琴が気になる。
中学生ながらアイドルとしてテレビで大活躍しているらしい。
「まこぴーはね、ドラマとか料理番組とかで引っ張りだこの大活躍なんだよ!」
外ハネの桃色の髪型をした少女、相田マナは私こと森田影人がこの大貝中に転校してから毎日のように真琴の魅力について語っている。
生徒会長をしているらしいが、このような愚か者が会長とはこの中学は大丈夫なのだろうかと心配になる。しかし今のところこれと言って悪い噂は聞いていないのだから、一応はまともに生徒会長をしているのだろう。
「マナ、森田くんはテレビをあまり見ないから言っても無駄だと思うわよ」
「えっ、そうだったっけ?」
眼鏡をかけた落ち着いた印象を与える菱川六花。
彼女はマナの書記を務めている。
外見に違わず成績優秀で全国模試では10位をとるほどの秀才だ。その頭脳を少しでいいから私に分けてほしい。六花はマナを手助けしていることが多いが、そんなバカは放っておいて私の秘書になるべきだ。きっとマナに付くよりも貴重な経験ができるだろう。
ふたりのやりとりにため息を吐き出し、口を開く。
「マナちゃん、これできみに説明するのは20回目だが、私はテレビを好かない。だからまこぴーが活躍してようと知ったことではない」
「一度でいいから見てみてよ。きっとまこぴーの歌声に感動するはずだから」
正直な話、彼女の「感動する」が怪しいのは私の中で評価が低いからだ。そのとき、私の席から2つ離れたところに座っていた真琴が立ち上がり、私の方に歩み寄ると天使と表現しても過言ではないほどの微笑みで、
「やっとあだ名で呼んでくれたのね、森田くん」
その笑顔に他の男子は骨抜きになるが、私は甘くはない。
彼女の笑いは何か裏がある。
猫を被った女子の笑いだ。確かに可愛らしいではあるが、これで気を許してはいけない。
気を抜いたら最期、私は彼女のストーカーと化しているだろう。一度でも恋の炎がついたら最期、自分では決して消すことはできない。前科があるだけに、真琴を悲しませないためにも私は己に厳しくなくてはならないのだ。
「どうかしたの?」
少し首を傾げきょとんとした顔をした真琴。気づかれる前になんとか誤魔化すとするか。
「何でもないよ。気にしないでくれたまえ、真琴ちゃん」
「……せっかくあだ名で呼んでくれたかと思ったのに、残念だわ」
悲しそうな声を出すが、これに流されてはいけない。
「それでは諸君、さようなら」
さっさと帰りの支度と挨拶を済ませ、私は教室を出た。
……何か背中が軽い気がするが、大したことではないだろう。
- Re: キュアソードの憂鬱 ( No.3 )
- 日時: 2016/04/08 20:36
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
「森田くーん! 鞄忘れてるよー!」
教室を出てから15秒ほど経ったころ、背後からマナの声がした。
振り返ると彼女は私のカバンを持っている。先ほど背中が軽いと感じたのは鞄を忘れていたからだったのか。
「マナちゃん、届けてくれてありがとう。助かったよ」
「どういたしまして!友達が喜んでくれる姿を見るのが私の幸せなの!」
他人が喜ぶ=自分の幸せか。なかなかいい性格をしているが、あまり愛を振りまきすぎると独善とかいい迷惑とか言われるだろう。
……もっとも今回は助かったけれど。彼女が鞄を届けてくれなければ、私はきっと父の鉄拳制裁を受けていただろうから。
「それじゃあ、私は帰るよ」
「森田くん!よかったら私と六花とまこぴーと一緒に帰らない?」
いきなり何を言い出すんだこのバカは。少しは見直したと思ったのに。
男子の私が美少女三人と下校したら他の男子に恨まれるだろう。つまり明日から私は2学年、いや下手すると大貝中男子の怨みを一心に浴びることになるかもしれないのだ。
そんな簡単なことがこの女子にはわからないのだろうか。
とは考えつつも、転校初日から妙に気になる真琴について色々情報を集められるチャンスでもあるし、うまくいけば彼女の化けの皮を剥がしてその本性を暴けるかもしれない。
つい好奇心が勝ってしまい、私は一緒に帰ることを承諾した。
☆
マナ、六花、真琴、そして私の4人は2列になって歩く。
マナと六花が前を私と真琴が後ろを追いかける形だ。
ちなみにトップアイドルであることがバレてはファンに囲まれる可能性を恐れてか、彼女は白くてふんわりした帽子に赤い縁のメガネで変装をしている。制服の上からそんな恰好をしているので違和感バリバリな気がするが、本人は自覚症状がないらしい。
周囲の目は誤魔化せているようなので変装としては成功しているはずなのだが、違和感がどうにも拭えない。
よし、ここは思い切って本音をブチまけよう。
「その恰好変だね」
「へ、変……!?」
「私からすれば制服に帽子と眼鏡なんてミスマッチにしか見えないよ」
ショックを受けたのか、ほんの僅かな時間だけ愕然となる真琴。
しかしすぐに帽子と眼鏡を外して私を見つめる。表情はいつものヘラヘラとした愛想笑いのない真剣そのもので、どことなく冷たさの漂うものだった。
「これでどう?」
「さっきよりはマシになったね」
「そう。よかった……」
なんだか学校での感じと全く異なるみたいだ。
もしかするとこれが彼女の本音なのだろうか。
それにしてもその七三分けみたいなショートヘアはどうにかならないのだろうか。顔だけ見れば優等生風の美少年に見える。
真琴が男子の制服を着てクラス委員長を務めても何の違和感もないだろうが、そんなことを言ったら「まこぴーの大ファン」を自称するお人よしのバカことマナからどのような制裁を受けるかわからないので怖い。
だが、私は後悔する生き方をしたくない。
死ぬときになって、あのとき言っておけばよかったと病院もしくは家のベットで悔し涙を流すような最期の時を過ごしたくはないのだ。
「真琴ちゃんって女の子なんだよね。転校初日にきみを見たとき男の子かと思ったよ」
「えっ? 私、男の子に見えるの!?」
「そうだよ」
すると彼女は少し顔を赤らめて、
「それってボーイッシュって意味だよね。今までそう言われたことがないから嬉しいな」
そのとき、私の胸の鼓動がドクンと大きく高鳴ったような感覚がしたが、気のせいだろう。
出会ってたったの1カ月、それもただのクラスメートでしかない真琴に恋愛感情を抱くなどあり得ない。
- Re: キュアソードの憂鬱 ( No.4 )
- 日時: 2016/06/08 05:51
- 名前: モンブラン博士 (ID: EBP//tx7)
家に帰った私は制服から私服に着替えてベッドに寝転がった。
学校というものは授業を受けているだけでとても疲れる。
50分間もの長い時間を自分の机で先生の話を聞いて黒板に書いてあるものを書き写すだけの行為は私にとってはあまり有意義な時間とは思えない。
勉強が受け身になってしまっている。授業なのだから、もっと積極的に発言して自分の知識を増やさねば意味がないように感じてしまうのだ。マナも六花も真琴も授業中はおとなしすぎる。彼女らは黙っているのが良い状態なのだと思い込んでいるのだろうか。
だとしたらそれはとても悲しい。
疑問に思ったことはすぐに訊かなければ人生を後悔してしまうだろう。
天井を見上げながらそんなことを考えた。夕食までに時間もあるのだから少しだけ眠っても大丈夫だろう。
けれど、眠ろうとするがどうも寝付けない。何かが気になって昼寝ができないのだ。
今日出された宿題だろうか? それならば何も心配はない。夜にやればいいのだから。
では何が私の睡眠を邪魔するのだ。
と、ここで家に到着する直前にマナから貰った真琴の歌声が収録されているCDの存在を思い出した。
それを取り出しCDプレイヤーの中に入れる。
おそらくこれが気になって私の睡眠の妨げとなっていたのだろう。
「音楽を聴くと熟睡できるとも言うし、試しに聴いてみるとするか」
スイッチを押すと、澄んだ歌声が流れてきた。
これが真琴ことまこぴーの歌声か……なるほど、高く伸びやかで透き通っている。皆が彼女の歌声に聴き惚れる訳が少しだけわかった。
今日、彼女が出演する番組があるのならば、視聴してみるのもいいかもしれない。
曲を一通り聴き終わりCDを取り出すと不意に眠気が襲ってきた。
CDを割ってはいけないと安全な机の上に置き自分はベッドへと倒れ込む。こうして私は毎日の楽しみであるお昼寝タイムに突入したのだ。
束の間の幸福は父の帰宅によって崩された。
父は帰ってくるなりテレビをつけて、偶然登場した真琴と私を比較し愚痴り始めた。
「真琴ちゃんはお前と同じクラスというじゃないか。同級生が華やかな舞台で活躍しているのに、お前はなんだ。馬鹿で運動もできず不細工で音痴ときている。取り柄なんか何もない。それに比べて真琴ちゃんはどうだ?料理もできてスポーツも勉強も人並み以上にできる」
……いつもこうだ。
私がテレビを嫌いになった理由のひとつが子役タレントの活躍を見る度に私と比べる父の影響だ。テレビに登場するほどの輝かしい業績を持った子と比べられるのは迷惑でしかない。何度その件に関して苦痛を訴えたかわからないが、父は聞く耳を持ってくれなかった。大貝第一中学校に転校して1か月。
私はずっと相田マナ、菱川六花、剣崎真琴と比較され続けられている。
世の中には圧倒的な勝ち組というものが存在する。彼女達はまさにそれだ。家族にも友人にも外見にも才能にも恵まれた完璧超人3人。
彼女らと比較されては私など足元に転がる石よりも価値のない存在なのだろう。
毎日のように比較され、超えようと努力すればするほど己の無力さを痛感する毎日。
彼女達は決して人間的には悪くはないのだが、そのあまりにも恵まれすぎた境遇が死ぬほど羨ましい。
心の奥底にふつふつと毒ガスかマグマのように湧き上がってくる劣等感。今はそれを理性で押さえつけているからいいが、いつ爆発するかわからない。表面上は天国に見える学校生活だが、心の中では地獄のように感じているのだ。
私が彼女達に強い劣等感を持っているのは父の愚痴と高望みに原因があるのだが、彼は私がいくらやめるように頼んでも聞く耳を持とうとしない。おかげで私の彼女達への憎悪は溜まる一方だ。
- Re: キュアソードの憂鬱 ( No.5 )
- 日時: 2016/04/21 08:35
- 名前: モンブラン博士 (ID: CMSJHimU)
「マナちゃん。昨日きみから貰ったCDを聴いたけど、真琴ちゃんの歌
声は本当に素晴らしいものだったよ」
翌日、私は内心見下し嫌悪している相田マナにCDの感想を伝えた。
すると彼女はバカ丸出しの笑顔で、
「よかった。森田くんもまこぴーのファンになってくれて!」
「これもきみがCDをくれたおかげだよ。ありがとう」
その点にだけは感謝しておくが、私はコイツを殴りたくてたまらなかった。クラスメートが誰もいなければ蹴り倒して馬乗りになり顔が腫れ上がるまで殴ってところだ。衝動を抑えられたのは彼女にとってある意味幸運だっただろう。
マナはいちいち言う必要がないのに教室に入ってきた真琴に向かって私がCDを聴いて喜んだことを話した。私が直接話そうかと思っていたのに、その楽しみを奪うとはよい度胸ではないか。心の中で怒りの炎をメラメラと燃やしてると、真琴が笑顔を向けてきた。
今日はいつものような作り笑いではなく、心から喜んでいるような笑顔だ。まあ、自分の歌声を聴いて感動したと言われたらアイドル歌手にとってこの上ない喜びだろうから、そのような表情をするのも頷ける。
ついでに昨日父が見ていた番組に出演していた彼女をとても可愛かったと付け加えて、そのまま席に戻りいつものように読書をするが、本の内容がまるで頭に入ってこない。
どうやらマナと真琴への怨みが頂点に近づいてきたらしい。
このままでは怒りを爆発させて大変な事になっても不思議ではない。
いくら劣等感があるとはいえども、か弱い女の子に暴力を振るうなど言語道断。どうにか私は暴力を振るわずに彼女達を思う存分痛めつけて地獄の底に叩き落すことはできないだろうか……
- Re: キュアソードの憂鬱 ( No.6 )
- 日時: 2016/04/16 19:03
- 名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)
私は自分で言うのもなんだが、紳士的だと思っている。
これまでの人生で女の子に暴力を振るったことは一度もないし、常に敬意を払って紳士的な行動をとっているつもりだ。
だが、今回は己に課している紳士の仮面を外さねばなるまい。
心の中にある残虐な心を全開放しなければ私は気が変になってしまうだろう。
彼女達にとっては迷惑極まりないだろうが、これはきみたち自身が招いた結果で、自分の身体の健康を保つためにはどこでストレスを発散せねばならない。
そもそも君達さえ私の目の前に現れなければ、父親に不満があったとしても学校生活では穏やかに過ごせたはずなのに——
完璧すぎる君たちのせいで。
君達が私の転校先に存在していなければ。
劣等感を必要以上に覚えることはなかったんだ!
感情の爆発を悟り、席をガタンと立ち上がってトイレへ向かう。
洋式トイレへ駆け込み、胸を抑えて少しの間うずくまる。
どうやら本格的に理性の値が低くなってきたらしい。
このまま教室に留まれば、間違いなく阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまう。
残虐な私よ、もう少しだけ我慢してくれ。
地獄を味あわせるのはマナ達だけで十分だ。
他の子は関係ない。
完璧すぎる奴らの血の海地獄を思う存分楽しめるのだから、楽しみはとっておくものだ。
少なくとも——下校時間になるまでは。
☆
下校時刻になるまで、私は興奮を抑えるのに必死だった。
早く彼女達を絶望させたい。
完璧なる彼女達の体を徹底的に痛めつけて、心をヘシ折ってやりたい。
早く、早く時間になれ——!
私の願いが通じたのだろうが、ついに下校の時間帯になった。
今日はこれまででいちばん楽しいであろう下校だ。
なぜならば今までの劣等感を嫌というほど味わった復讐ができるのだから。
皆が友達と帰る仲、彼女達はいつもと変わらぬ様子で教室で駄弁っていた。
類は友を呼ぶというが、完璧な奴は同じく完璧な人間との付き合うのを好むのだな。実に嫌味たらしい。
「マナちゃん、六花ちゃん、真琴ちゃん、一緒に帰らないかね?」
「うん、いいよ」
「よかった。じゃあ早速——」
刹那、六花がマナの肩を叩き小声で耳打ちをした。
本人は聞こえないように細心の注意を払ってできる限り小さな声で言ったのだろうが、耳の良い私には彼女の声がはっきりと聞こえた。
「今日の森田くん、なんだか様子がいつもと違うわ。気を付けた方がいいわよ」
さすがは全国模試10位の六花だ。観察眼は優れているようだ。
どうやら始末する順番を変えて、まず真っ先に彼女の口を封じた方がよさそうだ。
「何か言ったかね、六花ちゃん」
「ううん、何でもないの」
胸の前で手を振り愛想笑いをして誤魔化す彼女。
だが、それは無意味なのだ。
何故ならば私はきみの発言を聞いたのだから。
だが私は気にしない振りをして、そのまま一緒に下校する。
さて、そろそろ残虐モード全開でまずは六花から地獄の底に落ちてもらうとしよう。
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